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グラミー賞2024を終えてみて

どうも。

ここでグラミーの話でもしておきましょうかね。

まあ、ぶっちゃけて言ってみれば

ノミネートほどには面白くなかった!


これに尽きますね。

僕が個人的にエキサイトしたのは

ロック部門をパラモアとボーイジーニアスが独占したことくらいですね。この女性フロントの2バンドがですよ。ロック、オルタナティヴ部門の5つのうち4つを独占したんですよ!しかも部門最大の栄誉であるロック・アルバムをパラモアが、オルタナティヴのアルバムをボーイジーニアスが受賞しました。これはさすがにアガリましたね。

 とりわけパラモアは感慨深かったですね。これまでのバンドの紆余曲折を思うと。デビュー時はヘイリーのソロで売られそうになり、ブームがきたらアイドル扱いされ絶頂期に メンバー2人脱退で解散危機。継続したのを期に音楽性を変えて批評的にはここから絶賛されるようになったものの、エモ・ファンには不評で。でも、意思を曲げずにここまできて、女性フロントのバンドで初めての栄誉。最近は後続の女性アーティストに最も尊敬されるアーティストの一人になったヘイリーにとっての勲章ですよ、これは。

でも、せっかくのこの栄誉がテレビ放送のある前の時間帯で完結するんですよね。授賞式のロック代表は何の部門にもノミネートされてないU2の、特に何の話題にもなってない少し前に出た新曲。グラミー、本当に気が利かないよなあとは思いますよね。

だから、授賞式前にして、関心なかったんですよ。だって、その後も、オリヴィア・ロドリゴとラナ・デル・レイが何も受賞しない。SZAが主要部門受賞しないんだもん。そんなのつまんないですよ。

美味しい目にあうの、結局、この人なんだもん。

はい。テイラー・スウィフトですね。何も別にこの人の音楽的功績認めないとか、そういうのじゃないですよ。4回受賞した最優秀アルバムのうち、2回は妥当だとも思いますよ。でも、今回のMidnightsが受賞に値するアルバムだとは思わないし、媒体の年間ベストをチェックするような人なら、このアルバムが決して2022年のベスト作の評価ではなかったことも知ってるはずです。それで言うんだったら、やはり受賞に一番近かったのはSZAのSOSであり、ボーイジーニアス、ラナの順で、テイラーはせいぜいその次くらい。それで世間のネーム・ヴァリューを味方につけて知名度だけで勝っちゃうんだもん。そんなの面白くないですよ。

しかも、テレビの映し方も完全に主役でしょ。オリヴィアのパフォーマンス中、それにノリノリなテイの姿を長く映したり、自分の受賞のタイミングで新作の宣伝したり、さらには

無冠に終わったラナを本人が望んでもないのにステージに上げて、マブダチ・アピールですよ。本人どう思ってたか知らないですけど、よほどのスウィフティーズでもない限り、引きますよね(苦笑)。

なんか、音楽業界の中でそこまで権力を集中させなければ、僕もそこまで文句言う気もないんですけど、ちょっとこれ、ある時期のマイケル・ジャクソン並みか、それ以上なんだもん。

まあ、そんな中

レコード・オブ・ジ・イヤーに輝いたマイリー・サイラスは、歌い手としての成長を文句なしのパフォーマンスで証明して立派でしたよ。アルバム出た後にほとんど活動しないで心配させた後だったから気になってましたけど、もう、これ見たら安心できましたね。

ソング・オブ・ジ・イヤーのビリー・アイリッシュもいつものことなんですけど、パフォーマンス、外しませんね。聴き手に集中力を与える見事なパフォーマンスだったと思います。

あと、僕が気になったものといえば

ファンテイジア・バリノのティナ・ターナー・トリビュートと、ラップ部門独占したキラー・マイクですね。これはすごく良かったと思います。

 僕に関して、R&B/ヒップホップへの批判がきついみたいに思われていらっしゃる方がいたようなのでこの場を借りて言わさせていただきたいのですが、僕が批判してるのは、音楽じゃなくて、その業界の姿勢です。ブラック・ミュージック自体は遡って聴いて50年代くらいからずっと好きでリスペクトもし続けています。いずれの時代にも好きなアーティストいるし。ただ問題なのは商売の仕方なんですよね。リアルタイムで80年代からずっと見てきてますけど、いったん「これが売れる!」と決めたら同じようなものばかり大量生産し、プロデューサーも使い回し。結果、同じようなサウンドばかりの粗製乱造。その傾向って、80年代からずっとあって、僕も好きになって近づいたり飽きて離れたりを続けて半ば「腐れ縁」みたいな感じで茶化しながらもそれなりの愛情持って接してきたつもりなんですけど、この5年くらいが特にひどいと思ってます。

それが証拠に、本来、「優れたシンガー」といえば黒人のお家芸のはずなのに、音楽シーン全体を引っ張るヴォーカリストなんて今いないじゃないですか。ファンテイジアの事はアメリカン・アイドルの時から知ってますけど、彼女みたいな歌の上手いヴォーカリストがミュージカルでしか報われない感じに実際なってますよね?

 あとラップ部門にしたって、「一番うれてない、知名度もないラッパーが受賞した」と、黒人の音楽ファンでさえも言ってるのをSNSを見たとき、ちょっとがっかりで。キラー・マイクって、アウトキャスト人脈だったから僕でさえそのときから知ってたし、その後もRun The Jewelsすごく成功させて2020年には僕の年間ベストのトップ10に入れたくらい好きでしたよ。ジョージ・フロイド事件を予告するようなリリックも書けるほど、社会的にかなりポリティカルな視点まで持ってるような人ですよ。そんな尊敬されるべき人が「あんた、誰?」と言われてるというのは、ちょっとショックでしたよね。

実際、ノミネートされた人気のトラヴィス・スコット、メトロ・ブーミン、ドレイクも一般の年間ベストの全体合計で50位にさえ入るような作品ではなかったし、メトロ・ブーミンは頑張った方だと思うんですが、トラヴィス、ドレイクは自己ベストには程遠い作品で。そういう一線級のアーティストのキレのなさがヒップホップのセールスの、人によって25%だの40%だのって言われるセールス・ダウンにもつながっていたわけでもあって。だとしたら、地味かもしれないけど、味のある玄人選んだ方がいいわけで。今回のノミネート作で、本音言うとキラー・マイクと同じくベテランのNASのアルバムの方が僕の好みではあったんですけど、キラー・マイクがラッパーとしてリスペクトされるべき人には変わりないわけで、いつか受けてしかるべき栄誉だと思いますよ。

本人も48歳での快挙に「ラッパーに年齢は関係ないんだ!」って誇らしげに言い切ってたの、すごくかっこよかったですよね。

 あと、アフロビーツ代表してバーナ・ボーイがライブやってすごく好評だったのもかなりよかったと思います。アメリカの場合、どうしてもアメリカ・ローカルにこだわりすぎて、他の地域の黒人に関心がいかないとこあったので。あと、ソングライター出身のヴィクトリア・モネが新人賞受賞したのも。今回のこのアワードがいろいろ見直すきっかけになればいいんじゃないかなと思いました。

それから

ベテラン勢、良かったですね〜。ルーク・コームズのカントリー・カバーで35年ぶりにヒットした「Fast Car」のトレイシー・チャップマン。もう、35年前と何にも変わらないというか、むしろそれよりうまくさえ聞こえる見事なパフォーマンスでした。

そして、シネイド・オコーナー追悼で登場したユーリズミックスのアニー・レノックスが感動的な「Nothing Compares 2 U」を披露し、今回の出演者で唯一、ガザ停戦を呼びかけるメッセージもしました。今、最も勇気のあるレジスタンスだと思うので、この行為にはすごく敬意を表したいと思います。

あと、こないだ紹介したビリー・ジョエルはやはり新曲やりました。これもよかったと思います。あと、ジョニ・ミッチェルも。彼女の場合は大病をしたあとの奇跡的な復活で、それを可能にした周囲の人の温かさも感動的ではあるんですけど、ごめんなさい、ちょっと公の場でライブをするには本音言ってしまうと痛々しさは残るものではありました。

・・と、そんな感じでしょうか。



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