Angels in America (HBOのほう)

トニー・クシュナーの20世紀アメリカを代表する戯曲ですね。彼の『HOME BODY/KABUL』とかの拠点であるNew York Theater Workshop(NYTW)で始まった芝居かと思ったら、大間違いでした。いまのNew York Public Theater のディレクターOskar EustisがSan Franciscoの Eureka Theater Companyのドラマターグで、クシュナーにこの作品の元になる作品を委嘱し、それがこの作品のワークショップ上演(1990年のLAのMark Taper Forum)につながるのですね。なんでEureka Theater Companyというのにいったことがないのか?と思ったら、途中で名前も変わり、いまはそこもなくなっていたのですね。

LAのMark Taper Forum は、1988年に『Nothing Sacred』(ツルゲーネフの「父と子」を元)という芝居をみに行ったことがあります。演劇の場所とも思えない扇型の大きな客席数をもつところだった記憶が。貸館かな?と思ったくらいです。いや、このこと思い出すの30年以上ぶりなのであやしいといえばあやしい記憶だけど。『Nothing Sacred』は、主演のTom Hulceはすごく上手(だって映画「アマデウス」のモーツァルト)でしたが、装置もあったかなかったか、芝居もあまりピンとこなかった覚えが。当時アメリカの舞台は、お金をかけていないものがB'WAYでも多くて、マドンナが出たマメットの『SPEED THE PLOW』も舞台美術で覚えているのは机と椅子だけ。秘書の設定かな?だから、いいといえばいいけど。商業演劇のプロデューサーの心掛けがよくわかったものです。マドンナから役者が変わった後でも机と椅子だけ。

話がそれました。Angels in America まだHBO版は見終わっていないのですが、もともとの戯曲もここまでのヒット作になると思って書いてないんじゃないかな?だってここまでsurrealで哲学的な作品がこんなに長い間リクリエーションされるってほとんどないから。普通は創作物でsurrealといっても、"いきなり床から何かが出てきてまた戻ったり"しないもの。でもね、HBO版がいいのは、映像だからこれが脳に影響が出ている患者の幻影だということがよくわかるし、幻影というものは本人にはこのようにはっきりみえているんだということがよくわかるように、そこを丁寧に真面目に作っているというとこですね。ジョーの奥さんを演じるMary Louise Parker が素晴らしい。当時たしかNYで彼女はメチャいけてるカルト的な人気のある女優だったと記憶しています。

この作品は、「ある時期のNYやアメリカの雰囲気」x「個人の物語」x「アメリカの政治の歴史」x「世界を揺るがせたエイズという病」を<哲学的なテーマ=人の死後の世界、他人との愛情、親との愛情、アメリカ社会というものの病>みたいなものを縦軸横軸として厚みのあるタペストリーに織り上げた作品といえるんじゃないですかね。芝居は日本初演を見ています。麻実れいさんのエンジェルをよく覚えています。私は「ユダヤ文化とか宗教がキーテーマ」に来るこの物語は、日本では、頭ではわかっても実感を持って通じる可能性が低いから企画としてはよい企画とは思わなかった覚えがあります。また続きを見ましたら。

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