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どうやって人の心をつかむか


「あなたは好かれるタイプですか?」
とある実験では、この質問を受けた70%の人が「真ん中より上」と答えました。ですが統計学的に、70%の人が真ん中より上にくることはありえません。「人は自分の力を甘めに見積もる生き物」であることがわかる実験です。

ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる認知バイアスは、自分の容姿、発言、行動などの能力を高めに評価する傾向のことをいいます。一方で「ハロー効果」というものがあって、話し手の特徴によって、聞き手が相手の印象を決めてしまう心の動きがあります。

就職面接の合否を左右するのは第一印象。好感を与える人は90%の確率で合格し、そうでない人ははじかれると言われています。いくら有能であっても、いくら話の内容が立派であっても、第一印象が結果を左右する。ですが先に述べたとおり、多くの人が「自分は人に好印象を与えている」と油断しがちです。

かなり昔の話ですが、面接対策として自分なりにがんばった記憶があります。表情はつとめて冷静に、手や足は静止して落ち着いた印象をつくり、理路整然と、専門的な言葉を話せるよう何度も練習しました。ところがこの対策、すべて間違い、とまで言いませんが、面接官に好印象を与えるという意味ではネガティブです。

明るく楽しそうな表情で、ジェスチャーを使って説明し、相手の話にあいづちを打ちながら、専門用語やカタカナ英語を無理して使わず、わかりやすくゆっくり語りかける方が面接官に好印象を与えることがわかっています。

名演説者は、90%以上のスピーチ時間で視線を落とさないと言われています。伝説的な総理大臣、田中角栄さんは、賢さをとりつくろわず、堂々とわかりやすい言葉で聴衆の心をつかみました。

「自分は好印象にちがいない」というバイアスを捨て、話す内容よりも自分の態度を意識すると、相手の心をつかめる。人が相手にポジティブな印象をいだくとき、その指標としているのは「コミュニケーション能力」です。ここを押さえておくと誰でも「演出」することができて、好結果をたぐりよせることができそうです。

スピーチのたとえは既述のとおりですが、就職などの面接に限らず、リーダーや経営者、もしくは営業担当者でもこのロジックは、「影響力を与える」という意味において有効かもしれません。堅苦しくて目線が合わない人よりも、テキトーっぽいけど明るくて楽しそうな人のほうが第一印象がよくなることは想像しやすい。そしてどちらの、「その後」のセールストークに傾聴できるかもどうかについても、言うまでもなく後者に軍配があがりそうです。

説得したり、それによって協力をえたり、そのために強面、威圧的な言葉と態度で強権を発動するやり方は、一定の影響力をおよぼすのかもしれませんが、本質的な意味において、聞き手が本当に納得して、リーダーに協力するかどうかは未知数です。というか心理学の観点において、さまざまな研究からも実証されているとおり、完全に不適切といいきっていいかもしれませんね。

一日中、本を読んだり論文を書いたり。あれこれ考えながらまとめてみました。これから渋谷(NHK)、そして赤坂でDAZNの現場対応です。がんばろう!

久保大輔




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