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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第35回) ボブ・ディラン その2 20〜11位

どうも。

では、一昨日からの続きいきましょう。

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FromワーストToベスト、80歳を迎えたばかりのボブ・ディラン。今日は第二回目。20位から11位にいきましょう。


20.Planet Waves (1974 US#1 UK#7)

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20位は1974年発表の「Planet Waves」。これはいわゆるザ・バンドとの共演作で、これのツアーも一緒にやったことで知られていますね。両者のファンにとっては嬉しい企画ではあったし、全米1位も実際にとりました。ディランのザ・バンドをバックにした演奏も「らしさ」はあるにはあります。ただ、このアルバムが「ロック史」の観点であまり語られていないことでもわかるように、ファンの期待値は下回ったアルバムだと思います。なぜか、やっぱり骨太なファンキーさ、ソウルフルさが足りないんですよね。この時期のディランって、この一つ前の「天国の扉」、そしてこの次の「血の轍」と一大美メロ期で、このアルバムにも名曲「Forever Young」が入っているのでそういうモードだったのかもしれません。それとザ・バンドとの相性がそこまで良くなかったのかな。

19.Modern Times (2006 US#1 UK#3)

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19位は「Modern Times」。これは2006年、大ヒットしました。ちょっとしたディラン・ブームでしたね。やはり前作、前々作での批評的大絶賛で今作への期待値がマックスで上がってたし、「Someday Baby」がipodのCMソングになったりと話題性もありましたしね。実際、リリース時のレビューも大絶賛だったし、若い人がもっとも飛びついた作品であったこともたしかです。ただ、そのときも少しそう思ったし、改めて聞き返してもそう思うんですけど、この前作「Love And Theft」の簡易ヴァージョンみたいな感じなんですよね。曲は「Someday Baby」とか「Thunde On The Mountain」みたいなキャッチーなつかみがあるだけ入りやすくはあるんですけど、「ロックンロール、伝承風フォーク、ショー・チューン、ジャズ・バラッド」といった音のデパートみたいだったあのアルバムの網羅感、深さがこっちにはやや欠けるといいますか。あっちを聞いてなくていきなり本作なら思い入れも変わるんだろうとは思いますけどね。

18.Shot Of Love (1981 US#33 UK#6)

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18位は「Shot Of Love」。今回の10位台は僕にはテーマがありまして。それは、「僕の中でのディランの過小評価作品を入れよう」というもので、1981年作のこのアルバムがその第1弾です。このアルバムはいわゆる「キリスト教3部作」のラストを飾る作品で、リスナーの興味がもうそのテーマからちょっと離れたがっていたこともあって、一般的な評判は良くありません。ですが、音楽的にゴスペルの影響が強く、ソウルフルで肉感的な躍動感で言うなら、このアルバムこそがマックスです。前の2作と比べて、より強く体を揺らす高揚感の強いアルバムです。ただ、それでも過小評価されてるのは、このあまりにもイケてなさすぎな歴代ワースト・ジャケ写のせいでしょう(笑)。

17.Street-Legal (1978 US#11 UK#2)

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17位は「ストリート・リーガル」。このアルバム、立ち位置が地味なんです。この前には伝説のローリング・サンダー・レビューのツアーがあり、この後にはキリスト教3部作の存在がある。その間にリリースされ、大きく長く続いた方向性も特になかったので印象に残り難いんですけど、ここでのディラン、かなりロックンロールなんですよね。しかも、当時まだ若かったブルース・スプリングスティーンとか、彼に影響されて出てきたタイプの、いわゆるハートランド・ロッゥをディラン風に実践したアルバムなんですよね。シングルにもなった「Changing Of The Guards」をはじめ、ロックンロールがかっこいいアルバムなんですよね。これは僕の「過小評価ディラン・アルバム」の2番目に来る作品ですね。

16.Tempest (2013 US#3 UK#3)

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16位は2013年の「Tempest」。90s後半から怒涛の快進撃のディランでしたが、それでも若干の金属疲労はあった感じでしたね。それが「Together Through Life」に出たりもしてますけど、このアルバムでは、やってることは変わらないんですけど、アルバム収録曲の組み方ですごくつかみがうまい感じになってますね。1940年代のノイズバリバリのラジオから聞こえてきそうなオールド・タイミーなナンバーで近年のステージ・フェイバリットの「Duquesbe Whistle」のスウィング感でつかんで、ロッカ・バラードの「」Soon After Midnight」で流れて、この感じでいくのかと思ったところでロックンロールやアメリカーナになだれ込んでいく感じになって。こういう緩急が微妙に薄れてたところがあったので、これはホッと一安心なアルバムでしたね。

15.Rough And Rowdy Ways (2020 US#2 UK#1)

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15位は昨年発表の最新作「Rough And Rowdy Ways」。これもサウンド傾向的には「Tempest」同様に「21世紀型ディラン」のサウンド・フォーマットはとっているんですけど、「Time Out Of Mind」で聞かれた、ダークでゴシックにゆらめくようなアンビエント感がここで戻ってきているのがすごくいいですね。これは聴き比べすると、より鮮明に感じられます。あと、このアルバムはなんといっても、老齢期のディラン、一世一代の叙事詩、16分54秒にも及ぶ大曲「Murder Most Foul」の存在ですね。1962年にデビューのディランが63年のケネディ大統領暗殺について、おじいちゃんが孫に読み聞かせるかのごとく、それがその後の時代にとって何を意味したのかを説き伏せる説得力が見事です。ある時期から世相に関して明確には語らなくなったディランだけに、これは嬉しかったファンも多かったものでした。

14.John Wesley Harding (1967 US#2 UK#1)

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14位は「John Wesley Harding」。60年代半ば、フォークロックに転じて時代の寵児だったディランがバイク事故に見舞われ、しばし隠遁。その間に世はサイケデリックで愛と平和を叫んだサマー・オブ・ラブが到来。そのアンサーとしてディランもサイケに・・と思ったら、原点のフォークに戻っただけでなく、よりアメリカのルーツ音楽に根ざしたものに・・、というロック史のストーリーで出てくるアルバムです。なので、本当はトップ10に入ってよかったアルバムだと思うんですけど、作風がちょっと今聞くと地味すぎるのと、その後の数作の方がそのディランのモードの中では好きなのでこの順位になりました。それでもジミヘンがカバーした「見張り塔からずっと」や「I'll Be Your Baby Tonight」は不可欠な名曲ですけどね。

13.New Morning (1971 US#7 UK#1)

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13位は1971年の「New Morning」。ディラン史の中でいきおい地味な位置付けにされている70年代初頭のディラン。たしかにこの時期、ジェイムス・テイラー、キャロル・キング、CSNYといたから時代がそっちに向いてたところがあったのかもしれなかったんですが、ここでディランが展開している、ソウルフルでファンキーなフォークロック、すごくいいんですけどね。しかもかなりメロディックでもあって。このアルバムが「Shot Of Love」「Street-Legal」と並ぶ「3大過小評価アルバム」ですね。このアルバムのときにザ・バンドとやってほしかったですね。

12.Desire (1976 US#3 UK#1)

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12位は「欲望」。やっぱり、このあたりは邦題の方がいいですね。これもすごく大事なアルバム。もちろんトップ10には入れたかったんですけど、他にもたくさん優れたアルバムを持つ人ゆえ、かないませんでした。でも、これもディランを語る際に欠かせない一作です。このアルバムだけなんですよね。ジプシー、ボヘミアンな怪しさのある雰囲気のアルバムって。その、ある種、演劇性すらあるミステリアスさがあるがゆえに、ミック・ロンソンからロジャー・マッギンからジョーン・バエズから多彩な面子が参加したツアー、ローリング・サンダー・レビューにもつながったのだと思います。歌詞においても、冤罪で懲役刑をくらった元花形黒人ボクサー、ハリケーン・ルービン・カーターを歌った「ハリケーン」など、久々に社会派ディランが牙剥いた一面も見せたのも見逃せないポイントでもあります。


11.The Times They Are A Changing (1963 US#20 UK#4) 

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そして11位は「時代は変わる」。ディランのフォーク時代のみならず、フォーク・ミュージック全体で考えても重要な作品です。63年にこれというのが絶妙なんですよね。すごく暗示的で。実際、この2年後にディラン自身も後押しした公民権が施行されて、ウーマン・リヴも起きて、ベトナム反戦も起きて。またディラン自身が50数年後に批判したケネディ暗殺みたいな時代の暗部も同時にあり。こうしたせめぎあいが半世紀経った現在でもまだ続いているのがすごく象徴的じゃないですか。いきおいタイトル曲の印象だけで語られがちなところもあるんですけど、「With God On Our Side」「One Two Many Morning」も欠かせないし、貧困から一家を惨殺した男を描いた「Ballad Of Holis Brown」、中年黒人の暴力被害での死を描いた「Lonesome Death Of Hattie Carol」といった叙事詩を聞かせる巧みさも見逃せません。

・・ということで明日はいよいよトップ10です。

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