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関智生・吉岡俊直「half-blind aliens 半盲のエイリアン」

HAPPENING NOW 2021.01.29 - 03.07

Gallery OUT of PLACE TOKIOでは、2021年1-3月期の展覧会として、関智生、吉岡俊直による二人展「 half-blind aliens 半盲のエイリアン 」を開催しています。
今回の展覧会タイトルとテキストは拝戸雅彦氏(愛知県美術館)によるものです。

Artist Statement

半盲のエイリアン
アートをきわめてシンプルに定義してみる。アートとは、物質的な「もの」や、物質性を欠いた「こと」を、変換・置換・変容させて、構造的にヴィジュアル化される、独立した別の「もの」や「こと」、としたい。私は、洞窟に人類が住んでいた時代から、古代、それに続く、中世、近世、近代、さらには現代であろうと、どの時代のアートにも、最初にこの図式を使って、そのヴィジュアルを分析する作業から始める。アーティストたちは何に注目して、どのような技術や素材を通して、それをヴィジュアル化してきたのか。時に、これらの置換プロセスは素早く瞬時に行われる。あるいは、非常に時間のかかる面倒なプロセスにもなる。思考が長くて、身体のアクションが一瞬の場合もあれば、思考が短くてアクションが非常に長い場合もある。いずれの場合にも、そのプロセスの選択には理由と根拠があったし、あるはず。それがいつも知りたい。

 この定義にあてはめると、関智生が見ているのは目の前の木々であり、その場所に持ち込んだ絵の具とその筆触による物質性を通して、木々という他者、あるいは客体の中での、彼自身の主観的な没入状態を見えるようにしていくのだ。個別的な木々の環境は関に影響を与えていき、それらを目と腕がフィードバックされながら、紙などに移しかえられていく身体的な作業の中で、関の主観と、木々の客体が混じり合う。言わば、関自身が木になり、木が関となる。こうして、アウトプットされた作品は極東アジアにおいて成立し展開してきた墨絵にも見える。決して自然を第三者的に観照するものではない。むしろ19世紀半ば以降の、ヨーロッパの印象派以降のアクションにも近く、太陽光線の中でチューブから直接絞り出す絵の具の素材が持つ発色を生かすそのやり方は、それ以前の時代の絵画に比べ、かなりアトリエからの開放感を伴う、身体的で快楽的なものだったと想像する。そこにモダニズム絵画の原点の一つを想定してもいいだろう。

 対照的に、吉岡俊直の技法は写真と版画を組み合わせたもの。イメージが反転して存在する、という、版画の思考は15世紀から始まるが、機械を通して現象が定着される、写真の技術が19世紀の印象派の成立と同時期であったことを意識したい。吉岡は、自ら作り上げたセットも含めた、ありふれた日常の光景を角度を変えて複数枚の写真に撮影し、PC上でそのセットや空間を再現する上で自動プログラムのプロセスをかなり強めて立体化させる。撮影された対象の表面の裏側は、機械であるカメラにとっては一旦は不可知の領域である。撮影された複数の写真が組み合わさることによって、分析されて計算されて再構成が行われ、空間の厚みが作られる。結果として、表裏がはっきりとした、厚みを備えた表皮のような曲面イメージが浮かび上がってくる。しかし、そうした表裏を持った厚みのあるイメージは断片化されていて、こうしたイメージとイメージの間にはどうしても、不可知のものとしての空隙が残り続ける。一方でイメージのアウトプットには、連続的に滑らかな表面に見える濃緑が選ばれた。

 二人のスタイルは共通して流体的だが、違いもある。関の場合は空気のようにそして光のように粒子的である。木々と一体化している関には、木と木の間は空隙ではない。粒子と粒子の間のように、つかめそうな何かが充満している。吉岡の場合はその物体は液体のようにどろどろとしていて波長的、あるいは周囲に浸透しようとする。こうして、二人が作り出す平面には不穏さが残り続ける。でも、不可知性がごまかせない。

 地球に到来したエイリアンが、困りきって闇雲に、つまりは、半盲のような状態で、世界をスキャンしていくと、こうなるのでないだろうか、と。一人は絵筆を手に、もう一人はカメラを手に。なぜこうなるのか。必死になって世界を知ろうとするからだ。知り得た世界をとりあえずはイメージに置き換えておく。でも、どこまでも不可知は残り続ける。その不可知は興味深く、欲望を掻き立てる。

 そもそも、地球上のアーティストとはこうしたエイリアンの別名ではなかったのか。美術史とはエイリアンの歴史ではないのか。

拝戸雅彦
愛知県美術館


出展作家紹介

関智生 Tomoo SEKI
1965 奈良県生まれ
1988 名古屋芸術大学美術学部卒業
1989 名古屋芸術大学美術学部研究生修了
1998 愛知県新進芸術家海外留学等補助事業研修員 (~2000)
2000 英国ノッティンガム・トレント大学Fine Artにて修士取得
(Distinction)
2003 同国セントラル・セント・マーティンス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインにてAssociated Studentを修了。

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吉岡俊直 Toshinao YOSHIOKA
1972 京都府生まれ
1995 京都市立芸術大学美術学部卒業
1997 京都市立芸術大学大学院修了
1999 名古屋造形芸術大学(現・名古屋造形大学) 美術学科 講師
2005 名古屋造形大学 総合造形コース 准教授 (現・コンテンポラリーアートコース)
2014~ 京都市立芸術大学 版画専攻 講師
2015~ 同大学 准教授

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Information

関智生・吉岡俊直「half-blind aliens 半盲のエイリアン」
会期
2021年1月29日(金)- 3月7日(日)

会場
Gallery OUT of PLACE TOKIO

住所
東京都千代田区外神田6丁目11-14 3331 Arts Chiyoda #207

開館時間
12:00 - 19:00(木 - 日曜日)

休館日
月・火・水休廊

観覧料
無料

URL
http://www.outofplace.jp/tokio/

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TCMは「世の中の体温をあげる」という想いをかかげ、「Soup Stock Tokyo」等を手がけてきた遠山が構想する「新たなアート体験」に、PARTYが得意とする「デジタルでの体験設計」を融合させ、アートと個人の関係をテクノロジーで変革させ、新たな価値の提示を目指しています。