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沢田太陽の2020年間ベストアルバム 40-31位

どうも。では引き続いて、沢田太陽の2020年間ベストアルバム、いきましょう。今回は40位から31位。こんな感じです。


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はい。では、早速、40位からいきましょう。

40.Set My Heart On Fire Immediately/Perfume Genius

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40位はパフューム・ジーニアス。USインディのファンには2010年代入ってからなじみの彼ではありますが、意外にも僕はこのアルバムではじめて彼にピンときました。これまで「ゲイのシンガーソングライター」というところでいうと、アノーニ(アントニー)ほど声に力強さがないし、エレクトロでのフランボイヤント(華麗)なサウンドはセールス・ポイントだとは思っていましたが、僕の好みとしてはルーファス・ウェインライトの生身のサウンドでの彩りの方が魅力的だった。そこが今回、彼自身が二皮も三皮もむけたことで確固とした存在感を醸し始めたと思いました。エレクトロでもいいんですけど、今回みたいにグラム初期のボウイだったり、ソウル・ミュージックとか、より肉感的な表現に向かった方がこの人には合ってるような気が僕にはしましたね。今回つかんだ感じで成長していけば今後かなり面白い気がします。

39.Twice As Tall/Burna Boy

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39位はバーナ・ボーイ。現在のアフリカを代表するナイジェリアのR&Bシンガーですね。あんまり詳しくなくてこういうのもアレなんですが、僕、これからアフリカ勢というのは、これからアメリカのR&Bに対してのいいオルタナティヴになるのではないかと思っていて。アメリカ国内のR&Bが表現的にかなり頭打ち(いわゆるネオ・ソウルは除いて)の状態が続いてますけど、そこに対して新しいサウンドのヒントを提示できる立場にあるのがアフリカではないかと。そこに着目した「ブラック・パンサー」とか「ライオン・キング」のサントラのセンスって素晴らしいと思うんですけど、こうした波でリーダーになれそうなのがバーナ・ボーイですね。スタイルとしてはUKソウルに近くはあるんですけど、随所にアフリカ的なポリリズムやアフリカン・ゴスペルの要素を混ぜていて。冒頭のナンバーではいきなりユッスー・ンドゥール御大が例の甲高い祈祷みたいな美声を轟かせてもいて。そんな中で、魅惑のロウ・ヴォイスをクールに響かせ続けるバーナ・ボーイ自身のブレなさが素敵です。

38.Song For Our Daughter/Laura Marling

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38位はローラ・マーリング。彼女のアルバムを年間ベストに入れるのは結構久しぶりですね。彼女は2000年代の終わりくらい、まだ10代だった頃にマムフォード&サンズとかノア&ザ・ホエールといったUKインディ・フォーク・ムーヴメントのひとりとして出てきたんですけど、2枚目、3枚目のときはその才能にとにかく驚きましたね。ソングライティング、歌声ともに甘ったるいポップな要素が全くなく、すごく本物感が漂ってましたからね。ただ、「緊迫感で聴かせる」ことにこだわり続けたからなのか、ある時期から聴いててちょっと息が詰まりそうになってそれが鼻について嫌になって聞くのやめてたりもしたんですけど、久しぶりに評判もかなりよかった本作では、そうした肩の力が抜けた、いい意味でリラックスして包容力のある作品を作ってきましたね。60〜70年代のザ・バンドとかスティーヴン・スティルスみたいな土着的でソウルフルなフォーク表現を体得したのが大きいかと思いますが、歌そのものにより言語を超えた力強さとぬくもりが加わったと思います。まだ30歳になったばかり。ここからが気になります。

37.Inner Song/Kelly Lee Owens

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続いて37位はケリー・リー・オーウェンズのセカンド・アルバム。彼女は元々がエレクトロのトラックメイカーだったところからシンガーソングライターになった人です。それゆえにアンビエント系の曲での電子音の選び方にすごくエッジがあって、そこいらのエレクトロをバックにした女性シンガーよりも圧倒的に存在感が強いんですけど、そのトラックに乗る彼女自身のすごく細いキュートなささやき声とのコントラストが絶妙ですね。2枚目となるこのアルバムでは、レディオヘッドの「In Rainbows」の名曲「Arpeggi」からはじまり、80sのコクトー・ツインズとかあのあたりの元祖シューゲイザー、ドリームポップを21世紀にテクノロジーとともに更新した幻想的な浮遊感を巧みに表現してますね。

36.On Sunset/Paul Weller

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36位はポール・ウェラー。大英帝国が誇るモッド・ファーザーは一昨年の還暦を迎えましたが、「怒れるネオモッズの若者」のときと同様に元気いっぱいです。このアルバムでウェラーは、イギリスでは80、90、00、10、20年代と5世代連続で全英1位という偉業も達成。しかも全部オリジナル・アルバムで成し遂げたのに意義があるんですけど、その記念すべきアルバムがキャリアの中でも上位に入る出来だったことも評価できます。30代後半から60s後半スタイルのソリッドデブルージーなロックンロールを展開して、このまま頑固おやし的に年をとるのかなと思いきや、50代からスタジオのエフェクトを使ってエレクトロとは違う形でサウンドを進化させて来てるウェラーですけど、このアルバムはその路線での会心作ですね。ドラムとキーボードを主体としてリズムを進化させながら、彼本来のいぶし銀のソウル・フィーリングをより熟成させてね。今のウェラー、もっと多くの人に知ってほしいです。

35.Disco/Kylie Minogue

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35位はカイリー・ミノーグの「Disco」。今年はデュア・リパの「Future Nostalgic」やBTSの「Dynamite」もそうですけど、”ディスコ”がトレンドだったところがある音楽界ですけど、「だったら私も呼べ」という感じで秋に出てきたのが、もう30年ダンス・クイーンとして君臨し続けるカイリーですね。もう、こういう主題のものやらせたら彼女、天才的にうまいし、説得力抜群です。もう、看板に偽りなし。甘美なストリングスにほのかなエレクトロ・ビートをたずさえた、1978〜79年頃に本当に存在してそうな、ディスコの中のディスコな曲が目白押し。個人的なツボはやっぱり、クール&ザ・ギャングの名バラード「Cherish」のコード進行抜き取って別の曲に仕立て上げた「Magic」にラテン・グルーヴ的なコード進行の光る「Monday Blues」かな。あと、50代になろうが、自慢のキュートで繊細なハイトーン・ヴォイスが全く衰えないのも大したもの。どんなに評判良かろうがどうしてもかねてからのジェネリック感が払拭できないリパよりは、やっぱり僕はこっちですね。

34.Working Men's Club/Working Men's Club

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34位はワーキング・メンズ・クラブ。ヨークシャー出身の、UKインディ・ロックの世界では今年の新人賞候補のシンセ・ポップ・バンドです。「メンズ・クラブ」の名前でありながら女性メンバーがひとりいます。いわゆるシンセ・ポップのバンドというと、「また、エイティーズ?」と思われるかもしれませんが、ひとくちに「エイティーズのエレクトロ」といっても実はかなり広いものなのですが、彼らの場合はこの時代の後半のアシッド・ハウス的なところから、この時代の初期のキャバレー・ヴォルテールあたりのエクスペリメンタルなポストパンクを思い出させたりもするなど、博識さに裏打ちされたかなり真摯なマニアックさを感じさせるのが心憎いところです。しかも、それだけ時代を網羅してるのに統一感があってね。一貫して、あえての無機質なクールさ。ドイツあたりでカリスマ人気出そうな雰囲気持ってますね。

33.Alfredo/Freddie Gibbs&The Alchemist

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33位はフレディ・ギブス。今年のヒップホップの流行りのひとつに「オヤジの逆襲」みたいなところがあるんですが、今回のこの年間ベストにそれ、顕著です。その第1弾が38歳のフレディ・ギブスです。僕は彼のことを気にしたのは一昨年のアルバムですね。そのときは彼がジャケ写でフィリー・ソウルの名シンガー、テディ・ペンダーグラスのパロディをやってて「インディで注目」みたいな感じでいわれてたものなんですが、そこから2年でビルボードのトップ20に入るくらいまで人気上がってきました。この人はアルバムごとにトラックメイカーのパートナー選んで共作という形で発表してるんですけど、今回選んだのはジ・アルケミスト。その昔、エミネムの公式DJもやってた、この人も40代のベテランですけど、彼の繰り出す徹底した70sソウルの洗練されたトラックがまずかっこいいです。でも、そこに、ディープな低い声で、すごくキレのいい韻踏みで、暴力とクスリに関してかなりえげつないことラップしてるフレディ本人の存在感が一番光ります。「伝説のワル」感あってカッコいいんですよ。こういう表現は年重ねた方が説得力、あるかもしれませんね。

32.It Is What It Is/Thundercat

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32位はサンダーキャット。なんか前作「Drunk」ですっかりおしゃれっぽい感じの人になってしまったサンダーキャット。それまで知る人ぞ知るジャズ・ベーシストだった人にこういう成功もたらしたケンドリック・ラマーおそるべし、という感じでしたけど、ただ、前作に関して僕の本音を言うと「いいけど、アース・ウインド&ファイアと何が違うの?」という感想でしたね。ただ、それが今作になると、まあ、これもまたアース・ウインド&ファイアではあるんですけど(笑)、今回の方がドラムのパターンが複合的になってリズムがすごくかっこよくなってたり、コード進行に凝ってる曲が目立つようになってますね。70s前半のウェスト・コースト・ロックみたいな曲あるし。要はこれ、彼がソングライティングという作業に慣れてきたということなんだと思います。演奏家としてはすでに超一流なわけですから、これから芽生えてきたこういう要素を伸ばしていけば、まだまだ化ける可能性、あると思います。

31.Color Theory/Soccer Mommy

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そして31位はサッカー・マミー。僕は彼女、2018年のデビュー・アルバムのときから大好きで、あのアルバムをあの年の4位にいきなり入れたりもしています。今作はそのアルバムより順位こそ下になりましたけど、本人のたしかな成長はかなり濃厚に感じさせるアルバムです。彼女、幼少時に聞いたアヴリル・ラヴィーンの影響で、ソングライティングを手がけたザ・メイトリックスの今聞いてもかっこいい部分だけど突き詰めて曲書いてるような印象があるんですけど、今回のアルバムでもその妙味は健在で、特にアルバムの前半、「Circle The Drain」あたりに顕著ですね。彼女なりの探究心ゆえにエイミー・マンあたりに通じる曲を書けるようになってます。そして今回はそこにドリームポップの要素が加わるようにもなっていて、彼女の曲のパターンがふえてきてます。「Yellow Is The Color Of Her Eyes」は彼女のこれから不可欠な代表曲になると思います。あと、自信なさげに甘えた声で歌ってたヴォーカルにも安定感出てきて、かなり聞きやすくなったのも大きいです。ここ最近、ロックの女の子のシンガー、増えてきて注目も浴びつつあるので、これから波に乗れそうな気がしてます。

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音楽ジャーナリスト。90年代にNHK-FMで番組を制作した後、99年よりフリー。2004年にインディ・ロック・マガジン「Hard To Explain」を立ち上げる。2010年よりサンパウロに移住。同年に洋楽・洋画・海外ドラマ専門ブログ「THE MAINSTREAM」をはじめる。