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沢田太陽の2022年間ベスト・アルバム 30〜21位

どうも。

では、沢田太陽の2022年間ベスト・アルバム。続いては30位から21位を見ていきましょう。

このような感じになりました。

 はい、ここも素敵なアルバムばかりですが、早速30位から見ていきましょう。

30.The Overload/Yard Act

30位はヤード・アクト。2022年にイギリスが生んだ大物新人バンドのひとつですよね。今年の初めころのことでしたが、全英初登場で2位を記録しました。イギリスは北部の街リーズを拠点とするこのバンド、パッと聴きは、ある時期からのこの国に典型的なポストパンク調のバンドではあるんですが、、根っこはハッピー・マンデーズあたりを思わせるかなりファットなビートのファンク・バンドですね。そこに現代版ジャーヴィス・コッカーを想像させるメガネ・フロントマン、ジャイムス・スミスがラップで煽るスタイルをとっています。これ、聞いてて「世が世なら、それこそストーンズがこういうのやりたがったんじゃないかな」と思えるほど、その根底には古かつ普遍的な黒人音楽のグルーヴが、意識的か無意識的にかははっきりとはわからないんですが、かなり染み込んで感じさせるところが興味深かったです。ジェイムス・スミスが今様のミック・ジャガーになれるかどうかは不明ですが、今後に期待してみたいとは思います。

29.Blue Rev/Alvvays

29位はAlvvays(オールウェイズ)。カナダは「赤毛のアン」でおなじみプリンス・エドワード・アイランドを拠点とする、フロント・ウーマン、モリー・ランキンを主体とした、現在の編成で女4男1のバンド。これが3枚目となります。このバンドは以前からカリスマ化する可能性大だと僕は見てましたが、このアルバムで確かなものになりそうです。というのは、60年代のピンナップから出てきたみたいなファッションの女の子がいかにも好みそうな「文科系おしゃれインディ」の様式美的雛形を追求するタイプのバンドだから。シューゲイザーに、唯一の男性メンバーが弾くジョニー・マーみたいな力強いアルペジオが乗るギター・サウンドは、ベル&セバスチャンやラナ・デル・レイとは異なるベクトルでありながら似たようなスタイリッシュなファン層獲得していきそうなオーラに満ち溢れてます。この人たちの場合は、もう、このスタイルだけ追求していけばそれだけで大物になれそうな気がしています。このテのサウンドに全く強くないアメリカで61位まで上がっていることでもそれは明らかです。


28.Endure/Special Interest

28位はスペシャル・インタレスト。このバンドはアメリカのインディ・シーンから久々に飛び出した楽しみなバンドですね。拠点は南部ルイジアナ州ニューオーリンズなんですが、そこで黒人女性をフロントに、彼女を含め明らかにストレートとは思えない風貌の男性2人に女性もう1人の別名「クイア・パンク」とも呼ばれるLGBT系のバンドです。それだけでも十分に曲者感を漂わせているんですけど、エレクトロとパンクを合わせたロウファイで性急なサウンドにハウスのビートと、ヴォーカリスト、アリ・ログアウトの爆発するソウルフルなヴォーカルが生み出す初期衝動の強さがかなりの魅力ですね。これ以前に無名の流通で2枚リリースしていたようなんですけど、今作からラフ・トレード契約になったことで、新し物好きのイギリスでは今年の前半から名前を聞くようになっていましたね。主張に加え、骨太なダンス・グルーヴを主体とするバンドならヤード・アクトと並ぶかそれ以上のバンドだと思うので、今後が楽しみです。

27.Fossora/Bjork

27位はビヨーク。僕の2022年の大きな音楽イベントのひとつに、ついにビヨークのライブを体験することが出来たことがあげられます。今までなんか必要以上に難解なことをやろうとしていることが個人的に鼻についてて結構長い時間、敢えて避けて通ってきたとこがあったんですよね。でも、前作「Utopia」(2017)でより「楽曲」に回帰する傾向を感じて、調べたらその前作の「Vulnicura」(2015)からそうなってることがわかってそれで興味持ってたら、まさに今回見たライブが新作が出てるのにもかかわらず「Vulnicura」主体だったから驚いたんですけどね。ただ、この新作も不協和音とか、食い合わせのよくなさそうなフレーズのつなぎ合せとか、聞き手を選ぶ瞬間こそすくなくはないんですけど、それでも全体を通じホーンやストリングスなどのトラディショナルな楽器を主体とした人間的な温もりを強く感じさせる「うた」を大事にした作風であることに変わりはなく、まさに現在のツアーで展開されている路線と一貫しています。難しくなりすぎちゃって僕みたいに離れてしまった聞き手も世界に少なくない気がするんですけど、「戻っておいで」と言いたいですね。


26.American Heartbreak/Zach Bryan

26位はザック・ブライアン。カントリーの世界も何年に1度かにかなりの逸材が出てくるものですが、これは久々の大物ですね。それがこのザック・ブライアン。生まれは横須賀の米軍基地らしいですよ。現在26歳の彼は3年ほど前から自主制作でキャリア始めたらしいんですけど、この巨大なデモテープ、しかも34曲もあるんですよ、これでメジャー・デビューし一躍注目を浴びています。収録曲は大半が本人の弾き語りのフォークで、そこにフィドル絡ませたバラードだったり、ホンキー・トンクの二拍子のロックンロールだったり、エレキギターのアンプつないでのハートランド・ロックみたいなスタイルだったり、いわゆる「アメリカーナ」と呼ばれる類のルーツ志向の音楽、ひととおりみんなやれる器用さがあるんですよね。しかも、職業作曲家に書いてもらうのが割と当たり前なカントリーの世界で全部自分で曲作って歌うんですよね。これだけの本格派にして、もうすでにビルボードのアルバムでトップ10入ってSpotifyでもヒット中。ちょっとこの先、ロックファンも気にした方がいい人だと思います。


25.Impera/Ghost

25位はゴースト。今、全世界でもっとも異質の存在感を放ってるバンドですよね。僕は2015年くらいから存在気にしてましたけど、今年、意外な形で一気に来ましたね。「法王の幽霊」といういわゆるスリップノットとかに通ずるコスプレ系のメタルかと思いきや、サウンドは全然ハードでもない、メタルの精神的な元祖ブルー・アイスター・カルトを継承・・・みたいな重箱のいたみたいなキャラが僕には昔からツボではあったんですけど、今回のアルバムではこれまでの70s後半っぽいところからちょっと進んで80s前半の初期ボン・ジョヴィみたいな路線に進化。これ、今、「コブラ会」でまさにそのイメージの音楽がテーマ曲になってたりして案外、「リバイバル行けるかも」と思っていたんですけど、その矢先にめざとくそこを狙ってきたのがゴーストだったというのが「やっぱ、目のつけどころ、鋭いわ!」と思って大ウケしました。そして、このアルバム出たすぐ後に、前作と今作の間に出ていたシングル「Mary On A Cross」がtik tokでバカ受けして初のヒット曲も記録しました。次作で一気に人気爆発するんじゃないかと思い始めてます。


24.The Gods We Can Touch/Aurora

24位はオーロラ。ノルウェーが生んだ不思議系女の子の彼女も、今年、このアルバムで大きく躍進したと思います。これ出るまで、「期待されてるのはわかるけど、ポップスターになりたいのか、ビヨークみたいなインディ、アートな感じで行きたいのかわからない」という印象だったんですけど、それがすごくはっきりしたというか。今回、光るのはソングライティングとアレンジのセンスですね。メロディにはっきりと北欧らしい儚げなトーンが濃厚になったのも良いいんですけど、「Cure For Me」での、ちょっと古風なオルガンの音色をモダンなダンス・グルーヴと合わせて踊らせる感じなんかはかなり技ありだと思いましたね。この曲がtik tokでバズった効果でSpotifyで現時点で7000万回再生のヒットになりましたからね。神秘性と、どこか懐かしさを感じるいなたさという北欧的アイデンティティを効果的に生かして、他の誰でもない彼女らしさをこのアルバムで体得できたのではないかと思います。この先、楽しみになってきました。

23.Tell Me That Its Over/Wallows

23位はワロウズ。一足早く、ハリウッドのティーン映画の俳優としてデビューしていたディラン・ミネット率いるバンドのセカンド・アルバム。その話題性で知ったバンドでもあったことからそこまで期待してなかったんですけど、このアルバムでアーティストとしてグッと本格的に成長しましたね。やってること、そのものはいかにも「ストロークスやヴァンパイア・ウィークエンドに憧れるインディの若者」ではあるんですけど、そこを隠すことなく、そのフォーマットに乗りながら自分たちの可能な限りに良い曲を書こうとしている姿がかえって好感持てます。というか、今のアメリカに一番ほしいのがこういうバンドなんですよね。とにかく、チャートどころか、フェスに出れそうなバンドさえ、今アメリカは少なくなってるんですから。こういう、わかりやすくかつ良心的な音楽テイストをもった若いバンドがもっと出てくるべきであり、こういう人たちがいなくなったら本当にアメリカでのロック、現実問題、商業的に成立しなくなっちゃいますからね。「芳醇なUSインディ」なんて呑気なこと言ってる場合じゃありません。また、この好素材を今やヴァンパイア・ウィークエンドの右腕、アリエル・レヒトシェイドが巧みに料理する腕前も見事です。

22.Our Hope/羊文学

22位は羊文学。彼女たちはこの年間ベストに邦楽アーティストが入るようになった、その記念すべき最初のアーティストでもあるんですけど、そのときより5ランク上がっての22位です。ここ最近、藤井風がtik tok経由で国際ブレイクを果たしたりもしていますが、僕自身の本音としては、今すぐにでも海外にわたってフェスに出て欲しいのが羊文学ですね。もう、楽曲、サウンドに関してのセンスが日本のバンドではダントツで、国際的に通用しますよ。ましてや今、USなんてバンド不足で女の子が重宝されてますしね。モエカみたいにシュゲーイザーのギター弾ける女の子もゆりかみたいなハーモニーつけられる存在もなかなかいないしね。今作は前作「Powers」に比べて曲の平均値が上がったと思います。前作は幾分シングル曲とそうでない曲のクオリティ差があったように感じたんですが、今回は捨て曲が少なく、1曲1曲のドリーミーかつポジティヴなメッセージ性であったり、楽曲のひとつひとつの緩急の使い方に成長を見たり、表現者として一つ上のレベルにあがった手ごたえがあります。国境超えたところで見てみたいです。

21.Beatopia/Beabadoobee

そして21位はビーバドゥービー。彼女も2020年の年間ベストでデビュー作を28位に選んでいたのですが、今回7ランクアップで21位。奇しくも羊文学とは2回連続で連番という結果になったのを選んだ後に気がつきました。あんまりそういう風に言われないんですけど、このアルバムでビア、ソングライターとして大きく成長したと僕は感じています。イメージとしては90sのアートなオルタナ・ギターロックに憧憬を抱くZ世代のサブカル女子のイメージで、今作にもまんまスマパンの「10 36」みたいな曲があるんですけど、ストリングスのバラードの「Ripples」、そしてビア風ボサノバの「The Perfect Pair」といった多彩なキラー・チューンが揃ってます。全体としては、彼女が得意とするシューゲーザーとフォークを双方向で拡大して行っている感じですね。そして、この二つの路線でも共通してるのは、ずるいくらいに可愛らしい舌足らずの甘えた声ですね。やっぱりこれは彼女にとって大きな武器になりえますね。次あたりで決定打欲しいところです。

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