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THE MAGRITTE Museum vol.13『人間の条件』ルネ・マグリット

タイトル写真/THE MAGRITTE 5Fクラブモーガンロビー

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                               ▲ 1933年 キャンバスに油彩 100×81cm
                               Washington, National Gallery of Art

マグリットが最も一般的に使用した手法の一つが、その背後にあるものを非表示にするために物を使用する手法です。隠れてものが見えない、隠れているものが見える、という両方を一度に両立した作品で、 例えば、林のなかで馬に乗った女性を描いた『白紙委任状』(1965年)、「見えるもの」と「見えないもの」を同時に見ることはできませんが、両方の存在を察知することができます。そういう観点では、『光の帝国』では昼と夜を同時に見ることはできませんが、両方を表現した作品と言えます。そして本作では、絵の中に絵を表示させています。マグリットの作品は、空間に潜む亀裂、断裂をあたかも測量士のようにきっちりと図式化して再現するものが多く、この作品もその典型であると言われています。
室内から見た外部の風景。室内と外部の間にはあたかも風景を切り取るように窓が描かれています。この窓枠に合わせるようにして、キャンバスがかたどられ、そこに、外部の風景が詳細に模写されています。キャンバス上に描かれた風景はあくまでも二次元上に配置された形態や色彩ですが、窓の外に広がる風景は三次元的奥行きを持つ延長としての世界であると解説されています。

▲ cave syndromeより

マグリット夫妻は、パリの郊外に約3年間住んだ後、1930年7月7日に、またブリュッセルに舞い戻りました。当時、まだ畑や空き地の目立った町はずれのエスゲム通り135番地に借家を見つけ、そこの1階だけを借りたのです。この家は、現在私立ルネ・マグリット美術館となっています。その1階奥にあったダイニング・ルームをアトリエ代わりにして、市内のロンベルモン通りのアパートに引っ越した1954年までに、数多くの傑作がここで生まれました。
この絵に描かれた灰色の大理石の板と両側にカーテンのある窓は、そのエスゲム通りのアトリエ兼ダイニング・ルームの窓によく似ています。でも実際の窓の向こうには、幅が3メートルほどの狭い中庭を挟んで、白い殺風景な隣家の壁が立ちふさがっていたのです。マグリットは、その窓の横にイーゼルを置いて、美しい田園風景を想像しながらこの絵を制作したのでしょう。
でも彼の描いた光景は、単なる想像の世界ではありませんでした。青空の下の田園風景は、キャンバスの中と一体化され、青空も野道も連続した世界として表されています。つい、キャンバスを持ち上げて、その向こう側がどうなっているのか見てみたくなります。そこには、もはや狂気と実現の境目は存在しないのです。

森耕冶著『マグリット 光と闇に隠された素顔』より

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株式会社マグリット
専務取締役 羽原正人
THE MAGRITTE @partylabo.

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