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RCサクセションの全アルバムをサブスクで聴いた〜あえて「日本が生んだ最高のソウルシンガー」と呼びたいキヨシロー

どうも。

今日の話は、やろうとして、だいぶ前から温めていたネタです。

このブログでは時折、「日本のアーティストのサブスクでのカタログ解禁促進企画」をやっているんですけど、今日はそれの第4弾です。これまで、ユーミン、ラルク、サザンとやってきてるんですが、今日やるのは、この人たちです!

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はい。RCサクセションです。RCの解禁自体は少し前の話で、僕もそこから、全オリジナル・アルバム始め、重要なアルバムはほとんど聞いたんですけど、なんか、「やる準備はできてるんだけど、なんか気持ち的に乗れないなあ」と思っていました。

しかし、その、躊躇していた要素が昨日、吹き飛びました。それは

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「カバーズ」が遅れて解禁されたから!

やっぱりRC語る際に、このアルバムをちゃんと直前にもう一回聞かずして特集するの、どうしても気が引けてしまって。頭の中には残っているアルバムではあるんですけど、やっぱり、再確認しないと、スッキリしないじゃないですか。それが叶ったので、「よし、今日やろう!」と思った次第です。

僕の世代でいうとRCって、「すごく身近で入りやすい位置にあった」と同時に、「音楽的に入り込むには子供じゃ難しい」という気持ちが両方あったバンドでしたね。

存在自体はすごく入りやすかったんですよ。だって、これがあったので。

キヨシローの坂本龍一教授とのコラボ、「いけないルージュマジック」が、それこそ僕の、小学校卒業間近の1982年の初頭に流行りましたからね。今、考えても、こんなメチャクチャやりたい放題してたアーティストが、シングルのトップ10に入って歌番組でこんなパフォーマンスしてたわけですからね。気にならないわけがないじゃないですか(笑)。

で、そのタイミングで、当時高校卒業間近だったうちの姉が、同級生の人と付き合うようになって、その人がうちに遊びに来たんですよ。その時に、かれがうちに持ってきたのが、このRCの武道館ライブのTV放映のビデオで。それで、このライブのビデオ、よく見たんですよ。

ただ、その時に思ったのが、「なんか、ルージュマジックで想像してたのと。音楽違う・・」ってことでした。なんか、リズムが思ったよりゆったりだったし、ホーン隊がいたりして。この当時、ニュー・ウェイヴに興味を持ち始めていた少年にとっては、「なんだ。もっと年上の人相手の音楽だったのか」と思って、なんか、すんなり夢中にはなれなかったんですよね。

・・で、そのまま時が流れていた・・という感じだったんですね。

その後、RCのことはたまに「これいい曲だな」とか気にするタイミングはあったし、やっぱり「カバーズ」から解散頃まではまたちょっと意識したり、あと、ソロになった際に、見に行ったフジロックをはじめとしたフェスとかイベントでパフォーマンする姿見たりして、やっぱキヨシロー、ライブ、すごく笑えて楽しい人なので、好感度は上がってたんですよね。

ただ、本腰入れるまでには時間が流れてしまって。だから、かなり前から「ストリーミング解禁されたら真っ先に聴きたいバンドの一つ」にRCがあったのは事実です。だから、今回の解禁、すごく嬉しかったんです!

ただですね。この「いけないルージュマジック」から、現在まで、30数年あるわけじゃないですか。その間にですね、僕の趣味、嗜好も変化して

昔、「分かりにくい」と感じていた方のRCっぽさっていうのが、実はこのバンドやキヨシローには一番似合うスタイルなんじゃないか

そう思うようになっていました。

あの当時、1980年代の初頭だからニュー・ウェイヴっぽい感じと絡めて理解しようとしていた人が、僕もそうだったし、他にも多かったんですけど、「ニュー・ウェイヴ観点で測るバンドとは違うよな」と思うようになっていました。あと、「日本のストーンズ」みたいな観点でとらえる人もいましたけど、「ストーンズというのとも、また違うんだよな」とも思っていました。

僕の中で思っていたこと、それは

キヨシローって、実はかなりソウルシンガー的なんじゃないか

そう思うようになっていました。そして、今回、それがかなり確信に変わりました。

「いけない」の後に、82年にRC最大のヒット曲となる「サマーツアー」、これもニュー・ウェイヴっぽかったんですけど、この当時、RCファンのウケ、よくなかったんですよ。前述の、僕の姉の彼氏だった人もよく文句言ってたんですけど、やっぱ、これの入った「BEAT POPS」ってアルバムだったり、その前の「Blue」もそうなんですけど、なんかアレンジがニュー・ウェイヴっぽすぎて、RCの代表曲として知っている曲と比べて、なんか粘っこさに欠けるというか。RCって、80sに出世したバンドではあるんですけど、80sサウンドが実はあまりにあってなかったバンドなんじゃないかと。あの時代の、淡白なリズムではなんかはまらなく、たまたまキヨシローの奇抜なイメージがあったから、パンクとかニューウェイヴとかに入れたい人が多かっただけじゃないのかと。現に、この時期過ぎたらRC、あんまり典型的なエイティーズ・サウンド、やらなくなります。それがゆえに、これ以降、時代を経てもすごく聴きやすいんです。

やっぱり、ですね

やっぱ、こういう曲のほうがいいんですよね。

で、僕もその間、いろいろリスニング経験積んでるから

「ああ、キヨシロー、オーティス・レディングがしたかったんだな」とかって、わかるようになるというか。彼、本人自身も、オーティスのトレードマークのシャウトでもある「ガッタ、ガタ、ガタ!」って叫びますからね。「ああ、ここから来てたんだな」とかいうのもわかって。

この点に関して言えば、キヨシローの場合、ミック・ジャガーあたりよりも断然ソウルフルな嗜好が強いんですよね。実際、ソロになってからも、オーティスのバックでも弾いていたブッカーT&MGsとかと共演もしてるわけじゃないですか。生前、あまりリアルタイムのブラック・ミュージックに接近しなかったから、分かりにくかったと思うんですけど、時期が60sに限定されていたとはいえ、かなりソウル・ミュージックの影響が強かった人なんだと思いましたね。

で、今回、アルバム、全体聞いてみて、自分なりにRCのアルバムのトップ10、組んでみました。

こんな感じですね。まず6位まで。

10.Marvy (1988)
9. Baby A Go Go (1990)
8. 初期のRCサクセション(1972)
7.楽しい夕べに (1972)
6. Please (1980)

これ、初期のフォーク時代の映像ですけど、この時から、もうすでに、かなりソウルフルな歌い上げしてるんですよね。別の曲では「Ooh yeah」とか、「oh baby」とか、すごくアメリカンなソウルシンガーみたいなフレーズ、バンバン使って。この当時、まだ四畳半フォークみたいなものの方が普通だったこと考えると、RC、あまりに当時ではまだ早すぎたというか、理解されなかったのもわかりますね。こんな、ソウルフルな歌い方した日本のフォークシンガー、他に小坂忠とかそれくらいだし、それよりもむしろソウルフルなくらいですよ、この当時ですでに。二枚目の「楽しい夕べに」に至っては、アレンジ、ザ・バンドみたいですしね。今の耳で聞いて「新鮮で刺激がある」のはむしろフォーク時代ですね。小林和生のウッドベースもすごくファンキーでカッコいいですしね。

では、5位から1位見てみましょう。

5. OK (1983)
4.カバーズ(1988)
3. EPLP (1981)
2.シングルマン(1976)
1.ラプソディ(1980)

やっぱ、こうなっちゃいますねえ。

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この83年の「OK」なんですけど、これ、レゲエ・アルバムなんですよね。この当時、レゲエって、ちょっと時代の先をいった感じだったんですけど、レゲエのゆったりとしたリズムって、キヨシローの好きなオールド・ソウルにもすごく底辺で通じる部分があって。なんか、このアルバムでグルーヴ、とr戻してる感じがします。あと、まんま、初期のフィッシュマンズの原型になってますね、これ。声と、「なのさ」「しようぜ」みたいな歌詞のセンスも含めてね(笑)。

そして「カバーズ」ですね。でも、4位にしてしまいました。社会風刺の効いた歌詞というのは、彼の大きな持ち味の一つではあるんですけど、ただ、それゆえに「ロック」とか「パンク」の印象が勢い先行しすぎる理由も作ってしまったかなとも思います。ただ、「サマータイムブルース」の歌詞の、その後の311を予見させるリリックとかはすごいと思いますけどね。

それよりもむしろ、このアルバムの場合は、「キヨシローってやっぱりバリバリ60sの人なんだな」ということを強く認識しますね、僕の場合。だいたい、この選曲センス。バリー・マグワイアの「明日なき世界」って、ベトナム戦争初期の有名な反戦曲ですけど、基本、それだけしか知られていない、後の歴史に語り血がれなかったタイプの人の曲を、こうやってカバーしたわけですからね。そこはさすが、フォーク出身ゆえのプロテスト精神ゆえだと思います。初期のフォーク時代も、ここまで政治的なものなかったんですけど、むしろ心の奥底で眠っていたものが、80年代の終わりに爆発したという感じなのかな。

この60sモードがタイマーズやラスト・アルバムの「Baby A Go Go」まで続きます。このころに、「いいなあ」と思って、興味持ってましたね。


「EPLP」は本当はシングル集なんですけど、ライブのレパートリーになる重要曲ばかりです。そこに入ってるこの曲が、まさに「音楽リスナー、キヨシローの原点」という感じですごく愛すべきというか。「ベイエリアから、リバプールから このアンテナがキャッチしたナンバー」というのが、いかにも60sのマニアックな音楽リスナーそのものじゃないですか。RCの82年のアルバム「BEAT POPS」も、その昔、大橋巨泉が司会をしていた60sのテレビの洋楽番組の名前。こういうところも、すごくくすぐります。

2位は「シングルマン」ですね。ブレイク前に、ライブハイスで話題になってるころに再発嘆願運動が起こったことで伝説化したアルバムですけどね。

こと、「ソウルフル」ということで言えば、RC史上最もそれが濃厚なのがこのアルバムですね。上の「スロウ・バラード」が入ってるのもコレですし。けど、「本格的変身前の覚醒の一枚」という意味では、これ、デヴィッド・ボウイの「ハンキー・ドリー」みたいでいいんですよね、これ。「Ch-ch=changes」と言わせたくなる何かがここにはありますね。

そして、「ジギー・スターダスト」がもちろんこれですね。1980年の「ラプソディ」。もう、見かけからも、ロックンロール主体のサウンドからもそうですけど、これ、「ライブ盤」にしたことが良かったと思うんですよね。やはり、あの当時の日本のレコーディング技術で、ロックンロールバンドの本当のかっこよさがパッケージできることは稀でしたからね。ここでの曲は「EPLP」の曲ともかぶるんですけど、やはり、ソウルフルなテイストとロックンロールのダイナミズム表すのに、ヴァージョンが圧倒的に上回ってもいますからね。

 あと、選び損ねちゃいましたけど、RC、決定的駄作は一切ないですね、これ。これ、すごいことです。ユーミンやサザンにもそれなりにあると思ったんですけど、程度の差でベストなものと比べて手応えが薄いものはあるんですけど、それくらいですね。

84年の「Feel So Bad」というアルバムも、このストーンズみたいなシングル「ベイビー逃げるんだ」が入ってたら入れてたんだけどなあ。「自由」って同じくストーンズっぽい曲が入ってるんですけど、揃ってたらね。まとまりのないアルバムだったところが、よりロックンロール色を感じさせてよくなったのに、とかってのはあります。

ただ、惜しむらくはキヨシローのソロ作、これがもう少しRCのレベルがあったらなあ、とは思います。キヨシローの場合、上のランキングにも顕著ですけど、彼の場合、オリジナル・アルバムも、ライヴ盤も、シングル集も、意識としてあんまり区別してないような感じがするんですよね。それがゆえに、「えっ、こんないい曲があるときになんでアルバム作らなかったの!?」と思える瞬間が結構あるんですよね。

94年のこの「サラリーマン」ってシングル、歌唱で言えばキャリア史上でも屈指の素晴らしさなんですけどね。サビでの「サーラ、リー、マーーーー、アアアアーン」って伸ばし方とか、最後の方で繰り出すこのフレーズのファルセットのシャウトとかゾクッとくるんですけどね。その意味で90s、惜しいんです。

2000年代のアルバムはまとまってていいんですけどね。特に最後のオリジナル・アルバムの「福助」はかなりソウルフルでね。ただ、惜しむらくは、誰かいいプロデューサーがついて、エイミー・ワインハウスみたいなアルバム作れてたらなあ、なんてことは思います。日本でそれが可能だった唯一の人だったのではないかとも思うので。

あと、今年に入ってGEZANの「Klue」聞いた時も、すごくRCを感じた(歌声も歌詞も)ことも「RCもう一回聞きたい」と思った理由でもあったことも記しておきます。

このシリーズ、次もなんとなく誰やるかは決めてますけどね。最近、たまにリクエスト、受けるんですけど(笑)、あくまでも、「自分でできる範囲」のものならやりますよ。








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