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研究とビジネス、「THE COACH for Business」が代表2人の架け橋に。株式会社メトセラに起きた変化とは?

2022年11月からスタートした法人向け人材育成・組織開発のサービス「THE COACH for Business」。「個人の力を、組織の力に。」をコンセプトに、個人と組織の「自ら育つ力」を耕し自律共創型組織づくりの伴走をおこなっています。

今回はそんな「THE COACH for Business」を導入いただいた株式会社メトセラの代表取締役・岩宮貴紘さんと野上健一さんにインタビューを実施しました。

2016年に「心不全の治療方法に革命を起こす」というミッションで共同代表制のもと設立されたメトセラ。岩宮さん率いる研究チームと野上さん率いるビジネスチームが、それぞれの得意領域を最大限にいかすことで成果を上げてきました。

共同代表制を上手に機能させてきたおふたりが創業7年のタイミングで「THE COACH for Business」を導入したのはなぜなのでしょうか?詳しく伺います。


部署を横断したコミュニケーションや関係性を育むために

代表取締役・野上健一さん

——まずは、どのような目的で「THE COACH for Business」を導入いただいたのか教えてください。

野上さん:メトセラは研究チームが創出した研究成果をビジネスチームが検証し事業化する流れで、製品を生み出してきました。その際に肝となるのが、共同代表である私たちふたりを含め、研究チームとビジネスチームの“部署を横断したコミュニケーション”です。

前提として、100回失敗しても1回の成功を求めつづけるのが研究者の仕事です。一方、ビジネスにおいては、効率性や品質の安定、コストなどさまざまな観点から成功を定義する必要があります。素晴らしい技術的成果であっても、本当にビジネスとして成立し得るのかシビアに検証します。ビジネスチームには、常にものごとを懐疑的に見る視点が求められるのです。

——同じ組織であっても、研究チームとビジネスチームそれぞれ必要とされる素養や働き方の姿勢に違いがあるわけですね。

野上さん:そうですね。研究から生まれたものをビジネスとして世の中に届けていくためには、互いの役割や仕事に対する姿勢の違いをよく理解し、尊重し合える関係性が重要になります。そのような信頼関係が、相手の意見を率直に受け入れる素地になりますし、意見交換の中でより良いものを生み出す文化の育成にも繋がると期待していました。
2つの部署の関係性を育むにあたって、本音でより良い対話ができるように「THE COACH」に2つを結ぶ架け橋として入ってもらったというのが導入の背景になります。

代表取締役・岩宮貴紘さん

岩宮さん:それぞれのチームに「任せるべきところは任せること」を大切にしてきた一方で、気を遣いすぎていた部分もあったと、いま振り返ると感じます。お互いにプロフェッショナルとして取り組んでいることを理解しているからこそ、お互いの管掌領域に意見、提案することを躊躇しているところがあったのではないかと思います。

理想論を押し付けないのがTHE COACHの魅力

——企業向けの研修サービスはさまざまあるなかで、THE COACHに決めた理由を教えてください。

野上さん:共同代表のスタートアップは稀であることからもわかるように、私たちは世の中で良いとされる組織像やリーダー像にとらわれ過ぎることなく、それぞれのマネジメントスタイルを見いだすべきだと考えています。

THE COACHは、理想の組織像やリーダー像を押し付けようとせず、まずは私たちが大切にしている世界観にじっくりと耳を傾けてくれました。理想論を押し付けず、私たちを型にはめようとしない姿勢がもっとも安心できた点だと感じています。

岩宮さん:コーチングの本を30冊くらい読んだことがあり、正直コーチングは押し付けがましいイメージがありました。しかし、実際に受けてみると「こんなにもアドリブで進んでいくのか!」と、不思議な体験でした。その時々の私たちの状況に合わせてさまざまな角度から問いを投げかけていただき、引き出しの多さに驚きました

疑問に思ったことは素直にぶつけ合う。共同代表2人の関係性の変化

——「THE COACH for Business」を受けてみて、ご自身やチームにどんな変化がありましたか?

岩宮さん:1on1コーチングを受けてみて、「べき論」が自分を縛っていたことに気がつきました。私は本を読むのが好きなのでその弊害かもしれませんが、「自分はこんなリーダーであらねばならない」「こんなふうに部下に接するべき」など、自分の中のいいリーダー像にとらわれすぎていたように感じます。

また、一人の研究者としての仕事へのワクワク感が薄れてきていたことも個人的な課題でした。「なぜ楽しくないんだろう」と、言葉にならない苦しさがつづいていたのです。しかし、コーチングを受けて「べき論に縛られていたから楽しくなかったのか!」と腑に落ちました。

——もやもやする気持ちの出所が明確になったんですね。

岩宮さん:その後のチームコーチングでは、1on1で得た気づきやこれまでの苦しさについて、素直に野上に伝えることができました。自分の中の「べき論」はそう簡単に手放せるものではありませんが、自覚するだけでもパフォーマンスは上がりましたし、自分がやりたいことにより集中できるようになったと思います。

野上さん:岩宮の言葉を契機に、新しい研究を進められるような体制を社内に整えました。私としても研究チームには好奇心を大切にのびのびと研究に没頭してもらいたいですし、岩宮が感情を言葉にしてくれたからこそ起こせた変化だったと思っています。

——遠慮がちになってしまったというおふたりの関係性に関しては、どんな変化がありましたか?

野上さん: 過度に気を遣うのではなく、疑問に思ったことは素直に言い合えるような仲にこれまで以上になれたと思っています。相手を批判したり、責めるつもりで言っているわけではないと、チームコーチングを通じて腹落ちしたことが、信頼関係をより強固なものへと導いてくれたのではないかと思います。

私にとって岩宮は、一緒にメトセラをやっていくうえで欠かせない存在です。だからこそ、岩宮が研究者として仕事を楽しめていない様子をみると、自己実現できていないのではないかという心配がありました。    
   
同時に、研究者として自分の世界に没頭しすぎてしまうことにも恐れを感じていました。私が研究とビジネスを直接繋ごうとしすぎてしまうと、岩宮もやりがいの感じられる研究に挑戦できなくなってしまう。そんな悪循環が起きていたのかなと思います。

——「べき論」や恐怖心など、自分を縛っていたものに気づいたんですね。

野上さん:私と岩宮の付き合いは長いものの、自分の価値観や生い立ちまで話す機会はこれまでほとんどありませんでした。言い訳するわけではないですが、同性で付き合いが長くなってくると「何をいまさら」と照れ臭さもあったと思います。

チームコーチングでお互いのことを洗いざらい話すことができたいま「相談してみてもいいかな」と思うハードルが格段に下がり、小さなモヤモヤを胸の内に秘めることが減ったように思います。

創業時の原点に立ち返り生まれたバリュー

——「THE COACH for Business」のすべてのプログラムが終了したのち、バリューを言語化したと聞きました。

野上さん:先ほど岩宮から「ワクワク感」という言葉があった通り、私たちはたとえ周囲から「無理だ」と言われることもどんどん挑戦していきたいという思いを込めて、「Let the Science  Drive(科学的に思考する)」「Start with Curiosity(ワクワクと共に仕事に取り組む)」「Believe in Infinite Possibilities(無限の可能性を信じる)」という3つバリューを立てました。これらは、創業当時から私たちが大切にしてきたことを改めて言語化したものになります。

コーチングを受けてみて、いい意味で私たちの気持ちは創業時と何も変わっていないことがよくわかりました。メトセラが挑戦していることへの愛情は変わらなくて、チームコーチングを通じてその愛情を言語化することで、私たちやチームごとの立場の違いを繋ぐ「原点」を再確認することができました。

——創業当時の気持ちに立ち返るきっかけになったのですね。
岩宮さん:言語化したバリューを浸透させるために、コーチング後に開催したオールハンズ(全社会)でも私たちの考えていることを全社員に向けて伝えました。COVID-19の影響でしばらく実施出来ていなかったため、久しぶりに全員で話す機会になりましたし、代表2人の想いを話す時間が過去一番長いオールハンズになりました。

苦しみの原因がわからない人や組織にすすめたい

——「THE COACH for Business」をどんなリーダーや組織にすすめたいですか?

野上さん: メトセラは創業時に掲げたミッションを達成しつつあり、新たなミッションに向けて走りはじめた第二創業期に入ったところです。これまでは息つぎもそこそこに、短距離走でやみくもに走り続けてきましたが、これからは長距離走を走りつづけられるチームの構築に取り組みたいと思っています。

先が長いからこそ、都度どこに向かっているのか言語化して共有し合う必要がある。それを経営者だけが悩みつづけるのは苦しいですから、THE COACHのような第三者に入ってもらうことで、考えが深まったり前進したりするきっかけになると思います。

岩宮さん:「何に悩んでいるかわからないけど、苦しさを感じている人や組織」にコーチングをすすめたいです。私自身、本来研究がすごく好きなはずなのにどこか物足りなさを感じていましたし、人から指摘を受けると感情的になりやすい状態でした。苦しいけれど、なぜ苦しいのかがずっとわからなかったのです。

でも、コーチングを受けたことで「リーダーとしてこうあらねば」という理想に縛られていたことや、怒りや悲しみの感情の裏には“研究に対する愛情”があることがわかりました。「なぜ苦しかったのか」が明確になれば、自然と改善案が湧いてくるものですし、それを行動に移していくことで、現実にも変化が起きていきます。コーチングを受けて本当に良かったなあと思っています。

——本日は貴重なお話をありがとうございました!

執筆:佐藤伶