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沢田太陽の2021年間ベストアルバム 50-41位

どうも。

では、いよいよ、はじめましょう。毎年恒例、沢田太陽の年間ベスト・アルバム、今年は2021年。例年と同じく、50位から1位まで、計5回にわけで発表します。

第1回は50位から41位ですが、このようになりました!

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はい。では、早速50位から行きたいと思います。

50.Happier Than Ever/Billie Eilish

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50位はビリー・アイリッシュのセカンド・アルバム「Happier Than Ever」。このセカンド、高く評価する人もいますが、この順位でも明らかなように僕自身は本音言えば不満です。まだ、今年でやっと20歳というのに落ち着きすぎの作風で若さを感じないから。若いんだから、もっと、わかりやすい曲でグイグイ攻めて欲しかったんですけどね。こういう作品を今のうちから作っちゃうと、2作先には「初登場順位だけ1位で、以降はすぐにランクダウン」という、昨今のインディの人気アーティストと変わらなくなりそうで危惧してます。そういうアーティストと違う何かがあると思って期待してるわけですからね。ただ、それでも前作をあれだけ現象ヒットさせ、僕も年間で3位に選んだ人です。実際、完成度そのものも高いわけだし、圏外にするのも違うと思ったので、ギリギリここにとどめました。ただ、タイトル曲はじめ、好きな曲も決して少なくはないです。

49.Flock/Jane Weaver

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49位はイギリスの女性シンガーソングライター、ジェーン・ウィーヴァー。この人は箱庭な感じのサイケデリックかつソフィスティケイトされた職人的ポップセンスが光る人ですね。「個室版テイム・インパーラ」、もしくは「メロディのよりわかりやすいステレオラブ」というか。こういう形容にピンと来るポップ・フリークは絶対に聞いた方がいい人です。あと、そういう通受けする音楽性で、彼女は49歳という年齢で初ブレイク、はじめての全英トップ30に入ったことも特筆すべきことです。いまどき80歳近くになっても傑作出す人はいますけど、女性だとまだかなり高めの年齢ですからね。これに敬意を表して、あえて49位にさせていただきました。まだ、これからが全盛期だと信じてます。

48.TRPP/TRPP

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48位はTRPP。ほとんどの人が聞きなれないかもしれませんが、韓国のシューゲイザー・バンドです。今年もアメリカではKポップ・グループのトップ10入りが話題を呼び続けましたが、その一方で「韓国シューゲイザー」の動きもかなり注目された年です。そのキッカケとなったのは宅録アーティストのパランノウルのアルバムがネットの音楽マニアで話題を呼んだことでした。ただ僕自身はライブ絶対主義的なところがあるので「ライブを見ないでの評価」には否定的です。そんな僕には、ライブも実際に本格的にやってて、曲がテレビドラマに使われたTRPPの方が魅力的です。このアルバムからの「Yeah」という曲が、「梨泰院クラス」を放送したJTBCのドラマでネットフリックスでも放送中の「調査官ク・ギョンイ」に使われたことで気になったんですけど、このバンド、シューゲイザーのみならずガレージ・ロックからインディ・ダンスまで器用にこなせるんですよね。その意味でもすごく伸びしろを感じます。またJTBCのドラマがこのほかにも、同じくシューゲイザー・バンドのSay Sue Meを別のドラマの主題歌にするなど、Kインディの盛り上げを支援する動きを見せていることにも注目です。

47.In These Silent Days/Brandi Carlile

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47位はブランディ・カーライル。現在のカントリー界でもっとも批評的な評価の高い女性シンガーソングライターのひとり。グラミー賞が猛プッシュしてる人のひとりです。ただ、カントリーというよりはどっちかというと、フォークやブルース、カントリー、ソウルが下地にあるルーツ・ロックで、オープンリー・レズビアンでもあるので、むしろ「よりモダンになったメリッサ・エスリッジ」の方がニュアンスは近いかな。ただ、ハスキーである以上の声の表現に乏しいエスリッジよりソウルっぽさや甘さもブランディは持ち合わせているし、加えて現在のオルタナ。カントリー最大の売れっ子プロデューサー、デイヴ・カッブによる、ブルーズ・ハードロックを削ぎ落としたシャープなギター・サウンドできっちりまとめてるとこがうまいです。そういう職人芸的な良さがこのアルバムには表れてます。

46.How Beautiful Life Can Be/The Lathums

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46位はラザムス。いまだに日本語表記知らないんですけど、放送上、これが一番発音が近いので、これでいきます。今年イギリスでは新人バンド3組が初登場1位を記録しました。それがザ・スナッフ、U2のボノの息子が率いるインヘイラー、そしてこのラザムス。彼らはウィガンっていう、ザ・ヴァーヴの出身でもあるマンチェスターとリヴァプールの間にある町の出身で、そこの専門学校に通ってる、まだ20歳そこそこくらいの若いバンドなんでうよね。サウンドはその昔のスミスとかラーズとか、厳密に言えば近いんですけど、あのタイプの線の細いアルペジオ・タイプのギターを主体とした懐かしいタイプのギタポです。まだ決定的な個性派つかんではいませんが、今言った3組の中では曲の持つ雰囲気とか世界観が一番よく、すでにかなりの熱心な固定ファンつかんでる感じも気に入ってます。小太りでナード・メガネという、インパクトあるルックスのフロントマン、アレックス・ムーアの個人色が今後どこまで強くなるかにかかってます。

45.De Primeiro/Marina Sena

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45位は、これはなじみのないアーティストかもしれません。マリーナ・セナ。彼女はブラジルのアーティストなんですけど、2021年のブラジルでもっとも評判良かったアルバム、間違いなくこれでしょうね。いろんなところでバズ聞いて、実際かなりヒットしてましたからね。今年25歳の彼女は以前いたバンドの頃から、一部でそこそこ知られてたんですけど、今回のソロ・デビューで才能が開花しましたね。ここで彼女が披露してるのは、サンバ・ベースの、70sのブラジル以降伝統的なMPBサウンドに一瞬似て聞こえるんですけど、それよりはどちらかというとアコースティックなネオソウルに近く、さらにそこにレゲエの影響を強く出した、グルーヴィーで温かみのある音楽性になってますね。そこにちょっと鼻にかかったソウルフルな彼女の歌声が加わって。ちょっとイメージとしては、初期のネリー・フルタードに近い感じですね。現代的なんだけど、いい意味での民族的な土着性があって、かつセクシーというか。今後、世界的に注目されないかな。

44.Seventeen Going  Under/Sam Fender

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44位はサム・フェンダーのセカンド・アルバムですね。僕は彼が2019年にファースト・アルバムを出した時、「かなりの大物になる気がする」と特集組んでるんですけど、その予感は当たってたみたいで、今回のアルバム、イギリスのSpotifyのトップ100に発売週に3曲入るという、いまどきのロックではなかなかないことやった上に、タイトル曲、全英シングル・チャートのトップ10、まさに今、入ってますからね。インディ・ロックと、エド・シーランとかルイス・キャパルディみたいな「男性ソロ・シンガー」のファンの両取り込みが予想通りにできてる感じですね。今回のアルバムなんですが、サム自身、「よりアメリカを意識した」といい、フォークとスプリングスティーンへの接近を強めているんですが、デビューの時から似てることをかなり指摘され続けてるキラーズもそっち方向に進んでいるので、なおのこと似てしまってます(笑)。だけど、それは悪い意味だと僕は思ってません。「しっかりリスペクトする存在があって、キミもスケールの大きなスタジアム・アンセムが書ける」という意味にとっています。まだ若い層にそういうスター性をもったロックの担い手が少ないのでその分、期待してます。

43.Life Of A Don/Don Toliver

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43位はドン・トリヴァー。ひょっとしたら、僕がこうしたトラップのアーティストのアルバムを入れるのはこれが最後になったりするかもしれません。というのはもう、たいがいで同じような音を大量にヒップホップ業界が作るのに飽き飽きでね。「いい加減、同じようなビートの使い回し、何年も聞いてて飽きないのか」とも思うんですけど、このトラヴィス・スコットの秘蔵っ子でもある彼に関しては、もう完全に「ラップ調の歌」をすごく完成度高く、その良さを生かしながら「歌」に昇華できてますね。ロディ・リッチあたりも似た傾向ではあるんですけど、よりシンガーとしての説得力がトリヴァーにはあると思います。そして、トラップのビートは使ってはいるんですけど、今回のアルバム聞いていて、より90sのR&Bの、よりシンプルなダウンテンポに近づいている感じがして、「トラップの次」の方向性まで見えてる感じがするんですよね。兄貴分のトラヴィスも、トラップの進化のさせ方、非常に上手い人ではあるんですが、彼らの今後を見たい気がしてます。


42.Eternal Blue/Spiritbox

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42位はスピリットボックス。これは今年の中で一番の意外な掘り出し物でしたね、僕にとっては。カナダの紅一点のメロディック・デスメタルのトリオなんて、僕から全くイメージないでしょ(笑)。でも、これ、不思議とハマったんですよ。その伏線として、ここ最近の女性がロックの担い手になってる現象から考えて、「今、エヴァネッセンスが発展したみたいなことやるバンドが出てきたら、案外、オイシイかもな」と思って今年出たエヴァネッセンスの新作までチェック入れたりしてたんです。ただ、本家よりも、やっぱりその進化系の方が面白かったですね。コートニー・ラプランテという人はデス声も随所に使うんですけど、メロディ部分を歌う時の声はアルトのせつない系のセクシーな美声。そこに加えて男性陣の作るエレクトロ部分の完成度が、メタル系の人のなんちゃってな感じじゃなくて、かなり本格的なプロっぽいそれなんですよね。で、曲はメロディを主体にしてすごく丁寧に書けてるし。コアな一部の層で騒がれていたはずなのに、蓋開けてみればデビュー作で英米ともにトップ20に入ったのも納得です。なんか今後大きくなりそうな気がしてます。

41.One Foot In Front Of The Other/Griff

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そして今日のラスト、41位はグリフ。BBCは年の初めに「Sound Of」という、新人ブレイク予想の企画をやるんですけど、その2021年版のトップ5に入ったアーティストで、21年内に唯一成功したのが彼女でした。シングル「Black Hole」がかなりロングヒットして、このミックステープもトップ10に入りましたからね。グリフは中国系と黒人のあいだに生まれた2000年生まれの女の子。ということもあり、アジアと黒人をミックスさせた独特なファッション・センスも話題なんですけど、音楽の方もR&Bに強い軸足を置きながらも、近年のインディ・ポップともシンクロできるようなメロディが書けて。しかも、曲の運びがすごく王道で、Aメロ、Bメロ、サビがすごくはっきりした、わかりやすい簡潔な曲を書けて。こういう職人的なソングライティング、すごく僕のツボなんですよね。前日の投稿で、ガール・イン・レッドが同世代の子に負けてトップ50に入れなかったと書きましたが、この子に負けました。ミックステープじゃなくアルバム名義だったらもっと曲も多く充実した気もするのでさらに上位に入った気がしますが、今後のお楽しみですね。

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