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立憲民主党の政権交代に必要な組織の構築に関する献策

こんにちは。地方の会計屋です。
本稿は、立憲民主党本部及び来月に予定する代表選立候補者及び立候補が見込まれる議員(令和6年8月22日現在)宛に送信した文書です。
当noteをもって、その内容を公開いたします。
なお、実際の文書上は下線で表示した箇所についてはnoteの機能の都合上、太字に替えています(見出しを除く)。

1.序文

 突然の文書を失礼いたします。令和6年8月21日現在において立憲民主党代表選に正式に立候補されている方並びに立候補すると目されている方に、本書をお送りさせて頂いております。

 私は、公認会計士及び税理士を業としている者です。「地方の会計屋」というハンドルネームでX(Twitter)ほかSNSで活動しておりますが、本職の関係上本人の特定が極めて容易であるため、本名を伏せさせて頂きますことを何卒ご容赦ください。Note上で一般社団法人Colaboの不正会計疑惑を公認会計士の視点から解説し少なからぬ反響を頂き、同法人の冤罪の払拭に多少なりとも貢献できたのではないかと自負しております。また、十年以上前の民主党(当時)に所属する国会議員の政治資金収支報告書における記載を巡る疑義が世論を沸騰させたときも、当時のブログにおいて収支の数値を解析し違法献金等の不正行為には当たらない可能性が高い旨を指摘したことがありました。蛇足ながら、正式な党員ではありませんが、貴党に所属する国会議員と業務においても関与しております。

 本書は、貴党が選挙に勝利し政権交代及び政権維持に十分堪えうる強靭な組織を確立するには何が必要であるかを、主に企業経営の観点から献策するものであります。選挙や政治団体に関しては門外漢であることは重々承知ではありますが、人と人が有機的一体をなす組織の理論は普遍であると考えております。

 なお、来たるべき選挙に鑑みると即効性が乏しい案であることが誠に心残りでありますが、いずれ政権与党として国政を担うべき貴党にとって決して避けることのできない課題であると思われます。

2.強靭な組織の確立

1)「強靭な組織」とは

 まず、冒頭に申し上げた「強靭な組織」について申し上げます。
 「強靭な組織」と申しますと、自民党のように層の厚い全国津々浦々における支持者・支持団体並びに専従職員や公明党のように一糸乱れぬトップダウン体制を想起されるかも知れません。生憎ながら層の厚さと資金力で自民党に、結束力で公明党に及ぶべくもないことは、認めざるを得ない現実でもあります。

 それは決して、貴党において強靭な組織を築き上げることが不可能という意味ではなく、両党以外の要素を軸にすることで確立は可能であるということであります。一定の目的意識をもって所属議員から事務職員が結束し、それぞれが目標達成のために最善の行為は何なのかを常に考えながら効率的に活動できるような組織こそが強靭な組織であり、個々の候補者や選挙公約の是非よりももっと根源的な要素でもあるのです。

2)自民党・公明党・日本維新の会になくて立憲民主党にあるもの

 一方で、自民党・公明党及び日本維新の会に無くて立憲民主党にあるものに改めて着目しなければなりません。貴党にある何かに期待しているからこそ、当該3党ではなく貴党に票を投じているのであり、単なる差別化というだけでなく、貴党の組織力を高める鍵にもなるからです。

 社会保障や経済政策に関しては自民党も手広く手掛けていますが、一般論で言うと実際の政策よりも大企業や富裕層寄りで例えば都会の低所得層には冷淡というイメージがあります。公明党も基本的には都市部の低所得層が主要ターゲットでるものの、創価学会員以外にはハードルが高いと認識されています。これをなぞれば、貴党にあって自民党等にないイメージは例えば以下が挙げられます。

  • 経済的・社会的弱者に常に寄り添う

  • 法規や社会秩序の公明正大な運用を重んじる

  • 市民の生活の安定を重視する

3)共有なくして組織なし

 ここで重要なのは、前述のような「貴党にあって自民党等にないイメージ」が、まずは貴党の組織内で強固に共有されることです。弱者に寄り添う、公明正大さ、生活の安定重視といった姿勢は漠然としたもので終わらせるのでなく、個々の国会議員・地方議員及び党全体の活動として裏付けがなければ、有権者にそのイメージは定着せず、投票にも結び付きません。そのためには、虚構でない実体を伴ったものとして党内でこそ認識されなければなりません。立憲民主党を立憲民主党たらしめる要素が組織文化として共有されれば、強靭な組織への第一歩とつながります。

 より具体的に申しますと、以下の共有こそが必要です。

① 理念の共有
 貴党においては「立憲主義」「共生社会」「人権の尊重」などを綱領に挙げていますが、組織の存在意義の根幹をなすものであり、普段の活動レベルから貴党の理念に沿っているかを日常的に問うことが欠かせません。綱領が党員及び専従職員で十分に共有されているかを、改めて問い直す必要があります。

② 判断指針の共有
 所属する議員及びその候補者、並びに党員同士で意見が異なるのは当然であり、政策に関しても活発な議論がなされて然るべきです。しかしながら、議論に当たっての判断基準が共有されていないと、議論の内容または導き出された結論が前項の理念から乖離する危険性があります。例えば、「増税してでも社会保障を充実すべき」という意見と「社会保障を犠牲にしてでも増税すべきではない」という意見があるとき、どちらの意見が正しいかではなく、どちらの意見がより貴党の綱領に沿ったものであるかに基づいて判断すべきです。そのためにこそ、綱領をより深化し所属議員、専従職員及び党員単位で共有可能な判断指針にまで落とし込むことが必要です。

③意思決定の共有
 議論の形成過程及び結論を見える化し組織全体で共有すべきことは言うまでもありませんが、可能な限り段階に応じた意思決定に参加する機会を所属議員や事務職員にも提供することが、組織への参画意識を高めます。意思決定に当たって鍵となるのは、多数決ではなく最大公約数に基づくことです。

④ルールの共有
 一般企業に定款だけでなく就業規則ほか諸規程があるように、組織として明確な信賞必罰の仕組みの確立が不可欠です。例えばある議員の言動が問題があるとされた時に、あらかじめ明文化された罰則規定に従って処分の可否や課すべき処分の内容を、公平性・中立性が担保された委員会等によって判断するといった公正な運用無くして、構成員の組織に対するコミットは確立されず、一般の有権者に対しても公明正大な政党という認識も得られません。

3. 立憲民主党という「ブランド」の確立

1)与党の批判票ではなく「立憲民主党だからこそ」投票する

 小池百合子氏の「希望の党」に野党全体が大きく揺れていた7年前、「まっとうな政治」を掲げて枝野幸男様はじめ小池氏に「排除」された議員の皆様が立ち上げた立憲民主党(当時)は、まさに彗星のような眩さを放っていました。当時の安倍政権の強引な政権運営とそれに対して為す術のない無力さに苛まれた野党支持者は、その姿に一縷の望みを見出していたからです。

 その後はどうでしょうか。野党第一党という地位こそ確保しているものの、安倍政権後は明確な対立軸を見出すことが出来ず、自公両与党の議席数には未だ遠く及ばない現状が続いています。自公政権へのアンチテーゼという以外に「立憲民主党を立憲民主党ならしめるもの」が明確でなく、「自民党でなければいいや」的な発想で一時は支持率で日本維新の会に後れを取っていたことにつながったのではないでしょうか。

 これを打開するためには、自民党以外としてではなく「これが立憲民主党だ」という選択肢として積極的に投票の対象となる地位を確立するほかありません。どんなに緻密かつ具体性のある政策やマニフェストを提示しても、「立憲民主党だからこそ」と有権者に思わしめるようなブランドがなければ閲覧してもらえません。

2)なぜ自民党に投票するのか

 その一方で、自民党に投票する有権者の行動心理も見極めなければなりません。もちろん有権者個人の信条から積極的に自民党に投票する人も多くいますが、それだけでは説明できません。中には、階層や所得に照らすと立憲民主党あるいは日本共産党の方がその人の利益に合致するであろうケースも多々あることは、言うまでもありません。こうした行動を左翼嫌悪や権威主義と軽々に判断するのは極めて危険です。

 現実問題として、元々政治への関心が高くない人が一定数存在し、その人たちが普段は行かない投票所へ足を運ぶことで投票率は上昇しますが、その人たちは何を基準に投票を決めるでしょうか。「勝ちそうな相手を選ぶ」のもよく言われますが、良くも悪くも自民党が70年以上かけて築いた「安心ブランド」に依るところは大きいと言わざるを得ません。実体はともかく、その人にとって立憲民主党よりも自民党の方がブランド価値がある限り、どんなに優れた政策を提案しても貴党に投票してくれるとは限らないのです。

3)ブランドの確立は時間を要するが「トリックスター」よりも強固

 ではどうすれば貴党のブランドは確立されるのか。恐れながら、少なくとも自民党あるいは日本維新の会のようにマスメディアに頼ることが出来ない以上、1.で記述した組織の強靭化を図った上で選挙と国会並びにそれ以外の普段の活動から成果を積み重ねていくしかありません。気の遠くなるプロセスではありますが、それでも一度確立されれば強固なものとなります。前述の通り、自民党も特に地方においては地元での地道な活動の蓄積によってブランドを築いたことを忘れてはなりません(問題は現在そのブランドが本当に実体を伴っているか否かですが)。

 また、特に先月の東京都知事選においても顕著でしたが、所謂「トリックスター」に頼るのは長期的に見れば好ましいとは言えません。確かに一時的に大きな話題を集中的に集めることは可能ですが、政治家としての適性が伴っていなければやがて飽きられ、票も集められなくなります。次の選挙の度に入れ替わり立ち替わりトリックスターを起用しても結局は同じことの繰り返しで、焼畑農業のように有権者の政治への冷めた感情を助長し本来の政策議論の場はどんどん不毛になっていきます。そのためにこそ、原理原則に沿った政党及び政策の活動が欠かせません。

4)ウィングを広げるべきか? 野党共闘か否か?

 貴党の方針を巡って必ず話題となるのが「ウィングを広げる」こと並びに「野党共闘」の是非です。貴党の組織の強靭化をどう図るかを主眼に置いているため、両項目はあくまで「各論」という観点から本書では触れません。ただ間違いないことは、貴党単体の組織が盤石となることで戦略の選択肢が増え、より有利に選挙を戦えるということです。

4.実現のための具体策

 以下は、2.及び3.で述べた目標を達成するための方法の一例です。私自身はある企業経営者団体に所属しており、当該団体で確立されているノウハウを流用しております。

1)党内の行動指針の整備・共有

 外部向けの綱領だけでなく、所属議員及び事務職員といった党内の構成員を対象とした「行動指針」を作成し共有します。これは一人一冊ずつの小冊子またはPDF形式で各構成員に提供することを念頭とし、主に以下の内容で構成します。

  1. 綱領の詳細な解説

  2. 綱領に沿った判断や行動のマニュアル及びルール

  3. 単年度計画(毎年更新する)及び実績との比較

  4. 5~10年間のビジョン

2)組織内での議論のワークショップ

 民主的な議論は多数決ではなく最大公約数によって形成されます。そのためには、国会等における討論とは異なるアプローチが欠かせませんし、有権者の意見や要望を引き出す手法としても有用です。その方法を学習する場として、定期的に所属議員(候補者含む)及び幹部事務職員で5名前後のグループごとに分かれ、所定のテーマについてディスカッションを行うワークショップを提案します。

 一方的な主張の展開やマウントの取り合いでなく、双方向のディスカッションによって参加者の意見を少しでも多く引き出すこと、そして最後に出てきた意見をまとめグループごとに発表することで、双方向かつ最大公約数の意見形成を図るとともに、組織内のコミュニケーションと理念共有を円滑ならしめることが目標です。

3)権限集中の回避と内部統制の充実強化

 組織構成や権限を見直し、なるべく特定の部署や責任者に権限や責任が集中しないようにするとともに、並びに事務職員の労務に関する内容も含め諸規程を充実させ、職務に当たっての職務権限や分掌を明確にして裁量的な職務執行や人事を抑止します。これにより組織運営の公正化・透明化を図るとともに、所属議員(特に幹部)が国会あるいは選挙活動といった議員としての業務により注力しやすく体制を確立します。

4)事務職員の充実

 これは長期的な目標ですが、新卒採用も視野に入れて事務職員を一定数採用することも目指すべきと考えます。差し当たっては、一般企業や自治体を定年退職した人材を再雇用ことで対応することを検討していますが、実務能力に長けた事務職員を少しでも充実させることによる党内の円滑な組織運用だけでなく、選挙に当たってボランティアスタッフと党あるいは選挙本部との架け橋を担う役割を想定しています。特に、先月の東京都知事選挙ではボランティアスタッフとのコミュニケーション不足やロジスティックス不足を指摘する声がSNS上で散見されました。

5.最後に

 以上、専門外の観点ではありますが、僭越ながら本職の実務経験も交えながら具申させていただきました。少しでも参考になる箇所がございましたら幸甚に存じます。

 本書を書きながら「立憲民主党を立憲民主党たらしめるものは何か」と自問し続けておりました。その中で思い浮かんだのは、「徹頭徹尾、人間を大事にする」という姿勢でした。

 かつて我が国は、軍部や官僚そして一部の資本家の利益や面子ゆえに暴走し、79年と1週間前に無残な敗戦に至りました。その過程でアジア各地でおびただしい殺戮を重ねただけでなく、自国民さえも多数を戦死や餓死にさえ追いやってしまったことは、言うまでもありません。私自身も広島にルーツがあり、学徒動員していた伯父を探して祖父は原爆投下直後の広島市内に入り死体を掻き分けたと聞いています。幸い伯父は郊外にいたため無事でしたが、間接被爆者として原爆手帳を保有していました。そして昨今、生活コストの増大や増える貧困層、弱者やマイノリティへの心無い罵言・差別の跋扈とそれらに対する政府の無策を見るに、かつての人間軽視の姿勢を再び見るように思えてなりません。

 それゆえ、先の大戦の反省を踏まえた上でこそ「人間尊重」を徹底することこそ貴党の存在意義なのでは?と勝手ながら考えた次第です。どんな政策を選ぶのであれ、その判断の根底には必ず人間の尊重という概念が介在して然るべきなのです。私見ですが貴党では「各論」の是非に着目するあまり、その土台となる「総論」に関する理解が脆弱なのでは、と感じることがあります。貴党が人間を徹底して尊重する姿勢を実際に貫くことは、憲法を何百回と唱えるよりも強力なメッセージとなります。

 日本の未来は、貴党と貴党に票を投じる人々の手にあります。貴党の勝利を祈念して、筆を置かせて頂きます。

令和6年8月22日
地方の会計屋(@the_metal_cpa)


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