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インパクト、反復、ストーリーで説得力を増す

Never give in. Never give in. Never, never, never, never.
(絶対に屈するな。絶対に、絶対に、絶対に、絶対に)

ナチス・ドイツとの戦いに疲弊する国民を奮い立たせようとしたイギリスのウィンストン・チャーチル首相の演説です。「説得力」に関する研究では、強烈なインパクトある言葉やエピソードは、聞き手の心に刻み込まれやすく、話し手の思惑通り聞き手を誘導できるという「スリーパー効果」について報告しています。

最初は抵抗があったり、疑ったりしていた話し手の内容も、インパクトが記憶に残って離れなくなり、次第に心を動かされる。研究によると、インパクトある言葉の浸透期間は半年から1年。じわじわと聞き手の無意識レベルに染み込んで、話し手のイメージどおりの行動が促されるようになるといいます。

チャーチル首相の言葉には、そんなインパクトが感じられます。そしてその影響力は歴史が証明済み。国民という聴衆を扇動するような演説には、強烈なインパクトが欠かせません。「首相」という権威性が、スリーパー効果をさらに強化するということもあるでしょう。

また「反復」することで、聞き手の記憶に刻み込みやすく、メッセージの影響力をさらに強化。人間は単純明快さに引かれますので、シンプルで分かりやすい言葉も効果的です。「単純接触効果」を狙って、シンプルに3回、4回と何度も、伝えたいメッセージを、ちょっとだけ表現や形をかえてくり返すと影響力は倍増します。

社会心理学者のウィルソンさんは、反復効果を立証するために模擬裁判の実験を行いました。「有罪はこの人だ」という言葉を何回聞けば説得されるかを調べた実験。3回のリピートで説得率は46%、10回で86%に上昇しました。くり返すときは、表現、切り口、素材を変えると効果が増すことも証明しました。

また「ストーリー」仕立てに話をすると、聞き手の注意力を喚起して、記憶の定着を促すことにも役立ちます。ペンシルバニア大学の実験では、「脳は物語を理解し、記憶しやすい」ことを報告。

マンガを読んだ後、映画を1本見て、その内容を説明する場合と、ビジネス書を読んで、難易度の高いプレゼンを聞いたあとに、その内容を説明する場合、前者の説明が後者の質を上回ることは言うまでもありません。記憶しやすい物語か、情報のかたまりか。

ストーリー仕立てのコツは、上下運動。つまり話を上げて、落として、上げること。ヒーローもののマンガやTVでは、主人公がピンチに陥ることがデフォルトです。それはストーリーに上下運動をもらたすことで、視聴者の感情を操作し、記憶とともに評価をクチコミしてもらうためでもあります。「人間は、記憶に残っているものに価値を見いだし、広めるべき情報だと考える傾向がある」と、ペンシルバニア大学・バーガー教授が示唆しています。

ここ最近、プレゼンばかり。資料を作ってはプレゼン、指摘を受けて資料を練り直し、またプレゼンのくり返しです。うまくいかないことが続き、同僚の手ほどきを受けて改善点を模索。理屈でいくら正しいことを話していたとしても、それが相手の感情を喚起して、記憶に定着しないと評価はされません。そんな改善点をまとめてみました。実践に移していきます。

久保大輔




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