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ライブ評「MITA Festival」(2)HAIM、フローレンス&ザ・マシーン〜女性最強ライブアクト揃い踏み!

どうも。

では昨日に引き続き

サンパウロの市内のど真ん中にあります、サンパウロ市庁舎近くの大広場ヴァーレ・ド・アニャンガバウーで行われたMITAでスティバル。これについて語っていこうと思います。

この日の目玉はなんといっても

HAIM、そしてフローレンス&ザ・マシーンです。ヘッドライナーのフローレンスは2017年に行われたロラパルーザ・ブラジルでもヘッドライナーを務めたので、これで2度目の大役。HAIMに関してはこれが初めてのブラジル公演ということで嫌が上にも期待が高まってました。

では、昨日に続いて、この2つの前の昼の様子から語っていきましょう。

昨日、このフェスがかなりの街中で行われていることに言及しましたが、会場にですね、ストリートまで入ってるんですよね。こういう風に。先まで歩くと、Tシャツ売ってたり、タトゥー彫ってたりするところがフェスの公認であったりします。見ての通り、かなり日陰ができるところもあり、僕は日中、そこで休んでました。出番は夕方に完全に絞ってたので。

で、この写真の左側から手前側にはみ出ていくと、そこにフードコートがあるんですけど、出店のクオリティがすごく高くて美味い!仕切りがそこまで良いイベントとは言えませんでしたが、環境的にオシャレで、食事に関してはロラパルーザより断然うまかったのは認めます。

この日は前日ほど国外組が少なく、あんまりブラジル国内のアーティストを見ない僕には昼間は退屈でした。ただ、その中で気になったのは、やたら人が集まってたこのバンドですね。NX ZERO。「ブラジルのリンキン・パーク」みたいなバンドで、2010年前後にかなり人気ありました。ちょうど僕がブラジルん渡っ時が人気の絶頂だったかな。そのバンドが再結成して、16時20分からライブやったら、若い子たちがすごく集まってましたね。年令にして20代前半くらいの子。多分、その子らにとってこのバンドは小学生の時の大スターだったんじゃないかな。彼らが僕が第1ステージでHAIM待ってた時の、真反対に位置する第2ステージで演奏してたんですけど、HAIM待ってた女の子たちまでもが聞こえてくるNX ZEROの曲を口ずさんでましたね。こうしたブラジルの「世代感」が垣間見れたのは貴重でしたね・

演奏的にもエンタメ的にも最高だったHAIM


2012年にロラパルーザ・ブラジルが毎年開催されるようになったおかげで、話題になってるアーティスト、大概ブラジルでは見ることができます。それだけじゃなく、他にもフェスが増えてる状態でもありますからね。

 ただ、そんな中でも巡り合わせが悪くて長期で見れなかったアーティストも稀にいるんですよね。このHAIMがまさにそうです。2013年にデビュー・アルバム出した時から僕としては「すごく見たい!」「世界的に押しアーティストなんだし、南米に来ないことなんてないだろう」などと思っていたら、ファーストの時に来ず、セカンドの時にも来ず、さらにサードでパンデミック・・・と待っていたら、10年が経ってしまいました。

 だから日本の人たちが羨ましくてですね。彼女たちのライブを見た人たちからは「ステージは思った以上に骨太にロック」という話をそれこそ10年ほど前から聞かされていただけに楽しみでした。いつも曲は好きだったんですけど、それと違う感じというのが、今ひとつ僕にはうまく想像つかずにいましたね。

それだけに「どんな感じかな」と楽しみに待っていたら

ブラジルでは誰でも知ってる、80s後半から90sにかけての子供番組の主題歌をバックにHAIMが入場。「Now Im In It」でライブがスタート。

そしてやはり

さすがに「Don't Save Me」は一体感持った盛り上がりになりましたね。

ここまで見た時点ですでに「こういうライブ・アレンジするんだ。かっこいいな」と思いましたね。映画「リコリス・ピザ」で映画でもおなじみになった三女エステがキーボードからパーカッションからギターから何でも持ち替えてバンドの多様性に貢献。曲そのものも、ちょっと尺伸ばし気味に、スケール感出るように太めの音質で演奏してるんですよね。スタジオ音源で聴くよりグルーヴが前のめりに攻めてるんですよね。

続く「I know Alone」の間奏部分では、おなじみになった3人揃ってのダンス。ここでもわかるように3人お揃いのブラジル国旗のビキニを着ています。

「達者なエンターティナーだな」と思ってたら、一番面白いの、この人ですね。

長女のベースのアラナですね。MCは彼女とエステが掛け合い漫才調で、ヴォーカルのダニエールがクールにあんまり喋らないというコンビネーションなんですが、こういうとこ含めて計算されてますね。

 このアラナ、しゃべりがすごく笑えるんですよ。上にあげた動画をオープニングに選んだのは彼女が、口調まで忠実にしておくと「アタシさあ、子供ん時、シューシャ、超好きで〜。だからさあ、ブラジル来るの、すっごい憧れだったんだよね。そしたらさあ、今日サンパウロの街歩いてたら、何もつけたと思う?」と行って、シューシャのキャラクター・グッズの帽子を取り出してきました。シューシャっていうのは、30年ほど前、世界的に子供番組が放送されててアメリカでもやってました。さらにアラナ、「深夜、アタシ、クラブいるからさあ。おいでよ」と言って自身のヴォーカル曲の「3AM」を披露します。

このバンドはみんながいろんな楽器弾いて、歌えて、踊れて楽しいなあと思うんですけど、フロントのダニエールが曲によってドラム叩きながら歌うのも特異な才能ですね。曲によっていろんなフォーメーションができるということは、いろんな曲を今後やりうる可能性も感じさせますね。


適切な写真なくてアレですけど、キラーチューンの「Forever」でのガッツ溢れるギターパートもかっこいい!

「こんなプロフェッショナルなライブのエンターティナーだったんだな」と感心することしきりでしたね。こういうのはスタジオ音源からは感じなかったことです。レコーディング作品そのものも十分ウェルメイドではあるんですけど、このライブ見てると、「まだ音源だと、この実力の8割くらいしか力を出し切ってなかったのか」と思ってしまいましたね。「ああ、だから、多くの人たちが彼女たちに寄ってくるのか」と納得しましたね。惚れてた理由はその「潜在能力」だったんだなと。これだったらそれこそ、デビュー時の2013年にこそ見たかったなあ。

このライブできるんだったら、まだまだ今後のアルバム展開に期待は十分できますね。デビュー時のインパクトに負けないものを作れるはずです。

セットリストは

1.Now I'm In It
2.Don't Save Me
3.I Know Alone
4.My Song 5
5.Want You Back
6.3 AM
7.Gasoline
8.Don't Wanna
9.Summer Girl
10.Forever
11.The Wire
12.The Steps

女王の貫禄!スティーヴィー・ニックスの後継者はもう決まりのフローレンス



続いてフローレンス&ザ・マシーン。今まで来てなかったHAIMと違ってブラジルは3回目の彼女。1度目はブルーノ・マーズの実質的な前座。2回目はロラパルーザのヘッドライナーと、いずれも広いところでのライブで僕も全部見てますけど、いやあ、今回の群衆、その時と比にならないくらいのスケールでしたね。食事などでその場を離れてはいましたけど、もうそうすると、ステージ上は肉眼では見にくい距離になってしまいます。ステージ両側のビッグ・モニター頼りですね。

 そのライブですが、40分も遅れた前日のラナとは対照的に、裏ステージのマーズ・ヴォルタが終わって間もなく、20時20分定刻にぴったりと始まりました。

 選曲は最新作の「Dance Fever」からが中心で、2曲目、これは今後の彼女のライブでもハイライトになりそうな「King」で最初の大団円ができます。「Ship To Wreck」「Dog Days Are Over」とおなじみのナンバーを交えて前半から飛ばします。

 今回のフローレンスですが、過去2回の公演と比べてみても、声の伸びが圧倒的。これだけで十分大歓声を引っ張れるんですが、やはり

 これですよ!このヒラヒラのケープを、両手広げて歌う時の、この恍惚感!これこそが彼女のライブの最大の魅力です。このケープがなければ彼女、ライブやる意味さえありません(笑)。アンガス・ヤングの半ズボンくらい不可欠です(笑)!

 こういうの大好きなんですよ。「この人のライブにはこれが不可欠!」というトレードマーク。こういうのがロック史、ポピュラー・ミュージックにとってみれば、長い語り草になっていくわけですから。

 また、上背が高く、特に足が長いからステージ映えもすごくいいんですよね。背の高さ自体は174センチと、180あるテイラー・スウィフトに比べると小さいんですけど、実際よりも高く見えるダイナミックさが彼女にはあります。

 そんな彼女も、ステージでのしゃべりはシャイで、上ずって高い声で、照れ臭そうにしゃべります。元の音楽性も、ハープを使った、ちょっと中世的なファンタジーの香りのする、「古の伝承」な感じですからね。おとなし目の性格、マニアックな音楽性含め、本来ならスターになりにくいところが、歌声とステージ・プレゼンスの華という素質だけでロックスターになれちゃった、そういう感じがします。

 そんな彼女も、パンデミックで思うところがあったのか、「Dance Fever」は「みんなで外に出て解放されよう」という、ビヨンセの「ルネッサンス」に通じるメッセージが根底にあって、そこには「King」で歌われるような強いフェミニズムもある。それを意識してか、今回、これまで以上にすごく煽るの、上手くなってますね。前はかなりシャイだなという印象だったんですけど。

 後半になればなるほど、ファーストとセカンドの曲への依存度が高くなるのは彼女の課題ではあるんですけど、最新作からの「My Love「Restraint」
をアンコール前の締めにできたのは今後のライブの一つの収穫だと思います。やっぱ、去年の年間ベストでも入れましたけど、「Dance Fever」、久々の快作だと思いますしね。

 そしてアンコールは再び大団円。「Never Let Me Go」「Shake It Out」「Rabbit Heart」で締めて、

やはり、この感じにつきますよ!!

ロック界で「ケープの女王」と言えば、それは70年代からスティーヴィー・ニックスと決まっているんですが、その後継者にはもう困りませんね。フローレンスがしっかり受け継いでくれます。そのことも確認できた意味で、すごくほっとできるライブでもありました。

 今回のライブ、ラナ、HAIM、フローレンスと、2010年代前半に、昨今のインディ・ガールズ隆盛の礎築いた人たちを、よくもまあ、こんなに集められたものだと感心しますよ。サンパウロすごいですよ。去年の11月のプリマヴェーラ・サウンドからミツキ、フィービー・ブリッジャーズ、ジェシー・ウェア、パラモア、ビリー・アイリッシュ、ロザリアと呼んで、この3つ。これこそが今のシーンの流れだし、彼女たちがいなけりゃフェスだって楽しくない。そのことをまざまざと感じましたね。








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