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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第26回) ザ・ストロークス

どうも。

では、お約束通り、行きましょう。これです!

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 恒例企画、FromワーストToベスト、これの最新版を、ザ・ストロークスのアルバムでやってみます。最新作「The New Abnormal」が発表されたばかりですが、さて何番目に入ってくるでしょうか。

早速、ワースト、第6位から行きます。

6. Angles(2011 US#4  UK#3)

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ワースト6位は「Angles」ですけど、う〜ん、これは当時もすごくガッカリしてしまったことを覚えているし、自分だけでなく、僕の知ってる古くからのストロークス・ファンからもガッカリした旨の意見をよく聞きました。先行シングルの「Undercover Of Darkness」が「らしい」、ちょっと彼ららしいウキウキするようなアップビートな曲だったので期待してたら、そういうのはこの曲だけで。全体的にトーンが暗いのと、ストロークスのシグネチャー・サウンドのギターは鳴らしてはいるんだけど、この当時のプロデュースとエンジニア担当のガス・オバーグの音質の抜けが今ひとつよくなくて。どこかこれまでのようなカラッとした感じが微妙にないというか。確かに、ジュリアンがある時期から懲りだした「シンセサイザーっぽいギター」を鳴らそうとしてるのはわかりつつも、それまでのギター・サウンドと何かが違うというか。あと、曲で後々まで覚えているのが「Undercover〜」の他に「machu Pichu」「Life Is Simple In The Moonlight」くらいなのも印象不足で終わった一因ではないかと思います。

5. Comedown Machine (2013 US#10 UK#10)

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 続いて、2013年発表の「Comedown Machine」ですね。このアルバムは先行シングルの「One Way Trigger」が、ahaの「テイク・オン・ミー」の早回しにジュリアンが終始ファルセットで歌うという、パッと聴き奇妙な曲だったので評判が悪く、プロモーション自体もほとんど行われずにツアーも行われなかったので、なんか。まるで未発表曲集みたいに投げ出されたアルバムみたいな印象を持たれてしまい、これまでで一番ヒットしませんでした。

 ただ、これ、冷静に聞いてみると、そんなに実は悪くないんですよ。特に前半。すごくクラシックな「これぞストロークス!」なタイプの「All The Time」を始め、これまでの彼ら以上にファンキーなリズムとギターのカッティングの曲が目立ちましたからね。・5曲目の「80s Comedown Machine」なんてプリンスの「パープル・レイン」内の名バラード、「Beautuful One」を思わせるシンセ使いでしたしね。ただ、短尺のパンクナンバーの「50/50」からの展開が今ひとつで、そこからはさして印象に残らない曲続きで、この辺りがこのアルバムの聞こえ方をカオティックにしてしまった原因になってますね。全体に過小評価されたアルバムだとは思いますが、彼らが2000sに築いた功績に並ぶようなものでは、2作連続でなかったです。

4. Room On Fire (2003 US#4 UK #2 )

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4位は「Room On Fire」。セカンド・アルバムですね。当時はすごく人気もあったし、批評的にも文句なしに絶賛されたアルバムです。僕も「Club Hard To Explain」で何度となく自分でプレイした曲が多くあるので懐かしくはあります。

これは、ジュリアン・カサブランカスのポップ・ソングライターとしての魅力が全開のアルバムの印象ですね。全体的に60sポップの雰囲気があるんですよね。「12 51」は初期ブリティッシュ・ビート、「Meet Me In The Bathroom」は初期モータウン、「Under Control」はドゥワップのバラードみたいですしね。前作の「Last Nite」でのモータウン調のリズムを引きずった曲が多いかな。あと「12 51」「The End Has No End」で、ここから多用されていくことになるカーズ風のニュー・ウェイヴ・シンセを真似たギターの音色も出てきて、彼らの独自のギター・サウンドをさらに拡張させていくことにもなりましたね。こうした要素の方が「Whatever Happened」や「Reptilia」みたいなロックンロールを上回ってたかな。おそらく、「それがゆえに好きだ」という人もいるとは思うんですが、僕はそれがゆえに、ちょっと物足りないんですよね、このアルバム。あと、若干、捨て曲もあって、覚えてる曲とそうじゃない曲の差も激しい。よって、人気はあると思うんですけど、この位置です。

3. The New Abnormal (2020)

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そして、最新作「The New Abnormal」はこの順位でした。このアルバムですが、まさに10数年ぶりの傑作というか、ジュリアンたちが2010年代以降にやろうとしてできなかったことが、ようやくできた作品だと’思います。まず、よく聞かない人には「いつも同じに聴こえてしまう」、あの、ストロークスにしか出せないギターの肌触りとグルーヴ感、あの感覚が戻ってきた。一つには、前2作と2016年のEPを手がけ、このアルバムでもプリプロまでは作っていたガス・オバーグを交代したことが大きかったかと思います。サウンドの抜けが戻ってきてます。その上で、ジュリアンがやろうとしていた、ソロやダフト・パンクとのコラボでトライしていた、エレクトロのサウンド質感をギターサウンドで表現することや、ファルセットや高音域に伸ばしたヴォーカル・スタイルなどもここでうまく発展させています。

 ただ、それ以上に収穫だと思ったのは、このアルバムには捨て曲がないことですね。前2作って、非メロディックな小曲が箸休め的な意味だったのかよくわからないんですが、あれがあることによってなんかとっちらかって聞こえてたんですけど、あのテの曲がなくなって、全曲どっしりと腰を落ち着けた「聞かせるメロディックな曲」で構成されています。冒頭の「The Adults Are Talking」の「大人になったジョイ・ディヴィジョン」がすでにそれを予見させるんですが、それ以降、メロウな曲のオンパレードですね。今回は楽曲の大半をジュリアンが書くという、サード・アルバム以来のパターンに戻っているのですが、ニックとアルバートによるリフや、サビで入れてくるギター・フレーズがカウンター・メロディとして久々に機能してるんですよね。「Brooklyn Bridges To Chorus」や「Eternal Summer」はこうした効果が生んだ好チューンだと思います。前2作がメンバーと共作しあってどこかサウンドがぶれてたとこがあったんですけど、今作はジュリアンのヴィジョンにメンバーがそれぞれの役割で答えるパターンに戻ることで彼らの曲の輝きが戻ってますね。

あと、ジュリアンに予てからその傾向が強かった、マニアックなエイティーズ・オマージュが強まった意味でも興味深かったですね。「Bad Decision」ではビリー・アイドルの「Dancing With Myself」、「Eternal Summer」でサイケデリック・ファーズの「The Ghost In You」が曲がにてることもありソングライティング・クレジットに含まれていたりもしますが、ストロークス史上最大の内省自己告白ソングになった「At The Door」はコーギスの「Everybody Got To Leran Sometimes」を彷彿させたりもしています。

やはり彼らの場合、ギター・サウンドとグルーヴが「他の人が真似したくてもなかなか再現できないオリジナル」である強みがあるんですけど、そこに楽曲の充実とメンバーのケミストリーが揃えばやはり強い。そのことを再認識した、「成熟の力作」だと思います。

2. First Impressions Of Earth (2006  US$4  UK#1)

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そして2位に2006年作の「First Impressions Of Earth」を。このアルバム、欠点もないわけではないんです。ちょっと無駄に曲数が多く、時間を経て思い出せなくなっている曲も決して少なくありません。アルバム全体の統一感では前2作では劣るし、それゆえに「ストロークスは最初の2作だ」という声も実際によく聞くのもわかります。

しかし、このアルバムはストロークスがキャリア史上、最も激しくロックンロールしたアルバムであり、その良い意味での豪快さが、多少のウィークポイントもありこそはすれ、魅力の方がそれを上回った作品なんですよね。先行シングルになった「Juicebox」は言うまでもなく、未だにいろんなところで耳にする「You Only Live Once」、「Vision Of Division」、「Ize Of The World」。このあたりの曲は、どんなにやれ、同時代的に「ロックンロール・リバイバル」だの、その後に「ポストパンク・リバイバル」だのとあらわれようが、ギター・サウンド的に誰も真似できなかったロックンロールでしたからね。もう、このアルバムはそれが聞けるだけで十分なカッコよさです。実際、現在のライブでも、ここからのロックンロールの選曲、多めですからね。

それでいて、サウンドの落差もかなりあるのもいいんですよね。「ストロークス流メタル」の「Heart In A Cage」と、最新作の「At The Door」の前段階ソングと言えるリズム抜きの(ギター?)シンセの静寂な「Ask Me Anything」。この2曲の存在だけでちゃんとバラエティも端的に示せているのも良いです。後半の曲をいくつか間引けば、満場一致での傑作になったかとも思うんですけど、それでも魅力的なアルバムです。

1. Is This It (2001 US#33 UK#2)

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そして1位は言うまでもありません。ファースト・アルバムの「Is This It」です。そりゃ、そうでしょう。ストロークスを代表するばかりでなく、時代そのものを定義したアルバムなんですから。それが00年代のロックの音を象徴したアルバムであり、10年代にロックそのものがあまりサウンド的に発展しなかったことも手伝って、20年代の今に至るまで、インディ・ロックの理想的なロックンロール像を示す作品であり続けています。

このアルバム、一見、「ヴェルベット・アンダーグラウンドか」と冒頭だけ聞くと思うんですけど、そこに、ヴェルヴェッツの時代にはなかった、メトロノームのように正確なミニマルなリズムだったり、モータウン・サウンド的なダンシング・グルーヴを付与する。また、ギター・サウンドにしても、他のバンドでは聞くことができない独自のひび割れ方と軽さがある。これは、あの当時だったら、グランジが劣化した、当時のすっかり商業的なフォーマット・サウンドに成り下がっていたラウドロック的な緊張感のない増幅されたギター重低音に対するカウンターだったし、自身のつけたフォロワーにも、「昔ながらのガレージロック」に戻る人こそ多数いれど、ここまで先人の遺産をミックスして自分たちだけの音に昇華できたバンドも結局出なかった。というか、当のストロークス自身だって、ここで得た専売特許の輝きを保つのが容易じゃないほどです。

 そして、このアルバムはとにかく曲がいいし、曲の配置のバランスがいい。全曲、曲順通りに何も見ないで暗唱できるアルバムって多くないんですけど、このアルバムはそれができる。それくらい1曲に無駄がない。「is This It」でゆっくり立ち上がって、方や「Modern Age」「Barely Legal」「New York City Cops」みたいなロックンロール、方や「Someday」「Last Nite」「Hard To Explain」みたいな足腰をハッピーに浮かせる踊れるナンバーあり。「Alone Together」「Trying Your Luck」でちょっとメランコリックに抜きつつ、最後に「Take It Or Leave It」で大団円。やっぱ満点なんですよね。書いてて聞きたくなりますもん、やっぱ(笑)。




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