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ドラゴンランス 女王竜の暗き翼 プレイレポート 02

D&Dのシナリオ・「ドラゴンランス 女王竜の暗き翼」をプレイしたので、その備忘録的記録です。

 このエントリにはシナリオ「赤い手は滅びのしるし」のネタバレが含まれます。
 ノークレーム・ノーリターンでお願いします。
 あと、記憶で書いてるので割と適当です。
 セリフとか。

←前の話


◆00:冒険者たち

 かつて「イスピンの団」で少年期を過ごした彼らは、仲間のイェレナ・カンサルディの提案で団を離れ、それぞれ三年間の修行期間の末、再会の誓いを果たすため、懐かしいヴォグラー村に戻ってきたが……。

ソラムニアの騎士ユリウス(人間:男性:パラディン ソラムニアの騎士)
 ソラムニアの貴族。代々ソラムニア騎士の家系で、本人も将来を嘱望される優秀な少年だった。
 ヴォグラー村の砦の太守であるベクリン卿の伝手で、彼の友人であるイスピンに預けられて、見聞を広め剣の腕を磨いた。
 イスピンの団では厳格なソラムニアと異なり、温かい家族のような繋がりを得ることができ、また、後に彼の運命に深く関わる少女とも出会い、これは彼の人生に大きな財産になったことだろう。
 三年の間に、ベクリン卿、ダルストン卿の推薦を受けて冠爵士団の叙勲を受けた。
 しかし、その後再会の誓いのためにヴォグラー村に向かう途中、パラダインの招請を受けるが、その恐るべき運命から逃げ出してしまい、加護を失ってしまう……。

ハーフエルフのソフィ・ブーケ(ハーフエルフ:女性:ウォーロック 犯罪者)
 イスピンの団で女房役を努めていたハーフエルフ。
 親の顔も知らず、捨てられていた捨て子。エルフの血を悪用し、犯罪者に身をやつしていたところ、若きイスピンと出会い、以後彼と行動をともにする。
 世慣れた犯罪者としての顔を持ち、愛想良く振る舞いながらもなかなか人を信用しない警戒心がある。
 イスピンが次々拾ってくる子どもたちの母親役としての顔も持ち、イスピン引退後は酒場を経営していた。
 再会の誓いを果たすためヴォグラー村に向かう途中、パラダインの招請を受け、加護を授かる。
 しかし、加護は受けたものの、使命についてパラダインが語ることはなかった。

蛮族戦士ゴラン(ヒューマン:男性:ファイター 浮浪児)
 アンサロン大陸各地を旅していたころのイスピンの団に拾われた浮浪児の少年。
 9歳のころに大人とトラブルを起こし殺されそうになったところを、イスピンらに救われ、その向こう見ずさを気に入ったイスピンが剣の稽古などをつけていた。
 向こう見ずさは大人になっても変わらず、イスピン引退後は腕を頼りに各地を転戦していた。
 再会の誓いを果たすためヴォグラー村に戻っていたが、その途中、村のそばで奇妙な怪物に襲われる。この怪物は何者だろうか……?
 幼い頃から面倒を見てくれていたソフィには頭が上がらない。

エルフのイセル(エルフ:女性:ウィザード 上位魔法の塔の魔道士)
 シルヴァネスティ・エルフ。シルヴァネスティの慎重で硬直した魔法の学習よりも、人間の魔法使いのペースで魔法を学んだほうがより大きな力を得られるのではと考え、シルヴァネスティを出奔したエルフの魔法使い。
 しかし、あまりにもエルフ社会の常識が通用しない人間の世界に戸惑っていたところ、イスピンと知り合う。
 ひどい人見知りで、また、エルフと人間の体感時間の違いから、うまくコミュニケーションを取ることができないが、なぜかイスピンとは屈託なく話すことができ、彼との親交を大切にしていた。
 先日ついに上位魔法の塔に入門し、その試練の後、師匠筋であるデメリン師とともに、夜空から「暗黒の女王座」と「雄々しき戦士座」が消えていることに気付いた。
 三年後のカワセミ祭りに合わせて、ヴォグラー村を訪れる。

◆00-2:冒険者を取り巻く人物

 主にイスピンの団ゆかりの人物

イェレナ・カンサルディ(人間:女性)
 イスピンの団に拾われた孤児の少女。
 剣の腕はそれほどでもないが、頭がよく、薬草や物語についてよく記憶していて、ほら話の好きなイスピンや団のみんなにお話をすることを好んでいた。
 気の優しい少女で、そばかすと緑の瞳の笑顔を持っている。彼女を悪く言う人物はいない。
 自分が剣の腕で劣っていることを自覚していて、また、戦乱のアンサロン大陸を生き抜くだけの力に欠けていることもわかっていたためか、イスピンの引退に伴って、一度分かれて修行の度に出ることを提案したが……三年後、再会の誓いの時、彼女の姿はなかった。

緑の盾のイスピン(人間:男性)
 冒険集団イスピンの団を率いていた戦士。
 気風の良い人好きのする男で、ほら話をするのも聞くのも大好き。
 屈託のない笑顔で、どんな相手とも友だちになれる一方で、悪を許さない正義感も持ち合わせていた。
 若い頃の放蕩と無茶がたたったか病を得てうまく体が動かなくなり、親友であるソラムニア騎士ベクリン卿が太守を務めるところのヴォグラー村に家を購入し、終の棲家としてめでたく冒険生活を引退した。
 三年後の再会を楽しみにしていたが、その目前で病で亡くなった。

ソラムニア騎士 ベクリン卿(人間:男性)
 ヴォグラー村のソーンウォール城塞の太守を務めるソラムニアの騎士。
 若い頃にはイスピンとともに冒険生活を送っていたこともある親友。
 イスピンと出会った頃は厳格で高潔な性格がよくイスピンとも衝突したが、彼との付き合いを経て、高潔な性格はそのままに、ユーモアを解し他人の考えが必ずしもソラムニアの典範に合致するものではないことを理解する柔軟性を獲得した。
 その経験をもって、少年ユリウスにイスピンの団で修行することを勧め、紹介する。
 病を得たイスピンに、自分の目の届くところであるヴォグラー村に引退することを勧めた。

棍棒カジェル(ドワーフ:男性)
 イスピンの冒険仲間であるドワーフ。勇猛果敢な典型的ドワーフ戦士で、大きな棍棒をトレードマークにしている。
 引退するイスピンを「お前がドワーフだったらもっと一緒に戦えたのに」と残念がっていた。
 イスピンの団の一部を傭兵団として自分の「鉄壁連隊」に迎え入れ、その後もアンサロン大陸各地で転戦した。

◆00-3:ヴォグラー村の人々

 最初の冒険の舞台となるヴォグラー村の人々

レイヴン村長(人間:女性)
 ヴォグラー村の村長。
 若くして村長の職務を受け継ぎ、日々苦労しながら村人たちのために働いている。

ソラムニア貴族 バカリス卿(人間:男性)
 ヴォグラー村の名士。
 わがままで高圧的なソラムニア貴族で、本国の屋敷を侵略者に焼き払われたため、財産とともにこのヴォグラー村に引っ越してきた、と言っている。
 息子である小バカリスとともに村でも悪評さくさくではあるが、彼の財産はヴォグラー村にせよソーンウォール城塞にせよ欠かせぬものではある。

小バカリス(人間:男性)
 バカリス卿の息子。
 貴公子然とした風貌だが、性格は高慢で暴力的。ソラムニア本国で貴族の子弟同士の決闘騒ぎを起こし、そこで刃物を持ち出して相手を殺してしまったため、親ともどもヴォグラー村に落ち延びてきた。
 三年前のカワセミ祭りで刃物を持ち出すなど、短慮なところを見せていた。
 イェレナに淡い思いを抱いており、ユリウスを目の敵にしている。

エベリン司祭(人間:男性)
 二年前からヴォグラー村に住んでいるシーク教の司祭。
 真面目な人格者で、村人からも慕われている。

ダレット(人間:男性)
 ダレット・ハイウォーター。
 今時珍しいことにソラムニア騎士に憧れる少年。ベクリン卿に頼み込んで弟子としてもらっている。
 真面目で素直な性格で、周囲からの評判もいい、将来有望な若者。

大発明家サン(ティンカーノーム:男性)
 ソラムニア騎士ベクリン卿の友人で、ソーンウォール城塞で新兵器などを発明している。

副官グラゴニス(ハーフ・オーガ:男性)
 カジェルの率いる「鉄壁連隊」の副官。
 大柄で力自慢のハーフ・オーガで、出自にもかかわらず受け入れてくれた鉄壁連隊に感謝している。
 陽気な巨漢。

副官ジェイエヴ(人間:男性)
 カジェルの率いる「鉄壁連隊」の副官。
 典型的な傭兵で、にぎやかな街よりも野営地にいる方を好む。
 一匹狼なきらいがあり、カジェルからは信頼されつつも、次世代を任せるには、と、心配されている。

◆01:再会の誓い

 ヴォグラー村に戻った冒険者たちを迎えたのは、ヴォグラー村を守るソーンウォール城塞の太守、ベクリン卿だった。
 彼はゴランが発見したソラムニア騎士の死体を検分のため城塞に送る。

DM「ベクリン卿は詳しい話も聞きたいし、夜に『真鍮の蟹』亭で会おう、と申し出る。「ちょうどいい……と言いたくはないが、明日の朝、イスピンの葬儀を執り行い、そのままカワセミ祭りに入る予定になっている。今夜はゆっくり過ごしてくれ」と、ベクリン卿は言うね」
ゴラン「ゆっくりかー」
DM「君たちはこの村のどこで夜を明かしてもいい。この村で君たちから金を取ろうとする村人はいないよ。ベクリン卿のソーンウォール城塞で寝てもいいし、真鍮の蟹亭に宿をとってもいい。イスピンの遺体は、彼の庵である『エメラルド庵』に安置されていて、そこで夜を明かしてもいい」
ソフィ「確かに、イスピンの顔は見ておきたいかも」
ユリウス「僕はベクリン卿の手伝いがしたいから、ソーンウォール城塞で泊まろうかな。でも、先にイスピンさんに会いたいな」
DM「OK。どっちみち、夜に真鍮の蟹亭で落ち合うっていう話だから、寝床を決めるのはその後でいい。ベクリン卿は「村を回ってみるといい」と言って、一旦立ち去る」

 冒険者たちは、懐かしいヴォグラー村を散策するのだった。

◆02:ヴォグラー案内

場所はカード化して、どこに行けるかを明確にしてます。NPCもカードになってます。

 イスピンの庵であるエメラルド庵に、冒険者たちは格別の思い出があるわけではない。
 そこは三年前にイスピンが引退したときに村人が建ててくれた建物で、この落成とほぼ同時に、冒険者たちはそれぞれの度に出たからだ。
 しかし、緑色を印象的に使ったその建物は、在りし日のイスピンの人柄を偲ばせた。
 正面の大扉に鍵はなく、かんぬきもかかるようにはなっていない。
 入ってすぐは宴会場のような客間になっていて、通りすがりの村人や話し好きな近所のおばさん、訪れた旅人は自由にここを訪れ、イスピンとの会話を楽しんだのだろう。

ソフィ「イスピンらしい、と、懐かしんで中に入るね」

 部屋の中、一番大きな客間には、手作りの祭壇が設えられている。
 香が焚きしめられていて、祭壇にはきれいな服を着たイスピンの遺体が横たわっていた。
 その祭壇の前で鎖に繋いだ香炉を回しながら朗々と鎮魂の経を唱えている人物が、読経を止めて、冒険者達に振り向いた。

ソフィ「誰? 知ってる人?」
DM「いや、知らない人。彼は「ご焼香ですか? どうぞ、言葉をかけてください」と言って一歩下がる」
ユリウス「失礼、あなたは?」
DM「彼は「申し遅れました」と言って、名乗る。彼はエベリン司祭。二年前からこのヴォグラー村に住んでいる、シーク教の司祭で、イスピンとも友人だったらしい」
ゴラン「シーク教?」
DM「大変動の後、去ってしまった神や、それに変わる新しい神を探そう、というのを教義にしている宗教だよ。忘れられたいにしえの神々に変わって、人々の心の支えになっている」
ユリウス「お坊様でしたか。僕は、イスピンさんの……弟子? 弟子なのかな? まぁ、教えを受けた者で……」
DM(エベリン司祭)「ではあなた達が、イスピンさんの育てた大英雄」
ソフィ「……何を言っていたんだろう」
ゴラン「大英雄と言われて悪い気はしないな!」
DM「エベリン司祭は、そういうことなら、ぜひ、と、道を譲る。「私は薬師として、イスピンさんの最期を看取りもしました。あなたがたに会うのを楽しみにしていましたよ。会わせてあげることができず……力不足、申し訳ございません」
ユリウス「いや、そんな……」
DM「「我らはいまだ神を見出しておりません。神のまことの癒やしならば、あるいは……」と、エベリン司祭は首を振る。「彼の魂が安らかに、いずこかにいる神のもとにゆかれることを祈ります。そして我らが、その神々とともに彼を再び見出すことができることを」

 イスピンの死に顔は穏やかだった。
 少なくとも苦しいことなどなく、いくばくかの心残りはありつつも、安らかな眠りについたと言えるだろう。
 いくつもの冒険を乗り越えた放浪の戦士の死に様としては、大往生と言ってもいい。

ユリウス「なんか実感しちゃうな……こうなると。イスピンさんはもういないのか」
ソフィ「相談したいことがあったんだけど……と、パラダインの招請のことを思い出す」
ユリウス「ソフィさんも? 実は僕も……」
ソフィ「いや、これは誰にも言わない。ましてシーク教の司祭に話すと面倒なことになりそうだし……。イスピンなら、何かいい案を出すか、さもなければ少なくとも笑ってくれたろうに」

 エベリン司祭は明日の葬儀も取り仕切るので、今夜は香を絶やさぬよう寝ずの番をするらしい。
 冒険者たちは彼をねぎらうと、一旦村の散策に戻り、村の広場にやってきた。
 村の通りには、建物と建物の間に渡された紐に色とりどりの旗がかかっており、カワセミ祭りに向けて浮かれた様子が感じられた。
 村の人々のほか、近隣からの観光客も訪れているようで、桟橋近くの市場や酒場も賑わっている。
 広場では、何やら人だかりができていた。

「しんちょうに! しんちょうに扱ってくださいよ! これこそが明日のカワセミ祭りの目玉! 最も偉大で大きな出し物なんですからね!」
 きんきん声が、木でできた装置を組み立てている中から聞こえる。
 大柄なハーフオーガの男が、声の指示に従って太い角材を右に渡したり左に渡したりして、他の男たちもそれを手伝っている様子。
 
DM「広場では、一人のノームが、ハーフオーガの男や人間の少年のほか数人の傭兵風の連中に指示して、投石機のような装置を組み立てている」
ソフィ「知り合い?」
DM「あー。一人はティンカー・ノームの発明家で、名前はサン。もちろん名前はもっともっと長いけど、少なくともベクリン卿はサンとだけ呼んでいる。彼はベクリン卿の名目上は部下で、ソーンウォール城塞で兵器などを発明して過ごしている。三年前からいたから、知ってるよ」
ゴラン「傭兵風のは?」
DM「ハーフオーガは、君たちも知ってる、ドワーフのカジェル率いる鉄壁連隊の副官の一人で、名前はグラゴニス。サンに指示されて一生懸命働いている少年は知らない顔だね」
ゴラン「知り合いなら声をかけよう」
DM「グラゴニスは君たちを見るとぱっと顔を輝かせる。「おぉ! 久しぶりだなぁ! 随分強そうになったじゃないか」と、嬉しそう」
ソフィ「あんたもね。それは?」
DM「問われると、グラゴニスを押しのけて大発明家サンは胸を張るね。「これですか? これは「大発明家サンの仰角45度方向にノームを投射する全く革命的な迅速移動装置」という機械で……」
ソフィ「なんて?」
DM(大発明家サン)「ですから、「大発明家サンの仰角45度方向にノームを投射する全く革命的な迅速移動装置」という機械です。もうけっこう山ではノーム投げ機と言われていますが、わたくし大発明家サンのはそれに更に改良を加えたすばらしい機械なのです。見てくださいここ。ここのクギを斜めに差し込むことでですね、全く新しいオリジナリティを獲得しておりまして……あれ? 久しぶりですね?」
ユリウス「うん。相変わらずだね」
DM(大発明家サン)「この機械の新しいところはその積載量ですうまくすれば馬くらいは飛ばせてしまうのです。そのパワーをどこで生み出しているかと言うとですねこのバネ仕掛けの部分をもうけっこう山では重たい鉄を使っていたのですがわたくしはここに輸入品の竹を使うことで軽さと高い靭性を与えることに成功したわけでして……」
ソフィ「うん……長くなりそう?」
DM「放っておくならね。でもその話が終わる前に、ノーム投げ機の組み立てをしていた少年が、おずおずと声をかけてくる。グラゴニスやサンと知り合いなら……という感じで、「あのぅ……みなさんは、イスピンさんの団を三年前に旅立ったっていう……英雄ですか?」
ゴラン「そうだ!」
ソフィ「英雄ってのはどこ情報かわからないけど、多分そうよ。あんたは?」
DM「彼は喜んで、それからかかとを鳴らす敬礼をして言う。「僕は、ダレット・ハイウォーターです。騎士ベクリン卿に師事する騎士見習いです!」
ユリウス「ええ?! ベクリン卿の弟子?」
DM「彼はそう名乗っているね。サンやグラゴニスが否定する様子もないから、多分そうなのだろう。でも、ユリウスがソラムニアの騎士になるべく修行しようとしたときは、ベクリン卿は「自分も未熟なのに弟子など取れない」と言って師にはなってくれず、ユリウスはイスピンの団に預けられることになった」
ユリウス「ひどい。僕は弟子にしてくれなかったのに。僕の何が悪かったんだ。くそぅ」
ソフィ「まぁ、気分が変わったんでしょう。あのオッサンも」
DM「ダレットはわくわくした目で君たちに聞く。「やっぱり! それじゃあ……トロール10体相手に大立ち回りをして山を砕いて勝ったっていう方々なんですね! すごいなぁ!」」
ゴラン「なに?」
ソフィ「待って、それ誰に聞いたの?」
DM(ダレット)「イスピンさんです。よくあなた方の武勇伝を語ってくれていました!」
ソフィ「あー……。あいつの言うことは、話半分……いや、十分の一くらいで聞いて」
ユリウス「いくらなんでもトロール10体は無理だよ!」
DM「ダレットはびっくりするけど、素直にうなずく。「なるほどです。きっと僕を楽しませてくれようとしたんですね。十分の一くらいと言うと……それじゃあ、イスタル鮮血海で大鯰に飲まれたけど古代の財宝と一緒に脱出したっていう話は……本当なんですね?」」

 荒唐無稽な冒険話の否定で盛り上がっているところで、冒険者達に声をかける青年があった。

DM「後ろから「おい。帰ってきてたのか。なら父上にも挨拶をするのがスジなんじゃあないか?」という声が聞こえる。振り返ると、少し成長した小バカリスが、いらいらと立っているね」
ゴラン「あのお祭りにヒカリモンだしてきたガキか。元気そうだなぁ」
DM「小バカリスはユリウスを睨むと、「三年経ったのに相変わらずのアホ面だな」と憎まれ口を叩く。(きょろきょろするしぐさ)「今どきソラムニア騎士になんてなって、お先真っ暗じゃないか」(きょろきょろするしぐさ)」
ユリウス「こいつ……」
ソフィ「イェレナならいないわよ」
DM「彼はびっくりするね。「なんだ。なんでだ。何かあったのか。まさか死んだのか?」と食って掛かる」
ソフィ「いや、手紙が来ていて。仕事で来れないらしいわ」
DM(小バカリス)「そんなバカな。それじゃあ一体俺はなんのために腕を磨いて……。いや、オホン。そんな手紙一通で誓いを保護にする女じゃないだろう。何かあったんじゃないのか?」
ユリウス「それは……。パラダインの招請のときのことを考えて不安になる」
ソフィ「子供じゃないんだから」
DM(小バカリス)「薄情なやつだなぁ! そうだ。祭りが終わったら父上に頼んで本国から郎党を呼んでもらって探そう。それがいい。きっと困った事態になっているに違いない。いや、村にたむろしている傭兵どもを使うのもいいな。父上に出資してもらえばいい。こんな薄汚い間の子のでかぶつなんて戦うしか取り柄がないんだから無駄飯を食わすよりも働かせればいいんだ」
ソフィ「うえ」
DM(小バカリス)「俺はなんのために剣の腕を鍛えてきたのやら……カワセミ祭りを楽しみにしていたのに……。ユリウス、お前、もちろん出るんだろう」
ユリウス「ええ?」
DM「うんざりしている様子を見て取ったのか、間の子呼ばわりされたハーフオーガのグラゴニスが小バカリスに「威勢がいいな。カワセミ祭りのイスタル軍の大将は俺の予定だぜ」と凶暴な笑顔を向ける。「親父からも本気でやれって言われてるからな。ビビって逃げるんじゃねぇぞ」と言うと、小バカリスは思わず後退りする。「お前なんて目じゃないんだ。俺は……いいや、ユリウス、逃げるなよ。三年前のようにはいかないぞ」と言って踵を返すね」
ユリウス「僕も出ることになってるのかなぁ」
ソフィ「まぁ、出ないと収まらないでしょ」
ユリウス「でもベクリン卿がなんて言うか」
DM「グラゴニスはユリウスにも笑って見せるね。「ソラムニアの騎士様を堂々と殴れるなんて楽しみだ。手加減はしないぜ」と乗り気だ」
ユリウス「ひえぇ」

◆03:祭りの前夜

 それから冒険者達は懐かしいヴォグラー村をあちこち歩き、そして日が暮れた頃、ヴォグラー村の宿屋「真鍮のカニ亭」を訪れた。

ユリウス「ベクリン卿が来る前に……ちょっとパラダインの夢について話したいな」
ソフィ「何?」
ユリウス「実はこれこれこういう夢を見て、イェレナについて、さっきはああ言ったけど、やっぱり心配なんだ」
DM「これこれこう、は、全部話すの? 逃げたことも?」
ユリウス「あ! ええと、少し伏せる」
DM「どう伏せて話す? どこまで話す?」
ユリウス「ええと……聖印はもらったんだっけ?」
DM「もらってない。代わりに手の火傷跡が、聖印として機能する」
ユリウス「ど、どうしよっかな……」

 騎士ユリウスは、夢で見たことを語った。
 パラダインと思しきなにかの声を聞いたこと。
 そして試練と言われ、燃える炎の息を吐くドラゴンに襲われるイェレナを見たこと。
 そのイェレナは「誰か助けを呼んできて」と言い、ユリウスはそれに従ったこと。

ユリウス「そんな感じで、恐れて逃げたことはぼかして話す」
ソフィ「ふぅん。嘘は見抜ける?」
DM「〈看破〉と〈はったり〉でいいんじゃない?」
ユリウス「(判定して)すごくうまく嘘をついた。こんなときばっかり……」
ソフィ「看破が高いから見抜けたけど、今は何も言わない。突っ込むと自分の話もしなきゃならなそうだから。でもなんだかおかしいな……と思っておく」
DM「いいじゃんドラゴンランスギスギスポイントでインスピレーションをあげるよ」
ソフィ「やなポイントだな」
DM「パーティ内で隙あらばギスギスするのドラゴンランスの味だよね」

 冒険者たちが話していると、人並みをかき分けるようにしてベクリン卿とカジェルがやってくる。
 二人の古強者は冒険者たちを見つけると顔をほころばせて片手を上げた。
 カジェルは彼らを(特に戦士のゴランを)一人ずつしゃがませてから抱きしめ、再会を喜んだ。

DM「二人は君たちのテーブルにつくと、おかみのヤルメに酒と料理を注文して、それから「滅入る話は先に済ませてしまおう」と言って、昼間にゴランが持ち込んだソラムニアの騎士の死体の話をする。改めて、その時の状況を聞きたいそうだ。カジェルもいるしね」
ゴラン「俺は嘘をつかないからそのまま見たままを話すぞ。見たこともない怪物が居て、そいつにやられたんだ。そいつは殺すとただ死ぬんじゃなく、石になっちまった」
DM「二人は顔を見合わせる。「東の方で戦の気配があると聞いてはいたが……」と言っている。君たちも三年の間にいくつか噂を聞いたことがあるね。戦の噂表っていうのがあるから、これをロールしてみて」

 ベクリン卿とカジェル、そして冒険者たちは、三年の間に見聞きしたアンサロン大陸の現況を報告し合った。
 その多くは不吉なもので、東方でいくさの気配がするものだった。
 大変動で消えた神は戻らず、新しい神は見つからない。
 クリンの現況は、決して明るいものではなかった。

ゴラン「タマン・ブスクの将軍たちが軍を養っているって聞いた」
ユリウス「ドラゴンに似た飛行クリーチャーを訓練してる傭兵団がいるって聞いた」
ソフィ「ケンダー郷が戦乱に巻き込まれて避難したケンダーがあちこちに現れて面倒をおこしているって」
イセル「上位魔法の塔の魔道士が東方の戦乱について嘘の噂を広めている。人々を不安にさせようとしている……これ本当?」
DM「さぁ。三年旅してた時に、そういう事を話してる人がいた、というだけだから本当かどうかはわからないね」
イセル「私も上位魔法の塔のすべてを知ってるわけではないし……」
ソフィ「でもやりかねないと思ってるよ。上位魔法の魔道士どもでしょ。それを言ったらあんただって連中の仲間だ。どれだけ信用できるか……」
イセル「しかし、暗黒の女王座と、それを追った雄々しき戦士座が消えたことは事実。戦乱はともかく何かが起きていることは間違いない」
ユリウス「パラダイン……」
ゴラン「ケンダー郷は?」
ソフィ「あいつらはまぁ……どうでもいいかな……」
DM「カジェルは、旅人が外套を羽織ったリザードマンの略奪者に襲われたっていう話を出す」
ゴラン「そいつはきっとリザードマンなんかじゃない。俺が見た怪物だ」
DM「カジェルは「これは東方の話だったんだが」と言うと、ベクリン卿は「ひょっとするとこの近くまで進出してきたのかもしれない」と腕組みをする。もともとベクリン卿は東の方での戦乱の噂を警戒して、カワセミ祭りにかこつけてカジェルを彼の率いる鉄壁連隊ごと呼びつけて、タダで防衛戦力にしつつ村人を訓練してもらおうと考えていたんだ」
ソフィ「なるほど。明日の模擬戦は実質演習なのか」
DM「カジェルとベクリン卿は顔を見合わせて頷いて、別のテーブルで飲んでたカジェルの副官であるところのジェイエヴを呼びつける」

 歴戦のドワーフは声をひそめると、副官のジェイエヴに命令した。
「野営地から手勢を率いて斥候に出て、周囲を探索しろ。村人を不安にしないよう、ひそかに」
 命令されたジェイエヴはニヤリと笑って答える。
「アイ・サー。もともと祭りは性に合わなかったんです。そういうのはグラゴニスに任せますよ」
 彼はジョッキに残った酒を飲み干すと、勘定をカジェルに押し付けて、影のように立ち去った。
「さて」
 ジェイエヴを見送ったベクリン卿は、気分を変えるように追加のビールを注文し、冒険者たちに向き直った。
「気の滅入るいくさの話はこのくらいにしよう。明日の段取りと、それから君たちの三年間の冒険について聞きたいな」

DM「二人は君たちの話を楽しそうに聞いている。特に、ユリウスの叙勲については「君を推薦した私も鼻が高い」と祝福するね」
ユリウス「あ! そうだ。あのダレットとか言う少年はあなたの弟子とか」
ソフィ「あんた、ユリウスのときには私は弟子を取らんとか言って格好つけてイスピンに押し付けたくせに」
DM「ベクリン卿は照れくさそうに笑う。「君たちが旅立った後の、私の境遇を考えてみてくれ。イスピンに、毎日のように君たちという自慢話を聞かされるんだ。その……彼が羨ましくなってしまってね」」
ユリウス「納得いかない。僕になにか落ち度でもあったんですか」
DM(ベクリン卿)「そんなことはない。私は、君をイスピンに託した自分の判断を誇りに思っている」
ソフィ「気にすることはないよ、ユリウス。このじいさん、面倒くさくてイスピンにおしつけてただけなんだから……」
ゴラン「連れてくればよかったのに」
DM(ベクリン卿)「ダレットを? いや、もう消灯時間だから、今は眠っているはずだ」
ユリウス「ええー……。そういう真面目なところが僕にはなかったのかな……。ゴランに誘われて夜ふかししたり抜け出したりしてたのが悪かったのか……」
ゴラン「きっと「一緒に木に登ってタバコふかそうぜ」とかやってたんだ」
DM(ベクリン卿)「彼は今どき珍しい、ソラムニアの騎士なんかに憧れている少年だ。平民の出身だから騎士にはなれないだろうが……。冒険譚に憧れる少年で、君たちの話を聞きたがっていた。明日会ったら話してやってほしい。そう、明日といえば……」

 ベクリン卿は羊皮紙の束を取り出し、テーブルに置いた。
「これは、明日のカワセミ祭りの模擬戦についての計画書だ」
 筆跡は、懐かしいイスピンのものだった。
 その文字はところどころかすれて、よれていて、病床で苦心してしたためたものだろうが、その端々には楽しそうに計画するイスピンの姿が忍ばれた。
 立派に戻ってきたであろう冒険者たちを配役して活躍させるべく準備した様子がうかがえる。
 曰く、イェレナはちょっと自信がないところが悪いところだから、自分の盾を持たせて主役のソラムニアの騎士役にして、ユリウスと戦わせよう。そうすればユリウスも彼女に話すきっかけになるだろう。問題はユリウスがうまく花を持たせるような三味線がひけるかどうかだ……。
 曰く、ソフィは死ぬ役がいい。毎年面白おかしい死に方を演出してきたが、今年はできなさそうだから、その役は彼女に変わってもらおう。きっと名演技を見せるに違いない……。
 曰く、イセルの魔法も強力になっているだろうから、派手な幻術や花火で演出してもらおう。変装魔法で怪物担ってもらうのも面白い。きっと豊富な知識で、村人の見たこともないような物を出して驚かせてくれるに違いない……。

ゴラン「俺は?」
DM「ゴランは、どうせ台本なんて読めないし説明したってその通りにしないだろうから激戦区に入れて暴れさせておこう、それが一番目立つはず、とか書いてある」
ゴラン「ハハハ。さすがイスピン、分かってるな」
ユリウス「バカにされてるんじゃないの? ……イェレナがここにいればなぁ」
ソフィ「イスピンらしい。こういう、とにかくお祭りの好きな迷惑なやつだったよ」
イセル「楽しい人だった」
ソフィ「……まぁ、せいぜい派手に死んでみせようか」
イセル「とっておきの魔法をお披露目しよう」

 会話する冒険者たちを目を細めて見守っていたベクリンは、大振りな箱を一つ取り出して、彼らに手渡した。
 箱に入っていたのは、傷ついた広葉樹の模様の彫られた緑の盾。イスピンのトレードマークであった遺品である。
「この盾は……イスピンは、闇の森で森の主とかいうユニコーンにもらった、とか言っていたが、どこまで本当やら」
「生きてるうちに聞いておけばよかったな」
 懐かしげに盾を撫でるカジェルに、ベクリン卿は笑った。
「きっと別なほら話が出てきたろうさ」
「違いない」
 それから彼は盾をユリウスに押し付けると、言う。
「この盾は……由緒ある、自慢できるような紋章もないし、偉大な由来があるわけでもない。ソラムニアの騎士が持つにはふさわしくない、とパランサスあたりで言われるかもしれない。しかしそれでも」
 と、ベクリン卿は続けた。
「この盾は、君たちが受け継ぐべきだ。
 私はソラムニアの名誉と掟に従うことを美徳としているし、それに従って生きている。それを誇りもしている。
 若い頃、武者修行中、石を投げられる中でも私はその美徳を従うべき最上のものとして自分を律してきた。そんなころ、私はイスピンに出会い、最初は掟も美徳もないならず者だと思ったものだ。
 だが、君たちも知っているだろうが……。私は善と名誉と正義たる掟に従うが、彼はその掟を、掟が目指す理想を、自然に体現していたんだ。
 掟に従うものではなく、そのものに教えを受けた君たちこそが、彼の生きた証なんだと思う。どうかカワセミ祭りに出て、どこかで見ている彼に、それを見せてやって欲しい」

ユリウス「この人、イスピンのこと好きすぎて若干引く」
DM「よしなよ」

 明日の段取りについて話し合った後、冒険者たちはめいめいに寝床に向かうのであった。

ユリウス「僕は、ベクリン卿と一緒にソーンウォール城塞に泊まることにするよ」
ゴラン「俺はもうすこし食いたいから、このまま真鍮のカニ亭にのこってそのまま泊まる」
ソフィ「わたしは……やっぱりイスピンの家で泊まろうかな。遺体があるし」
イセル「じゃあ私もそうする」
DM「なら、香を焚き続けるため不寝番をしていたエベリン司祭は、香の焚き方とかを説明して引き上げよう。「シーク教の様式に合わせる必要はありませんよ。あなたがたがいてくれたほうが、イスピンさんも喜ぶでしょうから」」
ユリウス「話の分かるいい人だなぁ」
ゴラン「いや、俺ならソフィとイセルが並んでイスピンの遺体の前にいる空間に居続けたいと思わないね。なんかこええもん」

◆04:葬儀 さらばイスピン

 緑の盾イスピンの葬儀は、翌早朝に執り行われた。
 ヴィンガールド川を見下ろす桟橋に集まった人々の前で、イスピンの遺体は彼の最期の住処であるエメラルド庵から、祭壇のついた小舟に載せられて運び出された。小舟を担ぐのは、ゴランやユリウスら冒険者たちをはじめ、ヴォグラー村の若者たちだ。先導し、葬儀を執り行うのはエベリン司祭だが、その式はかならずしもシーク教に沿ったものではない。
 船は桟橋に運ばれ、滑車でゆっくりと川に降ろされてゆく。
 ソラムニアの騎士の完全武装を整えたベクリン卿は、静かな、しかしよく通る声で語った。
「ここにいる皆さんの誰もが、緑の盾イスピンのことを友としてご存知でしょう。
 だから、彼を涙で送ることが、彼の最後にして最大の旅立ちにふさわしくないことには、きっと同意してもらえることと信じています。
 我らが友イスピンは最期にこう言いました。
 俺みたいなならず者にふさわしいのは、やっぱり祭りと物語だ。俺が史上最大の冒険に出かけたときは、俺の物語をみんなに聞かせてやってほしい、と」
 小舟は川に降ろされ、そして川の流れにのって下流へと運ばれてゆく。
 やがてそれは海に出るか、あるいは沈むかして、世界中のだれもしらないところに去ってゆくのだろう。
「カワセミ祭りのこの日に、イスピン。よい旅を」
 ソラムニア騎士ベクリンはパラダインに加護を祈った。
 葬列に並んだ人々は、みな、おのおのが信じる神に祈りを捧げる。
 キリ=ジョリスに、ハバククに、ルニタリに、レオルクスに、いずこかにいるまだ見ぬ見出されるべき神々に。
 イスピンの小舟が見えなくなり、そしてヴォグラー村のレイヴン村長が合図をする。
 準備されていた旗竿が立ち上げられ、色とりどりの旗が風にはためいた。
「皆さん!」
 レイヴン村長は明るい声を張り上げる。
「カワセミ祭りにようこそ!」
 招かれていた楽隊が、賑々しい音楽を奏で始め、ベクリン卿は角のついた兜を脱いだ。
 さらばイスピン。

◆05:カワセミ祭り

DM「と、言うわけで、イスピンの葬儀のあと、ヴォグラー村はそのままカワセミ祭りに突入する。式次第では、昼下がりの三時くらいまで村を上げていろんな催しがあって、それから村から30分ほどパレード風に行軍して、模擬戦が行われる予定になってる」
イセル「どんなのがあるの?」
DM「まずは、川で行われる釣り大会。時間内に大物を釣り上げた人が勝ち。それからほら話大会。これは一番面白いほら話ができた人が勝ち。最期に空飛びコンテスト。大発明家サンのノーム投げ機で空を飛んで、その飛距離と美しさを競う」
イセル「美しさ……?」
DM「V字ジャンプは飛距離が稼げるけど足を揃えたほうが美しいとか、着地でパラシュートを広げるのが遅ければ遅いほど度胸があってカッコいいとかそういうやつ」
ソフィ「ひどい」
DM「街中がお祭りでいろんな屋台が出てるよ。名物は魚のパイで、これをぱくつきながらイベントを見物するのがお定まりのルートだね。村の勇気のでない男の子や女の子には絶好のチャンスにもなってる」
ユリウス「学園祭一緒に回らない? みたいな」
DM「まぁそんなかんじ。あちこちで陽気な音楽が奏でられていて大道芸人なんかも集まっている。あちこちで乾杯の音頭が聞こえるんだけど、今年は「イスピンのために!」っていう乾杯の音頭も入って賑やかだ。酒を飲む口実なんてなんぼあってもいいですからね」
ソフィ「いい時期に死んだもんね」
イセル「大会に出たいんだけど、どれに出ようかな」
ユリウス「え?! 僕は出ませんけど」
DM「時間はずれてるから、途中で大怪我しなければ全部に出ることができるよ」
イセル「やった。全部に出よう」
ソフィ「案外目立ちたがりなのね」

◆05-2:奇妙なエルフ

DM「そんな感じで盛り上がっているカワセミ祭りなんだけど……〈知覚〉の判定をしてみて」
ソフィ「成功」
DM「葬式のときからいたんだけど、奇妙なエルフの女が目に入る」
ソフィ「イセルじゃなくて?」
DM「シルヴァネスティだけど違う」
イセル「同郷だ。知り合い?」
DM「いや、ぜんぜん。周囲に聞いても、誰も彼女の素性を知らない様子」
ソフィ「失礼ですけど、あなたは? と声をかけよう」
DM「なら、彼女はリーダラと名乗る。イスピンの古い知り合いだと言うけど……奇妙だね。〈歴史〉で判定して」
イセル「成功……シルヴァネスティの現状とか聞きたいので地元の話をしてみたりしよう」
DM「彼女の来ている衣装なんかが、こう、流行や様式がものすごく古いことに気づく。この合わせが流行ったのは大変動時代だな、みたいな。地元の話はのらくらとかわして乗ってこない」
ソフィ「あやしいぞ。警戒する。敵意はありそう?」
DM「敵意はなさそう……あー、いや、ユリウスには若干険悪な目を向けるのが、〈看破〉に成功すればわかる」
ユリウス「えー。僕なんかしたかな」
ゴラン「どこかで喧嘩売ったんじゃないか?」
ユリウス「君じゃあるまいし」
ソフィ「食い下がって素性を聞き出そうとしてみよう。どこでイスピンに会ったのかとか、そういう」
DM「じゃあリーダラは少し黙ってから、きれいなエルフ語で歌を歌いだす」

 リーダラが歌ったのは、大変動の折りに癒やしの神ミシャカルから信託と任務を受けたもののそれを投げ出し、妻であるエルフと子供を殺した一人のソラムニア騎士の物語だった。
 その歌声は悲しく、長く響いた。

ソフィ「急に歌った」
ユリウス「ミュージカルだった」
DM「気付くと彼女はどこにもいなくなっていた」
ゴラン「なんだ今の空気の読めないへんなエルフは……」
ソフィ「エルフで空気読めるやつなんていないわよ」
イセル「あまり否定はできないかな……」

◆05-03:空飛びコンテスト

イセル「空飛びコンテスト! 空飛びコンテスト出たい」
DM「広場ではノームの大発明家サンが大きな仕掛けを動かしている。ネアリークラッシュっていうパラシュートをつけてジャンプするので、とても安心安全だ、とサンは主張している」
ソフィ「本当……?」
DM(サン)「もちろんです! このパラシュートは紐を引くことで開くほか、二段三段の安全対策が取られていてですね! その成功率はおよそ8割7分!」
ソフィ「13%も失敗すんの」
DM(サン)「誤差の範囲です!」
ソフィ「そうかなぁ?!」
DM(サン)「しかもお城にあるタイプのやつは馬も投げ飛ばせるくらいのパワーがあるんですよ! まぁ、馬はパラシュートを開けないので死にますが……」
ユリウス「こんなの飛ぶやついるの? 僕は嫌だよ」
DM「大会には力自慢で命知らずの村人や、向こう見ずな子供が出場しているようだね。君たちがやってくると、小バカリスがユリウスを見つけて煽る。「三年で騎士になったらしいが、ソラムニアの騎士様の勇気で飛べるかな?」
ユリウス「そんなことしないよ。煽られても」
ゴラン「そういうお前は飛べるのかよ。やれもしないのに煽ってるんじゃねぇよ」
DM(小バカリス)「なにぃ……? できらぁ!」
ゴラン「となるとユリウスも飛ばないとなぁ!」
ユリウス「えええ?! 嫌だよ子供じゃあるまいし」
DM(小バカリス)「それみたことか!」
ゴラン「それはダメだ。飛ばないと」
ユリウス「えええ……。きっとこんなふうに乗せられて悪事やいたずらに加担させられてたんだろうなぁ」
DM「君たちの他には、旅のケンダーのエルゴと、村の力自慢の漁師シヌヨンが出場している。シヌヨンは新婚さんで、観客席の奥さんに力こぶを作ってアピールしている」

 このノーム投げ機は、およそ150フィートを投げ飛ばすようにできており、〈軽業〉で難易度10の判定に成功したなら、その達成値が10を上回る3ごとに1D6フィートを余計に飛ぶことができる。
 飛ぶ姿も審査対象のため、もし〈芸能〉に習熟していたなら、この判定に有利を得ることができる。

DM「ケンダーのエルゴは「こんな最高の体験ができる幸せなケンダーはクリン中探してもぼくくらいしかいないよねやったぜ!」って言ってダブルピースで飛んでいって156フィート飛んだ。シヌヨンはすごく飛んで、161フィート地点でポーズを取っている」
ゴラン「小バカリスは?」
DM「ウワー! とか言いながら飛んで……155フィートぴったりのところに頭から落ちて、ガバッと起き上がってユリウスを煽ってる」
ゴラン「俺も飛ぶ俺も飛ぶ。〈軽業〉は敏捷だっけ? 10も行かなかった!」
DM「なら、足りなかった2ごとに1D6フィートマイナスだ」
ゴラン「くそー。146フィートしか飛べなかった。ユリウス! 飛べよ!」
ユリウス「嫌だなぁ! すごく嫌だなぁ! 僕はこういうのすごく嫌です! 〈軽業〉は成功して……156フィート飛んだ。どんなもんだい」
DM「じゃあ、ケンダーの隣にべしゃっと落ちた。小バカリスの30cm先だ。小バカリスは「こんな遊びで勇気が決まると思うな!」と悔しがってる」
ユリウス「そんなの最初から言ってる!」
イセル「じゃあ優雅に進み出て、パラシュートを断ってノーム投げ機に座る」
DM「サンが飛び上がって驚く。「えええ?! そんなことをしたら危険が危ないです! 待ってください! 危険を計算します! ええと……」」
イセル「大丈夫。私は完全に安全な仕掛けを持っているの」
DM(サン)「ええ! どんな仕掛けですか?! すぐに! すぐに見してください!」
イセル「飛ばせてくれればご覧に入れますよ」
DM「んー。そんじゃあ余計な重量がないから、判定に有利をあげよう」
イセル「いい感じに飛んだところで、フェザーフォールの呪文を使う。フワーっとこう……美しく降りる」
ユリウス「芸術点高そう」
DM「確かに。じゃあ飛距離に+1D6して。サンは「ずるだ! 魔法じゃないですか! なにかすごい機械かとおもったのに!」と口をとがらせている」
イセル「悪いわね。ええと、161フィート」
DM「ならシヌヨンと同着だ」
イセル「同着。どうなるの?」
DM「じゃあ表彰式には大発明家サンが出てきて、「今回は一位がなんと! 二人も居ます!」って紹介してくれる。ここでどっちかにするなんてけちな事は言わないよ」
ゴラン「そういえば、賞品とかなんだろう」
DM「優勝賞品は、副賞としてまず機械仕掛けのトロフィー。これは金貨……鉄貨か、20枚の価値がある。それからメインの賞品は……なんと! ソーンウォール城塞にあるノーム投げ機初号機をいつでも使わせてもらえる権!」
ユリウス「いらない!」

◆05-04:魚釣り大会

DM「魚釣り大会は、まぁわかりやすい。ヴィンガルード川の桟橋で、釣りをして、30分おきに〈生存〉の判定を行う。成功度に応じてでかい魚が釣れて、その大きさを競うんだ。釣れた魚はその場で名物のフィッシュフライにしてくれる。村人からは、漁師のシヌヨンと波止場ギルドの息子のネサワ、それから釣り名人のレイヴン村長が出場している」
イセル「これも出る!」
ゴラン「俺も出ようっと。でかいのを釣って見せるぞ」
ソフィ「わたしも出る。〈生存〉の判定?」
DM「そう」
イセル「結構いい! 14かな」
DM「すごいじゃん。体長3フィートもある立派なよろい鯉が釣れたよ」
ソフィ「お。出目20」
DM「え! ええっと、糸切りベネボグっていうこの川の主が釣れた。全長はなんと8フィート。240cmだ」
ゴラン「ネームドだ!」
DM「かかって魚体がちらっと見えたら大会そっちのけで村人たちが見物に来て、やれ右だ左だ竿がもたない糸を出せ巻けと大騒ぎになって、最後は船を引き上げる滑車を使って引き上げたね。魚釣り大会はこれよりでかいのは釣れないからここで終わりだ!」
イセル「ええー」
DM「とても一人では食いきれないだろうから、みんなに振る舞っちゃうことになる」
ソフィ「いいよいいよ」
DM「優勝賞品はとても豪華な竿で、これは金貨20枚の価値があるよ。魚釣り名人レイヴン村長が贈呈してくれる」

◆05-05:ほら話大会

DM「ほら話大会は、各自思いつく面白いほら話をして、ウケを競う大会だ。今年はイスピンの葬儀もあったので、彼にまつわるほら話で楽しく盛り上がろう、という趣旨。イスピンほら話表というのがあるから、それで出たお題に合った下の句を話す感じ。判定は〈芸能〉」
イセル「もちろん出る」
ソフィ「わたしも出ようかな」
DM「参加者は、ケンダーのエルゴと、真鍮の蟹亭でいつも吟遊詩人に点数をつけているヤルメ。ケンダーのエルゴは……イスピンが鮮血海で、ミノタウロスの海賊団に三日三晩追われた話をする。ええと、そうだな……イスピンはなんと巨大なウミヘビの腹の中に逃げ込んで事なきを得たんだ。〈芸能〉は、14か」
ソフィ「それは本当の話?」
DM「もちろんほら話だよ。そんな感じで参加者が色々と面白い話をしていくんだ」
イセル「私もお話をする。イスピンがドワーフの地下牢に閉じ込められたときの話……。〈芸能〉は12」
ソフィ「わたしもやろう。〈芸能〉は……1!」
DM「じゃあ聞いていたベクリン卿から、「それはほら話じゃない。事実だろう」とツッコミが入る」
ソフィ「あれ?」
ユリウス「怖い。ここであえて事実を出すことでわたしはイスピンと特別仲が良かったマウント取りに行ってる」
イセル「ううっ!」
DM「でもそこでちょっと事件が起きてね。聞いていた小バカリスは色んな話に「そんな話はもう千回も来たぞ!」とか「つまらん話だ!」とかヤジを入れているんだ」
ゴラン「ほーお! そこまで言うなら、もちろんお前はすごい話ができるんだろうな?」
DM「え……。小バカリスは怯む」
ゴラン「おいおい、ここでイモ引いたりしねぇよなぁ!」
DM(小バカリス)「で、できらぁ!」

 小バカリスはイスピンが盾を使って村を救う話をするが……。

DM「〈芸能〉は10だ。ウケはいまいちだね」
ゴラン「そんなもんかー」
DM「小バカリスは肩を落として小さくつぶやく。「同じ話でも……イスピンならもっと面白く話せたろうに……」」
ソフィ「こいつはこいつなりに、イスピンが好きだったんだろうなぁ」
ユリウス「これで全員? ベクリン卿は?」
ゴラン「そうだ。ベクリン卿にも話してもらおうぜ」
DM「あぁ、じゃあみんなに押し上げられる形でベクリン卿もほら話をしよう。「あれは……イスピンがヴィンガルード山脈でロック鳥の巣に入ってしまった時……」どうしようかな「イスピンは、巣にあった羽を全身につけてヒナのフリをして難を逃れようとしたんだけど、親鳥がイスピンをひどく気に入ってしまって……次々とトカゲの死体なんかをエサにおしつけられて……」と話す。〈芸能〉は……わ。出目20」
イセル「ダメだ、負けた!」
DM「文句なしだね。優勝はベクリン卿だ。彼は苦笑しながらもトロフィーを受け取って、それからトロフィーの価値に等しい金貨を支払ってみんなに酒をおごる。「こんな賞をもらってしまったが、私にとっては、みんながイスピンのほら話をして乾杯してくれることが、なによりの賞品だよ」と笑う」
ソフィ「強い」
ユリウス「このおじさんイスピンのこと好きすぎない?」

◆06:高丘の戦い

 昼下がり、いよいよかつてソラムニア騎士ヴォグラーが東方のイスタル軍を破ったという、ヴォグラー村はじまりのおおいくさを再現する模擬戦イベントが始まる。
 村人たちはめいめい鎧を着ているが、それらは不揃いで、間に合わせの感がある。この村はこれまで、武装が必要になったことはなかったのだ。
 しかしそれでも、パレードをしながら高丘に向かう村人たちの気概は、往年のソラムニア軍のものだった。
 一方イスタル軍を担当する傭兵団、カジェルの率いる鉄壁連隊はおそろいの鎧を身につけている。
 カジェルとベクリン卿、レイヴン村長、エベリン司祭やバカリス卿らは観客席でこのイベントを眺めていた。
 かつてこの再現イベントにはイスピンが登場し、様々に盛り上げてくれたものだ。
 ヴォグラー村の住人からなるソラムニア軍は、高丘の一本杉の周辺に、大昔のいくさと同じく陣取った。
 イスタル軍に扮した傭兵副官グラゴニスが、その目立つ長身と大音声で呼ばわる。
「イスタル万歳! ソラムニアの騎士共を打ち倒せ!」

ゴラン「よし! 暴れるぞー!」
ソフィ「せいぜい良い死に様でもみせてやろうかな。〈芸能〉かな」
イセル「私は幻術や顔を変える魔法で盛り上げようかな」
DM「小バカリスはギラギラした目でイスタル軍とユリウスを交互に見ている。袋竹刀を持って「逃げるなよ。俺の腕を見せてやる」とか言ってる」
ゴラン「オ! 今度はヒカリモン持ってねぇだろうな! 武器の持ち込みは禁止だぜ! 釘を差しておこう」
DM「ないよ。模擬戦で使う武器は、ダメージ1しか与えない竹刀やなんやらだ。小バカリスは「俺は腕を上げたからな。そんなことをしなくても、力をみせつけてやる」と息巻いている。一方ダレットは「グラゴニスさんも歴戦の傭兵。胸を借りるつもりで頑張ります」と言ってる」
ユリウス「こういう素直で真面目なところが僕にはなかったから、ベクリン卿は弟子にしてくれなかったんだろうか……ウウッ!」
ソフィ「あのおっさん、どうせそんなに深く考えてないわよ」
DM「グラゴニスの「イスタル万歳!」という声に答えるように、シヌヨンが「イスタルのネズミどもを追い落とせ!」と叫んで、観客席の奥さんにアピールしてから突っ込んでいく。それに合わせて、村人たちも完成を上げて突っ込んでいくね……。そこで〈知覚〉の判定をしてみて」
ソフィ「〈知覚〉?」

 シヌヨンたち村人の突撃を迎え撃つ傭兵たちの武器。
 その先端が、午後の陽光にキラリときらめいた。

ソフィ「え? あの武器は本物?! 危ない!」
DM「警告の声は間に合わない。ハーフオーガに向かって意気揚々と突撃したシヌヨンは、警告の声に振り向いたけど、もう遅かった。グラゴニスは粗悪な作りだが幾人もの血を吸った大斧をがん、と無造作に振り下ろすと、力自慢の村人の頭が割れて、血が吹き出す。戦場は一瞬さあっと静まり返って……お祭りの戦場は、たちまち本物の戦場になってしまった」
ユリウス「え?! あのハーフオーガの人いい人そうだったのに……」
ソフィ「裏切っていたの?! いつから?!」
DM「さぁね。でも詮索している時間はない。丘の下から三騎の騎兵は槍を手に駆けてくるからだ。その槍はもちろん本物で、ぎらぎらと輝いている。「見ろよ! まだごっこ遊びだと思ってるやつらがいるぜ!」」
ゴラン「武器! 武器は……」
DM「ない。君たちの武器は、君たちが釘を差したように、1ダメージの模擬専用だけだ。小バカリスは「こんなことならゆうべ格好つけて武器をしまってくるんじゃなかった!」と言って竹刀を握り直す」
ゴラン「持ってくる計画はあったんだ……」

 三騎の騎兵が冒険者たちに殺到する。
 周囲では同じように戦い、いや、虐殺が起こっており、助けはない。

DM「傭兵を無力化したら、傭兵の武器を奪えるよ。彼らが持っているのはスピアだけど、処理の都合で、自分の望む武器をなんでも奪って良いよ」
ゴラン「まずそれが難しい!」
ユリウス「この……柵を蹴倒して棒を取れないかな。それだったら竹刀よりマシだったりする?」
DM「なるほど。それは代用武器にしていい。ダメージは1D4だけど、能力値も足せるし、ロングソードとかに近い長さのものなら習熟ボーナスもらして良いよ」
ユリウス「それしかないか……!」
ソフィ「わたしはどうしよう……筋力で攻撃は……無理だし」
ゴラン「石でも投げたら?」
DM「あぁ、投げるのに手頃な石はそこら辺に転がっているよ。ダレットと小バカリスはそっちで動かしてね……まず騎兵が一騎、突撃する。戦馬のキックを……ユリウスに。あたってダメージ11」
ユリウス「ぎゃー!」
DM「あとこっちは……小バカリスに……キック」
ゴラン「小バカリスが一発で倒れた! 馬だ! 騎兵やばい!」

ゴラン「武器は一旦いい! 騎兵に飛びついて組み付いて引きずり落とす」
DM「う。そいつは落馬した」
ゴラン「ついでに馬の尻を蹴飛ばして馬をどっかに追い立てよう。さぁ殴り合おうぜ!」
ユリウス「僕は柵を破壊して棒を拾ってそれで攻撃する」
DM「馬? 上の人?」
ユリウス「もちろん上の人。くらえ! 悪討つ一撃!」
DM「ぴかっとなんかこう……神様っぽくない感じの輝きが出て、その騎手は落馬する」
ユリウス「よし、ソラムニア騎士の特技でさっと馬を奪う!」

イセル「とっておきだ! スリープ!」
DM「ええと、最後に残ってた馬上の騎手がぐらっと眠って落馬して……落下ダメージで起きた。でもこれで乗り手を失った馬は誰かが止めない限りはどこかに逃げ去るね」
ソフィ「ほっとこう。それより小バカリスの応急手当をして容態安定化させる……成功。貸しにしとくわ」
DM「小バカリスはうめきながら悪態をついて……後ろだ! ユリウス!」と叫んだ……。ユリウスに落馬してた乗り手が攻撃」
ユリウス「うっ。さっきくらった馬のキックとあわせて気絶した。落馬する」

ゴラン「まずい! 引きずり落とした傭兵から武器を奪う。これ斧を2つ奪えていい?」
DM「いいよ。たまたまいい感じのを持っていたんだろう」
ゴラン「駆け寄るけど倒しきれそうにないな」
ソフィ「うーん。もう少し後まで取っておきたかったけど……。癒やしの光の能力を使う!」
DM「お。じゃあ白金色の輝きが集まって、倒れたユリウスを包む。ユリウスの負傷がみるみる癒やされていって、勇気が沸き起こってくる。大変動からこっち、このクリンでは完全に失われていた力。まことの癒やしだ」
イセル「ソフィがこんな魔法を使うなんて思ってなかったから、イセルは驚いて逆に怪しむかも。こんな魔法を隠していたなんて、なにか意図があったのでは……?」
DM「いいギスギスだ」

 なんとか傭兵たちを倒した冒険者たちだったが、すでに周囲は血の海だった。
 そこに、獲物を求めてやってくる大柄な人影がある。

DM「ハーフオーガのグラゴニスだね。彼の斧は血塗られていて、すでに何人もの村人を血祭りにあげたようだ。彼が「ソラムニアの騎士様よぉー。イスタルの将軍様がおでましたぜぇー」と芝居ががっていうと、周囲の手下の傭兵が喝采する」
ゴラン「この裏切り者め!」
ユリウス「あんたはカジェルの副官だろう。一体どうして……」
DM(グラゴニス)「カネを積まれたんだよ。俺ぁ傭兵だぜ? 故あれば裏切るのさ!」
ソフィ「カジェルに恩があったんじゃあないのか」
DM(グラゴニス)「恩より高いカネを積まれたのさ。おしゃべりはこのくらいにしておこうぜ。カジェルの親方にも、手加減すんなって言われてるからなぁ!」

 ノーム投げ機を軽々と組み上げていた気の良いハーフオーガのグラゴニスの膂力は凄まじいものだった。
 斧の一振りで地を穿つ。

イセル「なにかできること……魔法を使い切って初級呪文しかない……」
DM「いや、周囲の傭兵にはその攻撃で十分だ。そいつは倒れたよ」
ゴラン「よし。相手をしてやる。グラゴニスの前に立つぞ」
DM「いい度胸だ……あたり! 14ヒット」
ゴラン「いてぇ!!」
ユリウス「危ない! 立ち上がって駆け寄って……後ろから斬りつける。あたり! 10ヒット」
DM「う。グラゴニスがぐるっと振り向いて「おいおい後ろから、しかも寄って集ってとは、卑怯なんじゃねぇか? たいした騎士様もいたもんだなぁ!」」
ユリウス「なにぃ!」
ゴラン「ごちゃごちゃうるせぇ! 戦いにそんなもん関係あるか! 右があたって、左も当たりだ!」
ソフィ「あ! 殺すな! そいつからは聞きたいことがある!」
ゴラン「え? ソフィの声で言われると弱いな。手加減しよう。できるかな」
DM「グラゴニスはゴランの斧をくらってぐらっと倒れる……手加減なら気絶する」
ユリウス「うーん。じゃぁこうしてもいい? 「僕は卑怯者じゃない! 僕は戦えるんだ! 逃げないぞ!」って言ってグラゴニスに切りつけてとどめを刺しちゃう」
ソフィ「あっ……情報……」
DM「さっき別のやつをユリウスが手加減で倒してたから情報自体は出るよ。演出優先で良い。ユリウスを止めるかい?」
ゴラン「ユリウスがこんなことをするなんて思わないだろうしなぁ」
DM「判定するなら、〈看破〉と〈はったり〉……いや〈威圧〉のほうがいいかな」
ゴラン「まさかユリウスがこんなことしちゃうと思わないから不利を食らっておくね。失敗!」
DM「じゃあ、ユリウスはグラゴニスの背中に、傭兵から奪ったロングソードを突きこんだ。グラゴニスはごぼっと血を吐いて、最後にユリウスのほうに視線を回して……息絶えた。ハーフオーガが最後になにを言おうとしたかはわからないね」

 はぁはぁと息をつき、血溜まりに膝をついたユリウスを、地面に転がった緑の盾がそっと見つめていた。
 日は暮れつつあり、夕日が高丘を赤く染めていたが、その赤が、夕日なのか血なのか、誰にもわからなかった。

◆07:流血の帰還

 グラゴニスが倒れ統制を欠いた鉄壁連隊の裏切り者たちは散り散りになった。
 観客席も同じように襲われ、それをさばき終えたベクリン卿とカジェルが参戦したこともあり、裏切り者どもはもはや敵ではなかった。
 レイヴン村長やエベリン司祭が負傷者の手当をして回り、名物のパイを売っていた屋台の荷車は、今はパイを投げ捨て代わりに遺体を乗せている。
 カジェルは生きている傭兵の胸ぐらをつかんでなにか怒鳴っていたが、ベクリン卿はそれを止めて、彼を負傷者の救護に回らせた。
 バカリス卿は息子の無事を喜びつつも、この大惨事の原因は傭兵たちであり、それを率いるカジェルであり、彼を引き入れたベクリン卿にあると口汚く罵り続けたが、それに取り合う気力のあるものは誰ひとり居なかった。
 これが、ヴォグラー村のカワセミ祭りの幕切れであった。
 だが、この事件はアンサロン大陸全土を舞台とした戦争の幕開けに過ぎなかったのだ。
 その戦争は、後にこう呼ばれる。

 竜槍戦争、と。

 ……つづく。

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