この5年で一番難しかった! 2022年1〜3月のアルバム10選入りを惜しくも逃した好アルバム
どうも。
それでは、お待たせしました。3ヶ月に1度の当ブログの重要企画、「3ヶ月毎のアルバム10選」。まず、その恒例として、「惜しくも10枚入りを逃した好盤」。これを行きましょう。
いやあ、今回の10枚ですね、僕、この企画、2018年からやってますけども、
過去5年の、どの四半期よりも一番難しかった!
いやあ、これはもう、本当に。今年はねえ〜、なんだかわからないんですけど、年の初めから充実作がとにかく多かった!候補の10枚なんてすぐにあふれたから、よほど確証の持てるものしか10枚にピックアップできなくて。で、この「圏外の10枚」もすぐ溢れ出るくらいに好作品が多くてですね。
そういうこともあり、僕としてはいつもより自分の趣味、好みが出たものとなったような気がします。いいものが多いときって、結局そうせざるをえないんですよね。
では、圏外の10枚、こんな感じです!
はい。この時点でも素敵なアルバムばかりですが、早速いきましょう
まず、選んだのがマレン・モリス。彼女はカントリー界でテイラー・スウィフトやケイシー・マスグレイヴスについでクロスオーヴァー・ヒットが期待されている人ですね。ただ、その状態が長くて、今、31歳なんですよね。やや時間はかかっちゃいました。ただ、今回のアルバム「Humble Quest」はヒット請負人のグレッグ・カースティンがほぼ全編プロデュース。そのため、音の感触がカントリーより、インディ・ロックのザクザクしたテイストが表に出た、彼女が本来作りたかったカントリー・ロックのアルバムが作れてるような気がします。カースティンといえばフー・ファイターズやリアム・ギャラガーも手がけていますけど、このアルバムでもギターのエッジに後期ビートルズ色が感じられます。コンテンポラリー・カントリー特有の癖のついたメロディがやや引っかかるものの、一歩外に足を踏み出したてごたえはやっと感じましたね。
後期ビートルズといえば、続いてスプーンですね。「甘酸っぱい、いぶし銀のロックンロール」やらせたら世界でも屈指にかっこいいバンドです。この「Lucifer On The Sofa」というアルバムも、彼らの歴代のアルバムの中で飛び抜けていいわけではなかったんですけど、それでもずっと安定してかっこいいですよ。こう言う感じのロックンロールなら、エルヴィス・コステロのアルバムもかっこよかったですね。90sの中期以降、ちょっと離れてたんですけど、久々にソリッドなロックンロール戻してきてくれた感じでね。
続いてはアルダス・ハーディング。「Warm Chris」というアルバム。この3ヶ月、女性シンガーソングライターが好盤を出してました。ケイト・ルボン、ハレイ・フォー・ザ・リフラフ、ニルファー・ヤンヤ。だけどどれも「地味にいいアルバム」で、僕が興奮して騒ぎたくなるような感じじゃなかったのが惜しかったですね。それで言えば、このある出すのもそうなんですけど、強いて1枚あげれば彼女になります。不協和音使って、ちょっと調子外れっぽいのにソフィスティケイトされた曲作らせたら、今のアンダー30の女性アーティストでもかなり上位ランクの人です。でも、まだ振り切っていい。
続いてはデンゼル・カリー。ヒップホップだと、これが一番だったかな。「Melt My Eyez See Your Future」。このアルバム、ロバート・グラスパーを始め、サンダーキャット、JPEGマフィアといった、ジャズやアヴァンギャルド系トラックメイカーを使って、インディ・ロックと並行してヒップホップ聞くリスナーにすごく刺さってますね。今年出たヒップホップでこれがベストなのは確かです。ただ問題は、これだけ音がかっこいいのに、去年のリトル・シムズやタイラー・ザ・クリエイターみたいな、「これがシーンを牽引する」といったカリスマ性が感じられないんですよね。それが何故そうなのか、ずっと考えてはいるんですけど、その感じは今ひとつ伸び悩んでるチャート結果にも出てるような気はしています。
続いてはチャーリーXCXの「Crash」。全英1位に加え、全米でも7位に入ったチャーリーの自己ベスト・ヒット作です。僕自身も2年前に年間ベストの20位以内に入れた「How I'm Feeling Now」をはじめとして、短期間に良作を連発した結果、このアルバムで彼女、初の全英ナンバーワン、全米トップ10と、商業的にも人気アーティストの仲間入りを堂々と果たしています。エレクトロ・ポップ書かせたら、今、随一のアーティストであることは、2014年の「Boomcrap」の時からわかっているつもりです。ただ、彼女の場合、曲の大量生産が聴くと同時に、職人的な器用さが災いして時に「平均点的に良いんだけど、なんか物足りないな」と思うアルバム作ってしまう時があるんですけど、個人的には今回がそこかなあ。それでも楽曲的に作りが上手いんで満足はするんですけど、なんかもう少し尖って歪な曲があるときのほうが僕は好きです。
続いて2枚立て続けに行きましょう。1枚目はイギリスはウェールズの女性フロントのバンド、ミステリーンズの「Reeling」。2枚目はアメリカはナッシュヴィルの三人組バンドですね。グッバイ・ジューンの「See Where The Night Goes」。やっぱ、僕としては、こういう腕っ節の強いタイプのいいバンドが出たら押したいですね。前者は「ハードなホール」風で、力強さとセクシーさを併せ持ったフロントウーマンのリア・メトカルフのキャラクターが光りますね。後者は、もうこれまんま、「ボン・スコット期のAC/DC」で、それをブラック・クロウズみたいに南部よりにアーシーに昇華させたサウンドがかっこいいです。そういうバンドでありながらBlack Lives MatterやLGBT指示なので、安心して推奨できます。前者が全英7位、後者が全英33位、全米106位と、商業的に売れる芽が出てきている点でもポイントが高いです。このテのバンドはツアーでライブ見せることによってゆっくり人気を上げていくタイプなので、ポスト・パンデミックが楽しみです。
続いてはワロウズ。これは今回、全体で見ても指折りの「予想外の収穫」ですね。ネットフリックスの「13の秘密」などにも出てたヤング・ハリウッドの俳優ディラン・ミネットのバンドで、その人気で前作のデビュー作が全米100位に入ったので、当初、話題性だけのバンドかと思っていたら、ごめんなさい、見くびってました。彼ら、ストロークスの極めて優れた後継者ですね。あのバンドのギター・アンサンブルでなくて、ポップな要素。これを脱構築して進化させることに、このセカンド・アルバム「Tell Me That It's Over」で成功していますね。そのやり方が1975みたいなシティ・ポップ、ソフィスティ・ポップ的なやり方で、R&Bやサイケデリックな要素もうまくまぶしたりで。こんな器用な人たちとは思ってなかったですね。あと、これ、プロデューサーがアリエル・レクシャイドなんですね。つまりヴァンパイア・ウィークエンドやHAIMの系の人です。さっきのチャーリーのアルバムもやってます。インディの中での一つのサウンド勢力ですね。これで全米トップ50、全英トップ100に入ったので次が楽しみになってきました。
これも大奮闘でしたね。上位10枚があんなにハイレベルじゃなかったら、本音言えば入れたかったくらいです。オーロラの「The Gods We Can Touch」。彼女はノルウェーという出自から、イメージとしては、ビヨークを想起させつつ、でも、昨今のセレブ・ディーヴァみたいなポップ方向の感じもして、正直な話、「どっち側につきたいなだろう」と、どっちつかずな印象だったんですね。だけど、今回のアルバムで、エレクトロの部分よりも、ちょっとミステリアスな地の歌の部分、北欧伝承のフォーク・ミュージックのメロディが強化された感じがして、それが本来、彼女を生かすべきだったもののような感じで、すごくオリジナルなイメージを築くのに成功しています。もともとファッションにしても、俗っぽさのないミステリアスなカリスマ性を持っているんですから、安売りする方向じゃなく、それこそビヨークみたいに、まあ、あんなに難解化する必要もないんですが、高尚な方向に進んでいってほしい気がしてます。そのための、これ、いい一歩のような気がしてます。これで全英トップ10にも入ってます。
そして、最後の最後まで入れるか入れないかで迷った挙句に割愛したのがこれでした。ゴーストの「Impera」。インチキ教団的なマスクに身を包んだ、スウェーデンの謎のメタルバンド・・・と言いつつ、もう年月もだいぶ流れてますが。僕は前々作の2015年の「Meliora」の時から注目してますが、一見「スリップノットのブラック・メタル版?」みたいな風貌なのに、歌声も普通で「メタルってよりは産業ロックじゃね?」な、70sのブルー・オイスター・カルトやミートローフみたいな、どっちかというとシアトリカル・ロック風ロックを展開する。そのギャップが面白く、「どういう感性持って育ったんだろう?」と思わせて興味深くそそってたのですが、今回、これまで70s後半風から80sに突入しまして、ついにボン・ジョヴィみたいな曲まで出てきてます。なんだけど、あんな風に明るくはどうしてもなれずに、このバンド特有の屈折した暗い、いい意味で今ひとつ垢抜けない感じを保ったままそうなっているので、そこがなんだか可笑しみがあって、チャーミングです。これで彼らも全米全英ともに初登場2位。若手が出てきにくくなっているラウドロックでBMTHと並ぶ次の主役だと思ってます。
・・では、明日はいよいよ「1〜3月の10枚」の発表です!
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