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10枚の千円札、何枚もらえる?

FROM 安永周平

ちょっと想像してみてください…

あなたは今、ある実験に被験者として参加しています。あなたがテーブルにつくと、向かい側には初対面の男性が1人座っていました。彼は、実験の主催者から千円札を10枚渡されています。そして、そのお金をあなたとどんな割合で分けるか、あなたに提案するように指示されています。

一方であなたはというと、彼の提案をそのまま受け入れて、2人でお金を分けることもできます。また、提案を拒否して”2人とも1円ももらえない”ようにすることもできます。あなたは、それを決める権限を与えられています。ちなみに、実験が終わればお互いに2度と会うことはありません。さて、男性は次のように提案してきました。

男性「俺が8千円、あんたは2千円…どうだ?」


この野郎、コイツ間違いなく TAKER だな…そう思いたくなる提案ですね。そう、彼は TAKER として振る舞ってきました。そもそもお互い2度と会うことはないのですから、長期的な関係などクソくらえと言わんばかりです。目先の利益をできるだけ増やそうと、自分に非常に有利な提案を持ちかけてきました。さぁ、あなたならどうしますか?

冷静に自分の利益だけを考えれば、あなたは提案を受け入れるのが合理的でしょう。たとえもらえるのが2千円であっても、ゼロよりはマシだからです。しかし、実際に行われたこの実験では、大抵の人がこの提案を拒否しました。つまり、2人ともゼロ円の選択をしたのです。この強欲な男を罰するために、自分の取り分をゼロにしてでも、彼が8千円を手に入れるのを阻止したのです。

人は理屈ではなく感情で行動する


これは、ノーベル賞をとったプリンストン大学の心理学者、ダニエル・カーネマンによる有名な実験で「最後通牒ゲーム」と呼ばれています。この実験によれば、お金を分ける人間が80%以上を得る提案は、受け手のほとんどが拒否することが分かっています。合理的に判断するなら、自分が2千円をもらったほうが得なのに…です。やはり人間を動かすのは理屈ではなく「感情」ですね。

ただ、安心してください。世の中、そんなイヤな奴ばかりではありません(笑)。実際、この「最後通牒ゲーム」では、お金を分ける側が、極端に自分に有利な提案をすることは滅多にありませんでした。分ける人の75%以上は、公平に2等分して5千円を提案しています。もし現実に8割も奪おうとする人と出会ったら、ボブも言ってましたが、そんな人とは付き合わないのが賢明でしょう。

世の中の大多数は「公平性」を重視する


ところで、なぜ多くの人が自分の利益を捨ててまで、強欲な人間を懲らしめようとするのでしょうか? これは悪意によるものではありません。自分を利用しようとした TAKER に、仕返しをしようとしているのでもありません。これは、世の中の大多数を占める MATCHER(GIVE & TAKE のバランスを取る人) にとっての「正義」の問題なのです。

MATCHERは、自分が被害にあった場合はもちろん、TAKER が自分以外の第3者に不公平な振る舞いをした場合にも、その人を罰しようとします。最近の調査によれば、TAKERに痛い目に遭わされた人は「悪評」を共有することでTAKERを懲らしめるそうです。ネット上の掲示板に批判を書き込むのは、その典型かもしれないですね。

実際、社会学者のマシュー・ファインバーグらは「噂話は、広く行き渡る、効果的で安上がりな処罰の形態である。」と言います。評判を共有することは、他の人が TAKER に利用されるのを防ぐことにもなります。情報が広まるにつれて、TAKER は今ある関係を絶たれるだけでなく、新たな関係も築けなくなります。評判を聞いた人は、大抵はTAKERを信頼しなくなるからです。

相手からお金を奪うのが営業?


さて、世間では「営業職」というのは、どちらかと言えば嫌われる傾向にあるのが現実ではないでしょうか。極端に言えば、商品を売りつけてお金を奪う TAKER のようなイメージを持っている人も少なからずいると思います。転職を考える際に「営業はちょっと…」みたいな人も多いらしいですからね。

もちろん、このメルマガを読んでいるあなたなら、先の TAKER のような振る舞いが、営業として有るまじき行為なのは分かっているでしょう。営業とはモノを売りつけることでもなければ、相手からできるだけ多くお金を奪うことでもありません。目先の利益を考えて TAKER として振る舞う営業マンは、長期的には決して上手くいかないでしょう。

「セールスとは相手と一緒に買うことである」


ボブがよく言う言葉ですが、営業・セールスとは相手の悩みを理解し、それを解決する手助けをすることです。大前提として TAKE ではなく GIVE が先にあるはずです。当たり前のことかもしれませんが、時々、意識して思い出すようにしたいものですね。

PS
相手にGIVEして自分も勝つために、こちら参考にしてみてください。

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