アルアル或る中国人(勤務5日目)其ノ11
ハローワークからの紹介で中国人転売ヤーの会社で働き始めた私。
会社には川石さんと言う人がいる。
川石さんはいつも青い作業着で出勤してくる。
時間は18時から21時半で週5日勤務らしい。
私はブランドバッグをメルカリやヤフオクに出品しているが川石さんは時計を出品している。
私の隣に座るのだが、机の間隔が近いので圧迫感がある。
無音で無言。
無言で無音。
出勤時と退勤時に「おつかれさまです。」と2回言うだけの関係である。
ある日の帰り、駅まで歩いて帰る途中でコインパーキングから1台の軽自動車が出てきた。
川石さんだ。
川石さんは窓から顔を出し、
「乗っていきます?」
と私に言った。
正直仕事から解放されて1人になりたかったのだが、せっかくなので駅まで乗せてもらうことにした。
しかし、川石さんはなぜか私の家まで送ってくれると言う。
当然、申し訳ないので大丈夫です。と言うのだが、全然大丈夫だよと言って聞かない。
あまり拒否するのも悪いと思ったので家の近くまで送ってもらうことにした。
私の家は職場までそんなに近いわけではない。
自宅から最寄り駅まで徒歩10分。電車の乗車時間が15分。駅を降りてから職場まで10分。
なんだかんだで通勤は片道40分位だ。
川石さんは普段工場でCADを使って仕事をしているらしい。
いつも作業着が汚れていないわけだ。
転売経験があるらしく、今まで本や中国から仕入れたヒスイ石を売っていたらしい。
儲かっているかどうかは聞かなかった。Wワークしている時点で勝手に察した。
特に話すことがなかった私は、
「CAD使えるなんてすごいですねー!」
とばかり言っていた気がする。
近所のコンビニまで来た所でここでいいですと言った。家まで送るよと言われたが大丈夫ですと言って下ろしてもらった。
方向が違うのにわざわざ送ってくれたのは川石さんも私と同じで無言で無音の空間が辛かったから人間関係を良くしたいと思っていたのだろうか。
明るい人ではないが無口な人ではないことがわかった。
-----つづく-----
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