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ジャクソンひとり

 久々に小説を読みました。「ジャクソンひとり」

 黒人ミックスの男たちが集まって「鮮烈なる逆襲劇」を繰り広げる。とか、フランスで映画化が決まってる。とか、言うところだけ読んで。てっきりタランティーノ的なアクション活劇を想像してしまいました。

 じゃなきゃ、コワモテが続々集結する、梁山泊的な内容って言いますか。

 しかし、考えてみるとそういう想像自体が、ひょっとして偏見に満ちた想像なのかもしれません。
 内容は全然違いました。

 この作者の人(安堂ホセさん)は、直近の芥川賞の候補らしいです。今週あたり発表みたいなんですけど。その人のデビュー作にして「文藝賞」の受賞作がこの小説だそうです。

 そんなわけで、エンタメな内容というわけでは全然ありませんでした。いや、やろうと思えばエンタメ的な展開にできたと思うけど、そうなってませんでした。

 ま~とにかく、文章が読みにくい(笑)

 初見では「え?」って思うような文章です。言ってることはわかるけど、意味が分からない。なんかこう、日本語として文法がなってないっていうか。話し言葉だと、往々にして主語とか動詞が省略される場合があるじゃないですか。
 もう小説全体がそんな感じ。

 もっとも、読んでいくうちに、だんだんと言ってることがわかるようになってきました。
 たとえば、地方の訛りの強い人が話すのを、ず~~~っと聞いて行くうちに慣れてきてだんだんわかるようになってくる。ってそんな感じです。

 そうこうしてるうちに、ある種の心地よいテンポに入ってきて、ちょっとしたグルーブ感が出てくるっていうか。

 なるほど。ここらへんが、「文藝賞」なのかなあ?とか思いました。

 内容は、アフリカ系日本人が日常に出会う、すべての生きづらさにうんざりしながら、どうやりすごしていくかっていうような話でした。
 確かに、私も日常でアフリカ系の人を見かけることは滅多にありませんから、日本の「マイノリティに極端に冷たい」って慣習の中で、こういう人たちがひんぱんに理不尽な目に遭う。とかは簡単に想像できます。なるほどね。

 で。黒人ミックスの人たちを「見慣れない」せいで、周りの一般人たちが、「黒い人たち」の見分けがほとんどできないっていう(笑)

 そんなわけで、リベンジ・ポルノ的な動画をばらまかれて、4,5人のアフリカミックスの人が、周りの人たちにその動画の本人と間違われる。

 いや、いくらなんでも、毎日見てる人の見分けぐらいつくでしょ!とかは思いますが。
 そうして。例えるなら、「二人のロッテ」みたいな話を4,5人でする。みたいな展開になっていきます。

 お話とすると面白いような面白くないような?フランス映画っぽいと言えばそういうような?アメリカ映画にすると、もっとなんだかガチガチにポリコレ映画か、エンタメ映画になってしまいそうな?
 
 なんだか、そんなお話です。

 いや、思い込みで「面白いお話」を期待してしまったせいで、ちょっとした肩透かしです。かといって、ポリコレを主張する小説でもないんで。
 う~ん。面白くないこともないけど、この小説の面白さは、単純に面白いとかではないのかな?
 短い小説だから、もう一回読んでみますかね?

 そういえば。以前に勤めていた会社でアフリカ系の日本人の人がいたんですけど、その人が海外から来た人のアテンドに行ったときに
「日本人じゃないじゃないか!」
とか言われて、ものすごく「偽物」を疑われた話をしてたのを思い出しました。
 ずいぶんと陽気で人懐っこい人だったけど、もしかして本当は大変だったのかな?とか思い出したりしました。
 

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