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もうほとんど私怨 ピッチフォークの歴史的なキングス・オブ・レオン酷評劇

どうも。

今日はこういう話をしましょう。

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ニュー・アルバム「When You See Yourself」を発表したばかりのキングス・オブ・レオン(KOL)、彼らの話をしましょう。

KOLといえば、もうロックの世界では世界屈指のビッグなバンドとして知られていますね。英米でともにアルバムがナンバーワンを獲得。今やフェスに参加するときはヘッドライナーで登場するのが当たり前のバンドです。

彼らは登場時、すごく「批評家イメージのいいバンド」という紹介を受けていたものです。実際、初期のアルバムはイギリスですごく評価されていましたからね。

が!

KOLのアルバムが総合的に高い評価だったことは、これまでにありません。

それはですね、特定のメディアで、必ず低得点をつけるところがあるから。

それがどこかというと、ここです。


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はい。ピッチフォークですけどね。本当にここはねえ〜。意味不明なこだわりの仕方をするときがあってですね。

たとえば今回のアルバムも

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10点満点中の4.8。なお、ここの基準でいうならば7点割ると低評価です。さらにいえば、普段、5.5以下の点数というものをほとんど見ません。

それが、このバンドの場合、どうなっているかというと。

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2016年の前作がこれでしょ。

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なぜか1作飛ばして、2010年の大ブレイク作直後でこれ。まあ、このアルバムは僕も歴代では一番好きじゃないんですけど、いくらなんでも、この当時、世界で一番の人気バンドになっていたわけで。

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そしてバンド最大のヒット作でこの点数。グラミー賞のソング・オブ・ザ・イヤー受賞した「Use Somebody」と、全英3週1位の「Sex On Fire」という、彼らの2大代表曲が入っているこのアルバムでもこの点数。ここで成熟方面へ路線変更したのは昔からのファンの反感も買ったわけですけど、同時に年間ナンバーワン・アルバムに選んでいたメディアも結構あった。そんなアルバムにもこの点数なわけです。

「期待していたバンドがセルアウトしたととらえられたからでは?」。そう思うでしょ?ところが、そういうのは全く関係ないんですよ。

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コアなKOLファンも文句なしに認める最初の3枚「Youth And Young Manhood」「Aha Shake Heartbreak」「Because Of The Time」、これらにまでこの点数ですよ!

馬鹿げてますよ。この当時って彼ら、ファンだけじゃなくてミュージシャンからの人気も絶大だったのに。僕が覚えてるだけでも、パールジャム、ポール・ウェラー、モデスト・マウスのメンバーは絶賛してました。むしろ、彼らみたいなバンドが売れることは良いことだ、というイメージでしたよ。これ、たとえばその頃の年間ベストだけじゃなく、ローリング・ストーンの2000年代ベストの100枚だったり、「死ぬまでに聞きたい1001枚のアルバム」にも選ばれているくらい批評評価の高いアルバムです。それにこの点数なわけですからね。

僕からしたら頭に来てましたよ。だって、KOLって、僕の中では、キラーズ、インターポールと並んで、その当時の贔屓バンドでしたからね。それぞれに思い出あるわけですけど、KOLの場合は、2003年のデビューEPの頃にロンドンの小さいバーでのライブ、見に行ったくらいですからね。トッテナムにある、半地下の、50人も入らないようなところですよ。その頃から、もうライブの実力は、あの頃、出てきたバンドの中でも群を抜いていたわけですしね。

おかしいんですよ。そのデビューEPの時点では

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7.1という高評価をしていたくせにね。それが一転して態度が豹変したんですよ。

これ、なにか裏があるとしか思えないんですよね。たしかに、この当時、KOLに関しては「作られたバンド説」「保守的なバンド説」が流れていたことはたしかなんです。

僕もデビュー時は対面インタビューやってますけど、「親は超保守派のペンテコスタル派」「デビュー数年前までロックを禁じられていた兄弟たちが10代でバンドを組んだらたちまち評判になって数回のライブでメジャー契約」「歌詞がきわめて卑猥」「オフステージがワイルド」とか、いろいろ噂は立ちましたからね。

だから反射神経的に、「業界が仕組んだ保守反動の作られたバンド」のイメージを持ったんじゃないかな。でも、その割にはやってる音楽はU2とかストロークスとか、むしろロックファンの中でも良いイメージを持たれている音楽の系譜からの影響が強い。別に、モトリー・クルーとかリンプ・ビズキットみたいな、セックス・ドラッグス&ロックンロールみたいな、不良白人の嫌なところをにじみだした嫌われやすい発言とかをしているわけでもない。なにも仕掛けてもないのに、イメージで勝手に嫌われてた感じですね。

これ、キラーズもこの当時、同じような扱いで嫌う勢力あったので、なんとなくわかるんですよ。ブランドン・フラワーズもモルモン教ですからね。

だけど、これははっきり言って眉唾です。だって

これ最近の記事ですけどね。彼らは「ソーシャル・ディスタンシング」の支持者で、「環境問題の陰謀論者はバカだ」と言ってるんですよ。彼らは政治的なスタンスを表明してきてはいないんですけど、これ、トランプ支持者の右翼の陰謀論者にはいないアイデアなんですよ。やんわりと否定してますよね。

これに関しては、これまでに誤解されてたアーティストも同じような動き出してますね。前にも投稿で取り上げたラナ・デル・レイも、もう4年前からずっとトランプ批判してたにもかかわらずまだ疑われてたからはっきりバイデン支持を打ち出したし、キラーズも2019年にトランプ批判の単発シングル出していたりもして。とにかく、根拠も全くない、白人アーティストの保守派疑惑のレッテル貼りはやめるべきだし、それこそがフェイクニュース拡散の元です。

ピッチなんて皮肉ですよねマインド的にはかなりリベラルの筆頭のはずなのに

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この男に10点満点出したメディアなんですけどね。まあ、あの作品は本当に素晴らしかったからいいんですけど。だから、「政治姿勢うんぬん」でKOLを攻めるのは全く筋違いですよね。

で、ピッチフォークって、僕が前から問題にしてるのは

・イギリス、およびUKメディア推奨アーティスト嫌悪

・クラシック・ロック嫌悪

この2点に関して昔からひどいです。これがなくならない限り、僕がピッチフォークを支持することはないですね。

だって、今年に入っても、僕が1月に絶賛記事書いたアーロ・パークスのデビュー作、あれに6.7という異例な低得点つけたんですよね。これを筆頭に、どんなに評判がいいイギリス経由のアルバムでも7点台どまりですよ。推薦番にあたるベスト・ニュー・ミュージックを獲得することはよほどのことがない限り、ありません。

あと、クラシック・ロックへの毛嫌いが本当にひどい。過去、ジェットのセカンド・アルバムに0点をつけたこと。グレタ・ヴァン・フリートのファースト・アルバムに1.6点をつけたなど、やってますけどね。

こういうことをやることによって、何を提唱したいのか。これが全くもって意味不明です。ひとつの音楽選択肢として、60年代のブルースロック・ベースのトラディショナルなサウンドを下地に持つことは許されないのか。それがあることによって、ロックシーンにどういう迷惑がかかるのか。そういうとこが全く見えないんですよね。

あと、「売れそうなロック」を極端に嫌って、自分たちの価値観によるロックを提唱するのはいいとは思います。そういう意味でKOLやキラーズを仮想敵にするのは意味がわからないことではない。だけど、もとがファン層がストロークスとかホワイト・ストライプスみたいな、ロックファンの中で良いイメージを持たれているバンドのファン層とかぶっているのにKOL叩いて何の意味があるんでしょう。これ、単なる「売れるバンドへのやっかみ」でしかないし、そういうことをやることによって、ロックバンドのアメリカでの人気の縮小にしか働かないんですよね。

そんなことをしたことによって

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実際にレコード業界とラジオ業界が後押しして、本当の意味で作られたタイプのイマジン・ドラゴンズ、twenty one pilots、パニック・アット・ザ・ディスコの方が何10倍も売れてしまうシーンを作らせてしまいましたよね。ピッチフォーク推奨のバンドとやらが売れないせいで。叩くのなら、むしろこっちだと思うんですけどね。もっとも、今のアメリカみたいにロックがペンペン草も生えないくらいに売れなくなってしまった後では、こういうバンドにもある一定の商業的な期待を持たざるを得なくなってしまってはいるんですけどね。

「アメリカでのロックシーンの混迷の背景にはラジオがある」とは何度も投稿で書いてきていますが、そこに加えてピッチフォークのこうした無意味な「売れるアーティスト攻撃」が悪影響を与えていたことも覚えていた方がいいと思います。

ちなみにKOLですが、今回のアルバム、サウンドの作りはかっこいいんですけど、曲はもう少しロックして欲しかったかな。アッパーなチューンが足りないことがコア・ファンの欲求不満にもつながっているので、そこは次作以降、もう少し考慮した方が良いと思います。ライブだけでいうなら、今、本当に世界的に見てもトップクラスのバンドなんですからね。


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