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英雄か、詐欺師か、「英雄の証明」16日(土)公開

上映中の「TITANE チタン」は、昨年のカンヌ国際映画祭の最高賞、パルムドールですが、それと最後まで競ったのが、16日から公開するグランプリの「英雄の証明」です。「TITANE チタン」は、そのぶっ飛びさが半端ではないので、審査員達もぶっ飛んでしまったのは当然と言えますが、「英雄の証明」は、正統派のグランプリと言えます。

 監督が「別離」と「セールスマン」でアカデミー賞外国語映画賞(今回から「ドライブマイカー」が受賞した国際長編映画賞に名前が変更になりました)を二度も受賞したイランのアスガー・ファルハディなので、今回も見事というしかないでしょう。

 イランの古都シラーズ。借金の罪で服役しているラヒムが刑務所の休暇制度で2日間だけ仮釈放されます。その間に彼は、大金を借りた義兄との和解を考えていますが、恋人が偶然拾った金貨をそれに充てようと思うも、やましさから落とし主を探して返そうとします。それが刑務所の幹部に知れて、マスコミに取材され、その善行で一躍英雄視されることになりますが、SNSで「金貨の一件は作り話ではないか」との噂が広がり、今度は詐欺師呼ばわりされるようになります。

 偶然が偶然を呼び、自分では何ともしがたい状況に陥っていく姿は、ネット社会の怖さを知らしめます。「私は人間を善と悪に分けたことはありません。」というファルハディ監督は「SNSは良い側面もあるが、一番悪いのは、大きな問題を短い文章で伝えねばならず、誤解を招きやすいこと。小さな問題を2時間かけて説明する映画とは正反対なんです」と語っています。

 二転三転するサスペンスフルな脚本、人間の善悪を情感豊かに描く見事な演出、翻弄されていく運命を、スクリーンでどうぞご覧ください。

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