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「涙の女王」を見終わった〜Kドラマ屈指の人気作の見どころと、「愛の不時着」との共通点は?

どうも。

では、火曜日から始まっていましたロマンティック・コメディ強化週間、今回がラストになります。締めを飾るのは、やはりこれでしょう!

はい。もう、日本では2週間前に終わってますけど、ブラジルではこの土日でラストでした。Kドラマ「涙の女王」ですね。

このドラマですけど、

これを思い出すたびにパンデミックの日々を思い出さずにはいられません。2020年、当時、韓国のケーブルテレビ上での最大視聴率を記録していた名作「愛の不時着」、あのドラマの脚本家パク・ジウンの、まさに不時着以来となる新作。しかも主演が視聴率男、本当に人気ありますキム・スヒョンの主演ということで始まる前からかなりの注目を集めていました。

これ、始まってからずっと視聴率高かったんですけど、最終回では「愛の不時着」を上回る放送元のTvNの番組での最高視聴率を記録。もちろん今年に入っての最大人気のKドラマとなっています。

これはNetflixで世界的に放映されてまして、2週間遅れで僕も始まった週から見てましたけど、毎週の楽しみでしたね。Kドラマ、ブラジル、というか世界的にですけど、不時着とか梨泰院のブームの時にはそこまででもなかったんですよね。それが人気になったのは、僕の肌感覚だと「海街チャチャチャ」かな、そこまですごかったドラマとは思わなかったんですけど、あのあたりからNetflixのトップ10入るようになって、「イカゲーム」で爆発ってとこかな。そういうこともあり、ブラジルのNetflixでもトップ10入るKドラマは増えてて、「涙の女王」も常時トップ10入ってましたよ。

「涙の女王」ですけど、僕はこれ

大満足でしたよ!


そのことについて語っていこうと思います。

見てない方ももちろん少なくないと思いますのであらすじを軽く説明しておきますと

話は、郊外のど田舎出身で、韓国の百貨店で財をなした大財閥クイーンズ・グループの令嬢ホン・ ヘインと結婚していたペク・ヒョヌが、めんどくさくてとっても変なホン家に嫌気がさし離婚を考えるところからスタート。ところがヒョヌが離婚を切り出そうとしたタイミングでヘインが余命少ない脳腫瘍に侵されていることを告白。そこから、ヒョヌとヘインが愛を猛烈に取り戻していく・・・という話です。

ただ、これ、話がそれだけで済む問題では全くないのでややこしいのですが、魅力をかいつまんでいくと

①女性たちにとっての崇高な理想のようなヒョヌの殉愛

このドラマにとって、最大の魅力が2つあるとしちゃら、1つはヒョヌの献身的な純愛ぶりですね。最初は、すっかり心を閉ざしていたヘインやホン一族に愛想をつかし、ヘインの発病発覚後も当初は「離婚をせずに別れることができる」と言う、大江健三郎の小説みたいな利己心が働いたりもするんですけど、その後、ヘインへのストレートな想いが全てを上回って、そこに全てを尽くす彼の無償の愛がことごとく胸を打って行くことになります。

一番良いのは、彼が、ヘインがどんなに理不尽なこと言っても怒ることなく、冷静に落ち着いて対処することなんですよね。元々彼、そういうタイプの役が目立つといえば目立つんですけど、そこのところが彼の人気にも繋がってるんだと思いますけど、その真骨頂とも言える役だと思います。

 切れ長の目と細身と温厚さ、そこにこのドラマではソウル大学(Kドラマでやたら使われる)行った秀才で、かつ実はボクシングで鍛えてた、っていう、これ好きにならなかったらおかしいだろ(笑)ってくらい、女性目線で憧れのキャラクター。これをスヒョンほど説得力を持って演じられる人、いないですよね。

②ややこしくてたまらないヘインが話を面白く


あとはやはりヘインですよね。令嬢育ちらしいわがまま、すぐにキレるキャラなんですけど、どこか幼い頃からそう振舞わないといけない立場に追い込まれて育ったところがあるというか、直感的に言動の最初が「自分が本心で思っていないこと」の方がどうしても先に出てしまい、本音を隠しているところがある。でも、病を体験したことによって、自分でも気がついていなかった、本当は人を思いやる優しい心があったことに彼女自身が気がついていく。

だけど、そのヘインの言動そのものが読みにくいから、それが見ている側からしても「どう出るんだろう」と話を読みにくくしてて、そこが面白いんですよね。これは「愛の不時着」でのヒロイン、セリにはなかったことです。

これを演じているキム・ジウォン、僕が彼女のドラマを見たのはこれが初めてでしたけど、この複雑で難しい役をこなせたことで、今後、主演クラスががっつり確保されたと思います。

③韓国格差社会が可能にする凶悪ヴィレン(ネタバレあり)


そして、Kドラマといえば、「とんでもない悪役」がいつも浮上しますが、今回も期待を裏切りません。

このウンソンですね。最初はヒョヌの恋敵くらいの軽い設定なのかなと思いきや、グリード(greed)と言う言葉がしっくり当てはまるくらいの極悪野郎。その下地にあるのは、極貧だった少年だった頃から一方的に片思いを続けるヘインへの思い、そして人生の一発逆転を狙ったホン家の略奪という、富裕者への強い妬みとねじれかつこじれた愛ゆえの結果というのもなかなか怖いです。

ただ、そこだけが怖いのではなく、このドラマには真のヴィレンがいます。それが

このモ・スリですね。クイーンズの会長の愛人に30年居座り、会長の子供達にとっては目の上のコブ的存在。ただ、ストーリーの途中までは善人ぶりを装おってきたので謎の人物のままだったのですが、かなりストーリーが進んだ段階で、彼女は実はウンソンの実母で、CEOの遺産相続が狙えそうなタイミグでホン家とクイーンズの乗っ取りを狙ってたという、とんでもないヤツ。これも、話がヒョヌとヘインの純愛だけに終わらない、強烈な見せ場となっていたのも面白かったですね。

ただ、「愛人との生活を選んでの子供との別居」、という異常な生活形態がウンソンの性格形成に大きな影を落とし、それが親子関係を悪くしていたことの描写まで、このドラマ、かなりうまかったですね。

それから

上の親子ほどひどくはないんですが、このヘインの母親も途中まではかなり嫌な空気出す人です。彼女とヘインの仲が、ヘインの幼少期に彼女の兄が溺死したトラブルがあって、それをヘインのせいだと思い込んでいた彼女の偏見にあったわけですが、この溺死エピソードがかなり後々まで話の鍵を握ってもきます。

④愛すべき人たちの同時進行のロマンス


「愛の不時着」が良かったとこって、主人公2人だけでなく、ドラマ中で愛すべき他のカップルのロマンスも同時にしっかり映すことでしたけど、このドラマでもそれは全く同様でした。

一つはスチョル(カク・ドンヨン)と妻ダヘ(イ・ジュビン)とのそれですね。ヘインの母からの溺愛と、ストロング・キャラの姉ヘインに押され、「人は良いけど頭が弱い弟キャラ」のスチョル、これ演じたカク・ドンヨン、「ヴィンチェンツォ」でも似た役演じてましたけど(笑)。でも、頭は鈍感だしビジネスの才能もないし喧嘩も弱いスチョルだけど、人のことを思いやる力だけは誰よりもある、なんとも憎めないキャラです。そんな彼は、モ・スリが仕込んだスパイとして結婚したダヘに騙されるんですけど、自分のことを悪人として疑うことなど全くせず、生まれたばかりの赤ちゃんを自分以上にひたすら愛すスチョルに心がだんだんほだされ罪悪感に苛まれていく。愛の一つの浄化作用をこの二人が体現してくれていたのもポジティヴだったと思います。

それから

クイーンズのCEOの娘、つまりヘインの叔母さんのボムジャ(キム・ジョンナン)。僕はこのドラマで彼女が一番好きなキャラなんですけど、モ・スリの不審さを劇中で一番早くから疑っていた人物です。言動のエキセントリックな過激さから最初は彼女の方がおかしいかのようにも描かれるんですが、時とともに彼女の誠実さが理解されていくのも、このドラマの良いところです。

そんな彼女も、ドラマ終盤で、ヒョヌの出身の郊外に暮らす男性と恋仲に落ちるんですけど、これが

これが「愛の不時着」見てた人には嬉しい共演だったんですよね。ボムジャを演じたキム・ジョンナン、不時着での北朝鮮の主婦連のリーダーだった人です。で、ここで彼女が恋に落ちる男性はキム・ヨンミン。不時着で盗聴をやってたんだけどジョンヒョクとセリを助ける側に転じる、あのドラマの鍵を握っていた別名「耳野郎」。不時着北朝鮮チームからロマンス生まれたのは、あのドラマからの連続性で見るとなんか嬉しかったですね(笑)。

⑤相変わらず冴えてる村人描写


これは何もパク・ジウンのドラマだけでなくKドラマ全体のお家芸でもあるんですけど、「村の人々」のハートウォーミングな描写はやっぱりほっこりしますね。そこのシーンになると、もれなくコメディ濃度が急上昇するので(笑)。

Kドラマの特色として「都会=冷たい」「田舎=噂好きだけど、村人全員優しい」みたいな図式的な描き方なんですけど、パク・ジウンの脚本はそれを最大限に生かしてるんですよね。

特にヒョヌの、しっかり者のお母さんがいいですね。一家で最も頼れる、気丈で自分の生き方に自信を持った誇り高き人物。ヒョヌの人徳の血筋がここからきてるような人です。

あと、まるで友達みたいなヒョヌのお父さん、この人、一昨年のヒットドラマでもウヨンウ弁護士のお父さんやってた人でしたけど、そしてお兄さんお姉さんですね。お兄さんはヒョヌが実は喧嘩めちゃくちゃ強いことの伏線となるボクシング・ジムの経営者。お姉さんは、村のおばさんたちが何もせずに1日中たむろする美容院の経営者。アイス・キューブの「バーバーショプ」でも美容院が町の人たちのコミュニケーションの場になってましたけど、それはどうやら韓国でも同様のようです。

・・と、ここまで話すと、このドラマの話の内容は大体把握できたことになりますがそこに

ミステリアスな存在のグレースですね。シチュエーションによって、スリの味方にもヒョヌの味方にもなりうる。この人

かの「イカゲーム」で、粗暴で迷惑かけまくる困った女性参加者ミニョを演じたキム・ジュリョンが演じました。

ここで話を終えても良いのです

が!

今回のドラマ、若干、話に違和感も感じたのも確かなので、そこも2点だけあげておきましょう。

❶CEOの役者が若すぎる


このクイーンズのCEOの役者さん、この人が、この役にはいくらなんでも若すぎる。この人、キム・ガプスと言って、僕も「賢い医師生活」の理事長さんで知ってましたけど、韓国の大物俳優なんですね。

ただ、いくら大物俳優だからといって、80歳の役を67歳が演じるのはいくらなんでも若すぎです。

このCEOはヘインのおじいさんということにもなるんですけど、ヘインの父親役の俳優さんの実年齢が60歳で、実生活で7歳しか違わない人が親子。しかも、このお父さん役の俳優が老けて見える人なので、見ててちょっと困惑するところがありました。ぶっちゃけ兄弟にしか見えなかったので(笑)。

❷ヘインの病気って存在するのか?


これも謎でしたね。あるんですかね、「余命短い脳腫瘍で、治る代償に記憶だけなくす」なんていうのは(笑)。しかも、そのなくす記憶も言葉はしっかりしてて、字も読めたりするという(笑)。

これに関しては、そのことを医師が告げた13話くらいから「おいおい」とは思いましたが、その後の半ば強引な話の盛り上げと、過去にモチーフとしてチラつかせたものを具に解明していくことでその疑問へ焦点を当てさせなかったことで強引に乗り切った感がありましたけど(笑)、全体に楽しめたので良しとしますね。

ただ、この2点ゆえに、僕の中では「不時着」を超えたとは言い難かったのも事実です。

それでもこれ、十分力作としてはお勧めできるし、パク・ジウンの次作の脚本ドラマも引き続いて見たいと思っています。











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