ライブ評「オ・テルノ(2019.5.17)」 誰か日本に呼んで!「ペット・サウンズ」をソウルフルに継承するブラジルの才人たち
どうも。
ちょっと書きたいネタができたんですが、明後日からにします。今日書くネタを逃すと、来週はエルトン・ジョンでほぼ埋まるので機会なくなってしまいますからね。
今日は
5月17日、ブラジルはサンパウロのイビラプエラ・オーディトリアムという会場で見た、今、ブラジルでベストのロックバンド、オ・テルノのライブ、これを紹介しておきましょう。
このライブは、僕が以前、このブログでも紹介した彼らの4枚目のアルバム「Atlas/Alem」の発売記念ライブだったんですが、そのレコ発ライブがサンパウロのこの会場で3日連続でありました。会場はですね、すごく綺麗な感じの、赤い椅子が800人分あるホールだったんですけど、そこを3日、彼らは即完にしています。次あたりは2000人規模の会場1回でも大丈夫な気がします。
客層ですが、もう、いかにも「ブラジルのインディ・バンド」って感じですね。ブラジルで最も犯罪おかしそうにない、品のいい人たちが集まってましたね(笑)。気持ち、女性比率の方が高かったかな。超文系な感じの、大学生が多い感じだったかな。中にはティーンも結構いたんですよ。ブラジルだと、一般のテレビとかでは聴かれていないタイプなのに、この子らの将来に有望なものを感じましたね(笑)。
ライブは金曜日の夜9時から始まって、当初、「1時間30分」の予定だったんですよ。そしたら、まあ〜、そんなのは全くの嘘でしたね。2時間以上、みっちりやってくれました。4枚のアルバムから26曲、それを3日間ずっとやったみたいです。体力あります。おかげで、こちらはかなり終電が気になって、最後の方は気が気でなかったりもしたんですが(笑)。
ライブの方ですが、ステージ上に現れたのは、上の写真でもわかるように、オ・テルノの3人が前方にセットを組んで、後方の台にホーンが4人。トロンボーン、トランペット、アルト・サックス、バリトン・サックスの4人です。アルバムでは、フロントマン、チム・ベルナルデスの精巧に入り込んだストリングスとホーンのアレンジが実に美しかったりしたんですが、ライブではホーンで全てをカバーしてました。
で、いざ、ライブ始まってみるとですね
チム、メチャクチャ、歌、うまいでやんの!
音域の高低で聴かせるタイプではないんですけど、声の奥行き、深さをビブラートで聴かせるタイプですね。伸びが良くて、すごく響くんですよ。アレンジよりも前に、この美声に引っ張られます。
あと、「アルバム再現できるかな」と思って気にして見ていたホーンですが、ストリングスがなくても、アルバムでの厚みのある美しいサイケデリック・アレンジの大半を構成していたのはホーンだったんだということが十分わかりましたね。実は使用していた楽器はシンプルなのに、そこをどう複雑に勝つ重厚に聴かせることができるか。
あと、「重厚さと華麗さ」を纏う一方で「芯の部分は軽量でスカスカ」な、ビーチボーイズで言うところの「ペット・サウンズ」のような絶妙な音のコントラストを、彼らはしっかり継承発展できていましたね。
それは、この曲に顕著でしたね。
上がってましたね、youtubeに一部音が。これが僕がなんども紹介している、日本でも坂本慎太郎参加で話題になった曲「Volta E Meia」のライブ・ヴァージョンですけどね。骨格そのものはロウファイ・バンド的な手作りの素朴な感じがあるのに、オーケストラのような流麗さも同時に持つ。フィル・スペクターやらブライアン・ウイルソン、ヴァン・ダイク・パークスあたりが追究してきた「ロックンロール世代なりのシンフォニー」を半世紀近く経った後に南半球の若者たちがこうやって継承しようとしています。
あと、アレンジに気を取られがちになるんですが、このバンド、3ピースの骨格部分がかなりしっかりしてます。特にドラマーがかなりうまい。低い位置でのセッティングでの、ワン・タムのシンプルなドラムセットでしたけど、手数と速さと音のタイトさが見事なんですよ。あとベースのドライヴ感のあるグルーヴね。彼ら、元が3ピースのガレージバンドだったんですけど、仮にその構成で演奏してもかなりうまいバンドでしょうね。
それから
あと、別の機会のライブで恐縮ですけど、チム、ギター弾かせても、ピアノ弾かせてもうまいんですよ!しかも、何曲演奏しても、全く疲れないタイプですしね。こんなライブの基礎体力が高い上に、楽曲で高度なアレンジ勝負ができるバンドがブラジルにいたのかと思うと、僕はちょっと身震いしながら見てましたね。曲が過ぎて行けばすぎていくほど、強いカタルシスを感じていきました。もっと早いうちに気づいておけばよかったな。
このバンドですね、悪いことは言いません。
ぜひ、日本に呼んであげてください!損は絶対にさせません!
ブラジル音楽の枠組みで呼んでも、楽曲的にそちらのファンでも喜ばせることはできるはずだし、それ以上にインディ・ロックのファンでも、フジロック、サマーソニックでもちゃんと宣伝すれば十分につかめるものはあると思うんですよ。テイム・インパーラとかスフィアン・スティーヴンス、フリート・フォクシーズあたりが好きな人なら絶対に行けるはずです。
是非とも国外で知られる価値があるバンドだと思うので。まだ20代後半と若いバンドですが、若いうちにしっかり評価されるべきだとも思うのでね。