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糸という字の成り立ち

絹について語る前に、糸という文字の成り立ちについて説明したいと考えます。絹や綿などに使用される糸は、シルクから作られるということが一般的です。全ての糸がシルクから作られると言われています。

糸は象形文字


糸という漢字は、まさに糸そのものの姿を表した象形文字です。繭から糸を紡ぎ出す様子をそのまま文字化しており、誰でも見て糸だと理解できる、とても分かりやすい漢字と言えるでしょう。
糸は、私たちの生活に欠かせない存在です。衣服や装飾品はもちろん、医療や工業製品など、様々な分野で活用されています。その歴史は古く、古代から人々の生活を支えてきました。
糸という漢字は、単なる文字ではなく、人類の長い歴史と文化を象徴する存在とも言えるでしょう。

糸の成り立ちとシルクの関係性

象形文字は、古代中国の殷の時代(紀元前16世紀~紀元前11世紀)前後、亀の甲や獣骨に刻まれた甲骨文字とともに、長い歴史の中で進化してきた文字です。
当時の文字は、文字というよりは絵に近いもので、具体的な物や動作を線や点で表していました。例えば、「木」という字は、木の形をそのまま描いていました。
その後、時代とともに文字は徐々に抽象化され、表意文字へと変化していきます。表意文字は、具体的な物や動作だけでなく、抽象的な概念も表すことができるようになりました。例えば、「人」という字は、人の形だけでなく、「人」という概念を表すようになりました。
このように、象形文字は、古代中国の人々の生活や文化、そして思考を反映しながら、長い時間をかけて進化してきた文字なのです。
その時代から使われていた(糸)は図からわかるように繭から紬糸(よってつくる糸)ではなく、生糸(繭から糸を採ったもの)を揚げていた事が判ります。

糸という字になぜ小を使うのか


糸という字は象形文字で解る通り繭3粒の撚りを掛けながら糸を揚げて行くので、点々が3個で良いと思いますが、下にわざわざ小という字を使う訳は繭が「小さく糸が細い」を強調させたのではないでしょうか。
繭から湯気と一緒にゆらゆら揚がってくる1本の糸を「糸」と言います。漢字が整備されて来た頃には5本の忽が撚られた物を糸と書きました。 
糸の細さだけを示す文字であれば「絲」という文字の方が良いと思います。

糸と絲はどう違うのか


「糸」とは5忽(ごこつ)を撚り合せたもので、「絲」は糸が2本の糸を合せたものです。絲と言う字は糸を2本合わせた糸を指すもので細い事を指すものではありません。通常の糸には絲と書くほうが正しいようですが、当用漢字から除かれましたので現在は使われなくなりました。さらに絲が2本合糸されると「纎」(し)と言い、忽の20倍の太さになります。この太さが女性の髪の毛に近いと言われます。つまりこれが「毛」です。(東洋人の女性の髪の毛は忽の約25~30倍)毛が2本合糸された糸は「絁」(ごう)で、明治政府は絹を主産業にすべく、小額貨幣単位に絹糸の太さを使いました。 

糸は生活の根底に根付いていた。

明治時代の日本の貨幣の単位は、厘→銭→円。一般的には厘の10分の1を「毛」と呼びますが、日本の貨幣単位として定められているのは、「円・銭・厘」の3つでした。

https://www.iyobank.co.jp/sp/kinyu-kyoshitsu/page-rekisi5.html  いよぎん金融教育教室から

貨幣の単位でもあったように絹は明治~大正まで生活の根底にねぅいた文化でした。

糸へんの漢字の世界

絹の世界で漢字は大変便利です。
文字を見ただけで綿や糸、布の良し悪しの程度が判ります。例えば「綿」は糸へんですので絹綿(きぬわた)を意味します。わたしたちが慣れ親しんでいるコットンは植物から採られた綿です。無以前は「棉」と書かれていました。しかし綿ではその良し悪しの程度がはっきりしないので、高級綿に「緜」(メンと読みます。)という字を充て、屑綿(くずわた)には「絮」(ジョと読みます。)が使われます。同じ様に絹だけでは織物の良し悪しが判らないので、美しい綾織には「綺」、薄絹には「紗」、糸が細くて織密度の高いものを「緻」、平織りで太い糸で織られた物は「紬」と書かれました。日本でも律令制定期の文書にはこのような文字が使われております。 
漢和辞典で糸という字を調べると実に沢山の字が出てきます。
それはいずれも絹がもたらした漢字文化です。

糸=絹の漢字

すべての糸は絹に繋がります。ぜひ文字の生い立ちや歴史も調べてみてください。面白い発見があります。

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