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ネットフリックス「クイーンズ・ギャンビット」 「50〜60年代の天才少女の人生」の意味するもの

どうも。

今日はネットフリックスのドラマに関してです。

ちょっとレヴュー、遅れたんですけど。

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リミテッド・シリーズのドラマ「クイーンズ・ギャンビット」、これについてお話ししましょう。

これは10月の半ばかな、リリースされてすごく評判よくて、僕もほどなくして見はじめてたんですけど、一時、見るのが滞ってたりもして、ちょっと見終わるのが遅れました。やっとこさなんですけど、いい作品なので、ここで紹介したいと思います。

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ストーリーは1950年代、当時8歳の主人公・ベス・ハーモンが交通事故で両親を亡くすところからはじまります。もともと口数が少なくおとなしかったベスは、孤児院でのがんじがらめの生活に嫌気がさしていましたが

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そんな折、ちょっと不気味で無口で怖くもさえある用務員・シャイベルと孤児院の地下室で出会います。彼はチェスの名人で、興味を持ったベスにルールを教えるうちに、一緒にチェスをやるのが習慣になります。すると、ベスはチェスに取り憑かれ、寝ても冷めてもチェスのことばかり考えるようになります。

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その一方でベスは孤児院から渡される精神安定剤の中毒症状がではじめ、これが後年、彼女を苦しめることになります。

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数年後、ベスはケンタッキーのある夫婦に養女として引き取られます。当時のアメリカ中西部では、「女の子は社交を学ぶべき」という、ベスにとってつまらないことを押し付けていたのですが、彼女はすぐに「いかにしてチェスをするか」の方法を学んでいき

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地元のチェスの集まりに参加することになりますが、そこで対戦相手を数分で次々と倒していくことになります。この才能に驚き喜んだ養母はステージママになって、ベスを全国大会に連れて行くうちに

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ベスはチェスの天才少女として有名になり、メディアも注目する存在になります。彼女はやがて、メキシコやロシアの国際大会に参加するほどの存在にもなりますが

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同時にドラッグやアルコールへの依存がひどくなり、それは養母の急逝と共にひどくなります。波乱万丈の要素もあるのですが、それでも彼女はチェスの世界で成功を続け・・・・。

・・・と、ここまでにしておきましょう。

このドラマはですね、原作がありまして

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アメリカの50〜80年代の人気小説家ウォルター・テヴィス、彼はポール・ニューマンで有名になった映画「ハスラー」の原作小説の作家でもあるんですが、この「クイーンズ・ギャンビット」は彼の亡くなる前年、1983年に発表された晩年の作品です。過去にも映画化の企画もなんどもあがっていた作品だったようですよ。

すごく、いろんな見方ができて面白いんです!


まず、ひとつには、

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フェミニスト映画として。これは、ちょうど、ストーリーがフェミニズムの運動が盛り上がる60年代に置かれていることからも明らかです。それまで女性が活躍したことのない領域で、その実力で頂点にまで達していく話ですから、もちろん、そういう見方は可能です。

そして60sといえば、最高にモードの時代ですよ。ファッションも音楽もすごくおしゃれ。今回のシリーズ、選曲も当時のヒット、しかも結構選曲がマニアックで、ベスの着てる服、髪型もひとつのポイントでもあります。

それと同時に

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やはり、特殊な才能を持った女性パイオニアの苦悩を描いた作品としても見ることができます。その才能を誰もがほめたたえるわけですが、その特殊な才能がゆえに、本当に自分の思っていること考えていることを自分と同じ目線で受け止めてくれる人物に出会うことができず、孤独を深め、ドラッグやアルコールで、自滅的に自分を癒そうとする。時代性が一致することもあって、僕はジュディ・ガーランドやジャニス・ジョプリンを思い出したんですけど、そういうタイプのものとして見ることもできます。

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あと、ある種のスポ根として見ることも可能です。これ、見事だなあと思ったのは、チェスの試合の見せ方がすごいうまいんですよ。チェスって囲碁とか将棋とかと同じで、試合そのものはすごくゆっくりじゃないですか。だから決して描きやすい題材ではないんですけど、これはすごく要所でテンポよく見せて、しかもギャラリーの描き方もうまいのですごくスリリングなんですよね。だから、ベスの内面だけでなく、実際のチェス・プレイヤーとしての手際も楽しめるのでよりリアルなんですよね。

このベスの役を

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アーニャ・テイラー・ジョイが、彼女のキャリア、自己ベストの演技で見事に表現してくれています。彼女って

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2015年、彼女がまだ18歳のときに出演した「ウィッチ」から注目して見てましたけど、とにかく、どの独特の瞳が印象的ですよね。この魅力を演技力でさらに高めている感じですね。彼女はこれを機に、いきおいホラー映画のヒロインが多かったんですけど

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今年に入って、あのイギリスの文豪、ジェーン・オースティンの「エマ」でも主演。そして今回の「クイーンズ・ギャンビット」の成功で、一躍、ヤング・ハリウッドの女優の代表格になったと思いますね。

くわえて今回

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養母役を、なんとマリエル・ヘラーが演じたことにも注目ですね。だって彼女、本職、映画監督ですよ!彼女のことは以前もトム・ハンクスが主演した「しあわせへの回り道(A Beautiful Day In The Neighborhood)」の映画レヴューでもこのブログで紹介してるほど、僕、かなり気にしてる監督なんですよ。あと、メリッサ・マッカーシーの「ある女流作家の罪と罰(Can You Forgive Me)」もそう。インディで、かなり内面描写と演技が濃厚な作品を作る、将来のオスカー候補ですよ。そんな彼女が女優としても見事な助演をしている。これも、このドラマが推薦できる理由のひとつとなっています。

 あと、最後に、このシリーズ見てて思い出した日本人の人がいます。

それは

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田渕ひさ子!

 もちろん、全部じゃないですよ(笑)。主に似てると思ったのは、ベスの子供の頃のエピソードですね。口数の少なかったベスが、孤児院でひとりで黙々とチェスを覚えて強くなっていく話を見てるとですね、中学生の頃、家においてあった古いガットギターを手にとって、学校の友達が話題にしてる音楽が乗ってるギターの本に載ってるコード譜をかたっぱしから手に入れて、寝ても覚めてもコードを弾く練習を繰り返した、という彼女の有名な逸話を思い出します。髪型も同じだったから、ベスの子供時代のエピソード、まんま、ひさ子ちゃん思い出しながら見たんですよね(笑)。そして、「ひとつの芸をきわめて、男ばかりの世界で実力を発揮できるような女性になるって、こういうことだったりするのかな」とも思った次第です。


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