劇場版「ポールプリンセス」を観ました。
この7月、韓国の某シネマコンプレックスからはオタク趣味のアニメ映画が次々と公開されていて、まさにアニメ映画が熱い時期です。夏だけに。
先週は劇場用再編集版 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』が上映を始め、今週の7月3日にこの記事で語る『劇場版 ポールプリンセス!!』が公開されました。そして来週の7月11日からは劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』も上映開始となる予定です。最後に7月31日にはなんと『映画プリキュアオールスターズF』の上映も控えています。
当たり前ですが韓国の映画館で上映されるアニメ映画は限られています。ディズニーとか、ドリームワークスとか、ジブリとか、世界的に認められてる制作会社の作品、またはガンダムとか名探偵コナンなどの大きいコンテンツ、もしくは今はオタク関係なく普通の映画扱いまでされている新海誠の作品などの、言わば「売れて当たり前な映画」だけを観れる訳です。残念ながら私の趣味が向けられてる「その他」オタク向けアニメ映画は、ほぼ公開される事なく、されるとしても大抵がBDの発売後になるため、映画館で上映する頃には既に自分の中の熱が冷めてしまう場合が多く、だからわざわざ映画館まで行きませんでした。そこ点ポールプリンセスは昨年11月の映画ですけど一応BD発売よりは早く見られるだけで貴重なアニメ映画ですね。
ポールプリンセスを持ってきたくれたDongwoo A&Eは、タツノコプロと一緒に「プリティーシリーズ」のアニメを制作した会社で、今も「ひみつのアイプリ」の制作に関わっています。おそらくその縁で持ってきたくれたのではないかと。プリティーシリーズとポールプリンセスは繋がる所があると思いますし、それ以外考えられる理由がないんですよね。でも私はプリティーシリーズを見てないし、ポールプリンセスも名前しか知らない状態でしたので、普段だったら映画館まで行く事はなかった筈ですが、最近は映画館でアニメを観る楽しさを知ってしまい、公開初日から早速見に行きました。やっぱりせっかく観るなら初日ですよね。何故なら初日以後は一番いいスクリーンから外されてしまうからです。同じお金を払ってちっちゃいスクリーンで見るのはとても損をする気分。それに去年日本で公開された時にネタバレされる事もなかったので、本当の初日気分を味いたい気持ちもありました。下調べ何もせず映画館へ!といったところですね。
ですが、いざ席に座り映画が始まって早々、前回までのあらすじ!みたいなナレーションが始まったわけです。これはしくじったかも……になったりもしましたが、主人公である星北ヒナノのナレーションで本編のお話をちゃんと説明してくれたので、無事ポールプリンセスの世界に入り込んみました。
ポールプリンセスのあらすじを簡単に説明しますと、主人公の星北ヒナノは、お祖母さんのプラネタリウムを盛り上げる為、幼馴染の西条リリア、新しく仲間になった東坂ミオ、南曜スバルと一緒にプラネタリウムでポールダンス公演を開き、無事成功させました。ネットではちょいバズったりするくらいに。ってのがyoutubeで公開された本編のあらすじで、新しい目標として全国大会に出場するのが劇場版のお話です。
全国大会、それはスポコン作品なら絶対とも言える王道のお話です。主人公達が地区予選を潜り抜け全国王者の前に立ちはだかる……もちろんポールプリンセスにも全国王者となるライバルキャラ達、御子白ユカリ、紫藤サナ、蒼唯ノアが登場しカメラが向けられます。3人のチーム「エルダンジュ」は前回優勝のシードを持って全国大会直行となりますが、主人公達は先ず地区大会を突破しなくてはなりません。その地区大会の説明をしてくれた瞬間、私は最初の疑問を抱いてしました。
それは謎の地区分け……疑問すぎて逆に記憶がぼやっとしてて少し違うかもですが、地区分けが本当に謎だったんです。先ずは関東、そして関西、東北と北海道が一緒で、山陽山陰と四国が一つ、最後に九州。おかしいと思うのは私だけでしょうか?これだったら人口面で関東と関西は地獄の地区で九州は楽々なんですよ。別の作品の話になりますが、咲-Saki-のインターハイでは基本それぞれの都道府県が一つの地区となります。その中でも人口が特に多い東京と大阪、北海道などは東西か南北二つの地区に分けられて、地区わけされてない埼玉と兵庫は作中でも激戦区と呼ばれてるくらい、ちゃんと納得いく設定になってるんですが、それに比べたらもうポールプリンセスの関東地区は地獄すぎる……もちろん地区別に出場できるチームの数が違うかもですけど、それだったらもっと細かく分けても良いんじゃないかな……東北と北海道は広すぎなんですよね。もちろんこんなのどうでもいいってのはわかってます。でも気になってしまったのは仕方ない。厄介オタクですので。
本当にどうでもいい言い掛かりはこれくらいにして、作品の話をしましょ!
この映画は60分ですが、本当に時間が足りませんでした!もっと時間があったなら!と言う気持ちの連続。上で述べたようにポールプリンセスはみんな大好き王道のお話です。お話に問題があったとかはありません。ただ、見てる間ずっと時間内に収められる分だけのシーンを残し繋いだ感覚だったのが本当に残念でしかありませんでした。60分、その短い時間で大会に向けて頑張る4人を、全国レベルを前にして少しぎくぎくする仲間達を、全国王者であるライバル達の強さと魅力も見せて、クライマックスの全国大会では各自の最善を尽くし、大会前に見せた各自の限界と壁を越える……それを全部やりこなすのはとても無理がありました。咲は1試合を1年も連載したのに、それで足りるわけありません。でも分かりますよ。予算が……お金が……でも一つの作品として出された以上それで納得するのは違うと思う自分もいます。
でもアニメ映画の価値は他にもあります。ポールプリンセスは素晴らしいポールダンス公演を観るアニメ!肝心の全国大会、素晴らしいポールダンス公演6連続!これだけ良ければなんだっていい!そう考えなくもないんですよ。私もそうなれたならよかったんですけどね。私の場合、公演二番目になる蒼唯ノアのソローでちょっとしくじってしまいました。その発端は効果音です。日本舞踊を嗜んだ蒼唯ノアは自分のポールダンスにもその要素を取り入れてて、小道具として刀を使ったりしたんですが、その刀を振るたびに使われた効果音がどうしても……ダサくて……私は……正気では見ていられませんでした。
公演中、刀に炎を纏うなどの演出に使われた音が特に凄く、それがダサいと感じた瞬間、演出の全てがダサく見え始め、目が赤になったりオッドアイになったりすると、もうダメでした。こういうアニメ映画を見てる時、ダサいなどの感覚を覚えると、すべての感覚と感情が現実に戻らされて、もう終わりなんです。オタクとしてオタクのノリで観るものなのに。しかも6公演のうち2個目、オタクノりが抜けたら終わってしまった可能性のあるタイミングだったのも悪くて何もかも悪かったんです。せっかく早見沙織さんの歌が使われた良い映像を見てたのに。その後はどうにか頑張って調子を取り戻したんですけど、正直その後も効果音だけは良くなかったので……効果音が見栄える演出の所は全体的によくありませんでした。
ではひどい事を散々言ってしまったので、この映画で一番よかったと思うシーンに付いても語りたいですね。私が一番良かった思うのが主人公の星北ヒナノのポールダンスで使われた演出です。ちょっと説明しますとポールに捕まって回転する技をしてた時、彼女はエルダンジュの御子白ユカリを見かけます。二人は幼い頃少し縁があり、ヒナノに取ってユカリはトラウマのスイッチみたいな存在で、そんなユカリが自分の公演を見ている事に気付いた瞬間、ヒナノはトラウマでまた体が固まろうとします。舞台の上には自分一人、誰もいないのを実感して絶望していたその時、ヒナノの視点はどんどん移動して、彼女とは反対側にいた友達の姿が目に入ります。それはポールに捕まって回っていたからです。ポールを握り回転してるヒナノの視点の動きと一緒に、仲間達とユカリの姿が切り替わって、ヒナノは幼い頃のトラウマを乗り越え、公演を最後までやり遂げます。ちゃんとポールを使った演出から、この作品がポールダンスである必要があったと証明してくれたような気がして、とてもよかったんですよ。作品の意義と言っても過言ではなく、この作品は考えられて作られたなと思えました。
そこで良かった!と思って全て完結したならよかったんですけどね!捻くれ人間の私は映画が終わり根本的な疑問を抱いてしまった訳です。それは作品の根に触る疑問、果たしてポールダンスはアニメを活かせる素材なのでしょうか?
私はアニメが普通の映画に対して優位にある要素として、まずカメラの動きに縛られない点を挙げたいんです。どんな映像だって画面に映せるのは実物であるカメラのレンズに写る景色だけです。カメラは質量を持ったもので自由自在に動かす事が出来ない為、必ずその動きには限界が生じます。それに比べアニメのカメラワークに限界はありません。どんな激しい動きでも可能にさせて、物理的に無理な動きも自然と作れちゃいます。なのにポールプリンセスは、ポールダンスをテーマにしてる以上、縦長のポールに縛られてしまいます。演者が舞台の中心に立ったポールから離れられないように。自由自在な動きが取れるのに、ポールと言う縛りを設定してるのと同様で、それはアニメの優位性をある程度犠牲にするしかありません。
それともう一つ、私はポールダンスについてよく知らないし、なんならちゃんとした映像では今回初めてポールダンスを見させていただきました。故にこの技は何がすごいとか説明してくれないと見ても全然わかりません。いや、解説してくれても多分わからないと思います。けど、ポールダンスを知らないのは私だけじゃない筈です。恐らくポールプリンセスの観客層は寧ろそれが普通で、ポールダンスは初めて観るって方が断然多いと思うんです。で、そんな私みたいな素人がポールダンスを見てすごいと思うのは何故でしょ?それは「生身の人間が、掴める所一切無いすべすべのポールに捕まって、理解できない動きをする」所だと思うんです。ですが残念ながらもその感覚は、アニメになってる事でだいぶ薄れてしまいました。もちろん、モーションキャプチャーで作られた映像な訳で、本質的にすごいのは変わってないけど、あくまで理性で理解してるだけで、アニメになってる以上それと同じくらいの敬畏は生まれて来なかったんです。グラフィックや絵で出来てるキャラが空を飛んだって、何一つ不思議な事ではありませんから。
結局、私はこの映画を通じて、「ポールプリンセス」というコンテンツそのものに疑問を抱いてしまいました。こんな厳しい文章を書いてしまった事に申し訳ない気持ちまで生まれてますが、本音をありのまま表現しました。映画館に行った事を後悔するくらいのダメな映画だったなら寧ろ気軽だったかも知れません。この記事を書きながら気楽ではないのは次もっとすごいアニメを作って欲しいからだと思います。
期待しています、ポールプリンセス。
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