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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第35回) ボブ・ディラン その1 39〜21位

どうも。

先週に続いて今週もFromワーストToベスト、やります。

今週はこの人です!

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24日に80歳の誕生日を迎えました。ボブ・ディラン。ついにこの企画でもアルバムのランク付け、やります。この企画始まったのは2016年からなんですけど、そのときからやろうやろうと思ってなかなか実現していなかったものですが、やっと、しかるべきタイミングがやってきたなという感じです。

ただ大変なんですよ。アルバムがこれまでやったことのない枚数あって。実に39枚!ということもあって、今回は、通常2回のところを3回でやりたいと思います。

では、まず39位から。

39.Empire Burlesque (1985 US#33 UK#11)

ワーストの39位は「Empire Burlesque」。1985年発表のアルバムなんですが、ま〜あ、ディランにエイティーズ特有の打ち込みドラム・サウンドの似合わないこと(笑)。もう、ぶっちゃけ、それだけでアウトです。何回聞き返しても、このアルバムより違和感感じるもの、ないですね。これ、本人がプロデュースなんですよね。今風の時流に乗ろうと努力してたんでしょうかね。

38.Knocked Down And Loaded (1986 US#54 UK#35)

ワースト2はその次作の「Knocked Down And Loaded」。この前作よりもう少しロックンロール寄りなんですけどエイティーズ・サウンドが消えてはないし、加えてここでは曲がほとんど印象に残らないんですよね。なんか、このころってディランだけじゃなくてデヴィッド・ボウイやスティーヴィー・ワンダーといった、天才と呼ばれていたはずの人たちがこぞって不調だったという不思議な時期ですね。

37.Self Portrait (1970 US#4 UK#1)

37位は1970年発表の「Self Portrait」。未発表曲集ではあるんですけど、「ディランなら未発表でもクオリティ高いはず」と思って聴いてみると、本当に単純にボツになったレベルの曲が集まった感じというか。不思議なことに、1985年発表の名作コンピ「バイオグラフ」とか「ブートレッグ・シリーズ」の方がよりレベルの高い未発表曲が入ってますね。

36.Saved (1980 US#24 UK#3)

続いて36位は「Saved」。この前作からの「キリスト教三部作」の2作目ですが、テーマ自体はゴスペルでソウルフルな前作を踏襲したものになってるんですけど、この一つ前でちょっとアイデアだいぶ出してしまったのか、曲の勢いそのものが弱いんですよね。これも印象に残らないタイプの作品です。

35.Christmas In The Heart (2009 US#23 UK#40)

続いて35位は2009年のクリスマス・アルバム。2000sのディランは概ね絶好調なわけですけど、さすがにこれ、企画ものですから、どうしても性格上、上には来にくい作品ではあります。しかも、クリスマスってシチュエーション的に特殊すぎますからね。でも、それでも先の4枚の明らかな失敗感よりは上だと思います。

34.Triplicate (2017 US#37 UK#17)

 34位は近年のアルバムですね。「Triplicate」。これは2010sにディランが挑んだ3枚のジャズのスタンダード寄りのソングブック・カバーの第3弾。「スターダスト」とか「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」「センチメンタル・ジャーニー」など、誰でも知ってる定番曲も目白押しなのは興味深いんですが、しかしそれも一気に30曲もあるとさすがに疲れてしまうといいますか。

33.Fallen Angels (2016 US#7 UK#5)

33位は、その前作にあたります、2016年の「Fallen Angels」。「Triplicate」は30曲ありましたけど、こちらは12曲にコンパクトにまとめています。ジョニー・マーサーをはじめとした1930〜50年代のジャズのスタンダードやショー・ソングを集めたものなんですけど、ここに名を連ねたソングライターへの事前知事知識がもう少しあれば楽しめるんですけど、逆にここを起点として、ここに収められたソングライターについて学びたい。そういう感じですね。ただ、こうしたジャズのスタンダードをジャズ・ギターで老獪に披露するのも「Love And Theft」以降の彼に不可欠な路線になっているので、そのルーツなので押さえたいところのものでもあります。

32.Dylan (1973 US#17)

32位は1973年の未発表作品「Dylan」。これは主に1969年の「ナッシュヴィル・スカイライン」のときのセッションからの未発表曲を収めたもので、それゆえディランがあのアルバムでのみだした鼻にかかった声での歌唱になっているんですが、こっち面白いのはニッティ・グリッティ・ダートバンドが71年にヒットさせた「ミスター・ボジャングル」やジョニ・ミッチェルの1970年の名曲「ビッグ・イエロー・タクシー」のディランによるカバーが聞けることですね。やはり未発表曲集にはこういう思わぬカバーみたいなものがやはり注目は引きますよね。

31.Good As I Been To You (1992 US#51 UK#18)

31位は「Good As I Been To You」。これはディランがしばし自作曲を書くのをやめて、フォークのカバーに精を出していた頃の作品の第1弾ですね。ちょうど僕はこの頃に大学生で「ディランを聴いてみたい」と思って、60、70年代のベスト盤や有名作を買って聴いてたんですが、その頃がこういう作品をリリースしていた頃だったので、ちょっと「活動の止まったレジェンド」みたいな感じで見ていたんですよね。で、これ実際に聴いてみると、ほとんどが「詠み人しらず」みたいな伝承歌ばかりで。あの当時も「ディラン、よくこんな曲、知ってるな」と思ったものでしたけど、こうやって曲の栄養を蓄えていったことが90s後半からの復活につながったのかなと今にして思います。

30.Under The Red Sky (1990 US#38 UK#13)

30位は、そのカバーのアルバムの一つ前になります、「Under The Red Sky」。その一つ前のアルバムで、これまでにない、ダークでゴシックな路線で新境地を切り開いたと久々に絶賛されたディランでしたが、それが長続きせず、ガンズ&ローゼズのスラッシュやら旧友ジョージ・ハリスン、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ブルース・ホーンズビーといった、これまでのディランがやってこなかったような多数ゲストの和気あいあいなアルバムになったことで違和感を投げかけましたね。プロデューサーのドン・ウォズによるタイトなロックンロール・アレンジそのものは嫌いではないんですけど、ここでは曲もいまひとつかな。

29.Infidels (1983 US#20 UK#9)

29位は「Infidels」。僕のディランは中2のときのこのアルバムがリアルタイムです。このとき、伝説でいろいろ耳にしていたので「聞いてみたいな」と思ったのですが売れなくて「そうか、よくないのか」と見送った記憶があります。このアルバムですが、その後、ブートレッグ・シリーズに入ってる「Blind Willie McTell」をはじめ、この時期に実は隠れ名曲が書かれていたことなどから再評価する向きってあったんですよね。ただ「Jokerman」や「Sweetheart Like You」みたいなキャッチーな曲はあるものの、やっぱりエイティーズ的なドラムの音、ワーストに選んだその次のアルバムほどではないんですけど、あれが苦手でどうしてもそこまで好きになれないですね。歌詞題材がキリスト教から離れたのはいいんですけどね。

28.Together Through Life (2009 US#1 UK#1)

28位は「Together Through Life」。97年の「Time Out Of Mind」からの復活がすさまじすぎて、その勢いにおされるように、ついに英米で同時初登場1位まで獲得したアルバムです。ただ、皮肉なことに、今日のアーティスト・イメージが固まった作品の中ではこれが一番薄口で、曲の引っかかりが弱いんですよね。ちょっとマンネリになったというか。同じ手法でも曲の聴かせどころを丁寧に作ったりすることでだいぶ違うものなんですけど、これはそうした注意深さがなくスルッと聞きやすすぎるというか。まあ、アーティストにはよくあることではあるんですけどね。

27.Shadows In The Night (2015 US#7 UK#1)

27位は「Shadows In The Night」。2010sにディランが発表した「スタンダード・ソングブック3部作」の第1作ですね。この1作目には主題があって「フランク・シナトラで有名になった曲」なんですけど、コンセプトがこれは面白く、それで引きつけますね。だって通常、逆のパターンじゃないですか。ディープな美声で知られるシナトラが伝説的ソングライターの「ディランを唄う」が自然な感じがするのに、ディランがダミ声でシナトラの書いたわけじゃない曲を歌うわけですからね。選曲もおもしろく、あのシャンソンの名曲の「枯葉」をディランの声で聞く日が来るなんて思ってもみなかったし、「I'm A Fool To Want You」や「魅惑の夜」もそうですね。そういう意味で興味深いです。

26.World Gone Wrong (1994 US#70 UK#35)

26位は90sのフォーク・カバー2作目の「World Gone Wrong」。ディランが自作曲作らずにこもって古のフォークの伝承曲を拾って、あとはツアーを繰り返す毎日のときに作った作品ですけど、1作目に比べて曲が暗くシリアスになっているのが、これ、この後の彼の作風への布石になっているんじゃないかという声はよく聞くし、僕もそこはすごく合点が行くというかね。ディランのことですから、いったんそういう自分の洗い出しを行うことで自分の次なる表現を模索していたのかもしれないですね。その結果、膨大な音楽を聞いたことが、その後の、他のアーティストには真似できない無尽蔵な音楽的造詣にもつながっていますね。

25.The Basement Tapes (1975 US37 UK#8)

そして25位が「The Basement Tapes」。「おい、ザ・バンドとの地下室がこの順位だと!」とお怒りの方はいらっしゃるかもしれませんが、僕はこれ、正直な話、過大評価作だと思っています。なぜか。これ、音がちょっとデモテープみたいに粗すぎるし、ザ・バンドの前身ホークスもやっぱバックバンド然として聞こえて、「あの伝説のザ・バンドとディランの共演」みたいな感じのケミストリーには聞こえないというか。このレコーディングから後、「Music From Big Pink」の間に強い覚醒があったんだなと、むしろ僕はとらえてます。それでもザ・バンドで有名になる「Tears Of Rage」や「This Wheel's On Fire」、バーズで有名になる「You're Ain't Goin Nowhere」が収録されてる点で重要ではあるんですけどね。

24.Down In The Groove (1988 US#61 UK#32) 

24位は「Down In The Groove」。「80sのダメな時期の作品」で一緒くたにされがちなアルバムですけど、これは僕は評価していいアルバムだと解釈してます。いわゆる「エイティーズ病」みたいな打ち込み音から解放されてシンプルなロックンロールに回帰できてるというか。これがある程度、好意的にとらえられたのは「SIlvio」がスマッシュヒットして、この曲がディランのライブのセットリストに比較的多めに入ってることですね。これ、グレイトフル・デッドの作詞家のロバート・ハンターとの共作ですけど、ディラン、87年にデッドとツアーしててライブ盤出してるんですよね。評判は決して良くはなかったんですけど、そのフィードバックがこうやって生かされてるのはプラスになってるということですね。そしてここから復活がはじまります。

23.Pat Garrett & Billy The Kid (1973 US#16 UK#29)

23位は「Pat Garrett & Billy The Kid」。これは1973年に公開されたサム・ペキンパーの同名映画のサントラですね。この映画でディランもエリアスという役で出演してますが、このときの演技が大根で、それ以来、役者としてのお声はかかっていません(笑)。ただ、サントラは立派でして。いわゆる映画音楽に徹しているのでヴォーカル曲そのものは少ないんですけど、その代わり普段のアルバムでは聞くことのできないディランのアコースティック・ギターによるインストを堪能することができます。ギターの腕前を意識したことはあまりないんですけど、これ聞くとなかなかなんですよね。でも、なんといってもこのアルバムは名曲「Knockin At The Heaven's Door 」。ディラン史上でも屈指の人気曲があるとあっては、やはりサントラ作品とはいえ、そこまで下位にはできないものです。

22.Slow Train Coming (1978 U3#3 UK#2)

22位は「Slow Train Coming」。いわゆる「キリスト教三部作」の第1弾で、世間いっぱんの評判もいい、シングルの「Gotta Serve Somebody」も人気曲ということで本来なら上位20枚には入るアルバムだとは思います。ただ、僕のこの三部作での最高傑作はこれじゃないんですよね。そっちを20位以内に選んだのでこの順位ですが、基本的には好きなアルバムです。それだけ、ディランが良いアルバムをたくさん出しているということで。

21.Bob Dylan (1962 UK#13)

そして21位は記念すべきファースト・アルバムです。ディランのディスコグラフィーの中では、やはり「オリジナル曲が少ない」「まだアーティストとしての個を確立していない」などの理由で軽視されがちなんですけど、僕はそんな中で彼がカバー曲の中で彼がいかなるものをルーツにして育ってきたかに興味があるので、その意味ではやはり外せませんね。フォークとはいえ、選曲にデルタ・ブルースが多いのはやはり彼が一度ロカビリーを好んだ時期があって、それからフォークに入っているゆえなのかなとか、あと、フォーク仲間の中でもデイヴ・ヴァン・ロンクの曲を取り上げたりしてて、そこから当時のフォークシーンへの興味も深められるところが気に入ってますね。

・・ということで、1日あいだをおいて、20位から11位に行きます。

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