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沢田太陽の2023年間ベスト・アルバム. 50~41位

どうも。

では、いよいよ行きましょう。沢田太陽の年間ベストアルバム、2023年版。

例によって50位からのカウントダウンですが、今年の40位代はこうなりました!

はい。素敵なアルバムばかりですが、早速50位から紹介しましょう。

50.Barbie/Soundtrack

50位は「バービー」のサウンドトラック。これに関しては僕は他に何が来ようが50位にしようと決めてました。だから、あんまりランク外の対象になることに未練が強く残るようなものがあったら嫌だったんです。そうしたら、これが外れることになっていたから(笑)。これは言うまでもないと思うんですけど、フランチャイズを前提としない映画での久々の世界的現象的ヒット映画だし、かなり久々のヒット・シングル連発のアルバムですよね。ビリー・アイリッシュ、デュア・リパ、ニッキー・ミナージュとアイス・スパイス、その他にも劇中でテイム・インパーラやリゾも印象的にかかってたし。でも一曲選ぶなら文句なしにライアン・ゴスリングの「I'm Just Ken」ですけどね(笑)。このヒットの様を見ている時、80sを思い出しましたもん。「フットルース」とかから続々とヒットが出てた1984〜86年あたりですね。あの時ってチャート追ってて結構ワクワクしたものなんですけど、あの感覚を今の若い世代と共有できたのは貴重だったし、それだけですごく嬉しかったんですよね。そのことに関しての感謝の意味を込めてのこのエントリーです。

49.Petals To Thorns/D4vd

49位はD4vd。彼の突然の登場も今年の音楽シーンに吹いた新風の一つでしたね。17歳の黒人少年が歌うゴシック・ロック。「Romantic Homicide」のMVでの、殺人で流れたと思しき血と、そこに散乱する薔薇の花びら。美学のつかみ方からして見事なんですよね。こういうセンスを黒人のアーティストから見ることって今までなかったからすごく新鮮でしたね。曲もシューゲイザーとかドリーム・ポップ、キュアーからの影響を感じさせるコード進行使ってて。こういう才能を何の前触れもなくフックアップしたりするからtik tokって本当に侮れないし、ウォッチする価値があるんですよね。そしてこの突然変異がエモ・ラップを手習いしててだんだんエモ・パンク、さらにそのルーツでもあるゴスに行き当たったという、ある種の発明的な感じもドラマがあって面白いと思います。まだ才能だけで荒削りにものを作ってて、まあ、そこが光っているとことでもあるんですけど、これがどう原石が磨かれていくかも楽しみです。


48.Genesis/Peso Pluma

48位はペソ・プルーマ。今年、おそらく世界中の誰もがインターナショナル・ブレイクを予想しなかった音楽がリージョナル・メキシカン、メキシコのトラディショナルな国民歌謡、カントリーではないでしょうか。僕もこれ、特集しましたけどね。その中でもとりわけ、コリドという物語性の強いサブジャンルに、ラッパーと称される人がいてそれで人気になってるんですが、その代表者がペソ・プルーマ。なんと今年のローリング・ストーンのベストソングにも選ばれてしまった全米トップ10、Spotifyグローバル1位の「Ella Baila Sola(彼女は1人で踊ってる)」の大ヒットを受けて2ヶ月後に発売された彼のデビュー・アルバムがこれです。これ、何が面白いかって、世界的に突然売れたからって、有名なセレブなアメリカのアーティストとか、いまどきのレゲトンとかトラップとかのダンス・ミュージックとコラボとかはせず(彼がフィーチャリングでお呼ばれの時はしてますが)、あえてコリドの特徴である流麗なアコースティック・ギターとウッドベースとプッパパプッパパ終始鳴り響いているトロンボーンだけの、超アンプラグド・ミュージックとして機能していることですね。いまどき、ここまで原始的なアナログ音楽を世界ではやらせたこと自体を僕は評価したいですね。

47.Red Moon In Venus/Kali Uchis

47位はカリ・ウチス。この人も今年、ブレイクスルーしましたね。全米アルバム・チャートで3位だったかな、上がってましたね。旧作も含め、Spotifyでのストリームでも人気ある人です。彼女なんですが、コロンビアの家系ゆえにラテン系と言われがちなんですけど、このサード・アルバムで示したのは70sの頃からアメリカで脈々とあるセクシー系ソウル・ミュージックですね。バリー・ホワイトとか、カルト名曲「Pillow Talk」で知られるシルヴィアとか、すごくいまどき珍しいシルキーなソウル・ミュージックですね。彼女はR&Bとラテンの間を行ったり来たりしている印象があるんですけど、R&Bに絞った方が結果良いなと、これを聞いて思いました。彼女自身もどうやら官能キャラが好きなようでして、ロラパルーザ・サンパウロのステージでは、ダンサーを椅子にしてエマニュエル夫人ポーズするは、扇風機当ててtスカートのパンチラするは、さらにベルトのバックル緩めて「私ならいつでも」な感じを演出してて「・・ちょっと、うちの小学生の息子もあなたのこと好きなんだから、おやめなさい!」と、見てて目のやり場に困ってしまったんですけど(笑)、1月に出る次のアルバムのジャケ写がさらにヤバいんです(笑)。この人はこの道を突き進むのが良いかもしれません。


46.Lahai/Sampha

46位はサンファ。イギリスのオルタナティヴな孤高のR&Bシンガーソングライターです。ちょっっと懐かしさも感じたんですよね。僕が年間ベストをこのような形でやり始めたのは2017年のっことだったんですが、その時に確か50位にしたのがこのアルバムだったんですよね。そのアルバムはその年度のマーキュリー・プライズまで受賞したほどのアルバムだったんですけどね。ただ、そこから全く音沙汰なかったのでどうしたものかと思ったら、このセカンドで6年ぶりの復活です。前作のとき、彼はその前の年にソランジュの名作「A Seat At The Table」に参加して注目された中で、イギリスでネオソウルの回答を示したようなアルバムでした。そして今作は、いみじくもこないだ言いましたけど、NewJeansやピンク・パンサレスがやった2023年のモード、ドラムン・ベースや2ステップを今のネオソウルに組み込んで進化させる音になってますね。今の時代にドンピシャな音だし、それに対しての模範解答というか、だから結果としてエントリーさせた、という感じです。ただ、前作よりはやわらなくはなってるものの、サウンドの手法でかっこいいと思って聞かせるものの、曲そのものがどこかとっつきにくいというか、パッとはかっこいいんだけど長く聞けないタイプなところはまだ残ってますね。それが、待望の新作で評判もいいのに前作よりもチャート・アクションが大きく下がってしまった理由のような気はしてます。


45.I Killed Your Dog/L'Rain

45位はL'Rain。アメリカのR&Bの一部勢力にいる、かなりエクスペリメンタルなタイプの女性シンガーソングライターです。今年、欧米の媒体の年間ベスト見てますと、オルタナティブな黒人アーティストをかなりいれてる傾向があります。Billy Woods、Kelela、NoName、Yves Tumor、Amaaraeとかそのあたりなんですけど、悲しいかなことごとく全米アルバム200とか全英100位とかに入らないんですよ。これは待っていたらいつか入るものなのか、あるいはブラック・ミュージックのメインストリームが取り込む意志が全くないのか。ちょっとこの辺が微妙なんですよね。だって何年も前から見る名前もあるから。ただ、このL'Rainに関してはかなりピンときたんですよね。この人も前作はアヴァンギャルドすぎて正直わかんなかったんですけど、今作に関してはソランジュの2019年のアルバム「When I Get Home」を継承するタイプのアルバムというか、70s半ばのスティーヴィー・ワンダーやトッド・ラングレンを思わせるレトロ・フューチャーなシンセサイザー・ミュージックをやってて、そこで惹かれたんですよね。実験の中に甘美な甘さがあるというか。さらに彼女、アラバマ・シェイクスのブリタニー・ハワードの全米ツアーのオープニング・アクトも務めるということで将来が少し開けた感じがするので選んでみました。


44.Take Me Back To Eden/Sleep Token

44位はスリープ・トーケン。毎年1作は何かハードな作品を入れるようにしてるんですけど、今年はこのイギリスの謎の覆面集団って言い方でいいのかな、選んでみました。この人たち、「全英チャートでトップ10入りそう」ってタイミングで聞いて、プログレ・メタルなんだけど、デフトーンズみたいなハードに揺らぐ瞬間とか、曲によってはドリームポップあたりにも通じるウェットなメロディ・センスがいいなあと思ってたらなんか全米でもトップ20に入って、さらに言えば収録曲のほとんどで1000万ストリーム超えてるくらい人気あることも知って。それでいろいろ調べたら、今、彼らの他にもバッド・オーメンズ、スピリットボックスと並んで、メタル界のネクストブレイク候補三羽ガラスみたいな感じで捉えられてるんですってね。確かにみんな、メタルコア的なものが根っこにありつつ、かなりメロディックというところで共通点ありますけど、いずれも既に楽曲のストリーム数が草の根的に静かにあがってて、次にアルバムの出るタイミングで一気にいきそうな雰囲気持ってるんですよね。ちょっとこの流れは無視できないなあと感じ始めています。ライブもちょっと、仮に機会があるなら見てみたいですね。


43.Dogsbody/Model/Actriz

43位はモデル/アクトリス。今年は久々にアメリカの新人バンドに今後の期待がもてそうな有望株が出てきた一年だったように思います。そういうバンドを今年はここでも入れてますけど、ニューヨークを拠点とするこの人たちもそういうバンドですね。こないだ惜しくも入らなかったものを取り上げたときに、「Nation Of Languageとデペッシュ・モードは入れようとして迷った」という話をしましたが、これに負けたんです。外れた2つは80s初頭からの超正統派シンセポップを展開してる人たちだと思うんですけど、こっちはもっと攻撃的な、80s後半からのインダストリアル・ロックに近い攻撃性というか。それこそミニストリーとか初期ナイン・インチ・ネールズに近い感触があって、「今どきこの鋭角的な攻撃性は珍しいな」と思って気になった次第です。加えてこの人たち、かなり濃厚なLGBT系の人たちでして、ライブの動画見てもマスターシュはやしたリードシンガーがチェーンとか網とかしてかなり濃厚な挑発で歌ってたりしてますね。その意味でアングラで終わる可能性もなきにしもあらずなんですけど、危うい中にキャッチーなポップさが見てとれるので、その部分をどう伸ばして行くかにかかってるような気がしてます。


42.Angels & Queens/Gabriels

42位はガブリエルズ。ここ数年、去年ヒットしたスティーヴ・レイシーなんかもそうですけど、ロック的な表現をする黒人アーティストが増えてて、それを象徴するものをランクインさせたかったんですね。そこで候補になったのがブラック・プーマスとこのガブリエルズだったんですが、かなりストレートにクラシック・ロック的なアプローチを真正面からしてくるプーマスよりは、ゴスペルやブルースなどどす黒い表現力をもちながらもクラブ・サウンド的編集能力のあるガブリエルズに軍配をあげてみました。このガブリエルズはプロデューサー的役割のイギリス白人2人にアメリカのディープな歌い回しする黒人シンガー一人の組み合わせなんですが、先にイギリスで評価されてもう去年のうちから話題でしたね。実はこれは去年から引き続いてるEPシリーズを足して二枚にしたものなんですけど、昨年に「EPだしなあ」と躊躇して入れなかった経緯もあるので、それも加味した次第です。ここのシンガーのジェイコブ・ラスクは経歴が面白い人で、なんとケンドリック・ラマーとLAのコンプトンの高校で同級生。そしてキャリアで注目されたのはアメリカン・アイドルのコンテスタントとしてなんですよね。僕、彼のこと忘れてたんですけど確かに出てて、ちょっとユニセクシャルな高い声とどろかせて歌ってました。このあたりもイギリス好みしてプロデューサー二人のインスピレーションになったのかなと思います。次のフル・アルバムでの更なる飛躍に期待です。


41.Rockstar/Dolly Parton

そして41位はドリー・パートン。これつい先日も取り上げたばかりなんですが、カントリーの女王として50年ほど君臨してる彼女が77歳にして作ったロック・アルバムです。きっかけは去年、ロックンロール・ホール・オブ・フェームに選ばれたことで、刺激されちゃったんでしょうね。そこで今回、大半の曲でロック系のアーティストとデュエットしてるんですけど、人選が素晴らしい。特に良いのはスティーヴィー・ニックス、アン・ウイルソン、デボラ・ハリー、パット・ベネター、ジョーン・ジェットと、既にロックの殿堂入りしていた女性ロックシンガーのパイオニアたちですね。彼女たちの切り開いたものを心の底からリスペクトしつつ、彼女たちとヴォーカルでサシで勝負。衰え知らずの、少しかすれ気味のハイトーン・ヴォイスをこれでもかとばかりに張り切って繰り出しまくっています。男性陣もかなり濃い面子が並んでいますけれど一番驚くのはメタル・ゴッドことジューダス・プリーストのロブ・ハルフォード!こんなの数年前だったら全く考えつきもしないコラボですよね。このアルバムは英米でトップ5に入るヒットになって、彼女の歴代の作品の中で一番売れてるそうです。このアルバム音楽的に特に変わったことはやっていないし、元は物語性のある歌詞のストーリーでレジェンドになった彼女の一番の特質が出た作品でこそ決してありません。しかしパフォーマーとしての並外れた実力と自らの不屈の歌唱そのもので多くの人を文字通りエンパワーするそのスピリットこそを僕は買いたいですね。

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