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マッカートニー、ギルモア、グロール・・・「天才肌のカリスマ」なき後、「ロックの遺産」を長く伝え続ける”職人”

どうも。

今日は、前から「いつかこのこと、書きたいな」と思っていたことを書きます。

これです!

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はい。ポール・マッカートニー、デイヴ・ギルモア、そしてデイヴ・グロール。この3人のロック史における立ち位置が、不思議なくらい非常に似ている。このことについて書こうと思います。

ポール、ギルモア、そしてデイヴ・グロール。いずれもロック史に残る伝説のアーティストだと思うんですけど、この3人には共通点がいくつかあります。まずひとつは

①かつてのバンド・メイトに、天才肌のカリスマがいた

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いずれもいわずもがなではありますが、ポール・マッカートニーにはビートルズ時代にジョン・レノンがいて、デイヴ・ギルモアにはピンク・フロイドの頃にロジャー・ウォーターズが存在し、さらにデイヴ・グロールにはニルヴァーナにカート・コベインがいた。いずれも、前に所属していたバンドに、天才肌のカリスマ型のリーダー格がいたわけです。

そして3人が共にそろって、のちの人生、その天才肌のバンドリーダーたちと比較される運命にありました。ジョン、ロジャー、カート。いずれも理想肌で、革新的なことを好み、詞の才能に溢れている。そういうことで、アートな雰囲気を好む人は断然こっちの方を好みがちで、そのタイプの人たちからはポール、ギルモア、デイヴ、いずれも軽く見られがちなところもあったことも残念ながら否定できなかった。そんなタイプでした。

が!

②実は、「カリスマの音楽形成」に不可欠な音楽的貢献、または、実はリーダーよりも音楽的に器用な場合も多々ある

これを忘れてはいけません。

たとえばポール・マッカートニーだと、ビートルズがサイケデリックな成長を遂げていた時代、ジョンの繰り出すテープの逆回転とか、そういうことはできなかったかもしれません。ただ、ポールにはひとりで複数の楽器をこなすことができ、ジョンに出せない高いキーで歌え、彼よりもポップなメロディの、より一般大衆にアピールする曲も書けた。ジョンの気鋭の実験性と、ポールの職業作曲家的な才能の両方があったからビートルズは複合的な楽しみ方ができたわけです。

 ピンク・フロイドの場合は、難しい哲学的、社会的なコンセプトでプログレ・ファンの好奇心を引いたのがロジャーなんですが、それに美声と、スケール感の大きなギターのフレーズで肉付けしたのがギルモアです。これがロジャーだけだと、申し訳ないけど歌はかなり厳しいものがあるし、プログレ・ファンが好むような音の構築ができない。そのことは、ロジャーがフロイド飛び出したあとのソロ作と、ギルモアをリーダーとした新しいフロイドで、パッと聞きでどっちが従来のフロイドっぽく、さらにどちらがセールスとして売れたかで判断すると、実は圧倒的にギルモアのフロイドの方が、バンドの頭脳のはずだったロジャーのソロよりも売れたんですね。そこが何を物語っているか、なんですよね。

 そしてニルヴァーナの場合は、カートの生存中、デイヴの曲が世にでることはなかったわけですけど、デイヴのドラムがなければ、ニルヴァーナは今日のように伝説にはなれなかった。これもまた事実です。カートはサブポップの時代にドラマーで頭を悩ましていて、それが固定しない時期にはまだアンダーグラウンドのグランジのバンドの中で決して飛び抜けた存在になりきっていなかったわけですが、ワシントンDCのスクリームというバンドにいたデイヴを見つけて加入させたことでリズムのタイトさが俄然引き締まり、その勢いでメジャーとも契約。そして、「ネヴァーマインド」で奇跡も起こしたわけです。

 というわけで、3人とも、前にいたバンドですでに多大な音楽的才能をしっかり披露していたわけです。

③いずれもヒット作を書く才能に溢れていた

これも忘れてはいけないことです。

ポールは言うまでもないですよね。ビートルズ時代からヒット曲は多数などころか「Let It Be」「Hey Jude」「Yesterday」といった大衆知名度の高いヒット曲は彼が書いたものだし、ソロになってからもヒットの数ではダントツ。

また、デイヴ・ギルモアもフロイド時代の人気曲、「Wish You Were Here」だったり「Comfortably Numb」にせよ、ベーシックな曲の部分を作ったのはギルモアですからね。メロディメイカーとしての才覚はフロイド時代から十分にあったわけです。さらにいえばギルモアって、ソロになってから、00年代、10年代と全英ナンバーワン・アルバム2枚出しています。ロジャーはアルバム出さない期間が長かったこともあって、ソロ実績ではギルモアにかないません。

あと、以前、ポール・ウェラーが史上初の5年代連続でオリジナル・アルバム全英1位を出したアーティスト、という記事をここで書いたんですけど、あれ、実は厳密には誤りで(汗)、実はデイヴ・ギルモアが10年代に先に達成してました。まあ、ピンク・フロイドが80年代に出した全英1位作、「ザ・ファイナル・カット」は実質ロジャーのソロ作なので微妙といえば微妙なんですけど、ギルモアも一応参加はしてますからね・・。

 そしてデイヴですが、言うまでもなくフー・ファイターズのフロントマンとして以後四半世紀大活躍ですよ。10枚出したアルバムのうち、すべてが全英トップ10、9枚が全米トップ10、そして4枚が全英、2枚が全米で1位のアルバムのわけですよ。そしてそれだけじゃない。ベスト盤は全英チャートで390週トップ100に入り続けています。商業規模ではニルヴァーナ上回って、90s以降のバンドではトップクラスですよ。すごい成功ぶりです。

④いずれも息の長い、生粋のライブ・パフォーマー

そして、これも忘れちゃいけない。ポール、ギルモア、デイヴ、いずれも生粋のライヴ・パフォーマーです。

3つとも、今や興行ではトップクラスのライヴ・パフォーマーです。動員数では圧倒的ですね。しかも、そういう状態になってからが非常に長い。3人して、「人前で魅せてなんぼ」な、思い切り職人肌の人たちばかりですからね。

 結果として、彼らが長い時間かけてライブ・ツアーで高い人気を保持し続けることが、彼らがもといたバンドのかつてのカリスマ・リーダーに間接的にも注目を与え続けることにもつながっているわけです。これも決して忘れてはならないことです。僕自身、さいわいなことに、2010年代に3組すべてサンパウロのサッカー・スタジアムで最高のライブ、体験してるのですごく実感があります。

 しかしまあ、ロック史に3人もこういう立場の巨人がいるというのは、非常に興味深いことです。あと、フロイドに関していえば、元はといえばロジャー自身も、シド・バレットという去っていった天才に残された後継者だったわけですからね。そう考えても面白いです。

 あと、こういう決定的な後継個人が見当たらなくはあるんですが、似たような境遇たどったバンドってロック史にはなぜか少なくなく

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ニュー・オーダーやマニック・ストリート・プリーチャーズも残された人たちでレガシー築いたわけですからね。

 日本でも、大江慎也が抜けたあとのルースターズだったり、志村正彦亡き後のフジファブリックみたいな例もあったりと、不思議ですけどね。

ただ、その中でもポール・マッカートニー、デイヴ・ギルモア、デイヴ・グロールの3人は、そういう人たちの中で個人として突出してるし、最後にもうひとつの共通点ですね、⑤むしろ21世紀以降になればなるほど評価があがっている。やっぱり、僕が言ったようなことをなんとなく感じ取っている人がいるのだと思います。

ということで、明日、フー・ファイターズのFromワーストToベスト、いきます。



 





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