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自分を過大評価する夫

FROM 安永周平

先日、アダム・グラント氏の名著『GIVE & TAKE』を読んでいたら、夫婦関係(恋愛関係)についてのおもしろい研究結果が載っていました。あなたも少し考えてみてほしいのですが、夕飯をつくったり、デートの計画を立てたり、家事をしたり、ケンカした時に譲歩したり…こうしたお互いの関係を維持するためにしている全ての努力のうち、あなたが実際に担当している割合は何パーセントでしょうか?

「まぁ、控え目にいって60%くらいかな…」


仮にあなたが、60%を自分がやっていると言ったとしましょう。その数字が正しければ、あなたのパートナーは「自分の貢献度は40%だ」と答えるはずです。合計で100%になるはずですから。しかし、心理学者のマイケル・ロスとフィオーレ・シコリーが発見したところによると、カップル4組のうち3組は100%を大幅に超えるそうです。お互いに自分の貢献度を過大評価しているわけですね。

この現象は「責任のバイアス」と呼ばれており、相手の貢献よりも自分の貢献を高く見積もることをいいます。「TAKER(奪う人)」が犯しやすい間違いですが、自分自身をよく見せたいという思いが一因になっています。たとえば、「いやいや、俺は出世なんて…」と自分の名声に無関心なふうを装いながら、実際には恩着せがましい態度を取る人、あなたの周りにもいませんか?

僕らの意見は「情報量の差」で変わる


ただ、責任のバイアスが起こるもっと大きな原因は別にあります。それは、「受け取る情報量の差」です。人間は、”他人がしてくれたこと”よりも、”自分がしてあげたこと”に関する情報を多く持っています。自分がした努力は全て把握していますが、相手の努力について知っているのは「一部」に過ぎません。そのため、人は悪気がなくても、自分の貢献度を多く見積もってしまいます。

ですから、僕らは日頃から「情報量の差」に注意しておかなければいけません。相手がしてくれた貢献に注目していなければいけません。効果的なのは、自分がやったことを評価する前に、相手がしてくれたことをリスト化することです。特にリーダーの立場にある方は、自分の貢献度はいったん忘れて、先にチームのメンバーがどれくらい貢献しているかを考えましょう。これだけで、メンバーを正当に評価することができます。

リーダーは自分の評価を後回しにすべし!


繰り返しますが、ポイントは「自分の評価を後回し」にすることです。というのも、ある実験で3〜6人の作業グループをつくり、各メンバーに自分がグループのためにした仕事の割合を見積もってもらうと合計した数値が140%を超えました。しかし、自分のしたことを考える前に各メンバーがしてくれたことについて考えもらうと、合計が123%まで下がったそうです。このように、相手の仕事に関する情報量の差を埋めることで、より正当な評価ができます。

また、これは人間のタイプを見極めるのにも有効です。心理学者のマイケル・マッコールはが行った別の調査では、まず被験者に「GIVER」か「TAKER」かを判別するアンケートに記入してもらいました。その後、2人1組になって「砂漠で生き延びるために重要なアイテムは何か?」を決めてもらいました。そして、マッコールは無作為に、ペアの半分には正解と伝え、もう半分には不正解と伝えました。すると、何が起こったでしょうか?

人を動かすGIVERが必ずやっていること


勘のいいあなたは既にお気づきかと思いますが、不正解と言われたTAKERは、それをパートナーのせいにし、正解と言われたTAKERは、それを自分の手柄にしたのです。一方でGIVERは、不正解の場合は自分が責任を負い、正解の場合はパートナーの手柄にしました。

失敗の責任は自分が負い、成功の手柄は人に譲る。うまくいかない時は自分が責任を負い、うまくいっているときはすぐに他の人を褒める。これが、人を動かすことができるGIVERが心がけていることです。なかなか難しいかもしれませんが、リーダーの立場にいるならぜひとも取り組みたいところですよね。

それから、リーダーが「GIVER」であれば、先のようにメンバーの失敗を大目に見ることで、彼ら彼女らから最高のアイデアを引き出すことができます。何度失敗してもいいから、誰もが「自分も貢献できる!」と思えるような雰囲気を、チーム内につくりだすのがリーダーの役目だとも言えるでしょう。

心理的安心感がメンバーの意欲を上げる


事実、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソンの研究によれば、こうした心理的な安心感のある環境では、人は学習意欲が高まり、より新しいことにチャレンジできるようになるそうです。そして、このような環境をつくり出すことができるのが「GIVER」です。情けないことに、僕はまだまだできておりませんが…^^; 目指すべき方向性はこうありたいものですね。

PS
一方で、先のアダム・グラントはGIVE にも上手くいくケースと疲弊を招くケースがあると言っています。これは注意したいところですね…

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