見出し画像

女の子たちがガールズ・ロックをシーンの中心に押し上げはじめた

どうも。

昨日のKポップのインディ・ロック化、反応大きくて嬉しいです。

昨日の話はハリー・スタイルズと絡む話ではありましたが、実は今日も少し絡む話でもあるんです。そのことは後半に登場しますが、今日はこういう話です。

今週の世界のヒットチャートで最もセンセーショナルな存在と言えば


このWet Leg。イギリスはワイト島出身のリアンとヘスターの2人の女性のインディ・ロック・デュオなんですが、もう去年から名前はちらほら聞いてて、今年も早々に「ブレイク候補」と目されていたんですが、すごいんです、反響。イギリスとオーストラリアでデビュー・アルバムが初登場1位になった。それだけでもすごいことなんですけど、なんとアメリカで14位ですよ!イギリスのこのテのインディ・ギターバンドがアメリカで大衆的に受けるなんてことはなかなかないことなんですよ!

 これを聞いて僕は

ついにアメリカでガールズ・ロックがシーンの中心に向かいつつある!

そう思ってる次第です。

その予兆ならすでにあったことは、僕はこのブログで何度も書き続けています。今年に入ってもミツキが全米5位、ビッグ・シーフが31位まで上昇。何年か前までだったらこれ、考えられない状況だったんですよ。それが、いきなりイギリスの女性インディバンドがこの順位なわけじゃないですか。こうした人気を支えるシーンそのものの底上げを感じずに入られません。

 特にWet Legの場合、自虐ギャグを連発する、新進の、ちょっと苦労してきてブレイクを果たした女性のお笑いコンビみたいな雰囲気濃厚なので、キャラクターそのものの成功もあるんだろうと思うんですよね。でも、だからと言って、それが何もないところからいきなり成功するなんてことはやはり考えにくいと思うわけです。

「この人気は何が下地になっているんだろう」。そう考えた時に真っ先に思いついたのが、これでした。

https://www.youtube.com/watch?v=-VVHUq4tOzg

オリヴィア・ロドリゴのディズニー・プラスで配信されたドキュメンタリー「driving home 2 you」ですね。

これはオリヴィアが減少的ヒットを記録したデビュー・アルバム「Sour」の制作の裏側を語るもの。正直、このドキュメンタリーの主題そのものはあんまり面白くなかったんですけど、

オリヴィアってバックバンドが全員女性メンバーなんですよ!しかも、ライブでの曲はアルバムよりもかなりハード目に演奏するんですよね。彼女をロックに入れることに違和感覚えるような人もいたようですけど、しっかりロックなんですよ。

 そして、

このMTVのVMAの時のパフォーマンスの映像見ても明らかなんですけど、女の子のワーキャーがすごいんです!映像で映し出されるのも女の子ばかりです!

 そう!これで分かるように、どうも今のアメリカ、女の子が、女の子のやるロックに強い興味を示し始めているようなんですよね。

 そして、それと同じことを指摘する声が先週末に相次ぎました。

ビリー・アイリッシュやフィービー・ブリッジャーズ。彼女たちのコーチェラでのライブを見た人たちから、「女の子たちからの歓声が凄まじかった」という声を聞いてるんですよね。

 やっぱり、これ偶然じゃない気がするんですよね。

というのも、コーチェラ以外でも、僕が個人的に動画漁ってても

このスネイル・メイルの最新の全米ツアーの映像見た時、「エッ、こんなに女の子がキャーキャーいう感じなの」とびっくりしましたからね。

 で、しかも最近、彼女くらいの年齢の大ブレイク一歩手前の女の子ロッカー、増えてるじゃないですか。コーチェラにもガール・イン・レッド、ビーバドゥービーの出演も実際にありましたからね。

 こんな風に、

女性のロック・アーティストが層になって見えやすくなってきているところがあるのだと思います。

 それをさらに裏付けることがあるんですよ。

コートニー・バーネットがこれから行うツアー、女性インディ・ロッカーばかりを集めたフェスティバル・ツアー形式なんですよ。メンバーがすごい。スリーター・キニー、ジャパニーズ・ブレックファスト、ルーシー・デイカス、ワクサハッチー。これだけでもかなりすごいですが、フェイ・ウェブスター、インディゴ・デ・ソウザといった注目株までも呼んだりして。

さらに

僕のツイートで恐縮ですが、ここでもハリー・スタイルズが最近の女性のインディ・ロック・アーティストの台頭にすごく敏感な行為を行ってまして。彼のワールドツアー、ジェニー・ルイス、ミツキ、アーロ・パークス、ウルフ・アリス、Koffee、WetLegが前座ですよ!しかも、ただ単に女性ってだけじゃなく、生演奏であることが当たり前の前提としてあるから、本格的な音楽家としての資質をちゃんと持った女性アーティストをしっかり評価した結果のものになった感じがするんですよね。これなんて、普段、女性の楽器演奏者としての実力に過小評価の苛立ちを感じている女性アーティストには朗報だし、そこを底上げする意味で、ハリーの行動、長い目で見てかなり感謝されていくことになると思いますよ。

 では、一体全体、「なぜ今、女性ロッカーがこうやってシーンで台頭しつつあるのか」ですけど、僕の推論では2つがあると思っています。

 一つは、ロックシーンでかなり長いこと、「スター性のある男性アーティストが枯渇していた」ことですね。やっぱりそれは、何度も言いますけど、ピッチフォークの台頭の時代、2010年前後くらいですけど、スター願望のなさそうな、ナードっぽいタイプのバンドばっかり推しましたからね。成功したバンドでもヴァンパイア・ウィークエンドとかBon Iver、フリート・フォクシーズとか出たのは良いものの、コーチェラでヘッドライナーとるようなバンドは出なかった。すぐれたバンドではあったけど、「シーンを大衆的に牽引していくようなバンドが出なかった」。なんか、悪い意味での「カート・コベイン・シンドローム」というか、「もし、自分達が売れて音楽が楽しめなくなったらどうしよう」みたいな、「心配しなくても、売れるわけねーよ」みたいな人たちが多かったというか。

 その意味では、今はやっぱり「女の子」がロックのシーンの主役になっていくべきなんだと思いますよ。まだロック史において、その才能がフルに生かされてきたわけじゃないし、未知の可能性がまだ開ける余地があると思うんですよね。

 もう一つは、「ロックをする」という行為のフェミニズム性の強さですよね。昨今、女性ポップスターが「エンパワメント」といってメッセージ性の強い歌、歌ったりしますけど、女の子たちの中には「歌詞はいいこと言ってるかもしれないけど、その音楽が私の価値観を代弁しない」と思ってる人がかなりの数いるということだし、その層が可視化されるべきタイミングに差し掛かってるんだと思います。「自分で曲を作って、自分で楽器弾いて歌うこと」に音楽のリアリティを感じる人も多いということなんだと思いますね。

 ここからまだいろいろな展開がありそうな女性ロックの世界だと思います。


















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?