セクシャルハラスメント グレーゾーンという神話を壊すーSARA HASSAN, JULIETTE SANCHEZ-LAMBERT 3/3
前々回の1/3はここより。
前回のセクシャルハラスメントを見極める方法はここより。
今回は、セクシャルハラスメントのグレーゾーンという神話を壊す、Sara HassanさんとJuliette Sanchez-Lambertさんの共著の「It's Not That Grey」からの最終章です。
前回・前々回の記事を読んだ人には明確だと思いますが、セクシャルハラスメントの標的にならないことを選択できる人はいません。誰もが標的になりえ、加害を選択、コントロールできるのは加害者のみです。被害者の性別、階級、職業、どういう行動・服装をしていたかは全く関係ありません。セクシャルハラスメントは力(権力)とコントロールを誰かの上に及ぼすことが究極の目的であり、必ずしも性的な要素があるわけではありません。セクシャルハラスメントの被害者には、全く落ち度も責任もなく、すべての責任は加害者にあります。ただ、実際に加害がはびこる現状がある以上、私たちはそれに備える必要があります。できれば、加害を受けて疲弊しきって対応することが心理的・身体的に難しくなる前に。また、この世界を変えるためには、私たち地球上の全員が、セクシャルハラスメントは個人的な問題ではなく、公共の問題であり、私たち全員の問題であると認識し、団結して解決にむかうことが不可欠です。
この最終章は、上記の文献「It's Not That Grey」の実用的な部分です。ここでは、私たちや私たちのネットワークに属する人々にとって有効だった手段・戦略等です。これらは、状況・社会的・個人的な解釈によるところも大きく、あなたにとって効果的かもしれないし、そうでないかもしれません。でも、練習・実践すればするほど、あなたが何をどういう場面でどうするべきかを知ることができるでしょう。最初に試したときに、うまくできなかったとしても恐れないで。あなたのバウンダリー設定から、カウンタースピーチ(反論)までは、長い道のりであり、あなたをサポートしてエンパワーしてくれる人々が周りにいるときに、よく機能します。
1-1 沈黙を破る ー 自分自身でできること
ハラスメントにタックルし終わらせる解決方法は一つではありません。これは複雑な問題であり、多様な方法で、さまざまな角度から攻めなければなりません。これは、私たち全員の問題です。私たちがさまざまな味方をもつとき、例えば人事や同僚や友達と異なるアプローチ、セクシャルハラスメントを終わらせるチャンスは高くなります。ただ、私たちは次のことを強調せずにはいられません。私たちは、大騒ぎしないよう、他の人々を満足させる為に、社会から、自分たちのバウンダリーを尊重しないよう、私たちの判断を信用しないようにと教え込まれます。これらの考え方のパターンから抜け出すのには時間がかかります。なぜなら、これらの考え方は、私たちの頭脳や心の奥底に深く埋め込まれているからです。あなたがこの文献を読んでいるということは、あなたは既に大きく進歩しています。ただ、知識として知っていることと、実際に行動できるということは違います。最初の一歩は、これ(セクシャルハラスメント)はただ単に頭の中の出来事ではないということを認識することです。これは事実であり、起きているのです。沈黙を破ることは、自分自身の経験を認識し、私たちの周りの人々の経験を根拠のある正当なものとして認めることです。
1ー1-1 合意とバウンダリーを理解する
最初にConsent(コンセント、合意)
あなたが何かを明確に言葉にして頼まない限り、あなたは頼んでいません。「A」に合意したということが、自動的に「Z」に合意したということにはなりません。あなたは、合意をいつでも撤回することができます。なぜなら、あなたのバウンダリーは流動的であり、最初にいいアイディアだと思ったことが突然悪いアイディアに見えることもあるし、ただ単に気が変わったのかもしれません。合意は、熱烈なものであるべきです。あなたがプレッシャーをかけられているとき、酔っているとき、無意識状態のとき、合意はできないし、成り立ちません。
以下の2つのリソースが勧められています。
1.Would you like some tea - YouTubeで ここ より短いビデオの視聴可能。イギリスの警察によって制作されたもの
2.Learning good consent by Cindy CRabb
次に、Boundaries(バウンダリー、境界)
あなたは、本当はそうしたくないのに思わず自動的に「Yes」と言っているのに気づいたことはありますか?あなたは、礼儀上、「Yes」と言ったり、「Yes」以外のオプションがないので「Yes」と言っていますか?なぜなら私たちはそうしています。私たちはあまりにも何度もそうするので、私たちが誰なのか、私たちは実際にOKなのか、私たちは何がしたくて何がしたくないのかすら分からない状態にまでなっています。これに対抗するためには、自分たちを観察することから始まります。社会的に人々と関わるときを考えてください。例えば
― 「Yes」「No」を言いたいと思っても不安や居心地悪く感じる
― 本当は深い部分では「No」と言いたかったのに「Yes」と言った
ー 本当は「No」と言いたかったのに、「No」と言わなかった
― 「No」と言って、気分よく感じた
ー 「Yes」と言って、気分よく感じた
あなたの観察を追跡するために、boundaries journal(バウンダリー・ジャーナル)を始めましょう。あなたは、自分のバウンダリーを知り、何があなたにOKで、何がそうでないかのあなたの内部の感覚と再コネクトすることを学ぶでしょう。時間とともに、あなたが特定の関わりにどう感じているかを早く気づくことができるようになり、熱狂的に合意をすることができる、或いはその反対に、「No」と言えるようになるでしょう。バウンダリーは他の人々がどうするかのリアクションでどこに設定するかを決めなければならないというわけではありません。あなた自身で決めることが健康的であり、あなたにはその力があります。ここでは、あなたの振り返りをいくつか質問します。
― あなたは、あなたのバウンダリーが他の人々にどう見られたいですか
― 何が心地よいですか
― あなたはバウンダリーが、明らかに始まっているといえるけれどバウンダリーの内側も外側も見通せるとして、壁のよう、生垣のよう、フェンスのよう、どのようにしたいですか
― あなたと他の人々の間に、数メートルぐらいの高いフェンスがいいですか、それとも単純に砂の上に引いたラインがいいですか?
― バウンダリーは、人(相手)によって違いますか?
― 「YES」「NO」を言うのがどのように感じるか想像してみてください。バウンダリーはどのぐらいのスペースを作り出しますか?
バウンダリーを設定するのと尊重するのは、プロセスであり、実践・練習の問題です。もし、これが荷が重すぎると感じるのであれば、もっと小さなステップから始められます。
― (断っても)リスクが少ないことに「No」と言いましょう
― あなたが心地よいと思える距離を一人一人についておきましょう。一回につき、一人ずつ
― 人々がどのように反応するかを注意して観察しましょう
― いったんあなたが心地よいと感じられるバウンダリー(フェンス、壁、砂の上に書いたライン等)が分かったら、あなたと他の人々の間に実際にそのバウンダリーを設置する行動を取りましょう。
【Remember(覚えておいて)】
あなたは、他の人々のバウンダリーとは違うバウンダリーを持つ権利があります。例えば、ある人はハグするのが好きだし、ハグが好きでない人もいます。もし誰かが、あなたにハグすることを強要するのであれば、それはあなたのバウンダリーに違反しています。あなたには拒絶する権利があります。
【Tip:あなたの個人的な場面とプロフェッショナルな場面でのバウンダリーのチェック】
あなたは、個人的な部分と、仕事とで、違ったスタンダードを持つことができます。それは、OKであり適切です。あなたが個人的なエリアで心地よく感じることが、仕事という場ではあなたの整合性への違反かもしれません。例えば、あなたは友達同士では、腕を組んだり相手にタッチしたりすることがあるかもしれませんが、仕事の場では、誰かに触られたくないし、触られるべきではありません。個人とプロフェッショナルの空間が融合すると、不安定な状況を作り出します。仕事場は仕事場であり、個人の空間は個人の空間で全く別のものです。仕事場は、ハイラルキーやパワーダイナミクスから自由ではなく、あなたは単純にそこから歩き去ることはできません。このダイナミクスにはよく注意してください。
1ー1-2 自分の判断を信じる
あなた自身の状況の知覚は、よく退けられますが、強力な情報の源です。あなたの直観は、この世界であなたが経験してきたことと、あなた自身についてのあなたの知識が融合されたものです。あなたの個人領域と、あなたの整合性が侵害されたか、侵害されそうな危険があるとき、これは強力なツールです。自分の直観を尊重して、信じて。
あなたのことは、あなた自身が一番よく知っています。あなたはあなた自身の最高権威です。あなたが何かがおかしいと感じるとき、やはり何かがおかしいのです。あなたの身体が語り掛けてくることに注意して。それは、お腹に何か固いものがあるように感じたり、体の内部のプレッシャーや体全体の緊張や全体的に気分が悪く感じることかもしれません。何かが起こっているときに、あなたの身体がどのように警告を発しているかを学んでください。特にハラスメントや(人間関係上での狡猾で巧みな)心理操作、虐待や暴行、精神的な病気等を生き延びた人々には取り戻すのに時間がかかるでしょう。自分の直観とコネクトすることを練習するときに、自分に優しくすることは大切であり、できれば(プロフェッショナルな)セラピーや心理的なサポート内でできるといいでしょう。一人で、このプロセスを進める必要はありません。
【Tip】
私たちの身体が警告を送るとき、私たちは感情をごまかすために、急いで理由付けをしたり、過度な分析をしたがる傾向があります。あなたがしていることに注意を払い、決定したり、反応する前にいったん立ち止まることがあなたには許されています。相手に、相手の提案・主張を考慮すると伝えて、休憩をとってください。あなたの感情にゆっくりと息をする空間を与えてください。あなたの内部の声が何を言わないといけないのかを聞くために、(時間と場所の)スペースを与えてください。この心の声は、「状況は最悪だ」と語っているかもしれません。
1ー1-3 自分自身のRED FLAG SYSTEM(警告システム)を作る
この文献では、著者たちが作った「Red Flat System」を紹介しました。これは、環境要因、加害者の行動(Good Guy Syndromeや加害者の常套手段)や、何かが起こっていることを知らせる私たち自身のリアクションから構成されています。これらは、どのようにハラスメントが時間の経過とともに建設されていくかという理解を与えてくれます。これらは、あなた自身の「Red Flag System」を作るための基礎となりうるでしょう。これは、外部要素だけでなく、内部要素も考慮に入れます。あなたの環境をスキャンするために、あなたは自分自身に次の質問を聞き始めるでしょう。
― 誰が力(権力)を持っていて、それはなぜでしょうか?
ー 誰が無力で、それはなぜでしょうか?
ー どんな要素が、加害者が何をしても罰を受けず(責任を取らず)に免れるを容易にしているでしょう?
ー 誰が簡単に加害者の標的となりそうですか?
ー 加害者の行動をエスカレートする条件は何ですか?
ー 状況はRed Flagを一度だけあげたものですか、それともRed Flagを数回あげることが続いていますか?
バウンダリー・ジャーナルの拡張として、Red Flagジャーナルを始めましょう。これは、ある特定の状況や他の人々との関わりを追跡し続けるツールです。誰かがバウンダリーを越えたり、あなたを居心地悪く感じさせるとき、微妙な違反や曖昧さを経験するとき、Red Flagだとマークしましょう。心にとめて覚えておく、或いは紙に書き出し、次に何が起こるかを観察しましょう。あなたがRed Flagを追跡し続け、紙の上に言動のパターンがあれば、それが何かということを認識することと、自分を疑うことを止めることとが容易になるでしょう。あなたが黒と白でできた要素を見て、全体のシステムを時系列で眺めたとき、それらは「偶然」で起きていることではないことに気づくでしょう。
1ー1-4 クロスチェック・考査検証
私たちのハラスメントについての話は、インターネット上の多くの人々によって経験されたことです。「intern harassed by boss (ボスによってセクシャルハラスメントを受けたインターン生)」「sexual harassment and friend (セクシャルハラスメントと友達)」等。実際にこれらは起こるのです。他の人々のストーリーを読むことは、あなたの見方を明瞭に精確にすることに役立ちます。あなたは誇張しているわけでも、繊細過ぎるわけでもありません。違ったタイプの情報を見てください。そこには情報や文献があります。あなたは一人ではありません。あなたの友達に聞いてください、あなたと親しい人々の間に、既にハラスメントの気づきの感覚があることを確認してください。とりわけ、セクシャルハラスメントが起こったのが初めてではなく、エスカレートする地点にあなたがいるならば、これは話題を始めるきっかけとなります。これは、あなたが新しい状況(新しい職場等)にいるときに助けとなります。仕事、教育、町といったシステムに新しい人々は、特に弱い立場にあり、容易にハラスメントの標的となりえます。彼らは新しいシステムの規則にできる限り早く順応する必要があると感じ、しばしばそれらの規則が本物なのか、彼らにとってOKなものなのかというチェックをせずに順応しようとします。いろいろなところから情報を得るのは、物事がどうあるべきなのかを理解するためにとても役立ちます。もしあなたが情報を多く持っていれば、あなたを搾取しようとする人々に対しても、あなたは自分のバウンダリーを設置するのにもっとエンパワーされます。なぜなら、あなたは、(あなたを搾取しようとしている人々が言ったルールと)実際のルールは違っていることを知っているからです。
【Extra tip: あなたが恐れていることを書き出してみましょう】
あなたが(ハラスメントに対して)声を上げることと助けをもとめることを妨げているのは何か、振り返って考えましょう。恥?仕返し?あなたの仕事、友達、恋人を失うこと?場を壊す(雰囲気を壊す)人と呼ばれること? もしあなたの恐れを言葉にして話すのが難しければ、書き出してみましょう。頭の中で思っているより、実際に書き出したものを見ると対応可能に見えるものもあるかもしれません。あなたの恐れへの対応方法をリサーチすることさえ可能です。他の人々も同じような問題をもち、役立つ洞察を提供してくれるかもしれません。今この瞬間、あなたがどんなに無力に感じていても、解決方法はあります。
1ー1-5 語彙を探す
言語は現実を作り出しますー 状況を表す言葉が早く見つかれば見つかるほど、状況を理解することが容易になります。
加害者は、しばしば特定のやり方で何かを作り上げます。例えば、ハラスメントを、からかっただけ、冗談だった、誉めただけ、魅力的だったから等。また、あなたの内部で起こっていることを表す語彙も探してください。どのような言葉が、あなたの認知や直観を表現するのに使えますか。何が起こっているのかを説明するとき、なるべく簡潔にするようにしてください。
例:あれは、flirting (からかい)ではなかった。flirting(からかい)は同意のもとに成り立つもの。flirting(からかい)は楽しいもの。彼は私にそれを望んでいるか聞かなかった。楽しくなかったし、彼は私を不快に感じさせた。私は(Noという)選択肢がないように感じた。
1ー1-6 それは必要なこと?
あなたが経験していることを言葉にするのが難しいようなら、一歩さがって自分に聞いてみましょう。「それは必要なこと?」
あなたのプロファイルの写真についてのコメント、E メールからテキストやメッセージアプリケーションへの切替、合意のない動き、これらは本当に必要か?と自分に聞くことによって、状況を分析することを難しくしているかもしれない全体的な個人関与のスパイラル(らせん、連鎖的な変動)を打ち破ることができます。あなたは、自分自身を観察している傍観者のような場所に置きます。この離れた視点は、複雑な社会の影響の全てを考慮に入れないので、物事を明瞭にみることを可能にします。誰かが何か必要でないことを絶え間なく行うとき、その人は彼らの役割の限界を超えています。これは、Red Flagです。
1-2 沈黙を破る ー 他の人(目撃者・傍観者・世間一般)ができること
免責事項:すべての人が声をあげられるわけではありません。力関係、どのような環境にあなたがいるか、報復の可能性、あなたのトラウマ、あなたの精神的・肉体的な自由さ/不自由さ、あなたの社会的な地位、あなたのアイデンティティー、すべての要素が影響します。あなたがそうすればよかったと思うリアクションを取れなくても、悪く思わないでください。セクシャルハラスメントは時間とともに構築されるので、認識し対抗することが難しい問題なのです。大事なことは、あなたが選ぶことのできる多くの違ったストラテジーを知っていて、どれがあなたに一番よく機能するかを見つけることです。誰もが、自分のやり方でハラスメントに立ち向かいます。一番大事なことは、安全と生き抜くために自分を守ることです。あなたが心地よく感じることは何でもOKです。私たちは、ハラスメントに向かって声をあげることがとても脅威的で、不可能にさえ感じられることを知っています。私たちは、私たちや他の人々のために声を上げないよう社会から教え込まれています。声を上げるための自信をつくりあげるためには、時間と実践が必要です。これはプロセス(課程)です。異なったストラテジーを実践すればするほど、与えられた状況で、自動的にそれらの戦略を適用するレベルまで取り入れるようにできる可能性が高くなるでしょう。しかしながら、もし私たちがそうできる立場にいるなら、とりわけ、私たちが傍観者・目撃者であるとき、私たちは声をあげることが可能であり、そうするべきです。あなたが傍観者・目撃者であるとき、あなたはただ「主要な標的」ではないというだけで、特権のある立場にいます。あなたの特権を確認し、使いましょう。大事なのは、あなたが一人でシステムを変えなければならないわけではないことを心に留めておくこと。特に、あなたが権力のある立場にいないとき。でも、そこにはあなたが積極的に働きかけられる異なるレベルや、たとえあなたが一番権力のない立場にいたとしても、私たちは加害を受けている人に対処し助けを探すことができます。― 私たちはみんな、この件について責任があります。
1ー2-1 オポジション(反対・抵抗・対抗)の練習・実践
私たちは、主流な考え方「あなたは単にNoと言えばよかっただけ」を信じません。残念ながら、私たちは、「No」だけでは十分でないとき、また「No」ということが不可能な場合があるのを知っており、異なったストラテジーを見つける必要があります。ハラスメントを経験している人は、本当に大きなことが起こったときや、ハラスメントがどうやっても耐えられないレベルになったときに、初めて声を上げることがとても多く見られます。私たちは状況が非常に悪くなるか、とても明らかになるまで介入するのを待つ必要はありません。ある状況では、「No」ということが有効かもしれません。これらの場合は、バウンダリーが踏み越えられた早い段階で(たとえ初回でも)表立って言うほうが、待つよりも簡単です。何かがおかしいと思った瞬間、テーブルに持ち込みましょう(=表沙汰にする)「あなたは私を居心地悪く感じさせました」と言い、すべての出来事を並べて説明しましょう。彼らに、あなたを「良い意図だった(そんなつもりはなかった)」とガスライト(※)することを許さないで。加害者の行動があなたをどのように感じさせたか、加害者の行動がストップしなければばらないことを主張してください。その場でなく、後から「あなたが少し前に私にしたことは、私を不快に(居心地悪く)感じさせました」というのもOKです。しばしば、このような状況に投げ入れられたとき、私たちは身体が固まります。でも、私たちは私たち自身を準備し、状況をより良く判断できるようになれます。例えば、考えられる状況を心理的にシュミレーションし、可能なリアクションを前もって考えます。この前のセクションにあったストーリー(例/前記事の「教授」のストーリー)の最初のRed Flagを例に取って、リアクションを練習してみてください。練習すればするほど、不意打ちに合う可能性は少なくなるはずです。
(※)ガスライト:心理的虐待の一つで、相手の現実感覚を疑わせ混乱させるために、ある情報を隠して教えなかったり、嘘の情報を教えること
【Extra tip: 責任を本来あるべき場所に戻す】
私たちは、加害者がバウンダリーを押し、踏み越えると学びました。だから、私たちは、早い段階でこれらの試みに対抗することを実践したい。加害者たちがあなたのバウンダリーを曖昧にしたり、あなたが彼らと一緒にその場の冗談やからかいに乗りたくないときに場を壊す人のように見せようとするときは、加害者はあなたに恥ずかしいと思わせ、あなたが結局抵抗を諦めることを望んでいます。誰かがあなたのバウンダリーを踏み越えるのはあなたのせいではありません。だから、あなたは彼らのコートに球を打ち返すことができます。例えば、「私はあなたにNoと言い続けていることを分かってる?」「あなたは、Noが受け入れられない人々と同じなのね?」と言うことによって。ある状況では、これはダイナミクスを変えることが可能かもしれません。罪悪感は打ち返されます。― あなたはもう自分自身を正当化する必要はありません。その代わり、加害者がそうしなければなりません。
インパクトː あなたは、あなたはしっかりと目を見開いていて、何が起こっているのか、どこにあなたのバウンダリーがあるのかを知っていることを明確にします。
免責事項:あなたの安全と生き抜くために自分を守ることは、一番最初にきます。これは、あなたが味方がいて、衝突が悪い方向にいったときに信頼して頼れる人々がいる場所で実践して。あなた自身に、この環境で加害者が直面する結果について知らせておいて。あなたが信頼できる人を探して、カウンタースピーチ(対抗するスピーチ)を試してみて。
1ー2-2 誰かに打ち明ける
声を上げることも大切ですが、ハラスメントを打ち明けられる人を見つけるのは、ハラスメントの状況から抜け出す鍵となります。ただ、誰もがあなたに必要なサポートを与えることができるわけではありません。ここには、どうやってその人を選ぶのかというガイダンスがあります。
ー あなたが本当の意味で信用している人:安全ということが大事です。あなたは、ハラスメントについての話をあなたから聞いた後、他の人々に話してしまうような人は望みません
ー セクシャルハラスメントを問題だと認識している人
ー あなたの言うことにきちんと耳を傾けてくれる人:聞くというのは、積極的に聞いているという意味です。彼らは思慮深く、繊細で結論に飛びつかず、 何よりもまず、何があなたが必要か、あなたがどうしたいかについて優先する人です。
― あなたのシステムの外側にいる人(例/職場でのハラスメントなら、別の会社で働ている友人等)ː なぜなら、彼らは内部のロジック(会社の慣習等)に従わないでしょうし、 利害や忠誠心の対立もないし、あなたの周りの人々がその環境に自分たちを組みこまれているルールと交渉する必要もないからです。
ー 年齢の考慮:他のジェネレーションは、ハラスメントの壊滅的な結果に気づけないかもしれません、またハラスメントを軽く扱うよう条件づけされているかもしれません(私たちのジェネレーション以上に)
できれば、話せる人を複数みつけ、サポートネットワークを築いてください。
重要
誰かに打ち明けることを決める前に、あなたの環境での権力・力関係の分析を必ず行ってください。残念ながら、あなたと同じシステムの中にいる人々(職場の同僚や大学の同級生)は、そのシステムのヒエラルキーに取り込まれていて共犯的になっているか、自分が利益を受けている立場なら、システムが変わることを望まないかもしれません。私のブログ内の「1-3-3 権力・力関係の分析」を参照してください。
1ー2-3 失われた階段のステップを見つける
失われている階段のステップの概念は、人々が、加害者の道徳や法律に違反する行為を知っているのに、問題を正すのではなく、どのようにそれを受入れ、何も言わずにお互いに「失われている階段のステップ」を知らせることを示しています。
例:誰もが加害者の行動は間違っていると知っているのに、「彼はいつもあんな風だから」と受入れ、被害者に対しての許されない行動をそう認識しないために回避する精工なスキームを作り出します。そのため、その環境は、耐えがたい状況の保持に貢献し、許される訳のない行動が、なんの結果(加害者の罰や加害者の責任を問うこと)も、もたらさないことを保障します。結果として、傍観者・目撃者は、潜在的に標的となる人々を加害者に暴露した状態で残します。
1ー2-4 目撃者・傍観者の介入
グレーゾーンで起こる全てのことは、緊張感を伴う遊び心とする概念は危険です。
もし私たちが居心地悪く思う人に「元気出して(嫌な顔しないで)」と言ったり、職場のジョーが性差別ジョークを言うのを、「彼はそういう人だから」と肩をすくめて許すと、私たちはさらにひどい違反(罪)を犯す機会を許可することになるかもしれません。私たちは加害者に、私たちは加害者側の味方であることを知らせています。私たちはそんな悪い行動を寛容的に受け入れるので、加害者の標的になっている人は助けを得られず、独りぼっちで弱い立場に残されることになります。実際、加害者は自分に得になるようにグレーゾーンをうまく使い、公衆の場で不適切な言葉や触ることから始め、どのぐらいだったら自分たちの行動を責められることから逃れられるかを試してしています。
目撃者・傍観者―ハラスメントを目撃している人々―は、彼らが積極的になれば、ハラスメントの状況を本当に変えることができます。私たちが聞いたほとんどの話では、(目撃者・傍観者)の一人がハラスメントに立ち上がって決定的な行動を取れば、多くの害は防げました。目撃者・傍観者はセクシャルハラスメントの全容には気づけないかもしれません、たとえ彼らが加害者の行為や鼓動に気づいていても。私たちはコミュニティーとして、もっと良くなり、目撃していることの責任を理解するべきです。また、ハラスメントと暴行は「進歩的な社会」とされる場所や、「オープン」な環境とされる場所でも起こり、外部へどう見せているかは、彼らがどう不正行為(ハラスメント)を扱うかの指標にはなりません。それどころか、こういう環境ではハラスメントのトピックに対処するのがさらに難しいかもしれません。なぜならこういったハラスメントはそこでは起こるはずがないから。
あなたが積極的な目的者・傍観者になるには何ができるでしょう?
あなたの目が大きく開かれていることを見せてください。セクシャルハラスメントを許さないことを明確にしてください。セクシャルハラスメントについて話してください。そのように声に出して言うことは居心地が悪いでしょうが、妥協するよりはずっといいことです。そしてあなたは、加害にあった人たちの大きな負担を和らげることができます。セクシャルハラスメントは個人的なことでなく権力(力)についてであり、私たち社会の全員に関わる公共の問題であることを拡散してください。
ここにあなたが介入するのに使える手法がいくつかあります。
状況を明確に把握することを学ぶ
権力(力)、支配、自己宣伝に目を研ぎ澄まし、その社会ピラミッドの一番下にいる人々に手を伸ばしましょう。
公衆の面前に置いておく
加害者の行動についてオープンに話し、ハラスメントを見たときは、いつも反対の声を上げましょう。
標的となった人々を一人にしない
誰かが危険な状況に置かれるいわゆるプライヴェートな状況や会話に、あなた自身を招待してください。(会話に加わる、一緒に行くことを申し出る)
情報を共有する
誰かが悪い行為で知られていますか?共有しましょう(ただし、”失われた階段のステップ”を作り出さないよう注意して:もしあなたがハラスメントについて何かできる立場であれば、行動に移してください)
離れないで
ハラスメントの標的となった人々に定期的に話しかけ、あなたは彼らのためにそこにいること、彼らはあなたを信用できるというサインを送ってください。
標的となった人に話しかけて
サポートを申し出てください。「本当に元気なの?」「私は(加害者の行動)に気づいて、あなたに私がそれを見たと伝えたかったの。」状況を認めることは、加害者の行為が不適切であったことを、標的となった人に気づかせるか、またはあなたが注意を払っていることを彼らが分かることを助けます。アクティヴな聞き手になって、彼らは、起こっていること(ハラスメント)に責任はないことを伝えてください。ハラスメントの情報を得られる場所を指し示してください。
バディシステムを構築する
新人さんたちを注意深く観察し、友達、同僚、隣人として、そこにいる(サポートできる)準備をしておいて。
雪だるま効果
あなたは小さく始めるかもしれませんが、大きなインパクトをもつことができることを忘れないで。
あなたの特権を使う
あなたの年齢、地位、肌の色、ポジション。ハラスメントの標的でないことですら、あなたが味方となることをエンパワーすることを理解してください。
何かをするのに遅すぎることはありません
もしあなたがハラスメントが起こっているのを20回見て、常に目を背けたとしても、また標的となった人に話しかけようと決意したのが21回目でも、21回目に介入してください。
加害者に立ち向かう
もしあなたが声をあげられる立場にいるなら、そうしてください。もしあなたが何かを見て、権力のある立場にいて、例えば加害者の上司だったとして、行動することをためらわないで。あなたの従業員が安全であることをただちに確認して。
依怙贔屓の効果に注意してください
上司が誰か一人を特別なポジションに持ち上げるとき、その人は一人だけ選抜されるだけでなく、他の人々からの疑いや競争を促進します。これは、他の人々が「元気?大丈夫?」と標的となった人に聞くことから遠ざけます。そのため、潜在的な標的を、他の人々の目が行き届かず、自分だけしか頼りにできない脆弱な立場に残します。
もしあなたがこの本のストーリー(例/前回の記事の「教授」のストーリー)に戻ると、たびたび標的の周りに最初は人々はいますが、社会的な環境は徐々に消えます。
これはシステムの一部であることを覚えておいてください。加害者は標的を孤立させます。このダイナミクスにあなたの目をしっかりと開き続けてください。下記の人々は目撃者・傍観者の可能性がある人々です。
— 教授の物語(記事の2/3): 他の学生、学部のスタッフ、会議に参加している人々.
1ー2-5 あなたのコミュニティーを見つける
ハラスメントに対処することは、個人の行動からのみ起こるわけではありません。私たちの経験を話せる場を持つこと、ジャッジされること(他の人の価値観で裁かれること)を恐れずに、本当にあなたの話を聞いてもらえる場所はとても重要です。サポートネットワーク、シスターフッド、フェミニスト集団。すべてが、虐待、暴力、ハラスメントに対抗する大きな役割を果たします。私たちはあなたが住んでいる場所や、どのようにあなたの初期の社会的ネットワークが構成されているかによって、これが難しくみえることを認識しています。あなたはあなたのオンラインコミュニティーを、例えば、フォーラムやフェイスブックグループから見つけることができます。
1-3 沈黙を破る ー 通報・正式に訴える
セクシャルハラスメントを通報・正式に訴えることについては、日本とヨーロッパでは非常に大きな違いがあるようなので、ここには敢えて記載しないこととしました。もし、ヨーロッパでの一般的なことが知りたければ、私のWebsiteのこのページより、ご確認ください。
重要なのは、ここでは通報することを説教しているわけではありません。著者たちも、通報することがどれほど苦難を伴うことであるかを認識しています。一番大事なのは、あなたの安全であり、通報するかしないかは、あなた個人の選択です。誰かがあなたに通報することを強制することもできなければ、あなたが通報することを誰かが妨げるべきでもありません。
2 ハラスメントの周辺の文化を変える:神話を壊す
ハラスメントと戦うことは、文化を変えることからきます。幼い頃から、社会は、「被害者のせいにする」と「レイプカルチャー(※)」をもとにしたハラスメントについての神話を与え続けます。これらの神話は、起こったことは何でも被害者のせいとするアイディアを促進・助長し、加害者は何をしても(罰を受けずに、責任を取らずに)免れることができます。私たちがこの社会で育つ間に信じ込まされている信念は男性の視点に基づいている事実を認識しておくことは重要です。
誰かが「簡単な解決法」とされているものをあなたに示したい場合には、注意してください。もしセクシャルハラスメントを扱う簡単な方法や、そこから抜け出す簡単な方法があれば、私たちは既に見つけていたことでしょう。これらの神話をきいたときに、それを壊すのは私たち全員の責任です。ここではセクシャルハラスメントについての主要な神話とそれらに対抗するいくつかのツールについて紹介します。
(※)レイプカルチャー:レイプカルチャーとは、社会でレイプや性的暴行が当たり前になっていることを指します。性的なジョークや女性はモノ(感情や頭脳を持つ人間ではなく、ただの物体)として見るということから、レイプや性暴力までの大きな範囲を含んでいます。レイプカルチャーは、女性の人間性を奪い、女性の身体は奪われ消費されるのが普通ということを社会に植え付けます。
2-1 草むらに隠れている男に気をつけて
セクシャルハラスメントについて女性たちが最初に(或いはこれ以外は教えられない)教えられるのは、危険は外(よそ)からくるということです。この比喩は時間と同じくらい古い。私たちは、危険なよそ者(知らない人)が草むらや暗い路地に隠れていて、いつでも彼らの被害者にとびかかる準備をしておりレイプする、という話に警戒するべきです。公共の言説は圧倒的に男性たちによって形作られ、しばしばある特定の男性が危険な加害者だと暗示します。危険な加害者は、いつも「Others(他人、よそ者)」で、人種差別的な仮定にリンクされていることが多い。それは常に有色人種の男性で、外国人で、よそ者。同時に、これは女性たちが世界のどこでも直面する現実を消し去ります。セクシャルハラスメントの加害者の多くは、私たちが知っている人々であり、私たちのコミュニティーの中にいる人々であり、私たちが信用する、私たちが好ましいと思う、或いは愛してさえいる人々です。多くの場合、私たちにセクシャルハラスメントをする人々は完全なよそ者(知らない人)ではありません。複数の研究が、セクシャルハラスメントの被害者はほとんどいつも加害者を知っていることが証明されています。もし私たちが間違ったステレオタイプを繰り返すと、セクシャルハラスメントがどこでどのように行われているかの見解を曖昧にするでしょう。性的暴力を受けるリスクが一番高いのは、自分の家、職場、私たちの知っている人々での間です。私たちの友人や親戚、同僚によって行われ、その人たちのとても良い評判や、周りの人の語るその人の優しさが、彼らの悪い行動(ハラスメント)の隠れ蓑となります。セクシャルハラスメントは、人々が、誰か、どのようなのかなのではなく、彼らが何をするかです。もしあなたが効果的にセクシャルハラスメントを識別したいなら、積極的に意識的に、行動とアイデンティティーを分けることは肝要です。私たちは、どの環境要素、パワーダイナミクス、行動が一緒になって、虐待・暴力・暴行を構成しているかを見つけなければなりません。女性にハラスメントを受けたり暴行を受けた男性も多くいます。でも、「そんなこと(セクシャルハラスメント)をするはずがない男性」はいるのでしょうか?すべてのナイスな男性、素晴らしい芸術家、スイートなおじさんーWoody Allen, Bill Cosby, Ariana Grandeをつかんだ神父を思い出してください。彼らは多くの人々から尊敬され、「彼らはハエでさえ殺さないだろう」と世間から言われ、どんな行動も不処罰で許される社会的な地位を占めている人々。これらの加害者が共通で持っているのは、彼らは権力(力)を持っているということです。権力(力)はさまざまな形でやってくることができます。私たちが「草むらに隠れている男たちに気を付けて」と言われたら、実際にはそれ以外の人々、本当に危険な人々に警戒しないといけません。真実は、誰もがセクシャルハラスメントの被害者にも加害者にもなりうる、ということです。
2-2 これが被害者がどのように見えるかということ
私たちがメディアで見聞きするハラスメントのストーリーは全体像を見せません。彼らはしばしば特有の「被害者像」を好みます。彼らは、社会システムに抑圧されている底辺にいる人々を見えなくします。それゆえ、私たちは、誰がハラスメントの標的になり、どのように加害者がこれらの人々を利用するのかという不明瞭な像しか見えません。社会やメディアが、どのように「被害者になるか」という方法を一つだけしか示さないとき、誰が被害者になりえて、誰が被害者になりえないのか、メディアや社会は、人々がハラスメントを認識することを阻み、被害にあった人々がサポートやリソースを求めることを妨げます。あなた個人の脆弱性は、決してハラスメントの根源的な問題ではありません。私たちは、生まれながらに脆弱なわけではありません。私たちは社会の差別や、不平等なリソースや力の分配から脆弱にされるのです。他の人々は私たちの社会的な地位やアイデンティティーの上に建築し、私たちの脆弱な立場を利用し、彼らの思い通りになるように使います。加害者は組織的な人種差別、身障者差別、階級差別、性差別、LGBTI恐怖症を自分たちの有利となるように使います。なぜか?なぜなら、彼らは、これらの抑圧を受けている人々の言うことが社会によって聞いてもらえたり、真剣に扱ってもらえることがほぼないと知っているからです。特に抑圧を受けている人々が性的暴力について声を上げたとき。それは、次のことからくるかもしれません。
ー その環境において新しい (例/新入社員、引っ越してきたばかり)
ー その環境に適用される規則をよく知らない
ー 仕事がどうしても必要な状況(例/経済的な理由)
ー 周りの人々と違う階級からきている
ー あなたのバックグラウンド
ー ジェンダー、性的指向等
— 肌の色
ー 年齢
— 社会的統合レベル(友人、家族、あなたをサポートする社会的なネットワーク)
— 身体的障害
— 精神的な問題
— 不安定な経済状況
—大学卒業かどうか
敵対的な環境では、加害者は上記の特徴を、人々を搾取するのに容易に使えます。加害者はこれらの脆弱な立場を利用するか、脆弱な立場を作り出すことすらあります。あなたがハラスメントにさらされる要素に警戒しておくおとは、どのように他の人々があなたを思い通りに支配しようとするかを理解する不可欠なステップであり、なぜ彼らがしていることは間違っているかというあなたの判断を指定します。これらを認識することは、エージェンシー(※)の大きな源でしょう。
(※)エージェンシー: 行為主体性。個人が、自分自身の人生について決定を下すことができる能力。エージェンシーを持っているということは、自分自身の人生と自分の決定に、コントロールを持っていること。
2-3 被害者のせい
あなたはどんな服装をしていましたか?何を飲みましたか?そもそもなぜそこにいたんですか?セクシャルハラスメントや性暴力について声を上げるとき、しばしば最初の質問は私たちの行動です。突然、加害者の行動や動機はその図式にはもはや存在しません。非難されるのは、標的となった人のみです。私たちは自分を非難する形のロジックを内在化しています。私たちは自分自身に聞きます。誘惑していたようにみえたのか、私が何かを始めさせたのか、私が大きな声で明瞭に「No」といえば防げたのではないだろうか。これは、古典的な被害者と加害者の逆転です。人々は、被害者のすべての詳細を、欠陥や間違い、妥当性(被害者が犯罪を招いた)を見つけるために検証します。本来なら、会話は実際に責任がある人ー加害者ーについてなのに。私たちは、セクシャルハラスメントは私たちの(被害者の)行動によるものでないことを覚えておくことは大切です。私たちには、自分たちの行動を「正しく」することはできません。私たちがほほ笑むと、ある人はそれを誘いだと解釈するかもしれません。私たちがほほ笑んでいないと、ある人は、私たちがどのようにもっとほほ笑むべきかをコメントする動機付け、ととるかもしれません。セクシャルハラスメントは、ハラスメントを受ける人がどのように行動するかにはかかっていません。私たちは、セクシャルハラスメントと性的暴行を、「他の人に力を行使しようとする加害者の決意に由来する暴力とコントロールの犯罪。挑発的な服装も性的に無差別に見える行動も、決して望まない性行為を招く(求める)ものではない」と見なければなりません。この「リスクの仮定(被害者の服装や言動がハラスメントを招いている)」は、加害者の行動の責任を、不当に被害者に押し付けます。何を着ていようと、どのように私たちが見えようと、加害者が自分の意図を行動に移すかどうかには全く影響しません。結局は、すべてここに行きつきます。ハラスメントを受ける人は、彼らの人間性、尊厳と統合性を奪われる。彼らは辱められ、屈辱的な思い、傷つき、トラウマを負い、恥ずかしく感じます。加害者は、反対に、まるで何も起こらなかったように普段のルーティンな生活に戻り、自由に歩き去ることができます。暴行を経験した人は、負荷を負い、それに耐え、対処しないといけないのに。次回、加害者を無罪にしようとするあなたの反射神経が始動したら、これを覚えておいてください。ハラスメントの結果を生きるのはあなたです、でも、加害者もそうあるべきです。加害者に責任があるのだから。
2-4 (加害者は)そんなつもりじゃなかった
私たちがハラスメントについて話すときあまりにも頻繁にー私たち自身も含んで(#selfblame)ー 犯人のための言い訳を急いで探し、彼らがしたことは意図的だったはずがないと理由付けします。加害者は行動の意図を問題ととされますが、この行動に影響された人々(被害者)は、自分たちでだけこの行動のインパクトを扱うことを想定されています。
次の方法で見てみましょう。
誰かがフリスビーをあなたの顔に向かって飛ばします。傍観者・目撃者はこの場面を観察し、あなたに、「彼らはあなたを傷つけようとしたわけじゃないから、大騒ぎしないで」と言ったとします。なぜ、私たちはフリスビーを投げた人に責任を取らせないのでしょう。フリスビーをぶつけられた人が、追加の負荷を持ち運ぶようにする代わりに。これは、馬鹿馬鹿しく聞こえます。そうでしょう?同じことは、ハラスメントにもいえます。意図とインパクトは分けられるものであり、分けなければなりません。傷つける意図があったかなかったに関わらず、ある人が誰か他の人を傷つけるかもしれません。意図を指さし、これで十分だと期待することは、確実に問題に対処していません。あなたは痛みに対処しなければなりません。フリスビーを投げた人は、自明な2つのことをするべきです:謝罪と自分の行動に責任を持つこと。周りの人々は、あなたの痛みを認識するべきです。これを覚えておきましょう。「状況を修復するのは被害者のせいでも責任でもありません。これは加害者の選択」です。人々が私たちに、「彼らはそんなつもりじゃなかった」という時は、人々は私たちに黙るよう言っています。声を立てて騒ぐな。飲み込んで、沈黙の中で、ハラスメントを自分たちだけで扱え。彼らは、いったい何が今起こったのか自分自身で識別する前に(加害者を)許すように言ってきます。彼らは標的となった人がステップアップすることを難しくし、加害者のことを忘れさせます。彼らは、加害者の気持ちは、私たちの気持ちや、尊厳、統合性、私たちがOKと思う権利、私たちの幸福、安全、私たちの心や身体をどうするか自分自身で決める権利よりも大切だと私たちに言います。再び、加害者は社会からのサポートを得るだけでなく、何をやったとしても(罪や罰から)免れることができます。これは、OKではありません。焦点の中心は、私たちへ(加害者から)与えられた痛みとダメージであるべきです。私たちが、良い意図をインパクトの上において支持し続ける限り、私たちはハラスメントに対処できません。
2-5 被害者はNoと言えたのに言わなかった
この神話は古典的な被害者を責めるものの一つです。これは、サバイバーが「No」と大きな声ではっきりと言うだけで、加害者を止められたという決めつけです。この決めつけは、以下の2つの要素に基づいています。
1.セクシャルハラスメントは、標的となった人がNavigate(操縦)できるもの:実際、ハラスメントと暴行は、加害者の決意に由来しています。標的となった人がNavigate(操縦)できる立場にいるのは稀です。
2.「合意」の基本的な原則を無視している:「No」と言わないのは「Yes」ではありません。合意は自由意志と、報復や反響を恐れずに「No」と言える可能性を必要とします。合意は依存関係のない人々の間でのみ可能です。(Aさんが、経済的或いは社会的にBさんを頼らないと生き延びることができない場合、高い依存関係がある。)もし人々が追いつめられプレッシャーをかけられているように感じるなら、それは明確で自発的な合意を与える彼らの能力を制限します。同意は決して推測ではありません。(例/「暗黙の了解」、「触っても嫌がらなかったから合意だった(加害者がそのように解釈したかっただけで、被害者は恐怖と混乱で身体が固まっていて動けなかった)」は、全く合意として成り立ちません)。もし誰かが、あなたがそれを望んでいるかを、明確に確認することなく言動を続けていれば、声を上げるのはあなたの義務ではありません。あなたに確認する責任は彼らにあり、彼らがあなたに確認しないなら、それは尋ねない彼らが悪いのです。もしあなたが合意についてもっと知りたいなら、この記事の「1ー1-1 合意とバウンダリーを理解する」を確認してください。
ハラスメントにあっている人がどのように見えるかで、よくでまわっている一般的な被害者像はこうです:無力で何のエージェンシー(※)もリソースもない。加害者はまさにこの嘘をあなたに言います。あなたは一人ぼっちで、あなたは自分自身を助けられないし、誰も助けてくれない。真実は、あなたは無力ではなく、加害者があなたに信じさせたいよりもっと多くのエージェンシー(※)をもっています。もしあなたがセクシャルハラスメントを一度も経験したことがなければ、あなたは自分はたくさんのストラテジーをもっていて、ハラスメントが起こったときに、正確に何をするか知っていて、なんでもないことのように状況を扱うことができると信じているかもしれません。これは、特にあなたの自分のイメージが、どんな状況でも扱えて、助けは要らない、強くてエンパワーされていて、独立している人間であるときに起こりがちです。しばしば、あなたは、あなたを制限・抑制する見えない糸や要素が見えません。あなたがその状況に追いやられたとき、あなたは、動きが取れず全く何もできないと思い込まされるでしょう。また、内在化された罪悪感があなたを閉じ込めているかもしれません。もしあなたの自分のイメージや自己パフォーマンスがタフで独立した人である場合は、自分が追いつめられ、孤立させられ脆弱にされたときに、助けが必要であることに気づくのを認めるのは、なおさら難しいでしょう。あなたの実際のエージェンシー(※)は、恐らく上記2つの極端な例のうち、どこか間にあるでしょう。それには、一定の制限があり、あなたが一度も経験したことのない状況や、その状況で自分がどう感じるか分からない状態で、あなたがその場でどのように行動するかを推定するのは難しいでしょう。あなたが、追いつめられた、無力、或いはレジリエントと感じるか、あなたは自分を、被害者、サバイバー、或いは前者のどちらでもないと認識するのか。あなたにはオプションがあります。ハラスメントから抜け出す解決法は存在します。
(※)エージェンシー: 行為主体性。個人が、自分自身の人生について決定を下すことができる能力。エージェンシーを持っているということは、自分自身の人生と自分の決定に、コントロールを持っていること。
2-6 セクシャルハラスメントはセックスについて
ハラスメントを表すのによく使われる絵や写真は、しばしば、お尻に触っている手です。しかしながら、実際はもっと複雑です。現実では、セクシャルハラスメントは心理的なハラスメントの長いプロセスが先行されています。なぜなら、セクシャルハラスメントは力・権力(POWER)であり、セックスではないから。多くの代表像とは対照的に、セクシャルハラスメントは常に完全に性的であるわけではありません。加害者は、心理的なハラスメントを、力(Power)とコントロールを被害者に構築するやり方として、使います。性的なことがほとんど関わらないセクシャルハラスメントの話や、実際の性的な行動(性的なコメントだったり、望まない身体的な接触だったり)は長期間の心理的なハラスメントを築き上げた後にやっと起こるのを聞くことはよくあります。
このセクシャルハラスメントは、つまるところセックスであるという考えは、世間に行きわたっているレイプカルチャーからきています。レイプカルチャーとは、社会でレイプや性的暴行が当たり前になっていることを指します。性的なジョークや女性はモノ(感情や頭脳を持つ人間ではなく、ただの物体)として見るということから、レイプや性暴力までの大きな範囲を含んでいます。レイプカルチャーは、女性の人間性を奪い、女性の身体は奪われ消費されるのが普通ということを社会に植え付けます。
2-7 ここにはセクシャルハラスメントをする人はいない
これを明らかにしておきましょう。セクシャルハラスメントはどこでも起こりえます。どんな場所でも、どんな環境でも、どんな場合でも、どんなときでも。一般的に信じられていることとは対照的に、ハラスメントは人通りのない暗い道で起こるとは限りません。多くの場合は、昼間の明るい時に多くの傍観者・目撃者が周りにいるときに起こります。私たちが、セクシャルハラスメントはある特定の環境では起こらない、或いは起こるはずがないと言われたとき、人々が良い教育を受けていて裕福である環境では起こりえない(大学キャンパスでの教授からのハラスメント)や“working for the greater good” (ヨーロピアン議会での多くのハラスメントのストーリーを見て)、ここには、心配する理由があります。なぜなら、そこには加害者を許す否定文化が潜在的に存在するということを意味するからです。人々がセクシャルハラスメントは存在しないというとき、標的となった人々はこの主張に対抗することがさらに難しくなります。こういった類の文化は加害を容易にします、なぜなら環境が加害者をサポートし、反響を恐れることなしに罪や罰から免れることに環境を頼りにできるから。
実際、そこにはセクシャルハラスメントのよい繁殖地を作り出す環境的な要因がいくつかあります。あなたの目を見開いたままにして。虐待的な行動は、次のような環境的要素が存在するときに栄えます。
— 抑制のない力・権力
— 権力のある人々がチェックやバランスを取ることなしに(権力のある人々が越権行為や不正、悪い行動をしていることを監視・監査・取締る機関や仕組みが存在しない)、自分たちが望むままに行動できる
— 強いヒエラルキー
— 高いレベルでの依存性 (例/担当教授一人のみが、自分のアカデミックキャリアの行方を左右できる立場にいる。この担当教授には、他の教授も大学関係者も学会関係者も何も言えずに従う)
— 経済的、個人的な危険性の高さ、声を上げたときの報復の恐れと反響の可能性は、沈黙の文化を創り出します。
責任ある環境は、自分たちの階級にハラスメントの加害者はいないと主張しません(それゆえ、問題に取り組む人々を沈黙させる)、ハラスメントを培う環境的な要素にタックルします。
2-8 傍観者・目撃者効果ーもしそれが本当にハラスメントだったら、誰かが何か言っただろう
このよくある議論は、またしても、セクシャルハラスメントの問題を標的となった人の不利に働くようにします。ハラスメントにあった人々は、セクシャルハラスメントの証拠を提供しないといけないだけでなく、もし周りの環境が反応しないなら(残念なことによくあることです)、ハラスメントは起こったはずがないとされます。みんな気づくよね?という推定にもどついています。問題は、周りの人々は、ハラスメントに気づきますが、ほぼ誰も介入しません。なぜなら、彼らはハラスメントを見たくないし、彼らは加害者のロジックに迎合し(例/彼はいつもそうだから)、加害者と同じ権力ヒエラルキーの構造にとらわれていて、或いはナイスな同僚を加害者として認識するのは難しいから。だから、人々はしばしば加害から目を背け、被害者を一人にします。沈黙はしばしば、傍観者・目撃者効果と呼ばれる症状です。もし一人も公然と逸脱を指摘しないなら、他の人々も(逸脱した行動を見ないよう)違う方向を向くでしょう。しかしながら、一人の目撃者・傍観者が声を上げたらすぐに、他の人々も続くでしょう。なぜなら彼らも恐らくずっと何が起きていたかに気づいていたから。沈黙の文化を変える可能性はあります。さらに詳しい情報については、この記事の前述分「1ー2-4 目撃者・傍観者の介入」を参照してください。
3 まとめー神話からエンパワーメントまで
ー セクシャルハラスメントは、人々が、すべては勘違いだとするグレーゾーンという神話を供給(フィード)するときに起こります。
ー 誰もが加害者になる可能性がありますが、加害者が自由自在に自分の権力・力を行使することを許す環境はあります。
ー いったん脆弱な立場におかれると、誰もが標的になりえます。
ー ハラスメントはあなたの意志に反することであり、あなたのせいではありません。
ー セクシャルハラスメントは、セックスが目的ではなく、力・権力とコントロールを他の人に行使・及ぼすことです。
結論
あなたは、このガイドを読み進めました。私たちは、これは多くのことを消化する必要があり、あなたは、恐らく、さまざまな感情を経験していると思います。あなたはエンパワーされた、圧倒されている、悲しい、或いは怒りを感じているかもしれません。あなたは、世界中の誰もがあなたを捕えようと待っているように感じますか?ここには、あなたがこれらの知識と情報を咀嚼を助けるよう、いくつかの締めくくりの思想があります。
あなたの感情は貴重・大切です
人々がなんと言おうとも、あなたが感じること、あなたが自分について持っている知識は一番大事なものです。誰もそれらをあなたから奪うことは許されていません。あなたが傷ついたと感じるなら、それは本当で正当なものなのです。
あなたは一人ぼっちではありません
これは私たちがシェアしたかった最も大事なメッセージの一つです。私たちはこの文献を記述しました。なぜならハラスメントにあった何百人もの女性の経験を分析し、パターンがあることに気づいたからです。セクシャルハラスメントは組織的・構造的です。あなたの自分自身の警告システムは固有のものです。これは、あなたがどうやって、この世界を、自分の個人的なスペースをガイドラインに使ってNaviagate(操縦)していくかです。しかしながら、それはまた世界中の女性が経験した集団的なものです。私たちがみんな一緒にここにいる(私たちはセクシャルハラスメントと闘っている仲間)と気づくことは、私たちをよりを強く、より強いコネクションをつくることに貢献します。
変化は小さなステップの集積・堆積
この文献を読んで、セクシャルハラスメントは許されないと認識することにより、あなたは既に変化を作り出しています。変化は必ずしも外から見えるものではなく、だからといってあなたが外に出て何かを打倒さないといけないというわけではありません。変化はあなたが誰かがあなたのバウンダリーを越えることは正しくない、あなたがそれについて罪悪感を感じるべきではないと理解するところから始まります。私たちの仲間が同じように感じているか注意して見まわし、お互いの面倒を見て・思いやってください。私たちの目を見開き、他の人々に対するのと同じ共感を、自分にもむけましょう。
私たちはここに一緒にいる(私たちはハラスメントに対して一緒に闘っている)
私たちが「世界を変える」というとき、私たちは必ずしもあなたたちが外に出てこの全体的な問題を自分たちだけで対処するよう、言っているわけではありません。この文献は大きな変化へのただの足掛かりです。
あなたには今何ができるでしょう?可能性は無限です。
あなた自身のために変化をつくって
ー あなたの警告システムを実践して
ー 毎日、あなたのバウンダリーを尊重するようにして
ー あなたが他の人にするように、自分に対しても共感をもって優しく
他の人々とつながる
ー あなたが多くを持っているのを認識して
ー あなたの仲間との共通点
ー 他の人を助けて
ー 知識を拡散して
ー セクシャルハラスメントのパターンをよく観察して
ー この文献「It's Not That Grey」を印刷して配って
ー 私たちにあなたのストーリーを送ってください。この文献をもっと豊富でぶ厚く、インターセクショナル(※)なものにするために
システムを変える
ー 毎日、あなたの個人的、プロフェッショナルな人生、どこでも、積極的な大使になってください。
ー カウンタースピーチを練習・実践してください。
ー ハラスメントに対するストラテジーを他の人とシェアして、ワークショップを実行してください。
ー あなたがセクシャルハラスメントの(間違った)神話に出くわしたときはいつでも反対してください。
ー ハラスメントに対抗する共同体を始めてください。
あなたのストーリーをシェアする
この文献は進行中のオンラインプロジェクトの始まりにすぎません。私たちは、もっと多くのストーリーを聞き、彼らの洞察を盛り込みたいと思っています。このプロジェクトに貢献するのに興味を持ちましたか?ウェブサイトのperiodbrussels.euを訪れてください。
(※)インターセクショナル:それぞれの個人は、彼らそれぞれに固有の抑圧・差別の経験をしていると認識すること。例えば、ある人は女性差別だけでなく、女性差別+人種差別、ある人は、女性差別+性別指向差別+階級差別という、異なった抑圧・差別の要素が組み合わさりオーバーラッピングしていて、それぞれが異なった経験となる
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