見出し画像

オリヴィア・ロドリゴが今もっとも絶妙に理想的なロックンロール・ガールである理由

どうも。

この話をそろそろしないといけないですよね。

セカンド・アルバム「Guts」をリリースしたオリヴィア・ロドリゴ。すっごい売れ方、世界でしてますけど、彼女について語ることにしましょう・

 オリヴィアなんですけど、僕のTLでも、もうすっかり「ロック」で認知されてますね。僕の知ってる人たちがゆえにそうなのかもしれないですけど、「ポップの文脈で彼女が好きな人」というのはあんまり見かけないんですよ。

フェスに行くようなインディ・ロックのファン


こういうタイプの人であればあるほど、今回のアルバム、刺さってる印象ですね。

面白いですよね。もちろん今回のアルバムで、世界のインディ系のメディアはすごく盛り上がってはいるんですけど、僕の住んでるとこも含め、欧米ではまだまだポップでのファン層が目立つし、その人たちが「なぜオリヴィアはこんなに評論家みたいな人たちから寵愛されるのだ」とわかってない人が多いんですよね。これはすごい面白いところです。

今回は、このオリヴィアがいかに特異なブレイクを成し遂げ、ポップなところから、うるさ型の音楽ファンまで味方につけて盛り上がっているか。これについて語っていきたいと思います。

①ディズニーのアイドルに一人、混ざるはずがない子が混ざってた


 まず、ここが非常に大きいんです。

彼女に関しては

一昨年の8月にも書いた記事なんですけど、本来、売る側でさえ予想していなかった、行うはずのなかったロック路線で、マーケッティングがいい具合に外れてウケてしまった面白さがあります。

だってデビュー・アルバムの1曲目がいきなりリフ全開のロックンロールですよ。しかもかなりインディっぽい。比較対象が70年代のエルヴィス・コステロだったという(笑)。これ、納品した時、レコード会社の人、驚いたと思うんですよね。

 こういうのが、アルバムが出てからですよね。だんだん知られるようになってきて、それで爆発的人気が加速してしまった側面がありました。

 これって、これまでのディズニーのアイドルでは全く異例のことでして。だって

マイリーなんて、こんな感じだったわけだし

セレーナ・ゴメスやデミ・ロバート、ジョナス・ブラザーズもこんな感じだったわけでしょ。

ここにインディのイの字もない、もういかにもキッズ向けのシュガー・コーティングしたようなポップですよね。

 オリヴィアは、デビューした年齢が18歳でしたけど、その意味で子供マーケッティングっぽさが全くなかったんですよね。

②自然にインディ趣味だったから、ロックやるのに気負いがなかった

 
オリヴィアの場合、「がんばって表現しよう」というのではなく、本人に自然にロック的な趣味が染み付いていて、意識しなくともロックが表現できてたんですよね。これ、すごく今日のインディロック的なんですよ。

日本でもそうでしょ?かつてロックって、すごくイキってやるもので、80年代なんかはクラスで目立ちたがりの人たち、体育とかも得意そうな人たちがやってたイメージだったんですけど、90sになるとそれが半々、00sなると、もう文科系のイメージで、どっちかというとクラスで地味そうな人の方がバンドとかやってる印象があった。まあ、ロキノン系とかそんな感じですよね。

 これって別に日本に限ったことじゃなく、イギリスとかアメリカでも同じような感じにロックって移行してきてました。だからカッコつけてロックするのがむしろ寒くてダサい感じの時代になってた気がするんですよね。

ただ、マイリーにせよ、デミにせよ、ポップに作られすぎたイメージで売りすぎちゃったから、本人たちが成長するにしたがってそのイメージを嫌うようになり、「本物に見られたい」との思いからロックに向かって行ったんですけど、やっぱ、引きずってるものあるから、なんか痛々しく見えちゃったんですよね。マイリーはものすごく努力して乗り越えつつあるかなと思うんですけど、デミはまだまだ格闘中な感じもあって。それでも、年取ったからって、捨てられずに人気保ってるから大したものではあるんですけど、ただ、インディ・ロック好きな層が好んで聴くまでには至ってないのは残念ながら事実です。

オリヴィアはそのあたり、すごく肩に力抜いてロック表現できるんです。そこにロックの今日性がすごくあるというか。なんか、「男にナメられないように張り合おう」とか、そういうのがない。違和感なくインディっぽいロックが10代のうちから似合ってたんですよね。

③アイドルだけど、実は3の線でユーモアのセンスがあった

 そしてオリヴィアの場合、ここのポイントがすごく重要なんです。

 彼女は「ハイスクール・ミュージカル」のリブート版のヒロイン、という言い方をされることが多いんですが、実は彼女の本当のブレイク作はそれじゃありません。

この「やりすぎ配信ビザードバーク」、まさにこれです。

 ここで彼女はペイジって役名の女の子を演じてるんですが、このメガネかけた中国系のフランキーって女の子、彼女がヒロインなんですが、そのベストフレンドの役で、2人してクラスでは地味目なこっそりユーチューバー、という役回りです。この設定の時点で、かなり変化球だったんですよね。

これとかに代表されるように、劇中で彼女、実はかなりかっこ悪いんです。体張ってギャグやってます(笑)。

このドラマは2010年代の半ばくらいの放送で、あの当時に人気あった「サタディ・ナイト・ライブ」のデジタル・ショートという、ミュージック・ヴィデオのパロディのコーナーがあったんですけど、それのキッズ版を作ってたのがこの番組でした。

こういう疑似MVを毎週作ってたわけです。オリヴィアに関してはギター持ってるものが多く、この当時からロック好きなアピールが何気にあるんですよね。

で、ここでのユーモア感覚というのは、オリヴィアのリリックやMVにいかんなく発揮されています。彼女の曲のストーリー性とウィットのセンスというのは、子役時代にもうその土台ができてたものなんですよね。

④スウィフティーズだったことが、一般との接点に


この時点から趣味が普通のアイドルとかなり違う感じのオリヴィアだったんですが、でも、この感覚だけだったら一般ウケは間違いなくしなかった(笑)。

それを救ったものが、オリヴィアがテイラー・スウィフトの熱心なファンでもあったことです。

最初のヒットとなったのはバラードの「Drivers License」。これなんかはインディロックがどうのこうの関係なく、正統派のバラードで、しかも歌詞がテイラーの歌詞並みに失恋した女の子の孤独な気持ちをうまく曲に託すことができていた。だから最初は「テイラー・スウィフトに妹分ができた」みたいなイメージだったし、それがあったから人気爆発したんですよね。

 だから、レコード会社としてもそういう感じで売りたかったんだと思うんですけど、作ってくる曲が「えっ?」「あれ?」という感じで、一つの方にとらわれない面白さがあって、面白がられて今がある感じですね。

また、こういう、New Jeansじゃないですけど、音楽マニアのおじさんが喜びそうな要素を多分に持ちながらも「オリヴィアおじさん」みたいな人がそれほど目立たないのは、やはりこのスウィフティーズ的な同性共感に訴える要素が強いからだと思います。

⑤「GUTS」でさらに強化されたロック路線


2021年のファースト・アルバム「Sour」には、こういうインディ・ポップの秀作がありまして、僕はこのポイントでオリヴィアに興味を持っています。「Good 4 U」のポップパンク的な感じではなく。特に「Deja Vu」の、ちょっとLordeみたいな感じというか。歌詞でビリー・ジョエルの「アップタウン・ガール」の引用をするという、2003年生まれの女の子が1983年の曲の引用を行ってくるところもすごくくすぐるんですけど(笑)、こういうとこでも「並みの音楽マニアじゃないよな」と思わせるんですよね。

それが今回のセカンド・アルバム「Guts」だと

https://www.youtube.com/watch?v=RlPNh_PBZb4

https://www.youtube.com/watch?v=Dj9qJsJTsjQ

MV作った曲、「Vampire」「Bad Idea Right?」「Get Him Back」、いずれもロックです!

しかもバランスがいいんですよ。ジム・スタインマンのロック・オペラ調、ストロークス〜カーズ路線の正統派インディ・ギターロック、ファンキーなラップ・ロック。うまい具合に書き分けてるんですよね。他にもポップパンクはあるは、ロウファイ・ギターロックはあるは、スマパン調のシューゲーザーっぽい曲はあるは。最近、アイドルっぽい子でもインディポップでデビューする機会増えてますけど、このマニア性とヴァラエティ豊かさ、追いつくのは並大抵のことではありません。

 しかも、面白いことに、MVの作り方、これがまんま「成長したビザードバーク」で、ユーモア・センスが強化されてるんですよね。

⑥ロックへのオマージュが求道的


あと、今回のアルバムに際してオリヴィアが「メンター」としている人がこういう人たちなんですよ。

ジャック・ホワイト、そしてセイント・ヴィンセント。この名前があがるだけで、やはりかなりの音楽センスですよ。オリヴィアは今回のアルバムを作るにあたって2にんからアドバイスをもらったと言います。

あと90sのライオット・ガールズの中核だったビキニ・キルのキャスリーン・ハナ。オリヴィアは彼女も影響元に今回あげてます。キャスリーンもオリヴィアのこと、絶賛してます。

そしてアラニス・モリセットとはローリングストーンで紙面対談をして親しくなり、「Get Him Back」のMVでアラニスの代表曲「Ironic」二オマージュを捧げています。

https://www.youtube.com/watch?v=fxvkI9MTQw4

そして発表になったばかりの来年の全米ツアーのニューヨーク公演のオープニングアクトがなんとブリーダーズですよ!ピクシーズの伝説キム・ディールがオリヴィアの前座やる時代になってます。

⑦マニアックになっても、高尚にならずに敷居が低い


で、これだけのマニア性を発揮しつつも、決して上から目線になったりしないのがオリヴィアのさらにう良いところでもあります。

今回のアルバム、12曲中でロックは7曲でバラードも5曲はあるんですよね。僕の好みからしたら、もう1、2曲ロックでも良かった気がするんですけど、そうするとちょっとマニア方向に行き過ぎるのもわかるので、バラんすとしてはちょうどいいのだと思います。

 あと、オマージュを多く捧げても、「90年代やミレニアムの郊外っぽさがある」とか「あの時代の青春映画のようだ」とかという感想が多くあがるほどの親しみやすさもある。もしかしたら、長い目で見ても、大衆とのバランスが一番取れているのが今作なのかもしれません。今後も成長して良作は作るとは思うんですけどね。そういう意味で、今が一番逃さない方がいい時期なのは確かだと思います。

 そういう意味では、今のロック、代表する存在と言い切っていいと思いますよ。



















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?