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サブスク解禁記念 「矢沢永吉の傑作アルバム10枚」を、順位をつけて選んでみた

どうも。

今日は、この企画いきましょう。これです。

はい。「永ちゃん」こと矢沢永吉が先週の前半に全曲のサブスク解禁を行ったので、それにちなんだ企画をやろうと思います。

このブログ、「海外エンタメ・ブログ」ではあるんですが、同時に「サブスク推進ブログ」でもあるので(笑)、重要だと判断したアーティストの解禁があると、このように企画を組んでやります。とはいえ、せいぜい、数ヶ月に1本のペースなんですけど、なぜかいつもアクセス数高いんですよ、これが(笑)。「専門家でもないのに、なんで?」といつも自分でも思うんですけど、なんか恒例企画のように思ってくれていらっしゃる方も少なくありません。この企画に関しても実はリクエスト、ありました(笑)。

 正直な話すると、当初、あんまり自信はなかったんですね。僕の場合、キャロルはやっぱブリティッシュ・ビートの影響の強い、日本の70sにあんまりいないタイプのバンドだったんで、そこで結構共感を抱いたりもしてたんですけど、永ちゃんのソロ自体はそんなに思い入れを持って見たことなかったんですね。ただ、「日本の場合、セールス実績作ったロック・アーティストの評価が不当だよな」とも思ってはいたので、「この際、聞いてみるか」と思い直して聞いてみたんですよ。

そしたら

思いのほかすんなり聴けて、軌跡がわかりやすかった!

 意外と相性が良く、どういう音楽変遷をたどったのかを理解するのに苦労しなかったんですよ。自分の想像以上に聞き覚えのある曲も多くて、「あ〜、これ、この時期の永ちゃんの曲だったんだ!」とピンとくる瞬間も少なくなかったです。

で、アルバムは「全曲」ではないんですけど、「オリジナル・アルバム全作」は耳を通しました。さすがにオリジナルが34枚もあるので、それに全部順位をつけるのはちょっともう少し時間が必要なのでちょっと無理なんですけど、それでも「上位10枚だったら、これでいけるかな」と手応えを得たので、「僕が選んだ永ちゃんのアルバムTOP10」ということで行こうと思います。

 独断と偏見になるべく偏らないように、アルバムを全部聞くだけじゃなく、「ベスト盤にどこ曲からの収録が多いか」、「近年のライブのセットリストの常連曲は何か?」とか、そういうファンに近い部分での客観データを参照にしながら、僕自身が普段の音楽リスニングで培った好みと照らし合わせて選んだつもりです。

では、ブロックごとにいきましょう。まずは10位と9位です。

10.この夜のどこかで(1995)

9.Rock ’N’ Roll (2009)

まず10位は「この夜のどこかで」、9位は「Rock ’N’ Roll 」と対照的な作品を選んでみました。前者は90sに出した、これまでの永ちゃんの中でもバラード色が一番強いアルバム。逆に後者はロックンロール色が一番濃いアルバムです。

永ちゃんの場合、一度「こう!」と決めたら同じ傾向のアルバムを延々と作る傾向があるみたいで、それもオールタイムでの順位がつけにくい要因になってます。80s末から90sの後半まで、同じようなサウンドのアルバムが続くんですが、「この夜〜」は中でもミディアム〜スローの聴かせる曲が光ってます。ちょうど、その前に「アリよさらば」みたいなハードに叫ぶ曲やってたので反動があったりしたのかもしれません。

「Rock'n Roll」の方は、99年の「Lotta Good Time」あたりからやろうとしていた、「ロックンロール回帰」の中でも、よりレス・プロデュースなシンプルなバンド・サウンドでのロックンロールをやり切れた感じのアルバムですね。この前のアルバムくらいまでは、そっちに振りたいんだけど、80sの頃から使い続けてるシンセのキラキラ・サウンドみたいのに手を出しちゃう曲がどうしても出てきたりしてたんですけど、ちょうど自身のレーベルの移籍作ということで振り切れたのかもしれません。そのロックンロールの中にブルースやカントリーのテイストも注ぎ込まれている感じも良いです。これの次の「Twist」(2011)と言うアルバムもこの路線だったので、どっち入れるか迷うくらいに良かったですよ。

8.ゴールドラッシュ(1978)

7.A Day (1976)

このあたりは初期ですね。8位が4枚目の「ゴールドラッシュ」、7位がセカンド・アルバムの「A Day」。このあたりの70sの永ちゃんは洋楽の同時代のロックにシンクロした感覚があるので、好み的にはやっぱり好きですね。

 僕が永ちゃんのことを知ったのはまさに「時間よ止まれ」です。小学校3年のときですね。でも、曲で知ったというよりは「ザ・ベストテンでランキングされてるのに出ない人」の印象で先に知ったんですよね。数ヶ月くらいずっと入ってたんですよね。それとあの「成り上がり」の時期がこの頃なので、一般のオールタイムでは「ゴールドラッシュ」を最高傑作にする声は多く、僕もそうしてしまうのかなと思ってました。

ただ、「ロックンロールというよりは、ちょっとバラード多すぎだな」という印象なんですよね、これ。バラードの名手なのは永ちゃんの特色ではあるんですけど、だけど、「ロックンローラー」としてのし上がったのなら、やっぱ、もう少しアッパーな曲、聴きたくなるなあ、と思って、ちょっと僕の中では落ちるんですよね。

 その意味で「A Day」の方が好みです。面白いなと思うのは、永ちゃん、ビートルズへの憧れをキャロルの頃からずっと語ってはいるんですけど、ここで描かれるロッカー像って「トラベリンバス」に顕著のように、「全米約津々浦々のドサ回りバンド」的なイメージですよね。すっごいアメリカンな感じで。あとサウンドも思った以上にその当時のブルース・スプリングスティーンに近かったというか。その当時の永ちゃんはCBSソニーの所属なんですけど「浜田省吾や佐野元春の前に、これがさっきにあったのか」という気づきはありましたね。

6.E'(1984)

5.Don't Wanna Stop (1991)

4.共犯者(1988)

6位から4位、一気にいきましょう。6位は「E'」、5位「Don't Wanna Stop」、4位「共犯者」と選んでみました。

「E'」はこれ、コアなファンの方たちの間では最高傑作評価する人が結構多いんですってね。このアルバム、僕も面白いアルバムだとは思いますが、でも、僕の場合の評価はこれ「異色作」です。このアルバムからの3作「YOKOHAMA二十才まえ」「東京ナイト」は、70年代に「ロンリー・ボーイ」の全米トップ10ヒットで知られるアンドリュー・ゴールドとの共同作業の1作なんですが、ここではかなり大胆なシンセとリンドラムの導入があります。「逃亡者」なんて僕も当時これ覚えてましたけど、「えっ?」って思いましたからね。時代はちょうどヴァン・ヘイレンが「ジャンプ」出して世界的に特大ヒットになってた時代ですけど、あんな分厚いシンセと、「トゥクルットゥ、トゥントゥン!」みたいな打ち込みサウンドの嵐でしたからね。

そのサウンドって、当時は斬新に聞こえて僕も中学生だったので新しくは感じたんですけど、その手のサウンドって90s以降、急速にダサくなっちゃったじゃないですか。今、リバイバルでようやく再び迎え入れやすくなってはいますが、それでもちょっとまだ照れがあるというか。なので、ちょっと「試みとしては面白いけど・・」なんですよね。

あと同時代に似た傾向の作品で、たとえば佐野元春の「Visitors」とかサザンオールスターズの「人気者で行こう」と比べてどうか、となったら、残念だけど、僕はこういうアルバムの方に軍配はあげてしまうと思います。

 それでいうなら、一個飛ばしますけど、88年の東芝EMI第1弾の「共犯者」の方がいいと思います。こっちも80sっぽいシンセは全開にはなってるんですけど、未だにライブの定番になってる、この前作「東京ナイト」に入ってる「止まらないHa Ha」に範をとったような、ハードでソウルフルなテイストがだいぶ全面に出てますよね。なんとなく、この時代の感覚でいうならロバート・パーマーのハード・ソウル路線。これになんとなく近いですね。で、このアルバムで築いたものがフィットしたからなのか、このサウンドを延々続けちゃったんですけどね。

 ただ、この「共犯者」以降の時期に永ちゃんはシングル・ヒットをもっともたくさん量産したんですけど、その時期で好きなのは「ラスト・シーン」っていう曲の入った5位の「Don't Wanna Stop」ってアルバムですね。「ラスト・シーン」が「刑事貴族」のテーマ曲だったからなのか、すごく哀愁のあるブルージーな曲で。アルバムがそれにつられたからなのか、全体的に渋いブルージーな作風で、この頃の永ちゃんの中では一番ロックしたアルバムなんですよね。

 と、ここまでのアルバムもなかなか良いと思うんですけど、それでも、もうトップ3に関しては、もうこの3枚でダントツだと思いました。

3位からいきましょう。

3.I Love You,OK (1975)

3位は「I Love You,OK」。いわずと知れたデビュー・アルバムですけど、これはもう、キャロル解散後にすぐにロサンゼルスに飛んで製作したアルバムだけに、すごくキャロル色がまだ濃いですね。当時は「キャロルと随分変わった」なんて言われてがっかりされたみたいな評も読んだことあるんですけど、表現方法がガレージ・ロックっぽくなくなっただけの話で、曲の世界はまんまキャロルです。

 そう思わせるのは、ひとつは歌詞ですよね。「キザな野郎」「奴はデビル」で延々、「こいつ嫌な奴」と歌うアイロニーみたいなのって、すごくアメリカの青春ソング的でそれまでの日本のものに出てこないパターンなんですけど、そういう青春物語的なリアリティがある。それから、ストリングスを多用したバラードも、のちのAORとも違って、すごく50sのロックバラード調なんですよね。ちょうどこの2年前に映画「アメリカン・グラフィティ」が国際的にヒットしてるんですけど、その感覚を意識的にか無意識にかわからないんですけど、同時代感覚的にあらわしてる感じがしますね。

そしてタイトル曲に、「ウィスキー・コーク」「サブウェイ特急」、そしてもっともキャロルから地続きの「恋の列車はリバプール発」みたいに、長く愛されてる曲も多い。デビュー作にして、これはやっぱり傑作だったと思いますね。

2.P.M.9 (1982)

そして2位は「P.M.9」。ワーナー時代、永ちゃんがアメリカ西海岸をベースに世界進出を狙っていた時代なら、やはりこれがベストだと思います。

 個人的なことを言わさせてもらうと、「時間よ止まれ」は「テレビに出ない永ちゃん」の体験だったんですけど、音楽を伴って彼を知ったのは、これの中の「Yes My Love」です。これでコーラのキャンペーンのCM出てたんですけど、これすごく好きな曲で。同じバラードでも、なんかすごくタメの効いた、声の強弱のコントロールが抜群にうまい曲というか。これの次のシングルになった「Lahaina」って曲も、タメと哀愁とスロウなグルーヴがケミストリー起こしてるみたいなすごい渋い曲で。改めて聞きなおして「この頃にアルバム借りリャよかったな」って思ったくらいに、実は好感持ってました。ちょうど小学校卒業して中学になる頃でしたね。

 この頃になると、ドゥービー・ブラザーズのメンバーとレコーディングとかやってて、いわゆる「本場流のサウンド」を追求してます。時期が時期ゆえに「AORの名盤」みたいな言われ方もされるときがあるんですけど、そういう側面を前述の2大バラードで見せながらも、実はアルバム全体よく聞くと、力強いロックンロールも結構聴かせていて、思った以上にバランスいいんですよね。柔と剛をすごくうまく使い分けてるというか。ヴォーカリストのうまさとしてはもしかしたら最高傑作だし、なんか結果的に「こぶりなヒューイ・ルイス」みたいになっちゃった「Rockin'My Heart」とかよりこっちで全米デビューすりゃよかったのになあ、なんて思いました。

では、1位に行きますが、僕の場合はこれです。

1.ドアを開けろ(1977)

このサード・アルバムの「ドアを開けろ」ですね。2、3位も相当良いですけど、これはさらに良いというか。どれくらい良いと思ったかというと、もし僕がこれのリリースされた当時に中学生くらいだったとしたら「日本にこんなすごいロックンローラーがいたんだ!」と思って夢中になったかもしれないな、とさえ思ったくらいにですね。

 これがたとえば最初の2枚だったら、「曲は良いけど、音は正直、ペナペナだな」と思ったんですけど、このアルバムで、一気にサウンドが肉厚になるんですよね。ギターの厚みがこれまで以上にハードになって、ロックンロールとしてのドライヴ感が増してるし。「黒く塗りつぶせ」が良い例で。それプラス、これまで以上にソウル・ミュージックのテイストもあって。冒頭の「世話がやけるぜ」なんて、小坂忠の「ほうろう」とかに決して負けてないレベルですしね。それにプラスして、「チャイナタウン」みたいな、甘くなりすぎない美しいバラードもあって。永ちゃんがソロのロックンローラーとして打ち出したいプリミティヴな要素がここに全部出揃ってる感じがするんですよね。これに関してはキャロルでさえ、到達しえなかったことだとも思います。

 この1977年って、ジュリーが「勝手にしやがれ」で日本レコード大賞をはじめとして音楽賞総なめにした年だったり、世良公則&ツイスト、チャー、原田真二の「ロック御三家」が台頭したりと、日本のロックのメジャー化にとってすごく大事な年と目されてるんですけど、このアルバムも当時オリコンで2位まで上がってるんですよね。僕はこの当時はもっぱらジュリーで、グラムロッカー的な演出はいまだに好きですけど、音だけでいうなら、永ちゃんのこれですね。ここまでロックンロールの醍醐味を感じさせて、それをあの当時の日本でチャート上位に送り込むポピュラリティと説得力もあった。それ、すごいことだと思うんですよね。他にそんな存在なかったわけだし。

もしかして「時間よ止まれ」というのは、その最初の一大ブレイクへの最後のひと押しであり、爆発する直前までのお膳立てはこのアルバムで既に完成されてたんじゃないか。素直にそう思ったし、そう考えるとこのアルバム、日本ロック史の中でももっと重要視されてしかるべきアルバムだと思いましたね。
































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