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オスカーの歴代作品賞受賞作、全94作の鑑賞を達成してみて思ったこと

どうも。

このところ「ドライブ・マイ・カー」とロザリアが僕のブームだったことは、ここ最近の投稿でお分かりかと思うのですが、その一方で、達成したことがあります。それは

オスカー、アカデミー賞の歴代作品賞を全作鑑賞を達成しました!

 オスカーは去年が第93回で、94本目はまだ今度の日曜日に決まるので正式には決まってないんですけど、今年のノミネート作品は全部見てるのでもう鑑賞達成したのと同義です。

 これなんですけど、なんでやろうと思ったかというとですね、オスカーって、もう直ぐ100回じゃないですか。これ思うに、

生きてるうちに100回目、しかもそれが比較的直ぐ、あと6年待てばいいだけですからね。そういうタイミングが迎えられるのって、すごく貴重だなと思って、なんだかすごく愛おしくなったんですね。

 で、僕の場合、もともとが音楽畑で、映画マニアではあるけど特に売りがあるわけじゃない。でも、オスカーの予想だけはこのブログで毎年予想の段階からやってるじゃないですか。だから、「じゃあ、オスカーを売りにしよう」と思ったんですね。それは僕の映画鑑賞上の趣味として決して間違いじゃないとも思うので。

 で、本当はオスカーで別の目的があったので、「作品賞受賞作だけを全部見る」というのはナンセンスとさえ思ってたんですね、当初。だけど今回、考えを変えて、見てみようと思ったんです。なぜか。それは、人が聞いてわかりやすい話ではあるから。「あの人、アカデミー賞の作品賞、全部見てるんですってよ」とかって、人も話題にしやすいじゃないですか。余計なこと考えずに言える感じで。だからそれもいいかなあと思って(笑)。

それプラス、「歴代作品賞」を全部見ることで見えてくる何かがあるんじゃないか、とも思って、とりあえずやってみようと思ったんですね。

で、その結果、何を思ったかというとですね、まず

作品賞受賞作だけじゃ、まだ全然足りない(笑)!

ズバリ、これでしたね(笑)。

だって、「映画の1年」をたった1作が表現するわけでしょ?そんなのできるわけないじゃないですか。しかもいろんなタイプの作品が受賞するわけなんだし、歴史のヨコ軸じゃなく、縦軸を見つけ出すことも難しいです。うまくつながるものではないので。なので、僕自身は、作品賞受賞作を全部見るだけでは、まだまだ映画史の把握としては不十分だと判断しました。

ただですね

受賞作が豊作だった時期と、そうでない時期の波はわかる


これは比較的、あるような気がします。

全作観て思ったんですけど、気に入った作品多いのは、例えば1940年代かな。このころ、第二次世界大戦が終わったころからかどうかはわからないんですけど、かなりシリアスな社会ドラマが受賞してるんですよね。特に戦後ですね。45年度の「失われた週末」、47年度の「紳士同盟」、49年度の「オール・ザ・キングス・メン」。このあたりの作品は凄く記憶に残りますね。

あとはやっぱり、70年代は最強ですね。このころはアメリカン・ニュー・シネマの大全盛期ですからね。厳密には1967年以降、10数年の作品も実りが多いです。67年度の「夜の大捜査線」、69年度の「真夜中のカーボーイ」、72年度の「ゴッドファーザー」、74年度の「ゴッドファーザー2」、75年度の「カッコーの巣の上で」、77年度の「アニー・ホール」、78年度の「ディア・ハンター」、79年度の「クレイマー、クレイマー」。このあたりは本当にすごい。これ、ロックに直すと、つまり「サマー・オブ・ラヴ」から「ニュー・ウェイヴ」にあたる時期でもあるんですけど、時代的に表現を呼び覚ます要素があったんでしょうかね?

 あと、異論あるかもしれないけど、2009年度以降、現在も僕はいい時期だと思っていてですね。このタイミングで作品賞のノミネート数が8〜10になったんですけど、本来それ、「スーパーヒーロー映画とかアニメにチャンス与えろ」というリクエストで拡大されたところ、選ばれるようになったのが、レビューの点数がすごくいいところのインディばっかりになって(笑)。フォックス・サーチライトとかフォーカス・フィーチャーズとかA24とか。だからむしろ、「世間一般には地味になったけど、映画好きにはより良い感じになった」というかね。90年代とか00年代の方が、そういうインディ作を大きな賞から外してましたしね。

 逆に良くないと思うのが50年代ですね。良く「50年代はハリウッドの黄金期」という言い方もされますけど、僕は正しくないと思ってます。だって、この時期に良かった監督ってヒッチコックとかビリー・ワイルダー、エリア・カザン、ダグラス・サークとかって、全員それ以前からいた監督ばかりだし、新しい才能ってそんなに出てないんですよね。役者で言えば、マーロン・ブランド、マリリン・モンロー、オードリー・ヘップバーン、グレース・ケリー、エリザベス・テイラーと出てるので、役者目線で言えば正しいかもしれませんが。

 この時代、何が悪いって、ハリウッドがテレビに対抗して推し進めていた、「シネマスコープ」に対応する映画ばかりをやたら押すそうとしていたことですね。大画面、高音質。その結果、長尺の歴史モノや戦争映画、ミュージカルが流行って、しかもそれが3時間くらいまで長くて。そういうものばかりノミネートされるから、大味になってですね。で、67年にニューシネマが台頭するわけなんですけど、まさにこれ、プログレの後にパンクが出るのと同じ動きなんですよ。

あと、50年代末から60年代半ばの時期って、意識高いアメリカの映画ファンって、外国映画見てるんですよ。それはイタリアのネオ・リアリズモ、フランスのヌーヴェルヴァーグ、ブリティッシュ・ニューウェイヴ・シネマ、スウェーデンのイングマル・ベルイマン、そして日本映画。これがハリウッドに対してのオルタナティヴとして機能してたんですね。こういうものが、後述する形のもので実は見えてくるんです。

 で、僕の結論としては

作品賞の受賞作ではなく、作品賞ノミネート作を全部見てこそ、初めて意味がある!


やはり、これに限ります。

なぜか。そこまで広げれば、それぞれの映画の個性がヨコ軸で見えてくるし、「あの監督、役者がどの時期に注目され始め、どこでピークが来たか」の縦軸もわかるようになるから。

これは本当です。

実際、僕も今、1964年度のオスカーまでに関してはノミネート作、全部見てるんですけど、そこまでやって初めて時代の趨勢みたいなものが見えてくるんですよね。これ、時代が上に遡れば遡るほど顕著です。例えば、まだ30年代は探求中なんですけど、キャサリン・ヘップバーン、スペンサー・トレイシー、ジェイムス・スチュワートみたいな名優、ジョン・フォードみたいな名監督がたちがどのあたりの作品から注目され始めるかが見えてくるんですよね。これは僕の音楽シーンの推移の捉え方と同じやり方なんですけど、長い歴史と、見れる映画の本数の限界ゆえにつながりにくかった時代の点と点が線で捉えやすくなるんです。

 あと、「オスカーは市民ケーンやキューブリックに作品賞をあげてないからダメだ」なんて言われ方もしますけど、ノミネートまで広げれば市民ケーンもキューブリックもしっかりノミネートされてます。「これが受賞してないの、おかしいじゃないか」という名作が実はノミネート作にこそ転がってます。

 これまでだったら、「やりたくても、作品が見れない」と思っていたんですけど、ネット検索すれば、そういうノミネート作、かなり見れるんですよね。やっぱ、1回でもDVD化されたものって、ネット上に転がってるのでうまくやれば見れるというか。僕としてはむしろ、「オスカーにノミネートされた作品はサブスク入りを義務付ける」みたいなルール、できてほしいくらいですよ(笑)。僕はたまたま字幕なくても、英語作品なら幸いにして見れるんですけど、みんながみんなそうじゃないわけで。名作映画が語り継がれる意義を考えても、これ、やるべきだと思います。

 なので、僕の当面の目標はですね

①オスカー作品賞歴代ノミネート作を全部見る

②5大部門受賞作(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚本賞)を全部見る

これですね。

ここまでやれば、オスカーから映画史を学ぶことはかなり可能だと思います。

あえて言うなら、5大部門のノミネート作も抑えれば、もっといいです。

特に監督賞ですね。ここのノミネートは実はかなりインターナショナルで。フェリーニもベルイマンも黒澤もトリュフォーもアルモドバルもノミネートされてますからね。

あと、「これが作品賞にノミネートされてないなんておかしい」みたいな作品はたいがいオリジナル脚本、脚色、主演の男女のどこかには紛れ込んでるんです。ここまでやると骨も折れるし時間もかかるので①②が達成されたらその時初めて考えるようにしますが(笑)、オスカーの100回までにやれればいいなあとは思ってます。

作品賞受賞作全鑑賞は昨日達成されたばかりなので、これにランクを付けるなんて時間はなかったんですけど(笑)、僕の好みで言えば60年度受賞作の「アパートの鍵貸します」と77年度受賞作の「アニー・ホール」の2つが一番好きかな。ワーストはやっぱり50年代で、56年度の「80日間世界一周」と「Gogi 恋の手ほどき」ですね。

あと、余談ですけど、オスカーの作品賞ノミネート作って、歴史モノが多いから、西洋史、強くなれます(笑)!特にイギリスの王朝史、僕、この過程だけでチューダー朝の血縁関係、わかるようになりましたからね(笑)。






























































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