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The ContainerがArtStickerに加わりました。 スザンヌ・ムーニー 「Out of Time and Place」展を開催中!

「Out of Time and Place」展について

「空き間は空間的な広がりを持つ。其処此処の間の地形を描いている。空き間は時間的な広がりを持つ。時に意識を向けている。私たちが今をとっては昔を、未来をとっては今をと、位置づけるように。歴史を綴ることは、現在における過去を配する行為で、それは未来への可能性を手向ける行為と相まうからだ。空き間は社会的な広がりを持つ。ダイアローグの場に互いに続く対話を明確に表現している。」
ジェーン・レンダール著『空き間』221ページより

A place between is spatial, it is a mapping of the topographies between here, there and elsewhere. A place between is temporal, it pays attention to time, to the ways in which we locate the then from the now, the now from the yet-to-come, for in our writings of history, our placing of the past in the present, we are already positioning possibilities for the future. A place between is social, it is an articulation of the place of dialogue, ongoing discussion, between one and another.
Jane Rendell, A Place Between, p.221

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 スザンヌ・ムーニーは2004年以来、旅をしている。物理的、比喩的な意味での旅で。世界を渡り、彼女なりの「空き間」を探検しながら。自然景観や人と自然との関係を重んじたロマン主義の芸術家らに感化され、独り芸術的な遍歴の旅に出た彼女は、以来、時と空間の欠如した広大な景観と自身の相関関係を見つめてきた。15年に渡り、おおかた写真か映像で記録されてきた、そんな彼女の景観との交わりは、一つの物語として蓄積されるようになった。物語の舞台は所在地も時間軸も不明だが、空間との関係性に向き合ってじっくり考えることを私たちに促すともいえる。一体、私たちは場所とどのようにコミュニケーションするのだろうか?

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 この度ザ・コンテナーの『時と空間を逸して』展では、10年以上前に撮影されたものから最近のも含む映像セレクションを展示する。どの映像においても、ムーニーのシルエットはさも繊細で巧妙な介在を経て景観の一部として表現されていて、また撮影場所も世界各地と様々だ。ほとんどの景観についてはその場所が特定できないが、カメラが些細なヒントをいくつか拾っている時もある。映像の焦点はいずれにせよ、空間としての景観と、その哲学的、私的、社会的な掛り合いに絞られているのだが。
 ロマン主義と同様、またはドイツ人ロマン派画家のカスパー・ダーヴィット・フリードリヒの「雲海の上の旅人」(1818年)に寄せてなのか、カメラはしばしば、景観の広大さを最大限に捉えられるような角度の位置に置かれている。ムーニーいわくそれは「場所が景観に転成する」地点であり、また、その地点は「鑑賞者の観点の限界と景観の境界線」によって定義されるという。日常生活を脱する手段として空間を探検することや彷徨することの「崇高さ」など、彼女のロマン主義への思い入れは、彼女の直感的なアプローチや作品に色濃く表現されている。彼女のシルエットがロマン派時代の絵画で一般的な男性シルエットの様相をならっているのも、彼女がジェンダーについて新たな見地や政治的位置づけを模索することと、自身の考え方を表現することを可能にさせている。

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 他の作品で問いかけたことへの回答も、これらの作品中に探しやすい。都市景観を探検した写真シリーズの「街中を歩いて」、池袋のサンシャイン・シティで撮られた東京の鳥瞰図、女性の身体を模索して写した古い写真など。15年間の営みを導いてきたきっかけに新たな見識を得る許可を彼女がくれているかのようだ。作品中、背面でゆっくりと静かに熟しているかのような存在だが、実際には彼女が芸術と自我について、核として理解していることを代表している。

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 どの作品もビジュアル的、コンセプト的にも「粛然」としているのを指摘することも重要だ。ジェンダー・ポリティクス、グローバル化、社会的認識といった概念はこの上なく巧緻にほのめかされ、ささやかな連想を誘うだけである。これこそムーニーの作品の真なる魅力だ。物思いにふけったディープな瞬間を彼女は選び抜き、私たちと共有してくれている。芸術家としての彼女のアイデンティティ、彼女と、彼女が探求する景観との個人的なつながりが垣間見えてくる。おとなしくて詩的な反面、壊滅的な出来事や激的な自然現象の前触れを示唆しているようでもある。ロマン主義絵画の多くの作品と同様、むら気で、感情の起伏とインパクトが高いだけに、崇高だ。

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 究極の物語行為、「ストーリー・テリング」を捉える本シリーズは、鑑賞者自身が映像内のシルエットと化し、まるでアバターのように、どこか特定の視点から空間を静かに見つめることをじわじわと誘ってくる。ムーニーの他の作品の多くのように、彼女のテクノロジーへの深い関心が意識される。とりわけ、原映像と編集映像の交錯によって織りなされるサスペンスは、現実とバーチャルとの明確な区別がないことから、恐怖感も湧いてくる。「私の作品では、自然のリズミカルで循環的なパターンに、モーフィング技術、ビデオの折り重ね、シームレスなループ再生など新たなテクノロジーの特徴が並列している」と、ムーニーはいう。

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 本展『時と空間を逸して』では、ムーニーが長い年月をかけて制作した4本の映像(最も古いのは2004年作)と今回のために作った1本の映像(2020年作)を展示している。展示物は彼女が16年に渡り、芸術家と一個人して進化してきたことを物語っている。なお、初期のものも含め、ほとんどの映像は日本で展示されたことがない。ザ・コンテナーはそんな作品を横並びに鑑賞できる貴重な機会を設けられたのである。

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The Containerについて

現代アートギャラリーのThe Container。ギャラリーの展覧空間はその名のごとく、東京中目黒のBROSSヘアサロン中に設置された、ただ単なる物流コンテナ(485 x 180 x 180 cm)です。

当ギャラリーはシャイ・オハヨンによって2011年3月に開業、監督されてきました。現代アート作品との密なふれあいを促す空間としてデザインされ、来場者が、現代的な発想と身近に接せられることを最優先に、芸術のデモクラシー化を掲げ、コンセプチュアルアートや社会運動を主題とした作品をユニークに展覧してきました。

The Containerは年に4回、コンテナ空間固有な展覧をする機会を国内外のアーティストたちに与えています。展覧期間は約2ヶ月半ほど。2013年以降は、日英対訳フルカラーの展覧会カタログが出版されてきました。カタログは、世界各国のアマゾン社サイト、ネット出版社、米国各地の学術図書館で閲覧、購入が可能です。

海外メディアからも大きく取り上げられてきました。アート・アジア・パシフィック、アート・フォーラム、ハイパーアラージック、ガラス・マガジン、アート&アンティーク・マガジン、オキュラ、ポート・マガジン、デイズド&コンフューズド、ブルーイン・アートインフォ、アート・アイティー、美術手帖、NHK、東京アートビート、ザ・ジャパンタイムズ、ザ・サンデイタイムズ、CNN、WIRED、数々の旅行ガイドや機内誌など。これらは、当ギャラリーを今まで報道してきたメディアのいくつかに過ぎません。

基本情報

Suzanne Mooney | スザンヌ・ムーニー 「Out of Time and Place」

会期

2020年7月6日〜9月7日

会場
The Container (inside Bross hair salon)

住所
東京都目黒区上目黒1-8-30
1-8-30 Kamimeguro, Meguro-ku Tokyo

開館時間
月 – 金 11:00-21:00
土日祝 10:00-20:00

Monday – Friday 11:00-21:00
Saturday – Sunday (+holidays) 10:00-20:00

休館日
火曜・第3月曜
Closed on Tuesdays & on the third Monday of each month

観覧料
無料
Free admission

URL
http://the-container.com/

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TCMは「世の中の体温をあげる」という想いをかかげ、「Soup Stock Tokyo」等を手がけてきた遠山が構想する「新たなアート体験」に、PARTYが得意とする「デジタルでの体験設計」を融合させ、アートと個人の関係をテクノロジーで変革させ、新たな価値の提示を目指しています。