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「みんなが選ぶ洋楽オールタイムベストアルバム100」の結果で思うこと

どうも。

昨年の10月のことですが

「みんなが選ぶ邦楽オールタイムベストアルバム100」というツイッター企画があって、それを当ブログで紹介したら、ものすごい反響をいただきました。

すると、昨年末にですね、これの洋楽版をやろうとする動きが起こりまして

この「旭川の佐藤仁苗」さんという方が、発起人になって企画をしてくれました。ご本人のサイトでも結果を500位まで発表されているのですが、今回ここで100位までを紹介したいと思います。

では、順位結果、いきましょう。

1.(What's The Story)Morning Glory?/Oasis(1995)
2.OK Computer/Radiohead(1997)
3.Loveless/My Bloody Valentine(1991)
4.The Stone Roses/The Stone Roses(1989)
5.Kid A/Radiohead(2000)
6.Pet Sounds/The Beach Boys(1966)
7.Revolver/The Beatles(1966)
8.Nevermind/Nirvana(1991)
9.The Bends/Radiohead(1995)
10.To Pimp A Butterfly/Kendrick Lamar(2015)
11.The Beatles/The Beatles(1968)
12.A Brief Inquiry Into Online Reationships/The 1975(2018)
13.Abbey Road/The Beatles(1969)
14.The Joshua Tree/U2(1987)
15.The Rise And Fall Of Ziggy Stardust/David Bowie(1972)
16.Is This It?/The Strokes(2001)
17.Definitely Maybe/Oasis(1994)
18.Dark Side Of The Moon/Pink Floyd(1973)
19.The Queen Is Dead/The Smiths(1986)
20.Funeral/Arcade Fire(2004)
21.London Calling/The Clash(1979)
22.Weezer/Weezer(1994)
23.Yankee Hotel Foxtrot(2002)
24.Screamadelica/Primal Scream(1991)
25.Since I Left You/Avalanches(2001)
26.Who's Next/The Who(1971)
27.Voodoo/D'Angelo(2000)
28.In Rainbows/Radiohead(2007)
29.Mellon Collie And The Infinite Sadness/The Smashing Pumpkins(1995)
30.IV/Led Zeppelin(1971)
31.Achtung Baby/U2(1991)
32.Appetite For Destruction/Guns N Roses(1987)
33.Whatever People Say I Am, That's What I'm Not/Arctic Monkeys(2006)
34.Pinkerton/Weezer(1996)
35.Velvet Underground & Nico/Velvet Underground & Nico(1967)
36.Remain In Light/Talking Heads(1980)
37.AM/Arctic Monkeys(2013)
38.A Night At The Opera/Queen(1975)
39.Blonde/Frank Ocean(2016)
40.Automatic For The People/REM(1992)
41.Sign O The Times/Prince(1987)
42.My Beautiful Dark Twisted Fantasy/Kanye West(2010)
43.What's Going On/Marvin Gaye(1971)
44.Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band/The Beatles(1967)
45.Tapestry/Carole King(1971)
46.Rubber Soul/The Beatles(1965)
47.Discovery/Daft Punk(2001)
48.In Utero/Nirvana(1993)
49.Blue/Joni Mitchell(1971)
50.American Idiot/Green Day(2004)
51.Purple Rain/Prince & The Revolution(1984)
52.Agaetis byrjun/Sigur Ros(1999)
53.Marquee Moon/Television(1977)
54.Nowhere/Ride(1990)
55.Wish You Were Here/Pink Floyd(1975)
56.Illinois/Sufjan Stevens(2006)
57.Exile On Main St./Rolling Stones(1972)
58.After The Gold Rush/Neil Young(1970)
59.Odessey & Oracle/Zombies(1968)
60.Songs In The Key Of Life/Stevie Wonder(1976)
61.Beggar's Banquet/Rolling Stones(1968)
62.Illmatic/NAS(1994)
63.The Downward Spiral/Nine Inch Nails(1994)
64.Currents/Tame Impala(2015)
65.Mezzanine/Massive Attack(1998)
66.Back In Black/AC/DC(1980)
67.Californication/Red Hot Chili Peppers(1999)
68.War/U2(1983)
69.The Black Parade/My Chemical Romance(2007)
70.Disintegration/The Cure(1989)
71.Doolittle/Pixies(1989)
72.Parklife/Blur(1994)
73.Cafe Bleu/The Style Council(1984)
74.Hotel California/Eagles(1977)
75.Begin/The Millennium(1968)
76.Let It Bleed/Rolling Stones(1969)
77.In The Court Of Crimson King/King Crimson(1969)
78.In The Aeroplane Over The Sea/Neutral Milk Hotel(1998)
79.Hot Fuss/The Killers(2004)
80.Unknown Pleasures/Joy Division(1979)
81.Up The Bracket/The Libertines(2002)
82.Sticky Fingers/Rolling Stones(1971)
83.Off The Wall/Michael Jackson(1979)
84.Innervisions/Stevie Wonder(1973)
85.Crooked Rain, Crooked Rain/Pavement(1994)
86.()/Sigur Ros(2002)
87.Modern Vampire Of The City/Vampire Weekend(2013)
88.There's A Riot Goin On/Sly & The Family Stone(1971)
89.Never Mind The Bollocks/The Sex Pistols(1977)
90.Merriweather Post Pavillion/Animal Collective(2009)
91.Rage Against The Machine/Rage Against The Machine(1992)
92.Red/King Crimson(1974)
93.Daydream Nation/onic Youth(1988)
94.The Soft Bulletin/The Flaming Lips(1999)
95.Meteora/Linkin Park(2003)
96.II/Led Zeppelin(1969)
97.Odelay/Beck(1996)
98.II/Queen(1974)
99.High Land, Hard Rain/Aztec Camera(1983)
100.Rumours/Fleetwood Mac(1977)

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いやあ、こうジャケ写を並べると壮観ですね。

1位を獲得したのはオアシスの「モーニング・グローリー」でレディオヘッドの「OKコンピューター」がそれを追う展開で終わりました。

こうやって100位まで全体で見た感じだと、まあ、「UKロックと90年代に寄った感じが強いな」とは思いつつも、

概ね妥当だな

というのが率直な感想ですね。

普段、いろんな方と洋楽の話をする際に名前として見聞きするものとほとんど変わらないですね、これ。その意味で違和感が全くないというか。

特に意外なものも、100位以内でも、そうは多くないかな。あるとしたら、

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75位のザ・ミレニアムの「Begin」くらいかな。これは90sの渋谷系のブームのときに人気のあった60sのソフトロックの名盤なんですけど、こんなに受け継がれていたものだったんだなとびっくりしましたね。

あとは78位のニュートラル・ミルク・ホテルかな。でも、このアルバムに関して言えば、ピッチフォークみたいなUSインディロックとの結びつきの強いメディアのオールタイム・ベストだと必ず上位に入るようになってますからね。そういうとこで気になった人が結構いるんでしょうね。こういうところは日本のリスナーの海外メディアのオールタイム・ベストへの関心の高まりと影響を感じさせますね。

ここでは、僕の興味で部門別で見てみることにしましょうか。

<100以内最多ランクイン>
1.ビートルズ(5枚)
2.レディオヘッド(4枚)
 ローリング・ストーンズ(4枚)
4.U2(3枚)

100位の中にもっともアルバムを入れたアーティストはビートルズで、レディオヘッドがそれを追う、というのもすごくわかりやすいですね。今回、あまり上位には入らなかったストーンズもなんだかんだで4枚。U2の健闘も目立ってますね。

<70年代ロック>
1.The Rise And Fall Of Ziggy Stardust/David Bowie(1972)
2.Dark Side Of The Moon/Pink Floyd(1973)
3.London Calling/The Clash(1979)
4.Who's Next/The Who(1971)
5.
IV/Led Zeppelin(1971)
6.
A Night At The Opera/Queen(1975)
7.
Tapestry/Carole King(1971)
8.Blue/Joni Mitchell(1971)

9.Marquee Moon/Television(1977)
10.Wish You Were Here/Pink Floyd(1975)

象徴的なのは、「ホテル・カリフォルニア」とか「クリムゾン・キングの宮殿」よりもボウイ、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリンの方が上にくる順列になってますね。あと、パンクの名盤がハードロック、プログレ、グラムを凌駕して目立つようになってきているのも気になりますね。

<80年代ロック>
1.The Stone Roses/The Stone Roses(1989)
2.The Joshua Tree/U2(1987)
3.The Queen Is Dead/The Smiths(1986)
4.Appetite For Destruction/Guns N Roses(1987)
5.Remain In Light/Talking Heads(1980)
6.Sign O The Times/Prince(1987)
7.Purple Rain/Prince & The Revolution(1984)
8.Back In Black/AC/DC(1980)
9.
War/U2(1983)
10.Disintegration/The Cure(1989)

テクニカルな意味でローゼズなんですが、作品のインパクトとしてはすでに90年代的ですよね。そうじゃなければU2、プリンス、ガンズが強くスミス、キュアーのニュー・ウェイヴも続く形ですね。

<21世紀以降>
1.Kid A/Radiohead(2000)
2.To Pimp A Butterfly/Kendrick Lamar(2015)
3.A Brief Inquiry Into Online Reationships/The 1975(2018)
4.Is This It?/The Strokes(2001)
5.Funeral/Arcade Fire(2004)
6.Yankee Hotel Foxtrot/Wilco(2002)
7.Since I Left You/Avalanches(2001)
8.Voodoo/D'Angelo(2000)
9.In Rainbows/Radiohead(2007)
10.Whatever People Say I Am, That's What I'm Not/Arctic Monkeys(2006)

オールタイムって、割と20年前くらい前のもので止まってしまいがちなんですけど、このリストに関しては21世紀以降のものが堂々と多いんですよね。そこも評価すべきだと思います。

続いて、ソウル/R&Bものに関して

<R&B/ヒップホップ>
1.To Pimp A Butterfly/Kendrick Lamar(2015)
2.Voodoo/D'Angelo(2000)
3.Blonde/Frank Ocean(2016)
4.Sign O The Times/Prince(1987)
5.My Beautiful Dark Twisted Fantasy/Kanye West(2010)
6.What's Going On/Marvin Gaye(1971)
7.Purple Rain/Prince & The Revolution(1984)
8.Illmatic/NAS(1994)
9.Off The Wall/Michael Jackson(1979)
10.Innnervisions/Stevie Wonder(1973)

日本のこの手の洋楽オールタイムだと、これまでだったらロック一辺倒になっていたところが、今回のこのオールタイムでは11枚入ってます。いいことだと思いますね。去年紹介したローリング・ストーンのオールタイムだと、とてもあの読者の実情からはほど遠い、ブラック・ミュージックがトップ50のうち半分を占めるという、ポリコレを意識したウケ狙いの無理やりな選び方より自然だと思います。意地にならなくても、この数、今後、自然と増えていくはずなので、日本のオールタイムだとまずはこのくらいからはじめるのでいいかと思います。

<HR/HM/Nu-Metal>
1.IV/Led Zeppelin(1971)
2.Appetite For Destruction/Guns N Roses(1987)
3.A Night At The Opera/Queen(1975)
4.Back In Black/AC/DC(1980)
5.Rage Against The Machine/Rage Against The Machine(1991)
6.Meteora/Linkin Park(2003)
7.II/Led Zeppelin(1969)
8.II/Queen(1974)
9.Master Of Puppets/Metallica(1986)
10.Physical Graffitti/Led Zeppelin(1975)

ここの部門が以前より激減した印象ですね。クイーンやニュー・メタルを拡大解釈して増やしてもトップ100に10枚入らなかった。メタリカが最高位でも100位圏外だったことでも象徴的だったというか。

それに対して

<US Indie>
1.Funeral/Arcade Fire(2004)
2.Yankee Hotel Foxtrot/Wilco(2002)
3.Illinois/Sufjan Stevens(2006)
4.Doolittle/Pixies(1989)
5.In The Aeroplane Over The Sea/Neutral Milk Hotel(1998)
6.Crooked Rain,Crooked Rain/Pavement(1994)
7.
Merriweather Post Pavillion/Animal Collective(2009)
8.Daydream Nation/Sonic Youth(1988)
9.Bitte Orca/The Dirty Projectors(2009)
10.Carrie & Lowell/Sufjan Stevens(2015)

このUS Indieが以前からは考えられないくらいに増えましたね。これはピッチフォークが全盛になってからの若めのリスナーが加わった結果でしょうね。アニマル・コレクティヴ、ダーティ・プロジェクターズ、スフィアン・スティーヴンスがヴァンパイア・ウィークエンドよりも上位に来たことから考えても、コア度の高さをうかがわせます。

あと、残念なのは、本当に女性アーティストが少なすぎることですね。トップ100にわずか3アーティストですよ!ここは改良の余地が大きくありますね。

<Female Artists>
1.Tapestry/Carole King(1971)
2.Blue/Joni Mitchell(1971)
3.Rumours/Fleetwood Mac(1977)
4.Homogenic/Bjork(1997)
5.Dummy/Portishead(1994)
6.Judee Sill/Judee Sill(1971)
7.When We Fall Asleep,Where Do We Go/Billie Eilish(2019)
8.Heart Food/Judee Sill(1973)
9.Back To Black/Amy Winehouse(2006)
10.Post/Bjork(1995)

この後にラナ・デル・レイの「Norman Fucking Rockwell」やビヨンセの「Lemonade」が続く感じなんですけどね。このあたりをみると、選ぶ人の「女性アーティストの名盤で何を入れたら良いのかわからない」という迷いみたいなものを感じますね。邦楽でも「林檎、宇多田、ユーミン」の3つしかパターンがないみたいな感じがしましたからね。

まず、名盤ではあるんですけど、欧米のオールタイムで必ず上位にくるパティ・スミスの「Horses」、ブロンディの「恋の平行線」、ケイト・ブッシュの「Hounds Of Love」みたいな名前が入ってこないところが寂しいというか。この辺りが、「パンク/ニュー・ウェイヴがフェミニズム的に大事だった」という史観が日本で不足してきたことを示しているというか。日本だと70s初頭の女性シンガーソングライターが逆に他の国よりも評価高いですからね。あと、今回の投票でフリーク・フォークのファンが固まって票を入れたからだと思うんですけど、ジュディ・シルは他のオールタイムだと、まず入らないでしょうね。日本でことのほか、カルト名盤化してる印象がありますね。

あと、母集団の数がちょっと少な目だったからなのか、100位以下だと、各ジャンルでの定番作がすごく目立つようになります。ポストロック、初期エモ、エレクトロ、メタル、プログレ、USインディ、ヒップホップとかなり割れるんですけど、このあたりを見てると、「ある時期から日本、洋楽は”ジャンル・ファン”が多いんだな」という印象を抱きましたね。洋楽全体を包括できる人が多くない印象ですね。タワー・レコードの「bounce」あたりの影響もあるのかな。CD時代だと、そうなっても仕方ない側面も実際あったからしょうがないのかな。どんなにお金持ってても全体を聞くにはあまりに量が多すぎたから。

ただ、これがサブスク時代になって、ボタンひとつでいろんなジャンル、聞こうと思えば可能な時代は、これが減ってジャンル横断型になっていくのではないのかな。そんな印象も抱きました。

あと、参加した方たちのあいだで、こうしたオールタイム企画に慣れてきている印象もいだきましたね。選んでくるアルバムで前よりそういうセンスを強く感じさせました。前述のニュートラル・ミルク・ホテルもそうですし、圏外だとキャプテン・ビーフハートの「Trout Mask Replica」やラヴの「Forever Changes」みたいなアルバムを選ばれたりしてましたからね。これはすごく興味深い現象だとも思いました。

これ、すごく興味深い統計なので、よかったら

500位までが掲載されている、この主催者さんのサイトをご覧になってください。

 














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