見出し画像

劇場版シティーハンター 天使の涙

新宿への特別感は「シティーハンター」に培われた。

東北の田舎育ちの自分は、90年代にテレビに映し出される「都会」「東京」にそれはそれは偏った憧れを抱いていた。

一方で、学校の通学路で遠くに幻想的にそびえたつ奥羽山脈のその先。

そこへ行けばもしかしたら冒険が始まるんじゃないかとワクワクするような子供でもあったので、都会というより冒険とか物語とかそういった類のものへの憧れだったのかもしれない。


偏った、というのは都会のイメージがすべて夜だったからだ。

あの時代に寅さんにハマっていれば、下町とかそういったものに惹かれて「夜」に偏ることもなかったのだろうけど残念ながらかすりもせず。

現在進行形で田舎に住んでいた自分にとって、江戸川の風景はピンとこなかったのだ。

阿武隈川のほうが広いじゃんとか思ってた。


さて、「シティーハンター」にももちろん昼の描写は多い。

じゃあなんで憧れは夜になってしまったのか。

それはアニメのオープニングないしエンディングのアニメーションのせいだと思う。ぜったい。

なぜか夜描写が圧倒的に多くなかったですか?

あれがとても素敵かつ危ない魅力も放っていて、少年の心をガッと掴んで離さなかったのだ。

あと伏兵が「美味しんぼ」ね。DAN DAN 切ないやつ。

あれのエンディングも夜だった。これもばつぐんだったよ。場所は銀座だろうけども。

しかしこうやって、都会の、新宿の夜への憧れが醸成されていったのだ。


そんな自分だから上京してから最初に家を探したのは、やはり新宿だった。

でも結局中野に住んだ。4階からの眺めの良さに迷いなくハンコを押した。

所属した芸能事務所は池袋だった。惜しかった。

でも、仕事先は新宿だった。やったぜ。

当然、買い物や飲み場も新宿が多くなり、新宿ライフを満喫したのを覚えている。


いま、すっかり新宿は変わり、足が向かうことも少なくなった。乗り換えでたまに降りる程度だ。

でも、映画の中にはいまの新宿を映しつつも、あのころ憧れていた都会もはっきりとそこにあった。

いるわけないのに、新宿に行ったら会えるんじゃないかと思って、新宿に行きたい気持ちが沸いてきている。

映画ってそういうとこあるよね。

素敵だよね。


きっと自分は近いうちに新宿を散歩して、新宿で飲むんだろう。

街の見え方が変わって、なぜか素敵に見える。

結局、どう見てるのか、なにを見てるのか、次第で良くも悪くもなる。

だったら、この世をもっと良く見えてたほうが幸せってもんだ。


こんなことを思い出したくらい、「劇場版シティーハンター 天使の涙」は幸せな気持ちにしてくれた映画だったということです。

映画館を出たあとの街がちょっと違って見える。

だから映画は止められないのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?