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第1回 オープンキャンパス【中島デコ×岡本よりたか】レポート

オンライン上の農学校The CAMPusでは、実際に教授陣と顔を合わせることができるプロジェクトを2つ企画しています。ひとつは教授陣のところへ訪れる「実地研修」、そしてもうひとつは都心で農家さんのお話を聞く「オープンキャンパス」。
今回、記念すべき第一回目の開催となった7月 9日(月)のオープンキャンパスをナビゲーターのやなぎさわまどかがレポートします。

場所は都内、Yahoo!Japanオフィス内にあるLODGEというスペースに、約70人もの方が参加してくださいました。
いつも記事の公開を楽しみにしているというThe CAMPusの生徒さんだけでなく、まだこれから入学するという方も多数お越しくださっていました。

ファシリテーターは”いもっちゃん”こと井本校長。参加者それぞれがお隣の方とお話しするアイスブレイクの時間を持ってから、いよいよトークイベントがスタートしました。

「今だからこそ伝えるべきことがある」

今回のトークテーマは「Switch (スイッチ)」。農業や農的暮らしにスイッチしたきっかけ、背景、その後の変容などをゲスト教授のおふたりにうかがいます。

ゲスト教授は、大きな被害を出した「平成30年7月西日本豪雨」のなか岐阜県からいらしてくださった岡本よりたか教授と、千葉県いすみ市からお越しくださった中島デコ教授、そしてスペシャルゲストとして末息子のミントさんもご一緒です。デコさんが暮らすブラウンズフィールドもこの二日前に起きた大きな地震の震源地にほど近く、おふたりとも天災を乗り越えたお話からはじまりました。

特に、被災地域における交通規制をかいくぐりながら9時間(!)運転して上京くださった岡本教授からはこんな言葉が。

「こんな時だからこそ東京で伝えるべきだと思った」

東京という日本の中心から、たくさんの人に伝えたいことがある、とおっしゃる岡本教授。それは、地震、豪雨、台風など、近年脅威ともいえる自然の側面を感じることが続いていますが、こんなときだからこそ「自然を知るということが大切」ということでした。

「今回、被害の大きかったところは、人の手が入っているところです。例えば山でも、自然の広葉樹が茂っているままにしておけば保水力と張り巡らされた根っこで簡単には崩れにくいはずですが、人為的に自然を変え、針葉樹に変えてしまったところは残念ながら崩れやすいんです」

岐阜県の郡上に移住された現在も、日本各地で12箇所の畑を監督しているという岡本教授は、全国各地の田畑を見ている実績からそう語ります。

「自然はなぜこうなっているのか、なぜこの草がここに多いのか、そうやって自然の仕組みを観察して知っていくことが、人間と自然を生かすために大切なことなんです」

ちなみに、岡本教授が関わってらっしゃる田畑はどこも豪雨の影響を受けずに無事とのことでした。

自然の”中”へ、入り込む暮らし

続いてトークは、お二人が現在の農的ライフスタイルに入られたときのお話へ。

19年前にブラウンズフィールドをはじめた中島デコ教授。そのきっかけは「子育て」にあったそうです。
すでにマクロビオティックの知識を持ち、食材選びに一定基準を持ってはいたものの、5人のお子さんたちにお腹いっぱいオーガニックの野菜を食べてもらう大変さと、都会生活にも疑問を感じ、ご縁ができた千葉県いすみ市、現在のブラウンズフィールドへ移住。
それでも当初は「家庭菜園くらいで、小松菜くらい好きに作って食べられたらいいなくらいに思ってた」そうです。

「でも休耕田があるよって紹介されたら、お米も作ってみたい!と思えてきちゃって。素人ながらの見よう見真似ではあるけど、でもお米作りを教えてくれる親切な地元のおじいちゃんたちに教わりながら始めて、それ以来毎年なんとか順調に続いています」

気づけば田畑も増え、手伝いに来たり、遊びに来たりしてくれる人も増えていき、今ではいすみ市への移住者もすごく増えてきたそう。

今でも農を”業”にすることはほとんどなく、基本的には自家消費、そして味噌や酵素ジュースを作る原材料、さらにはブラウンズフィード内にあるカフェのフードメニューに材料として消費されるブラウンズフィールドの農産物。

井本校長から「お金とか全然いらないでしょ?」と聞かれると「それはそれなりに必要よ(笑)」と笑いながらも、とても共感できる本音を教えてくれました。

「でもお金の感じ方は確かに変わったと思います。ブラウンズフィールドにいる間は、何かをひとつひとつ現金で買う必要は確かにほとんどないので、そこに到達できたことは本当によかった。畑にある野菜や庭の野草、あと自家製の調味料があれば、お金を使わずに生きていけます。たまに東京に来ると、なんだかしょっちゅうお財布出してるなぁって思っちゃう(笑)」

なんどもブラウンズフィールドにお邪魔している井本校長も、都心との感覚のギャップをいつも体感しているんだとか。都会に溢れる自然とは真逆な物事の数々、対して、自然の中で過ごすことによる”自然と共に生きるという感覚”を覚えると話していました。

自ら育てた野菜を食べて、体も健康に

農家になる前の岡本教授は、東京でテレビ業界・IT業界において多忙を極め、その結果、心と体のバランスを壊してしまい「逃げるように東京を離れた」そう。
ご縁のあった山梨県北杜市に移り、畑を借り、ご自身の食に向き合い始めました。

野菜作りは1年目から成功。ご自身で作った野菜を食べ、自然の中の暮らしによって健康も戻ってきました。
しかしその後、野菜たちは年々あまりうまく育たなくなってしまったそうです。

「僕が始める前に入れられていた肥料分(残肥)がたくさんあっただけだと気づきました。年々それがなくなり、野菜がうまくできなくなってしまい、お金もなくなってきた頃、お金よりも種がたくさんある方が安心できると実感したんです。」

農業の具体的なノウハウよりも、自然の仕組みを学ぼうと思い立った岡本教授は、植物理論や土壌微生物学などを独自に研究し始めた末、それぞれの分野はものすごくよく研究されているのに、どれも農業に活かされてないと気づきます。

その学びを畑に活かすようになったことで、「それでも最初の4年くらいは農業で食べていくことは難しかった」そうですが、「いつかできる」と思えていたし、実際、副業で続けていたIT関連のお仕事もやめるようになります。

すでに食べ物が人の体を作っていることを身をもって実感した岡本教授は、食べ物を作ることをゴールにせず人の体を作るものと意識します。
野菜を無駄なく食べれるように加工(六次産業化)し、みんなが食べるところまでサポートも意識したそうです。

「でも、ぶっちゃけ食べていくのは大変だったのでは?」とグイッと入りこむ井本校長の質問に、「CSA」という農業の事業形態を教えてくれました。

CSAとは「コミュニティ・サポーティッド・アグリカルチャー」の略で、欧米ではメジャーとなっている農業のスタイル。会員から前払いとして会費を預かり、農作物をリターンする。もし不作・豊作などの波があったとしても各地域を支援することが重要な目的であり、持続可能な農業を支える仕組みといえます。日本でも「地域支援型農業」と呼ばれ、徐々に増えてきているようです。

「例えば50人のお客様から5万円をお預かりしたら250万円。田舎なら十分に暮らすことができるんです」という岡本教授の言葉に、なんだか希望が持てるような明るい気持ちになりました。

それぞれにあった”農的"がある

なにか農的なことを始めたいと思った人へのアドバイスを聞かれた岡本教授は、「まずは土に触れたらいい」と言います。
ご自身も体と心のバランスを崩された際、土に触れることで大きな変革があったとか。
「きっとバクテリアを求めてたんでしょうね(笑)」という土への絶対的な信頼はさすがです。

ベランダのプランターでも十分。まずは土に種をおろすこと。野菜を育て、また種を取ること。
「タネから始めてタネで終わりにすることを経験したら、野菜が生きているんだ、これがいのちなんだと実感できるはず」

街からほんの1時間半ほど離れれば、まだまだ豊かな地域が身近に溢れている日本。
経済感覚や健康意識など、自らの価値観も少し変えてみると、それまでとは違って見えてくる環境も。
「農的」とは、人それぞれのやり方やスタイルがあり、そこには”正解”はないのです。
それは常に”正解”に向かうプロセスにあり、そしてそれこそが暮らしを楽しむ、ということなのかもしれません。

いまでこそ移住者が増え、オーガニック傾向が高いエリアになった千葉いすみ市も、他の地域と同様に高年齢化は進んでいるそうです。
「70代が若手と言われてしまうのも事実で、だからこそうちみたいに若い子たちが集まって田畑をやってるブラウンズフィールドに、なにか希望のようなものも感じてくれてるみたい」とデコさんが話すように、それぞれが暮らす地域とコミュニケーションを図りながら、日々の暮らしを楽しんで過ごす。
これが農的の定義かもしれないと感じました。

これからも続くオープンキャンパス

井本校長の軽快なトークに加え、参加者からの質問も多数寄せられるなど、会場は終始インタラクティブな場となった今回のオープンキャンパス。

また先着30名様にはブラウンズフィールド特製ジェノベーゼソースのプレゼントもあり、最後まで盛り上がりました。

普段はオンライン上でもあることから、やはり実際に出会うと教授がより身近な存在に感じられますね。
次回のオープンキャンパスは8月 13日(月)。ゲスト教授は、神奈川県の藤野・津久井エリアから仲吉 京子教授と、田中 英之教授をお迎えして賑やかに開催します。ぜひご参加ください!
https://thecampus.jp/opencampus/view/5

(お越しくださった教授とナビゲーターの皆さんで記念撮影)

また、オープンキャンパスよりもさらに深く、教授たちを訪ねる「実地研修」も受付中です。

・時間の流れを変える!森の中で新しい農ライフを発見する研修(2018年8月4日~8月5日)
https://thecampus.jp/ojts/view/10

・細胞が喜ぶThe CAMPus的農ライフ体験【日帰り】(2018年7月28日)
https://thecampus.jp/ojts/view/12

・細胞が喜ぶThe CAMPus的農ライフ体験【宿泊】(2018年8月25〜26日)
https://thecampus.jp/ojts/view/13

たくさんのご参加、お待ちしています。

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