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映画「私の若草物語」感想 グレタ、また傑作!19世紀文学を21世紀の目線で解釈すると・・・

どうも。

今日はオスカー関係の映画ネタ、行きましょう。これです!

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19世紀の名作文学、オルコットの「若草物語」の4度目の映画化作品ですね。「ストーリー・オブ・マイ・ライフ 私の若草物語」。こちらのレヴュー、行きましょう。この映画ですが、今年のオスカーの作品賞にノミネートされた9作の一つです。この映画に関しては前に何度か触れているので、僕がどう思っているのかはすでにご存知の方もいらっしゃるとは思うのですが、果たして、どんな映画なのでしょうか。

まずは、あらすじから見てみましょう。

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話は1968年。マーチ4姉妹の次女ジョー(シアーシャ・ローナン)がニューヨークで教員をやっているところからはじまります。彼女の夢は作家になることで、自分の小説を新聞社に売り込んだり、教員の同僚のフリードリッヒ・ベアから作品を批判されて憤慨したりもします。

そんな折、ジョーは実家から手紙を受け、姉妹末っ子のベスが余命幾ばくもないことを知らされ、マサチューセッツに帰省します。

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話はここからジョーの回想で進みます。思い出すのは主に7年前の1861年のこと。マーチ家は父親の南北戦争出征で、実家は母マーミー(ローラ・ダーン)が母人手で切り盛り。家計は厳しいながらも、クリスマスは恵まれない人たちのために奉仕するなど、人情味あふれる教育を施していました。


一家は、基本的には仲良しでしたが、身だしなみも気にせず活発で仕切り屋のジョーと、彼女にいつも強いライバル心を抱くエイミー(フローレンス・ピュー)がとっくみあいの喧嘩をよくやっていました。それを、控えめで優しい長女のメグ(エマ・ワトソン)とおとなしいベスが見守る感じでした。

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エイミーは、「女は金持ちと結婚してこそナンボ」な価値観を持つ、父方の裕福なおばアウント・マーチ(メリル・ストリープ)のお気に入りでした。エイミーはアート関係に進みたい夢も持っていました。

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家の近所には裕福なローレンス家の存在があり、そこの同世代の息子ローリー(ティモシー・シャラメ)はひときわ美少年。ちょっと言動も変わっていてチャーミングな彼はメグとはいつも意気投合。外でよく遊びもしましたが、それが、彼に密かな思いを抱くエイミーの気に障りました。

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ローリーはジョーに対して本気でしたが、ジョーはそんなローリーの気持をわかってはいましたが、なかなか「お友達」の領域からは出ません。なぜ、そうなってしまうのか。それは当のジョーにも・・・。

・・・と、ここまでにしておきましょう。

これはですね

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ルイーザ・メイ・オルコットの名作小説「若草物語」の、実に4度目の映画化です。1933年に1回めがあり、以後、1939年、1994年と来て、今回なのですが、歴代、とりわけジョー役に注目が集まるんですが

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1933年にはキャサリン・ヘップバーンが

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1994年にはウィノナ・ライダーが演じました。

1949年版のジョーは、ジューン・アリソンという、その当時の人にはビッグだった女優さんがやってるんですが、エイミー役を

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かのエリザベス・テイラーが演じています。

その他にもですね、1933年版の監督が名匠ジョージ・キューカー、49年版のメグ役に「サイコ」の被害者として有名なジャネット・リー、94年版はエイミーがキルステン・ダンスト、ベスがクレア・デーンズ、そしてローリーがクリスチャン・ベールでもありました。

その古典を

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グレタ・ガーウィッグが監督をする、と聞いたので、最初「ポカン」だったんですよね。

だってグレタと言ったら、女優の頃から「インディの女王」で、こういう古典をやるような印象まったくなかったですからね。監督デビュー作の「レディバード」も自伝的私小説風だったし。なので、「えっ、そういう方向に行っちゃうの?」って感じだったんですけど、

予想外の方向から、すごい傑作出ました!

いやあ、これは凄い映画ですよ。

まず、なにがいいかって、題材全く違うのに、「レディバード」とテイストがちゃんと芯通って同じ感じなんですよ!

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今作でも前作でも、ベーシックにあるのは、「人生の岐路に立たされた女の人生の選択」なんですよね。だれもが人生で何度か体験する、生きていく中で最もものを考える時期のリアリティ。これをしっかりと描いているから、すごく話に没入できるんですよ。グレタ、これがある限り、強いですね。それが自分のことだけでなく、こうした古典的な文学作品にもそれをあてはめることができる事自体、監督としてかなりの才能だと思います。

それに伴って、この映画、演技面、見事なんですけど

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エイミー役のフローレンス・ピューの演技が素晴らしいんですよ!シアーシャは、もうすでに24歳でオスカーに4回もノミネートされるほどの若き名女優ですけど、そんな彼女とのライバル関係をリアルかつエモーショナルに演じてます。しかも、その根底には「hate」があるわけでなく、あくまでも「love」があるところまで含めて。この子の演技がなかったら、この映画の大部分が崩れてしまいかねない可能性があっただけに、この部分がベストだったことも大きいです。彼女も自分の人生の選択についてしっかり考えた演技をできていたので、そこでかなりひきつけることもできました。

フローレンスはこの演技で見事オスカーの助演女優賞にノミネートされたんですけど、彼女、アリ・アスターの新作


あと、お母さん役のローラ・ダーン、長女役のエマ・ワトソン、そしてローリー役のティモシー・シャラメも配役どおりにきっちりした演技でしたね。ローラは「マリッジ・ストーリー」で今回のオスカーでは有力候補ですけど、こっちでも十分、その力があったことを証明してます。

そして

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シアーシャとティモシーの絡みは前作に続いてですよね。こういうなじみの役者のリピートでの起用も、これ、面白いことに名監督の条件だったりするから面白いんですよね、なぜか。今回、2人の関係が「レディバード」のときと全く違うのも見てて面白かったです。ティモシー、ここではいいヤツです(笑)。

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そして出番こそ、少なかったものの、メリル・ストリープが、実に贅沢な脇役で出演してるのもミソです。こういうとこも贅沢です。

・・・と、これ、演出面と演技だけでもかなり見ものですが、最大のみものはこれ

作品解釈!

あくまで、コレなんです。

とりわけ

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「ジョーの性について」がかなり大きな問題です!

これ、今回、いろいろ検索してわかったことなんですけど、アメリカだと、「ジョーの実際のところの性的嗜好はどうなんだ?」ということがお題にあがってたようですね。でも、それをしたくてもする勇気がある人が今まで現れなかった。この映画は、ついにそれをやった作品でもあるわけです。

 たしかに、19世紀の世の中で女性が「結婚よりも仕事、人生そのもの」を優先し、「身なりも気にしない」ということでいえば疑われても仕方がないことなんですが、そこのところの疑問をこれ、ついてます。

人によっては

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こういう格好で、「もう思い切り露骨だ」とする批評もありますね。この問題に関しては、この映画の最大の関心事になっています。

 ただ、「だからといって、19世紀なんだから」という規範は”いちおう”超えることのない、自然な流れにはなっています。”クエンティン・タランティーノほどには”ですけど、”極端に”「歴史を変える」ことはしてません。あっ、でも・・・やめときます(笑)。

ただ、解釈が変わっているからと言って、この小説のもっとも有名な場面が抜け落ちているわけでは決してないので、そこはご安心を。

僕はこれ、ここまで語って来たような「人生の節目に立たされた女性の選択」「21世紀の今の女性から見た再解釈」の2点が加えられているということで、みんなにおなじみの話のリメイクとは言え、これ、かなり大きな試みだと思っています。

実はこれ、僕のここまでのオスカー作品賞ノミネート作の中でも

1.若草
2.ワンハリ
3.マリッジ
4.アイリッシュ
5.パラサイト
6.1917
7.ジョーカー
8.フォード

と、

今季のオスカーで一番好きな映画、コレなんです!

個人的には「レディバード」超えてますね。あれも、ものすごく傑作扱いされた映画ですけど、それ以上ですね。

それだけになあ、

監督賞ノミネート、されてほしかった!

前に「トッド・フィリップスがノミネートされるくらいなら」と書きましたよね。今回、それに「サム・メンデスがノミネートされるくらいなら」も加えることにしました。まあ、そのことに関しては、近いうちにまたレヴューしますけどね。

いずれにせよ、オスカーに縁が仮になかったにせよ、今回の若草物語、本当に傑作なのでぜひみてください。それにしても、「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」っていう、原題のどこにもない、字数ばかりやたら食う、本来、邦題が果たさないといけない、「原題の短縮」の公式まで破ってまでつけたこの日本題は一体なんなんだろうなあ。





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