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映画「Blinded By The Light」感想 今度はスプリングスティーン!「音楽に人生変えられた人」、必見!

どうも。

今日は映画評、行きましょう。このブログでも前から言及してました、これです!

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クイーン、エルトン・ジョン、ビートルズと来て、今度はブルース・スプリングスティーンにまつわる映画です。「Blinded By The Light」。これは今年のサンダンス映画祭で公開された際に評判になり、世界的な公開につながった話題作です。どんな話なのでしょうか。

早速あらすじから見てみましょう。

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舞台となるのは1987年のイギリス南部のルートンという町。主人公のジャヴェドはパキスタン移民の17歳でした。

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彼は、音楽のトレンドに詳しい親友のマットち共にペットショップ・ボーイズあたりのはやりのポップ・ミュージックが好きでした。ただ、ジャヴェドは

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もっと、日常に実際に起こっているリアルなことに興味があり、部屋では自作の詩を書き続けていました。そして、パキスタン移民の彼の一家は、当時台頭していたナショナリズムの影響でかなり激しい人種差別にあい、嫌がらせを毎日のように受けていました。

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家の中では厳格な父から「イギリスには同化できない。パキスタン人のように生きろ」と、移民のいく大学への進学を当たり前のように強要される毎日。詩を書くことも隠していましたが、

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高校のクレイ先生が、そんなジャヴェドの詩の才能に気付き、彼を励まします。

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そんなある日、ジャヴェドは同じ高校に通うパキスタン移民、ループスがウォークマンで聴いていた、最初、ただ「ボスだよ」と教えられていた音楽が何かについて興味を持ちます。ループスはそこで「これから聞けや」と「ボーン・イン・ザ・USA」と「明日なき暴走」を勧めます。

そして、父親が自動車工場を解雇され、一家が大騒動した夜、ジャヴェドは、そのテープを聞いたのですが

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それは、彼の中で電流が走るような、これまで体験したことのない経験でした。言葉の一つ一つに、これまで彼の聞いてきた音楽にはないリアルさを彼は感じました。そこから彼の人生がガラッと変わります。

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ジャヴェドは寝ても覚めてもスプリングスティーンの歌詞を口走り、彼のような格好も始めます。

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マットからは「スプリングスティーンなんていつの世代の音楽だ?オヤジ世代が聞く音楽だぞ」とからかわれますが、ジャヴェドには関係ありません。ここから彼の詩の才能は高まり、親に黙って新聞社のバイトもゲット。ついにはザ・スミスのファンの女の子をカノジョにもします。

そんなタイミングで、スプリングスティーンのロンドン公演もおきまり・・・。

・・と、ここまでにしておきましょう。

これですね、僕

大好きです!!

ここまで、クイーン、エルトン・ジョンの自伝に、ビートルズにインスパイアされたコメディと来てこれですが、「その音楽に感動する」という姿に最も共感できるのがこの映画だからです!

僕も日常生活でいろんな音楽ファンと出会ってますが、どの人にも共通するのが、「本当に音楽が好きになった瞬間」を語るときが一番、目が輝くんですよね。それは各人、その時に自分がどんな風にそれを捉え、自分の中でその感動の電流を受け止めていったかを思い出すからだと思うんですけど、この映画はその瞬間の感覚をすごく理解しています。

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この、歌詞が自分の周りをクルクル回る感じなんかもそうだし

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こんな風に、感動にじっとしておられず、体の方が勝手に動いちゃって、一人でにミュージカルになっちゃうとことかね。こういう、一つ一つが、一線を超えたマニアになったようなら、もう一つ一つが愛さずにいられないんですよね。

その意味では、これ

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もう、懐かしいですね。「ニュー・シネマ・パラダイス」が映画でやったことを、この映画はそれを音楽で表現した感じですね。

あと

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「音楽を通した、親子の葛藤劇」。これも、特にある世代から上の人にはわかるんじゃないかな。僕にはこれ、ものすごくわかります。進路をエンタメ方向で選んだことで、今も親子縁、断絶したようなものですから(苦笑)。80年代までに青春過ごした人だと、親が戦前生まれなんで、日本でもこういう断絶は生みやすかったし、これをお読みのちょっと世代が上の方なら、この感覚、分かってもらえるのではないでしょうか。

奇しくも、こういうシチュエーションである時期から、インド。パキスタン系家族は格好の材料になっています。

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2000年代にはインド系サッカー少女を描いた「ベッカムに恋して」があったし、最近でもパキスタン系コメディアンとアメリカ人女性とのロマンスを描いた「Big Sick」なんかがまさにこの例なんですが、この映画、それもそのはず

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監督、「ベッカムに恋して」と同じ人です。グリンダ・チャダ。イギリスのインド系、パキスタン系にこだわって映画作っている女性監督ですけど、もう年齢は50代後半ですけど、彼女のフィルモグラフィにもこの映画で興味持ちましたね。「アメリカ黒人の人生にこだわって映画を作る」監督はすごく有名な人、たくさんいますけど、だったらイギリス系インド人にこだわったものを作る人もいるはずで。イギリスだとインド系って、アメリカにおける黒人のそれと同じくらいの比率、いるわけですしね。

そして、前に紹介したビートルズなき世界を描いた「イエスタデイ」、あれも主人公、インド系だったでしょ?この映画もそうですけど、イギリスの映画界にもポリコレの波、来てますね、これ。この二つの映画も、それだからこそ良かった気もしますが。両方とも、主人公が白人だったら、そこまでのインパクト、なかったと思うし。

そして、これ、もう少し突っ込むとですね

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1987年当時の欧米における、スプリングスティーンのイメージ、これをすごく正確に描いています!

この感覚、実は日本には当時伝わっていません。10代でも普通にスプリングスティーン、聞く人多かったですからね。尾崎豊とか佐野元春、浜省の影響とかで。僕にも高校の時、古野くんっていう熱狂的なスプリングスティーンの友人、いましたからね。だから、この映画、彼のことを思い出しましたし。

ところが欧米圏だと上の写真のように「スプリングスティーンが好き」なんて言ったら中年に喜ばれる感じです。これ、ブラジル育ちのうちのワイフでも全く同様です。やっぱり彼女も、スプリングスティーンとかビリー・ジョエルとかホール&オーツとかだと「自分の親と同じ世代」という感覚が強すぎて聞かなかった、っていうんですね。これを日本に還元すると、井上陽水とかオフコースとか矢沢永吉とかと同じ世代にあたるんですけど、日本だと10代の人がそれ聞いてても違和感なかったのと比べると、ちょっとニュアンス、違うでしょ?

劇中でもすごく面白いセリフがあるんですよ。「スプリングスティーンだって?今は1987年だぞ。キュリオシティ・キルド・ザ・キャットやブロス、デビー・ギブソンの時代だ」というね。これ、残酷なジョークなんですよね。。全部、その当時だけで消えたスターだという(笑)。ここでの意味は、「そんな瞬間的な今っぽさより、普遍的なものがある」ってことを一言で凝縮した言葉ですね。ちなみに、ジャヴェドと恋仲になる女の子の趣味が、この当時の若い子は聞いて今もちゃんと残ってるザ・スミスってとこもミソです。

こんな風に、この映画、「懐かしい光景の中の普遍」を楽しむ映画ではあるんですが、

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劇中でも、かなりキツめに描かれる、ナショナリズムに基づく移民差別、これは残念ながら今日にも通じる悲しい現実です。ここで「ううむ」と見る人には目を背けずにしっかり見て欲しいところでもあります。

あと、有名な人があまり出ている映画ではないのですが

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「キャプテン・アメリカ」の一番最初のヤツのクリス・エヴァンスの相手役のヘイリー・アトウェルが先生役でいい味出してたのもよかったです。

ちなみにですね、この映画、なんとほぼ実話です。

これの元となった原作を書いた人はですね

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スプリングスティーンのファンの界隈ではかなり有名な熱烈ファンなんですってよ(笑)。



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