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tari textile BOOK 後編

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丹波布専修生時代(2018年4月~2020年3月)の作品をもとに開催する、1人企画展。 作品解説と綿の物語が合わさった、ちょっと不思議な企画展です。
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#じんき

tari textile BOOK 後編 #11「素材にふれる丹波布」第4話

第4話  タリは押し入れからおもむろに謎の弓を取り出した。 「ついにこれを使うときが来たか」  この弓は、種を除いた後の綿の繊維を、ふわふわにほぐすための道具だ。柄の部分は竹製で、弦は弾力性の高い樹脂のような素材。床の上に綿の繊維を片手で掴めるくらい置き、弦を綿に当て、びーんびーんとはじく。「綿打ち」という作業だ。 「ところでわたねくん、もう今は種から分離した繊維の状態だけど、変わらずそこにいるんだね?」タリは弦をはじきながら尋ねた。 「うん、繊維もぼくの一部だか