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アルバム・レヴュー「Map Of The Soul 7/BTS」〜K-Popの世界チャート完全独占を決定付ける歴史的傑作になりそうな予感!

どうも。

では、約束したとおり、

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BTSのリリースされたばかりのニュー・アルバム「Map Of The Soul 7」、これについて語ることにしましょう。

一昨日の投稿でも、僕はこのアルバムを、詳しくは述べなかったものの絶賛しました。そして、それは

回数を重ねて聞けば聞くほど、それが確信に変わる!

もう、本当に大好きです。このアルバム。

今作に関して言えば、期待できるところと、不安な要素も両方ありました。期待の面でいうと、これが彼らにとってのフル・アルバムであること。K-Popの場合、どういうわけだか知らないけど、「ミニ・アルバム」の形で短期のリリースが多く、フルでじっくり聞かせることが少ないですからね。「Love Yourself」のときもEPで2枚出して、最後に編集盤的まとめっぽいリリース。これも、去年に、結果的にその予告編みたいになったEPが出て入るんですが、それでもサイズ的にはしっかりアルバムで20曲入った内容ですからね。

ただ、不安面でいうと、彼らがビッグな存在になってしまったことからくる「音楽性のぶれ」ですね。BTSの場合、これも今どきめずらしいくらいに、「古くからのつきあいの一人の韓国人プロデューサー」は大部分を作るパターンでやってきてて、それゆえにサウンド面がぶれてきてなかったんですね。ただ、今みたいにビッグな存在になってしまうと、「仕事やらせてよ」という声とか誘惑が少なくなくなる頃だし、それこそ現在の欧米のセレブだったりラッパーのアルバムみたく、「細切れプロデューサーによる、ゲスト過多のアルバムになって、没個性化してしまわないか」。その心配は正直ありました。

ただ、このアルバムは、そうした状況の変化にも対応しながら、軸をぶらさずにこれまでやってきたことのある種、集大成的な結果が出せたかなりの力作だと思います。

今回のアルバムの参加陣には、去年のEPにも入ってたホールジーに加え、トロイ・シヴァン、そしてsiaの名前もあり、関わっているプロデューサーも増え、これまで土台を支えてきたpdoggの名前は減ってこそいます。ただ、それでサウンドが極端に変わったとかそういうところは特になく、サウンドに新しさこそはないものの、その分、近年の欧米でのはやりの要素は諸々しっかり取り込んだ、サウンド・プロダクション以前に、一曲一曲の楽曲的なクオリティの高い、捨て曲のない充実作になっています。まず、ここを強調しておきたいですね。この要素だけで、これまでK-popやBTSをあまり聞いてこなかったリスナーをかなり呼び込めるものになってますので。

ただ!

今作の最大の強みは、そこではありません。それ以上に特筆すべきは

メンバーの“個”の充実と、彼らの絡ませ方

これがですね、もう、古今東西のボーイバンド、ガールズバンドとは完全にレベルが違います。これまでアイドル・ポップそのものを聞いてこなかった人に関して言えば、ここを認識さえすれば、BTSは確実に楽しめるようになれます。

これまでのボーイバンドのお決まりと言えば、「複数のそれなりに歌えるシンガーが引っ張ってサビでユニゾン」か、もしくは「絶対的リードシンガーがいて、後の人は基本バックアップ」みたいなものが主流でした。ところがBTSの場合、これ、以前に聞いて驚いたのは、「えっ、リードラッパーのラップだけで、1曲完結させちゃうの?」ってくらいに、ヒップホップの比重が高いこと、プラス、ユニゾンとかハーモニーを最初から念頭に置かずに個人比重が高かったことです。サビでハモる場合も、「メンバーのうちの2,3人」で厳密に言えば、「ハモリじゃなくて合いの手」に近いものです。

彼らの場合、以前からこの作りでしたけど、さすがに実質19曲もあれば、その「個人技」と「絡んだ際の絶妙のチームワーク」が「これでもか!」とばかりにかなり強く発揮されています!

彼らの場合、7人中、「4人のシンガー(ジョングク、ジミン、V、ジン)、3人のラッパー(RM、シュガ、J-Hope)」と6人がリード取れるシステムになってるんですけど、今回のアルバム、7人全員にソロ・ナンバーがあるんですね。それプラス、絡ませる曲にもいろんなパターンがあって、「3人のラッパーのみ」とか「シンガーのうち2人のみ」とか「全員でてきて、みんなにそれぞれ細かくパートがある」とか、色んなパターンがかなり複雑にでてきます。なのでですね、これ、メンバーそれぞれの声質と、ラップのフロウ・スタイルを事前に知っていればいるほど楽しめる、かなりコアでマニアックなリスニング姿勢も聞き手に要求されるものになっています。

知らない方のためにわかりやすく言うと、ヴォーカルはリードが比較的多いのはハイトーンで声が大きく通りの良いジョングクで、彼自身がかなりうまいんですけど、そこに「えっ、女の子?」と思えるほどセクシーなファルセットが使えるジミンと、中低音域で歌うV。ラップが、ハードエッジなトラックを後ろにしてハマる、ボーイバンドにいるのがもったいないくらいうまいRMに、スピード感のあるフロウのシュガ、そして、ラッパーとしての個性はそこまでないけどそつなくこなせる元がダンサーのJHopeという感じで、慣れればパート振り見ないでもわかるようになります。

今回の構成で言えば、テーマそのものは「自分自身って何だろう。自分はどこにいるのか?」という、アイデンティティの自問自答からはじまります。それがRMのラップからはじまって歌に入って入っていくんですけど、最初は去年出た予告編みたいなEPを短縮したもの(ホールジーとの「Boy With Luv」、エド・シーランが作曲で絡んだ「Make It Right」含む)からはじまって、後は4,5曲に一回、ラップ・ナンバーをはさんで、その間をヴォーカル・ナンバーで埋めていく、という構成です。

ラップナンバーはハードロック・ギター、サンプリングのRMの「Intro Persona」にはじまり、悲しげにエモいシュガの「Shadow」、本格的なトラップは実質はじめてな気がする3人による「UGH!」、オートチューン使ったRMとシュガのパーティ・ナンバーの「Respect」、最後を締めるハウス・リズムのJHopeによる「Ego」といった流れです。

そしてヴォーカルの方ですが、昨年のEPに続いては、総力戦で臨んだ、本格的なエモ・ラップはこれがはじめてのような気がするんですが「Black Swan」、ジミンの女形ヴォーカルがかなり強烈なラテン・ナンバーの「Filter」、僕が個人的に今作ナンバーワンのジョングク熱唱のサビでのセツナいメロディの光る「My Time」、ジョングク、ジミンのWファルセットの絡みがセクシーなトロイ・シヴァン参加の音数少ないメロウR&Bの「Louder Than Bomb」、シングルカットもされた、通常とsia参加の2ヴァージョンあるゴスペル・コーラス導入の「On」、昨今の白人SSW〜アイドル楽曲的なVによる「Innner Child」、マルーン5や2010sのコールドプレイを思わせるジミンとVによる「Friends」、ジンによるソロナンバーの「Moon」、そしてEDMバラッドの「We Are Bullet Prrof」と、これまた、欧米のトレンド意識しつつ、かなり多彩。ただ、曲の多彩さ以上に本人たちの歌がそれ以上に説得力ある聞かせ方をしているところがミソです。

そして構成的にも、去年出したEPの後が、ちょっとダークな内省的ナンバーが続いて、後半にさしかかったところで、人肌に触れて自信を取り戻していき、最後は人間賛歌みたいな流れもうまいと思います。歌詞的にそこまで深みがあるかといえば、そこはそうでもないんですが、まあ、そこまで望むのはミュージカルにシリアスな人間ドラマの台本持ち込む(そんなことしたら肝心なミュージカルとしてのテンポ感やがグルーヴが崩れかねない)のを望むみたいなもので、そこは基本、「ボーイバンドよるダンス・ポップ」という縛りはある(ピッチフォークの本作のレヴューはその前提忘れてましたが)わけで。本人たちが持ってるパフォーマーとしての能力と音楽的バラエティの贅をここまで堪能させられれば、それは見事というものです。

しかしまあ、ここまでのことがやれるんだから、これ、アイドル、ボーイバンドとしては本当に大したものですよ。僕は常々、アイドル・ポップとしての良し悪しの基準にジャスティン・ティンバーレイクの「Justify」かリアーナの「Good Girl Gone Bad」があるんですけど、これはそのレベル、達してるアルバムだと思います。むしろ、この曲数の多さから、90sのR&Bセレブの作品を思い出しましたけどね。今後、これ以上の成長を望むなら、サウンド的に既存のものに頼るでなしに自分らによる新しいものを生み出して、サウンド的な統一感のあるアルバム作ることでしょうかね。そうしたら、ジャネット・ジャクソンの「リズム・ネーション1814」みたいなアルバム作ることも可能になるでしょうけど、それは今後の彼らか、もしくは他のKポップ・アーティストにとっての課題になるでしょうかね。

あと、もう一点述べておきたいのは、

ここを起点に本格的なコリアン・インベージョンが起きるんじゃないか

ということです。

そのための条件が整ってるんですよ。このアルバムの前週、明日の全米チャートで話しますけど、モンスタXのアルバムが出て、これも韓国のアーティストとしては史上3組目の全米アルバム・トップ10入を果たしてます。

そして3月には、2組目のトップ10アーティスト、スーパーMのメンバーにも数人選抜されれていたNCT127のアルバムが出ます。少なくともここまではトップ10は硬そうな気がするし、さらに女の子グループでItzyというのもアルバム出ますね。ここに名前あげた人たち、僕がおとといに書いた「成功の12ステップの最後」、「英語疎通ができる」をクリアできてる人たちばかりなんですよ。ここで、全米アルバム・トップ10がこの後、続々出てくるようだと、アメリカもいよいよ本格的なK-Popブームになるような気がしてるんですけどね。

PS.勘違いしてて、「シンガー3人、ラッパー3人」と書いていましたが、今回、全員にソロ曲の間違いでした。訂正させていただきますが、だったらなおさらすごいじゃないか!










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