見出し画像

連載・「ロックを人が聴かなくなる」から5年①その後の記事からロック復調の過程を改めて

どうも。

では、約束した通りに連載を始めましょう。

はい。この「ロックが、人が聴かなくなる」という意味で死に始めたのはいつ頃のことなのか、という記事を書いてちょうど5年が経ったという話です。

それから5年、いったいロックで何が起こってきたのか。今回はまず、それから振り返ります。

僕としては今回、その間に象徴的な自分の記事を4つに改めてスポットをあてて再度紹介することによって、この5年のロックの道のりを今一度確認していくことにしたいと思っています。

まず一つ目はこれですね。

僕が最初に「あれ?もしかして、何か変わっていくのかな?」と最初に思った瞬間が2020年8月ですね。このときはパンデミックの真っ只中の、今思い出してもつらい時期でしたけど、あのときにテイラー・スウィフトがこれまでのイメージとガラリと違うインディ・フォークのアルバム「Folklore」を出しました。このアルバムはBon Iverとの共演だったり、ザ・ナショナルのアーロン・デスナーのプロデュースだったりで、テイがこれまででもっともインディ・ロックに接近したんですよね。このときの印象で彼女に好感を抱いたインディ・ファンも少なからず知っています。

これはかなりきっかけだったような気はします。ただ、それだけだったら僕はそこまで驚かなかったのではないかなとも思うんです。

そのテイの件があった上に、これが流行ったことが相乗効果になったと思ってるんですよね。

ハリー・スタイルズのこの曲、「Watermelon Sugar」が全米1位になったんですよね。これが結構インパクトがありまして。

だってあのときまだ、「ヒットチャート」といえばトラップとエモ・ラップが世界を席巻してた時期ですよ。そのご時世に、テイもそうだったしハリーのこの曲もそうだったんですけど、「基本、生演奏スタイルのこれらの曲がチャートのトップになるって新鮮だな」と思ったんですよね。しかも子供たちは、彼らのキャラクターが好きなだけであって曲調を気にした結果ではないだろう。でも、そういう無意識から、たまたまかもしれないけどそういう結果が出た。それがマスに与える効果はなにかあるんじゃないか。あのとき、そんな風に思ったんですよね。

で、これの少し後にマイリー・サイラスもロックの路線で売れて、そこに仲間入りした印象があって。アイドルやセレブを介してそうした変化を知らず知らずのうちに子供たちが感じるのであれば、それはそれで良いことだな。あのとき、そんな風に思ってました。

そうしてたら

2つ目にこれが起こったんですよ。オリヴィア・ロドリゴとマネスキンによる、突如のSpotify独占ですよ。この記事を書いたのは2021年8月になってますけど、ブーム自体は6月からはじまっていて8月になってもまだ続いていた、というのが正しいですね。

このときはオリヴィアが

このデビュー曲で「テイラー2世」っぽいディズニー・アイドル路線で売っていくのかと、最初は思われていたんですよね。

ところが蓋明けて見たら

シングルが切られる度にどんどんロック色が濃くなって「えっ?」って感じだったんですよね。これで僕も俄然気にはり始めて。それで5月にデビュー・アルバムの「Sour」が出て、それが彼女自身のソングライティングでしっかりロックしたアルバムで。

この曲なんてレコード会社に内緒で入れてたみたいなんですけど、当初、ディズニーとかテイラーのイメージで売りたかったはずの売る側の計算は見事に違ったんですけど、これが思いの外、ものすごくウケてしまったんですよね。

で、それと全く同じタイミングの2021年5月下旬に

普段、ロックのイメージなんてまるでなかったヨーロッパの名筆音楽コンテスト、ユーロヴィジョンにおいて、イタリア代表のバンド、マネスキンがハードロックで優勝を飾ったんですよね。

そしたらこれが、過去に前例のないくらいの世界的反響を得てしまって。しかもそれが、ユーロヴィジョンの枠を飛び越えてtiktokで火が着いた結果

この当時にマネスキンが出したアルバム「Teatro D'ira」から「I Wanna Be Your Slave」、そして彼らがデビュー前にイタリアの「X Factor」でのパフォーマンスから「Beggin'」の2曲が世界的な大ヒット曲になります。このオリヴィアとマネスキンの、少し前まで誰も予想しなかった突如の大ヒットで「ロック、復活か?」の機運が上がったのはたしかです。

これに加えて

UKロックバンド、グラス・アニマルズの「Heat Waves」、これも超ロングヒットを記録。なぜ、これらのヒットがあのとき急に重なったかは今も謎なんですけど、これでロックに希望が出てきたことは確かでした。

3つ目行きましょう。これです。

これは22年11月に書いた記事です。「サッドガール・インディ」という概念がシーンに既に根付いていた、という話です。

これは僕がサンパウロでのプリマヴェーラ・サウンドを見た直後に書いた記事です。このとき

このときのミツキとフィービー・ブリッジャーズのライブのウケがすごかったんですよ。僕はこの両者、彼女たちの2018年、2020年のアルバムの時期からその年の年間ベストのトップ級に評価したくらいに好きでしたけど、「商業的な成功まで行くかな」と思ってたら、もう、この時点でブラジルでさえこの人気だったし 、さらにこれ書いた翌年にはミツキは「My Love Mine All Mine」の世界ヒットをだし、フィービーなボーイジーニアスでこの年にもっとも批評的評価の高い作品を出しグラミー賞の主要部門まで争った。大成功ですよね。
  
で、「なんでこんなにウケてるんだろう」と思ったときに

Spotifyにこういうサッドガール系のプレイリストがあって、いずれも100万人以上のリスナーがいることを知ったんですよね。そこで「ああ~、どおりで」と思ったんですよね。

こういう女の子たちが続々と成功してくる意味がこれでわかったし

その前から個別に売れてた彼女たちと地続きになっていたこともわかりましたから。

そこで気づいたのは、彼女たちが女の子たちにとってのスミスとかキュアーみたいな存在になってたことです。自分たちの心情がメインストリームのポップでは満たされない、オルタナティブな暗い心情。これが時間をかけて可視化されらくらいまで大きくなった。「ああ、こういう反動が出るシステムが機能する限り、ロック大丈夫だな」と、このとき思ったんですよね。

このときにビリーの2019年前半の大ブレイクの意味もはっきりわかったんですよね。僕もあれは夢中なったし、デイヴ・クロールは「ニルヴァーナのブレイク当時を思い出す」とまで言いました。ただ、それがロックと結び付くものかは疑問されてました。あのときはヒップホップにまだ勢いがある頃だったから、トラップの手柄に結び付ける人もいたくらいで。

でも、ロックと結び付いていたことは、出たばかりの最新作でも確認できた手応えを僕は感じてます。

で、4つ目がこれですね。

これは今年の4月に書いたばかりですね。今年に入ってからのSpotifyの大ヒット曲に、昔ながらのバンド演奏のヒット曲が相次いだんですよ。しかも、そのほとんどがtik tok 経由のヒットで。

とりわけ大きかったのはこの2つですよね。

ノア・カーンとホージアの二人、今年特大ヒットですよね。共にシングル曲がビルボードのシングルでもトップ10に入って、フェスでもヘッドライナー任されるくらいの大人気になって。

この伏線として

カントリーでのザック・ブライアンのブームがあった。彼がシーンのなかでもっともひだりよりの存在で音楽的にもノアやホージアとリンクする位置にいたんですよね。他にもケイシー・マスグレイブスみたいな、同じくほとんどインディ・ロックみたいな人も。彼女とはデュエット曲もヒットしましたしね。

こういうところからもロック、しっかり戻ってきてるんですよね。

これらのことが頭に入っているかいないかでロックの見方、相当変わってきますが、まだ課題はありつつもかなり戻ってきていることは確かです。

この論をさらに裏付ける話を連載二回目でやります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?