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ドラマ相棒が教えてくれる真実に向き合う大切さ

ドラマ相棒を小学生から見ている筆者は、真実に向き合う大切さを相棒から教わった。


杉下右京その人物像

どのような状況でも正しさを疑わず、真実を明らかにする姿勢を一貫する。それが杉下右京だ。相手が民間人でも大物政治家でもヤクザでも関係ない。彼は相手を一人間として見る。罪を犯したものは等しくその罪を受け入れて償わなければならない。そう考えているのだ。

その姿勢は時に冷たく無慈悲なように捉えられる。長く時間をともにする相棒にさえ、そう思わせる場面がある。

それでも彼が真実を明らかにする姿勢を突き通すことで、救われる人もいる。具体的なエピソードを見てみよう。

ついていない女と密やかな連続殺人

ついていない女

右京によって救われた月本幸子の話をしよう。彼女は復讐のために殺人という手段を選んだ。

暴力団の大物である向島を復讐のために銃撃した月本幸子は、海外へ逃亡するため空港へ車を飛ばす。途中、車が故障して困っているところへ、右京と薫が通りがかる。

細かいことが気になる右京は幸子の服装や言動に疑いを持ち、空港へ向かうバスに幸子とともに乗り込む。並行して薫は幸子の身元を割り出し、向島が倒れている場所を探す。バスの中で幸子は自分の今までの人生がとてもついていなかったことを語る。そして、これからは別の人生を歩むのだと。

右京は返す。

自分自身を否定することほど、悲しいことはありません。すべてを変えてやり直すことなど、本当にできるとお思いですか。あなたは月本幸子以外の、何者でもないのですよ。
どんなに不本意な人生であっても、逃げ出さずに立ち向かうことでしか、本当の幸せを手に入れることはできません。

相棒 season4 第19話「ついてない女」

最後に薫が息絶え絶えの向島を発見し、右京が幸子を逮捕する。向島は発見が早かったため一命を取り留めた。逃亡先の香港でパスポートを偽造していた協力者は別件で逮捕される。幸子の罪状は殺人未遂となり、日本で右京に捕まったこと自体が”ついていた”のだ。

この話の後にも月本幸子は登場する。「ついている女」と「つきすぎている女」だ。そして花の里という小料理屋の女将を任されることになる。彼女は自分にとって不都合な真実、つまり向島を殺そうとしたこと、に向き合うことで自らを救ったのである。名前のように幸せを手に入れた。

もしも向島を殺そうとしたことや、過去の自分の不幸を引きずっていたら、彼女が進む道は違っていただろう。

密やかな連続殺人

一方で、右京や薫が出会う犯罪者の中には、真実に向き合わない、向き合えない人間もいる。「密やかな連続殺人」という話に登場する村木もその一人だ。むしろ月本幸子が特別だったとも言える。

この話では、被害者が身につけていたピアスのうち片方だけが持ち去られる、という特徴のある殺人事件が連続して起きる。右京と薫は、事件が発生した場所が全国に点在していたこと等から、予備校講師をしている村木に疑いを持つ。講義のために全国へ出張するからだ。家宅捜索によって被害者のピアスが発見され、村木への疑いが確実となる。自分が捕まることを悟った彼はマンションの屋上から飛び降りて自殺してしまう。

真実に向き合うこと

最後はその人次第

村木の例は真実へ向き合う覚悟を持てなかった人間の行動として最も悲しいものだ。幸子の場合とは対照的で、そこに村木の弱さを感じる。右京と薫にできることは、真実を明らかにすることまでだ。

最後はその人が持つ覚悟や勇気にかかっている。

真実に対する解釈

右京と薫は刑事という職業柄、隠されている真実を明らかにする。ここで言う真実は人の手によって隠されている、という前提がある。逆に言えば「真実という実体」は初めから隠されているわけではない。真実は元々明らかなのだ。誰の目にも見える。もちろん自分の目にも。

しかし、真実には不都合さも含まれている。幸子にとっても村木にとっても、自分の犯罪が真実の中に含まれている。犯罪は2人にとって不都合なことだ。露見すれば刑務所へ行くことになる。

だから不都合な部分だけを隠したり切り取ったりして、虚実とする。虚実は自分にとって都合が良い。好きなように設定できる。虚実の中で生きれば、恐怖も悲しみも恥ずかしさもない。

右京はそれを否定する。虚実の中で生きていても前には進めない。永遠に嘘の中に囚われてしまう。不都合で、向き合うことが怖く、辛く苦しい場合でも、真実に向き合わないと、人は未来に行けない。だから右京は真実を白日の元へ晒そうとする。

これから行動するために必要なこと

誰もがドラマ相棒の登場人物のように犯罪をするわけではない。一方で虚実を頼りに生きる瞬間もある。学校や職場で上手く行かないとき、人は自分へ言い訳する。恥ずかしさを避けるために嘘をついたり、本当は一生懸命に熱く取り組んでいることを、そうではないと否定する。

真実とは前提条件だ

間違った問いに正しく答えても意味がない。同じように虚実の中を生きて夢を掴んでも、それは嘘でしかない。努力するなら真実を土台にする。その上にしか本当に大切なものは築けない。崖の上に豪邸を作ってもすぐに倒壊する。

一時の苦しさや恥ずかしさを乗り越えて真実に向き合えば、そこから先は嘘をつき続けるよりもずっと楽だ。

不都合なことや見たくないことを隠すのではなく、それを見つめた上で行動する

自分にとって不都合なことを発見したら、積極的に観察したい。それが真実なのだから仕方ない。いつか向き合うことなら、自分から迎えに行く。自分の車に故障が見つかったら修理に出すだろう。それと同じだ。

自分が苦しいと感じているのなら、その苦しさを明らかにする。故障しているのに運転を続ければ事故になる。そうなる前に直せば良い。そうなる前に、向き合えば良い。

あなたにとっての杉下右京と亀山薫は誰か?

残念ながら、右京も薫も事件で忙しい。

自分が隠している真実を明らかにしてくれる人がいるとは限らない。自分が嘘をついて真実を隠していたら、きっと自分は気づいている。自分の心の声に耳を傾ける時間さえあれば良い。そこに、右京と薫が教えてくれた真実に向き合う大切さがある。

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