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宇宙に還ったダフト・パンク〜誰からも愛されたエレクトロのゲーム・チェンジャー

どうも。

通常なら全米チャートなんですが、その前にこれはどうしても独立した情報として出さないといけないものなので、ここでやっておきます。

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本当に残念でなりません。ダフト・パンクが解散を発表しました。

いやあ〜、思い出は本当に多くありますよ。僕にとっては

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お世辞にもエレクトロ体質と言えず、そんなに興味もなかった僕でも、この4枚、プロディジーの「Fat Of The Land」、ケミカル・ブラザーズの「Dig Your Own Hole」、モービーの「Play」、そしてダフト・パンクの「Homework」は愛聴しましたからね。今も決して強いなどとは言えないものの、これらがあったおかげで僕はなんとかエレクトロ聴けてると思うし、クラブ向け、単一楽曲で勝負していたイメージだったエレクトロをアルバム単位にまで押し上げて、それらをこれまでにない規模で大衆的にヒットもさせた。その意味ではやはり、かなりグラウンドブレイキングな存在だったとは思いますからね。

印象でいうなら、やっぱりプロディジーやケミブラはロックとの接点、モービーはラジオにも乗るようなソングライティングへの昇華、これが素晴らしかったと今にしても思うんですけど、僕がダフト・パンクをはじめて聞いた時の印象は

これ、ありなの(笑)?

今にしてみたら、もうあまりにもエスタブリッシュされすぎていて、なかなかこういうことも言いにくいんですけど、出てきた時は本当にそんな感じでしたよ。

「えっ、なに、このワワワワ〜ンってフレーズ(笑)」って感じですね。なんか、その直前、95、96年頃のエレクトロって、たとえばドラムン・ベースもあったしハードコア・テクノとかあったし、あとはビッグビートも出てきたてでしたけど、97年の前半にはじめて耳にしたこの曲は、そんな中でいきなり投げられた、ものすごく遅いチェンジアップみたいな意表のつき方をしましたね。で、それが突然イギリスのチャートの上位にきて。

「なんか恥ずかしい感じもあるんだけど、これ、かっこいいの(笑)?」と思っているうちにすごく癖になって大好きになりました。

それは

この曲でもそうでしたね。これも、かっこいいんだかどうだかわかんないんだけど、なんか引き込まれるというか。これ、聞いてるうちに、エイティーズの頃に僕自身、シンセポップが大好きだったことを改めて思いだしたんですよね。デュラン・デュラン、ヒューマン・リーグ、ソフト・セル、ABCとか、ああいうあの当時のMTVチャートの上位に入っていたような。あのとき中学生でしたけど、「ああ。あのときと同じような無邪気な感じで好きになっていいんだ」と、自分の音楽遍歴まで改めて誇らしくなったというか。この時点までああした80s前半のシンセポップってすごく軽んじられていたというか。かなり下に見られてたんですけど、あのチープなんだけど楽しげな感覚って、こんな風にアップデートできるものなんだと思って。「じゃあ、僕はこれを選ぶよ!」と思ったものでした。

そして、2000年の終わりに

これのドッヒャー感がまたすごくてね(笑)!「おい、松本零士かよ!」「ベースの姉ちゃん、まんまメーテルじゃん」「このバンドイメージ、ちょっと古くない?」とか、そういうツッコミを友達と共有しましたもんね。

曲調も、本格的にヴォーカル曲なんですけど、「We Don't Stopダッ!You Can't Stop ダッ!」って、おいおいマイケル・ジャクソンかよって思ったりもして。で、これまた癖になってね。

これもかっこいいのかどうかよくわからないまま、でも「多幸感がある!」とかっていってロッキングオンとかスヌーザーとかでもすごく絶賛されて。

そうやって出たのが

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セカンド・アルバムの「Discovery」。そうしたらこれが、アルバムも、上の松本先生のアニメもアルバム全体で完成するという、プログレみたいな作りになってて。しかも、松本アニメが懐かしい世代から子供たちまでに対して!

こういうアイデアのアルバム、ほかにいまだに聞かないですよねえ。実は、僕の息子のトム、彼が今8歳なんですけど、このアルバム、大好きなんですよ!いかに、このアルバムが親しみやすく、広いリスナー層へリーチするものかを伝えてますよね。

そして、これ、コンセプトだけでなくて

この2曲なんて特に顕著でしたけど、すごくAORテイストがあるというかね。これも2001年ですからね。あの当時の感覚からしたら、まだそんなにこういうテイストって世間一般での再評価って進んでなくて。僕自身は80s育ちでもあったから、ニュー・ウェイヴにソウル・テイストがあるものなんてむしろ普通だったから嬉しくてですね。特にまだあの当時って、インディ・ロックのR&B要素の薄さってかなり目立ってきてもいて。そういうこともあって、なお共感できましたね。あの頃、彼らの盟友でもあるフェニックスとか、あとタヒチ80もそういうテイスト出してたんですけど、フランスの一部ではそういうのを求めているのかな、とある種の興味深い特異性を感じましたね。これ、シティポップ・リバイバルなんて出てくる10数年前の話です。

このアルバムは大ヒットしてプロモーションも長く続いて。そんな折り、2002年だったかな。このアニメ、「インターステラー5555」の完成披露回が東京でありまして。で、このときにですね、僕、

素顔の2人にインタビューしてます。

これは嬉しい体験でしたね。なんか、漫才コンビみたいなルックスの2人でしたね。一方がひょろひょろの長身で、もう一方が恰幅のいい小柄さで。ただ、2人ともすごく物腰柔らかくてシャイな雰囲気だったのを覚えてます。

で、そこから音沙汰なくなって2006年になってようやくサード「Human After All」を出したわけなんですけど

前作が大衆的な感じだったので、このときはかなり、この人たちなりにパンキッシュでハードなのを作ったんですけどね。求められていたものと違ったか、あんまり売れなかったんですけど、今聞いてもかっこいいし、再評価あってもいいんじゃないかなとは思うんですけどね。

ただ、その矢先に

カニエ・ウェストのエレクトロ化ですよ。「Harder Better Faster Stronger」を大胆にサンプリングした「Stronger」が大ヒットして。これで「Discovery」の威力が改めて示されて。僕はMVの「ガソバレ!」「モウダメダ!」というカタカナが気になりましたけど(笑)。ただ、ここでR&B/ヒップホップとの相性がいいことを示したのはダフト・パンクにとって大きなプラスでした。

そして

2013年、ダフト・パンクは「Get Lucky」で戻ってきましたけど、この時点で、「これは間違いないな」と思いましたね。まずはファレルとの相性ですよね。彼もコード進行の洗練度で勝負するタイプのソングライターで、実際、「スティーリー・ダンやアメリカからコードを学んだ」と言ってたくらい。似た者同士の共演だと思ったし、そこに70sディスコの大物ナイル・ロジャースと、彼得意のカッティング・ギターですよ。「これは絶妙だなあ」と思っていたら

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「Random Access Memories」の登場ですよ。これはもう、文句なしの彼らの最高傑作でしたね!

このアルバムって、彼らが敬意を表すところのディスコ、そしてセカンドで感じさせたAORやシティ・ポップにオマージュを捧げながら、それだけで終わらないより包括的な音楽性を、スケール大きくアルバム全体で表現できたところが素晴らしいです。

このように70sのミュンヘン・エレクトロ・ディスコの立役者ジョルジオ・モロダー本人の語りを取り入れたオマージがあったかと思ったら

ザ・ストロークスのジュリアン・カサブランカスとの共演でロックを表現し、

さらにはソフトロックの大物ソングライター、ポール・ウィリアムスに自ら歌わせた華麗なる名バラードの「Touch」まであるというね。

この当時ってEDMの全盛期でしたね。僕の知人のひとりが「これはEDMを終わらせる力のあるアルバムだ」って言っていたのを思い出します。実際にはすぐには終わらなかったものの、今、ビルボードのシングル・チャートみても、あの、なんていい方するのかよくわかんないんですけど、あの当時によく聞いたような「ポーパッパ、ポーパッパ、ドゥクドゥクドゥクドゥク、ボガーン」みたいな妙なお約束のEDM、100位の中に1曲たりとも入ってないですよ!

あのEDMのブームって、妙なギミックをフックにしてキッズ達の気を引こうとしていたとこがあって僕はそこが正直苦手だったんですね。だけど、そこにくるとダフト・パンクって、楽曲は大衆的なんだけど、曲の作りそのものはこれ以上の正統派はいないってくらいに、メロディやコードの美しさを大事にしたいい曲書くじゃないですか。やっぱり普遍になるか、いっときの流行りで終わるかは、こういうとこの差だと思いますよ。

このアルバムは2014年2月のグラミー賞でも、史上初となるエレクトロの作品でのアルバム・オブ・ジ・イヤーに輝きました。97年のあのシーンへの登場の仕方を覚えているから立場からいうと、もう痛快だったし、その成長ぶりが本当に嬉しかったですね。

そして2016年にはザ・ウィーケンドとのコラボですよ。やっぱりダフト・パンクはこのウィーケンドのような、ソウルな歌心とニュー・ウェイヴ的なエレクトロ・サウンドの両方をバランスよく大事にできるタイプのアーティストと相性がいいですね。ここでの共演の成果があって、ウィーケンドも「AFter Hours」のような充実作をこのあと作れたんじゃないのかなとも思ってます。

そして2021年、「そういえば、もう8年も経つし、今年こそはニュー・アルバムを・・・」と思っていた矢先だったわけなんですけどねえ・・・。

もちろん本当に残念なんですけど、でも、この20年くらいに及ぶ、彼らの「地球でのミッション」は大成功だったと思います。当初、「なんで今頃、それを?」と思われていたサウンドを20年もずっと旬なものに変え、さらにそれを老若男女問わずタイムレスなものにさえしたんだから・・・。もう、お見事としかいいようがないですよ。

宇宙服はどこかに置かれても、今後も彼らがそれぞれののちのキャリアで作る音楽がなんらかの影響力を持つこともあるだろうし、彼らが残したものもずっと語り継がれるでしょう。

キャリア包括ベスト盤が出てABBAとかクイーンみたいにずっと売れ続けないかな。そのポテンシャルなら十分持ってる存在だと思うので。











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