【コミュラボ】第41回オフ会 鹿毛康司さんと語る 「心とコミュニティ」
第41回(オンラインでは第23回)のコミュラボオフ会。
今回は鹿毛康司さんと 「心とコミュニティ」をテーマにお話ししました。
鹿毛さんと言えばクリエイティブディレクターとしてのご活躍はもちろんですが、新著「「心」が分かるとモノが売れる」が話題です。
しかし、「人の心など、そんなに簡単にわかるわけがない。本の中ではわかるようにプロセスにわけて説明したが、それを辿るだけではわからない」とぶっちゃけられました。
今回の特徴
このように今回の鹿毛さんからのお話は(筆者の7年にわたる鹿毛さんとの日々を振り返っても)初めて伺うことばかりでした。
今回お迎えするにあたり、ご著書はもちろん、インターネット上のインタビュー記事やオンラインの配信などを相当見ましたが、どこでも語られていないことばかりでした。
鹿毛さんご自身も「普段話さないようなことをお話しした」と何度も仰ってくださいました。
また、メンバーにいたグロービスOBにも「こんな話、聞いた事ないでしょ?」と尋ねられ、みな「鹿毛さんのグロービスでは見られない顔を見せていただいた」と答えるお話、でした。
特に「会社」というコミュニティで事を成すことの難しさを、生々しくご共有くださいました。
これは「心」とコミュニティというテーマに沿って、コミュニティ内での人との関わり方を伝えてくださろうという思いの現れ、文字通り、鹿毛さんのマーケティングの定義である「お客様を喜ばそう」と思ってくださったから、と今、改めて思います。
さらにその話の過程で、この本のテーマの一つ「心のパンツを脱ぐ」を体現してくださいました。
何度も普段話さないようなことをお話しした」と仰られました。
その理由は「わからない。これからずっと考えているうちに、わかるかもしれない」とも、質疑応答で言われました。
あまりに赤裸々に語ってくださったので、特に具体的な事象の話についてご共有できることには限りがあります。
その中で、鹿毛さんの本領である「マーケティング」についてお聞かせいただいた部分を、おすそ分けします。
鹿毛康司さんのご紹介、そして、お声かけした理由
ー鹿毛康司さんとは
「お客様の心に向き合う」をテーマにマーケターとして活動中。
同時にクリエイティブディレクターとしてCM監督、プランニング、
コピー、作詞作曲を手掛ける。
雪印乳業を経て、2003年にエステー入社。
同社を日本有数のコミュニケーション力のある企業に導く。
同社執行役を経て、2020年に独立、かげこうじ事務所を設立。
代表作は消臭力CM。
11年震災直後の「ミゲルと西川貴教の消臭力CM」で一大社会現象を起こす。
早稲田大学商学部卒、ドレクセル大学MBA。現在、グロービス経営大学院 教授、エステー コミュニケーションアドバイザー、日経クロストレンド アドバイザリーボードメンバー/Ad-tech 東京ボードメンバー。
ーお声かけした理由
「実体験から体得された「心」の大切さと、その気づき方を共有いただきたいから」
「マーケティングとは『お客様に向き合い、喜びを提供すること」
…鹿毛さんは雪印乳業やエステーでの実体験や、雪印在勤中のアメリカドレクセル大学でのMBAでの学び等を通じ、ご自身の「『心』を揺さぶる何か」に徹底的に向き合ってこられました。その日々からお客様をはじめとする他の人への向き合い方、その人自身も気づいていない「心」への接し方を体得されています。
その「実体験」とそこで感じたことや気づいたことが、それこそ「心」を揺さぶるのです。ご自身の幼少期の体験、親との関わり、雪印事件でお客様のお宅に伺った時の一言、手紙に書かれた文章、エステーで東日本大震災後にCMを考えた時の鈴木喬会長やポルトガルでの出来事、ミュージカル「赤毛のアン」でお客様側に回って会話をすることでの気づき。
このような日々の過ごし方、向き合い方、そしてそこからの「心」の触れ方、感じ方、そうして得たものや、組織内での共有の仕方などをご共有いただきたいからです。
そして、この時間の直後から、コミュニティでの人との関わり方や自分自身との向き合い方が変わると確信しています。人を思い、それゆえ自分と深く向き合う、その姿勢と方法はコミュニティになっていく過程で必須、と思い、お越し願いました。
マーケティングとは何か
鹿毛さんの本領の一つ、マーケティングについて伺いました。
ご著書に「マーケティングとは『お客様に向き合い、喜びを提供すること」と書かれていました。
改めて、鹿毛さんにとってマーケティングとは?と尋ねたら、「マーケティングとはお客様に向き合い、喜びを提供すること」と答えられた後に、こう続けられました。
競合企業が数百億円のCM出稿をしているが、エステーは23億円。
エステーだからやれない、という状況でやれたらスカッとする。
そんな中で誰に頼もうかと考えた。そうだお客様に頼もう、と考えた。
お客様はストレートに言えば、助けてくれる。
お客様はサポーターだと思っている。
リスペクトしながら、接している。
この話を伺いながら、以前参加させていただいたセミナーで言及された西川貴教さんとミゲルくんのCMの展開は、このお話の通りだったな、と思い出しました。
ここでCMランキングの話などの後に、ご提供されているフジテレビの月曜21時のドラマでのCMについて話が及びました。
東日本大震災から今年で10年。西川貴教さんと取り組んで、10年。
「消臭力」のCMは商品説明はない。でも「企業の志」をお伝えしてきた。
そして、その10年の積み重ねを踏まえた今後のCMの展開、西川貴教さん、高橋愛さん、田中れいなさんとの関係などをお話しくださいました。
展開については「これで売上がどうなるかは、わからない。でも、嘘偽りない思いは伝わると思う」という一言が印象的でした。
西川さんについて、このように紹介されました。
西川貴教さんは「実行している」人だ。
単なる演者ではない。仲間だ。戦友だ。
西川さんとは100年契約。まだ10年しか終わっていない。
そしてこう続けます。
やってみないと分からない。広告は公式じゃない。いつでも怖い。
でも、やらないよりもやる、って決めた。すると、意外にできた。
西川さんと鹿毛さんは、同じものを大切にし、同じ方向に向かって生きておられる同志なのだな、だからここまでできるのだな、と思わずにいられませんでした。
さらに、こう続きます。
できないと思っても、でも、これやってみよう、と思ってやってきた。
そうしたら、糸井重里さんやセブン&アイの鈴木会長と対談するに至った。
最後に一つ言わせて、とおっしゃったこと。それは…
徹底的に準備する。
鈴木会長とのインタビュー前は著書30冊、社内報5年分を読んで臨んだ。
CMの企画の際は3,000アイディア考えることもある。
これだけやっているのだから、うまくいかないとは思ってない。
ここまでお話しされ、改めて「普段話さないようなことをお話しした」と仰られたところで、質疑応答へ入りました。
質疑応答
ー質問
鹿毛さんは、どのように自分の心と向き合っているのですか?
自分で自分の心と向き合うと、本当に今の自分の心と会話できているのか、と悩んでいる。
ー鹿毛さんの答え
それは、心のパンツを脱いでいない。
風邪ひかない程度に、脱ぐ練習を。
ー質問
「普段話さないようなこと」をお話しいただけた理由は?
場の雰囲気か?主催者との関係性か?
ー鹿毛さんの答え
わからない。今の2つは「顕在化された理由」だ。
ニューロサイエンスの専門家、辻本悟史さんによれば
人には「わかる感情」と「わからない感情」がある。
今日のことをずっと考えているうちに、その理由がわかるかもしれない。
続けてこのようにお話しされました。
ミゲルのCMを「朝思いついた」は嘘。
企業とは、理念とは、お客様とは…を10年、ずっと考えていた。
そして、気がついていないことに、ハッと気づいたのだ。
MC後記
鹿毛さんはストレートでした。
今回はそのストレートさが、会社や仕事に中でいかに発揮されてきたかを、お聞かせくださいました。
鹿毛さんはご自身が「弱い」、ということを強く認識しておられました。
ゆえに「嘘をつかない」とか「サラリーマン根性に流されない」と徹底的に律し、規範とされていました。
そして、とにかくやってこられました。
1CM作りに3,000本の企画を用意するように徹底的に準備するなどして。
ご著書にも書かれているように自分自身の心との向き合い方、その方法を踏まえたお客様の心の想像、そして、それを踏まえた行動を。
…とお話しを伺って2日たった今、こうして振り返って浮かぶことを整理しても、きっとわかっていないし、わかったなんて思っては駄目なのだ、ということこそ、鹿毛さんがおっしゃりたかったことなのかと思っています。
目の前のお客様に喜んでいただくために、ストレートに、自分の弱さに目を向けて、そして、とにかくやってみる。
難しいですが、やってみます。鹿毛さん、福岡ご出張のお忙しい中、お時間いただきありがとうございました。
今回の守隨佑果さんのグラレコです。相当考えて書いてくださいました。
【The Community Lab. #コミュラボ】 コミュラボは、コミュニティが生まれる・動く「きっかけ」の場所です。関心の度合いに応じて①ゼミ、②ラボのラボ、③チアの三層構造となっています。その活動をおすそわけします。