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沢田太陽の2020年間ベストアルバム 50-41位

どうも。

では、いよいよ今日からはじめましょう。沢田太陽の年間ベスト・アルバム2020。例年通り、50位から1位をカウントダウンします。

毎年5回にわけて発表しているのですが、今年もかわらず、1回目は50位から41位のカウントダウンです。

こうなりました。

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はい。こんなラインナップでしたが、早速50位からいきます。

50.Rina Sawayama/Rina Sawayama

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50位はリナ・サワヤマのデビュー・アルバム。もう何年も前からいるのでアルバム1枚目って信じがたいんですけどね。このアルバムが面白いのは、なんか日本だとエイベックス・トラックスの人がチープな音でやってそうな、「R&Bでもエレクトロでもメタルでもなんでもごった煮」な感じを、ものすごくセンスいいサウンドと曲でやってるとこですね。しかも、声が太くて安定感もすごくあってね。なんか、「地下セレブ」を堂々と演じ切ってる感じに痛快さを感じます。今は異端児な感じがどうしてもしてしまうのですが、これがまかり間違ってメインストリームになったりすると面白い。その可能性を信じて同じ日本人として応援したいと思います。

49.Eternal Atake/Lil Uzi Vert

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49位はリル・ウージ・ヴァートのセカンド・アルバム。ここ数年ずっと続いているトラップ、エモ・ラップに関しては、サウンドもラップ・スタイルもすごく増幅して大量消費ばかりが進んでいる感じが否めないんですけど、その中にあってリル・ウージは流されない芯の強さを感じますね。フューチャーのモノマネとかただ鼻歌歌ってるだけなんかでは決してない、ほとばしる思いをのせたロング・フレーズのライムフロウは流行りの手法に溺れがちな小手先のエモ・ラップとは明らかに一線を画してましたからね。その「違い」はここでよりはっきりしていて、その繊細ながら力強いフロウを、現世界ではなく宇宙にまで発展させた「Pファンク?」みたいな摩訶不思議なコンセプトまで壮大に発展させてしまっているところに彼の「追いつかせやしない」という意欲を感じます。ブランドン・フィネッシンを中心としたトラックメイカーも「ここからプレゼン」な感じでフレッシュでも好感持てます。

48.Foolish Loving Places/Blossoms

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48位はブロッサムズ。なんかデビュー以来、「へなちょこ」なイメージを持たれがちなマンチェスターのエレポップ・バンドですが、今年入ってすごく出世してるんですよ。このアルバムでファースト以来の全英1位になっただけじゃなく、その後に出たスタジオ・ライブ盤みたいなアルバムまでトップ5入ったんだから、本国での人気はかなり本物です。それを裏付けるように、このアルバムで彼ら、かなりたくましく成長してるんですよ。トーキング・ヘッズのようなグルーヴ感を感じさせたり、ニッキー・ホプキンスがピアノ弾いてるストーンズみたいな曲もかけるし、60sのソウルやディスコのグルーヴも入れることにも成功してるし。とりわけリズム面をかなり強化することによって、元から持ってたメロディのセンスが磨かれてます。何の年間ベストにも入ってきてないですけど、なめないほうがいい。まだ人気出ますよ、これ。

47.So When You Gonna/Dream Wife

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47位はドリーム・ワイフ。アイスランドから来た舌ったらずのブロンドのロングヘアの美少女をフロントに、ショートヘアの勇ましいお姉さんがギターとベースで両脇を締める絵になるヴィジュアルは2018年のデビュー・アルバムの時から華があって注目してましたが、このアルバムでついに全英トップ20入り。しかも彼女たちが強調する「女性プロデューサーと仕事をする、インディ・レーベルのガールズ・バンドでの快挙」を成し遂げたわけです。実際、その強気発言を裏付けるだけのクオリティは本作にはありますね。曲のつかみのうまさみたいなところがデビュー作のほうが上なんですけど、前作にも感じられた「ストロークス・フォロワー」としては男女合わせても限りなくトップクラスなギターとリズムの切れとコンパクトなメロディ・センスは女性プロデューサーたちの尽力で向上しています。

46.Post Human : Survival Horror/Bring Me The Horizon

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続いてはブリング・ミー・ザ・ホライズンのEPですね。まあ、EPといっても9曲あるのでアルバムに近いサイズなんですけど、「全編、他のアーティストとコラボ」という特殊なテーマ性ゆえに、通常のアルバムとは分けたいという気持ちがあるのでしょう。このところ、配信の楽曲ではかなりエクスペリメンタルなエレクトロなども披露していた彼らですが、このEPでは、エレクトロの強度はあがりはしたものの、基本的に「That's The Spirit」の頃くらいのハードさとメロディックさで、Yungblud、BABY METAL、エヴァネッセンスのエイミー・リーと、かなり話題性の高い興味深いメンツで、相手に合わせて器用にエンターテインしてますね。彼らにとってみたらもしかしたら番外の遊びかもしれませんが、こういう肩の力抜いて、自分たちがまず楽しんでいる状態って、結果としてあがるものも良かったりするんですよね。これを経て、次作がどうなるかも気になるところです。

45.Underneath/Code Orange

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45位はコード・オレンジ。この年間ベストは毎年、「ラウド枠」みたいのがあって、一昨年ならゴースト、去年ならBMTHやバロネス、TOOL、スリップノットと多かったりもしたんですけど、今年はBMTHとこのコード・オレンジのみにさせてください。彼らなんですが、2012年デビューでこれが4枚目になる、中堅にさしかかるくらいのバンドですが、ダウン・チューニングのゴリゴリのリフにダブル・ペダルのキックといった90sのスタイルを基調としたメタルコアではあるんですが、ちょうど時期的に一周回って再び新鮮に聞こえ始めたインダストリアなエレクトロを効果的に使って、手加減なしに攻撃的にグイグイ攻めてるところに心地よい刺激がありますね。あと、硬派でマッチョな聞こえ方をするサウンドでありながらも、女性ギタリストがセカンド・ヴォーカリストをつとめ男女ツインの歌声になることによって、メタルが勢い指摘されがちなセクシズムをうまい具合に交わして進歩的なイメージを付与できている感じもいいです。こういうバンドがシーンをリードできるところまでいけば面白いんですけどね。

44.Ultra Mono/Idles

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44位はアイドルズ。2018年の前作「Joy As An Act Of Resistance」は僕のその年の年間でも6位に入れた作品だし、「UKロックの新たなリーダー格」として年始から期待していた感じからすると、この順位はもちろん高くはないです。前作に比べ、荒削りな無骨さが減ってちょっと洗練されたことと、イギリス国内でよくあがていた「これではレイバー(労働党)のプロパガンダ」とも呼ばれた、直接的に政治的な歌詞も度を過ぎたと捉えられたところも響いたかもしれません。それでも、彼らの剛球ロックンロールは今のイギリス随一の切れ味なことには変わらないし、80sのオールドスクールのロッキン・ヒップホップを意識した「Grounds」みたいな曲を新機軸として提示できる器用さもある。その意味ではやはりポテンシャルは高いし、期待は裏切ってません。今作でネガティヴな指摘をされたところを微調整して次に臨めば良いだけのこと。変わらず次世代のリーダーだと思います。

43.Plastic Hearts/Miley Cyrus

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そして43位は、なんと、マイリー・サイラス!いやあ、僕、マイリーのことは10数年見てますけど、まさか彼女のアルバムを年間ベストに入れる日がくるとはなあ〜。彼女は「ハナ・モンタナ」のアイドルのイメージから脱皮しようと必死にもがいててたんですが、それが2010年代前半のお下劣なビッチ方面に行ったかと思いきや、10年代半ばには「更生しました」みたいな感じで途端におとなしくなったり。で、どうしたかと思いきや、今回、ロック路線でとうとう自分に合うスタイルを見つけました。ロックは前々から歌いたかった彼女ですけど、どうも甘やかされて育ったアイドルから抜けきらない甘さと、後先考えなさすぎな直感すぎる言動がかなりのマイナスになってたんですけど、低いガラガラ声をようやくロックに合わせて力強く歌えるようになったのはデカイですね。まさに、このアルバムでも共演してる、スティーヴィー・ニックスの80年代半ばくらいからの歌い方にかなり似てきてね。あと、「メイロック・サインにベロ出し」な「気分はロックンローラー」なアティチュードでは抜群に相性良さそうなビリー・アイドルとのデュエットもうまく決めててね。よくよく考えてみれば、セレーナ・ゴメスやデミ・ロバートに新たな代表曲になった「Midnight Sky」みたいなロックっぽい曲は歌えないし、追随者も出そうにないから、これでようやく足場築けたんじゃないかな。男はハリー、女はマイリーで、ロック・アイドル、ポジティヴな芽は出てきたような気がします。

42.Grae/Moses Sumney

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42位はモーゼズ・サムニーのセカンド・アルバム。これは僕はとびきり期待してたアルバムです。なにせ、2017年のデビュー作をいきなり年間の2位に選ぶくらい大好きでしたからね。なんか、「レディオヘッドを咀嚼・吸収した黒人による新たなソウル・ミュージック」を聴くみたいな趣があって。イギリスだとマイケル・キワヌーカがピンク・フロイドとブルーズ・ロック吸収したみたいな、曇り空みたいなアンビエントなサイケデリア出せるんですけど、モーゼズの場合はもっとエンジェリックというか、恍惚的にサウンドを立体的に構築させる力がありますね。そういうわけで嫌が上でも期待した作品ではあったんですけど、僕の本音をいうと「やや期待はずれ」だったんですよねえ。曲のキレと美しさは相変わらずだったんですけど、そこまで何かが変わったわけではなく、2枚組にすることで多面性が特に出せたわけでなく、ちょっと冗長になった感じがして。それでも、この人にしか出せない美学は随所に感じるのでベストから外す事こそはしませんでしたが、1枚にまとめて新しい側面をもう少しアピールしてくれたら、いつでも年間トップ10クラス出せる才能だと思います。

41.The Album/BLACK PINK

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そして41位はBLACK PINK。僕の年間ベストではじめて入ってきた韓国の作品ですね。Kポップだと、もう今年はバンタンの圧勝という感じで、世界のどこもかしこも彼ら一色だったわけですけど、ブルピンの成長と、全英、全米ともに2位まで上がった成功は、Kポップ・ガールズに確実に道を切り開いたと思います。2019年3月にコーチェラ・フェスに出た頃は、「曲はイケイケで勢いあるけど、作りとしては雑だな」と言う印象が正直あって、「このまま行くときついな」と思ってたのですが、そこは彼女たちとスタッフもわかっていたのか「How You Like That」「Ice Cream」といった曲では、曲そのものの作りがかなり丁寧になった印象でしたね。それでいて勢いも失わずにね。彼女たちの場合、相手がセレーナ・ゴメスであろうがカーディBであろうが、借りてきた猫みたいにならずにしっかりと対等に自己表現できるところが強みで、もう、しっかりアメリカのエンタメ界の中においても1人前のグループになったな、というのが実感したところですね。今回だと、ニッキ・ミナージュに声のそっくりなリサがラッパーとしてかなり成長したので、帰国子女のジェニーがラップの負担減らしてだいぶヴォーカルに絡むことができたことによって、元々がネイティヴなロゼと英語パートをしっかり歌えたことも強い欧米ファン・アピールになった気がしてます。



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