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『全国のベーシストの皆さんへ』 奇跡の名器 “サウンド・トレード TK-01”の誕生秘話

私は、家業の旅館(現在はウェディングを中心としたアニバーサリーハウス)を継承する前、ニューヨークでリットーミュージックの非常勤インタビュアーや、ベースギターを取り扱うSOUND TRADEという会社をやっていました。

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          マーカス・ミラーを取材したときのベースマガジン

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       約30年前 マーカス・ミラー インタビューシーン
       左/マーカス 中央/通訳 右/私(羽原俊秀)

SOUND TRADE 設立経緯

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           GOTOHのチューニングペグ

1987年、私がニューヨークに在住していたとき、マーカス・ミラー愛用のフェンダー・ジャズベースのトータルtune upを行っていた、サドゥスキーの工房を運よく発見したのです。ニューヨークのミッドタウン48th.stにある楽器店を回り、マーカス・ミラーのベースをtune upしている工房を楽器店の店員から聞き入れ探すことができました。

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マーカス愛用のサドゥスキーがtune upしているフェンダー・ジャズベース

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そこには、ベーシストの最高峰、マーカス・ミラーをはじめとする、100名を超える名立たるミュージシャンのサイン入りの写真が壁一面に飾られていたのです。スティング、プリンス、ジョージ・ベンソン、ウィル・リー、ダリル・ジョーンズ、ポール・サイモン・・・・

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                                  サドゥスキーの当時のユーザーリスト

彼のtune upは、プリアンプをボディに内蔵させ、スラップ奏法時、弦とフレットの接点を拡大させるジャンボフレットを設置し、弦高を低目にセッティングする方法です。
私はマーカス・ミラーの音を何とか再現しようと、高校生のときからエフェクター等を駆使して、何度もトライしてきましたが、納得できる音をつくることはできませんでした。長年追及してきたマーカス・ミラーの”音質の謎”が明らかになった瞬間でした。

ニューヨークのミッドタウン48th st.にある楽器街を中心に、1970年前後製造のフェンダージャズベースを調達し、サドゥスキーにtune upしてもらったものを、日本で販売する計画を立てました。

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早速、ベースマガジンのバックナンバーを入手し、この計画に協力していただく日本の楽器店として10店舗を選定し手紙を送りました。返事があったなかに、大阪にあるBTLという店舗のオーナー小島一成さんもいて、この小島さんに日本での販売店として協力してもらうことになりました。

後に小島さんは、長年研究していた、ピックアップのマウント方法によって音質が大幅に変化することを突き止めたのです。
そして、SOUND TRADEという新たなブランドを立ち上げ、オリジナルベースを販売することになった訳です。
最初に制作したエレキベース、SOUND TRADE TK-01は、ベースマガジンにも取り上げられ、大きな反響がありました。
“TK-01”は、羽原俊秀/Toshihideの”T”と小島一茂/Kazushigeの”K”を取り入れて命名したのです。

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         SOUND TRADE設立初期のTK-01
ボディ/ホワイトアッシュ、ネック/メイプル、仕上/クリアーラッカー塗装

ピックアップ/SOUND TRADEオリジナル、ブリッジ/BADASSⅡ、
チューニングペグ/GOTOH

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小島さんは、TK-01をニューヨークでデビューさせたい、との強い思いがありました。当時私の知人に、ニューヨークでベーシストとして活躍中の日野JINO賢二さん(トランぺッターの日野皓正さんの次男)がいて、彼に弾いてもらったところ、TK-01をたいへん気に入ってくれました。

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                日野皓正氏

小島さんは、日野JINO賢二さんに、TK-01をプレゼントし、ライヴの際にこのベースで演奏してもらうことになりました。そして、念願のニューヨークデビューを果たすことができたのです。

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             マーカス・ミラー氏                                             日野JINO賢二氏

その後、SOUD TRADEは、マイケル・ジャクソンのレコーディングベーシスト、ルイス・ジョンソン氏(彼は旅館時代にマグリットの大広間で演奏していただいたことがあります)、ドゥービー・ブラザースのベーシスト、サンタナのベーシスト、マーロン・ラーフ氏、国内では、ロミー・木下氏、バブルガム・ブラザーズの大友正明氏、エゴラッピンのベーシスト真船勝博氏、杏里のベーシスト青木智仁氏、チューブのベーシスト角野秀行氏、・・・・などに愛用されるようになりました。

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           ルイス・ジョンソンのサイン
     旅館時代に大広間で演奏してもらったときにもらったもの

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2020年11月6日(金)ザ マグリットにて
『Island Jazz Trio Live』開催しました!

上記ベーシスト日野JINO賢二氏を含めた、ギタリスト西藤ヒロノブ氏、ドラムス藤井伸昭氏のライブをザ マグリットで開催しました。メンバーのプロファイル、及びライヴの詳細は以下noteにて掲載しております。

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楽曲例 “Tasogare”

今回のライヴは、コンサート仕様のスピーカー(メイヤーサウンド)を搭載している、ザ マグリットホールⅡで開催。

株式会社マグリット
代表取締役 羽原俊秀

THE MAGRITTE @partylabo.

▼ 公式HP/YouTube/Facebook


以下SOUND TRADEの口コミmixiより
■ New York 真冬の摩天楼から来たBASS Manhattan Bass Tuning by System Craft
■ ″衝撃″″感動″の一言!全てのべースを打ち砕いてしまうパワ-べース。
 SOUND TRADE Tuning by System Craft
■ あのサドゥスキー旋風を日本中に巻き起こしたサウンドトレード(USA)が世界中のべ-シストに送る大プロジェクト。中略 尚、このべースのチューニングは知る人ぞ知る大阪システムクラフトによって行なわれている。
■ 今までに類を見ない、音質の良さ、弾き心地の良さ、手頃な価格で・・・

当時の広告のキャッチの一部ですが、「システムクラフト」って??
見た目は、オリジナルのジャズベよりシンプル。
何これ??っつう感じでした。
過去のべースをはるかに超えたべース??(オールドのジャズベ??)

ホントにここまで書いていいの?という印象でした。


当時、サドゥスキーと言えば、マ-カスのジャズベのトータルtuneを行い、独自のプリを組み込んだ事が有名で、「マ-カスの音の秘密」はプリらしい・・・という噂が、業界に影響を与え、当時の新製品をみると、もれなくプリ内蔵になっているという次第。

こちらの田舎の楽器屋で「サドゥスキーべース」について聞いてみると、「そんなガレ-ジメ-カーは、アフターが心配だから、辞めた方がいい」という返事。
恐らく、見た事も弾いた事も無かっただろうけど・・・

さて、前述のべーマガの同号で新製品情報があり、前述の広告プラス、この「サウンドトレードTK-01」の新製品レビューが興味に拍車を掛ける。

「~ランディ・ジャクソンが3分間くらい弾きまくった後、これはいくらだ?と目を輝かせて聞いた」
「~肝心の音の方だが、これが久々の大ヒットと言って良い。サドゥスキーには迫れないだろう・・・と思っていたらとんでもない。同格か、人によってはTK-01の方を評価するかもしれないほどのものになっている。これがこの価格なのだから驚異的。試奏を終えて編集部に返すのが辛かった。このままどこかへ逃げてしまいたいと思ったほどだ」

確かに各メ-カーの広告宣伝にも助けられている雑誌だと思うのだが、普通はここまで褒めないだろう。

手に取って弾いてみないと分からないと思ったけど、自分の楽器の選択の要素に「見た目」がある。
どこか見た目がおかしいと感じるものは、自分の一生モンにはならない事を、イヤという程味わってきたのだ。
そして木目フェチ・・・べーマガに載っていたphotoはまさしく、全体のバランス、シンプルさ、木目、匂い・・・好みだったのである。

べースを始めたキッカケのJaco。使用していたオ-ルドのジャズベの鳴り。
単純に、一生モンのオ-ルドジャズベが欲しいだけだった・・・
それもJacoのべースのように「アタリ」の楽器。当然高額。

Jacoの来日時に、べーマガや、Jazz Life誌のインタビュアーを頼まれた、プロべ-シストの濱瀬元彦氏が、Jacoのこの楽器に驚いていた。

「インタビューの途中で、ホテルのトイレに入ったのだが、そこでもJacoの弾く音がバンバン聴こえる。当然ホテルだから生」
ここでも、いかにtotal tuneした楽器が素晴らしい事かが、分かる。確かにエレベだから生が良くても、必ずしも良いと限らない。
しかし、Jacoの音はもう聴いている。
まして、私はギターあがり(アコギ)。リペアやオーバーホール後の生音の良さは、弦の振動-倍音成分・・・つまり「当たり前」の弦振動、サスティーン、タッチレスポンス等、間違い無く良い方向に向かうのは知っている。

究極のジャズベ、一生モンのジャズベ、アタリのジャズベ・・・
もうそれしか頭に無かった。
そしてべーマガのサウンドトレードの広告は、その後の号もまだまだ続くのである。


「小島理論」
ご存知の方は多いと思いますが、業界で呼ばれている「ピックアップマウント法」の事です。
BTL、サウンドトレードとくれば、この理論で有名。
同業者やshop等からの問い合わせもあったり、無断でのコピー品が出回ったりと、何かと業界で話題になったこの理論とは・・・


1989年11月号のべースマガジンにこの独占記事が載った時、
「おっ、とうとう・・・」
ちなみに、この時点ではまだ特許の方は申請中。


「サウンドの根本的な部分を左右する、非常に画期的な理論~発案者、小島一成氏による~指板をブリッジ近くまで伸ばしたと仮定した時の、その仮想フレットの位置を基準にして、ピックアップのマウント位置を決定する~」

この記事に於いては、この理論に基づき、ピックアップ位置を自由に変えられるべースをオ-ダ-して実験を行なう。

結果的に、単に音が硬くなったり柔らかくなったりという程度のものでは済まされない、大幅な音質の違いが確認出来たという内容。

不思議に思ったのは、故 レオ・フェンダー氏でさえも体系化出来ず、曖昧にされていたピックアップ位置による音質のコントロールを、世界で初めて解明した??という事だった。

少なくても、フェンダー氏の設計時点で、基礎はあったと私は思っている。
(しかし、それが市場に出回る製品とは別の話)
大量工場生産・・・アタリ・ハズレという言葉が産み出される要因だと感じる。せっかくの素晴らしい設計・コンセプトがこの時点で無くなってしまう気がする。

「フェンダーの音」が好みだったら買ってくれ・・・という考えは、いかにもUSAっぽい感じがする。
この国民気質の違いと、時代の需要の流れもあって、この理論の体系化が産まれた気がする。

私kidが、BTLのべースの秘密は、この理論だけだと、勝手に思い込んでいた時期です。







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